りっきょうじょがくいん
立教女学院中学校
スクール特集(立教女学院中学校の特色のある教育 #8)
「新時代」をテーマに、初のオンライン「マーガレット祭」を開催
2020年度、同校は、文化祭「マーガレット祭」をオンラインで実施した。何もかもが初めての試みだったが、運営委員を中心に一致団結し、満足度の高い催しになったという。その取り組みを紹介する。
今年で69回目となる「マーガレット祭」は、新型コロナウィルスの感染防止のため、公開をせず、オンライン配信を中心に実施された。どのように企画を進め、どのような文化祭になったのか、運営委員の生徒と顧問の先生に話を聞いた。
向上心を持って新しい「マーガレット祭」を作る
同校は、10月26日(月)~30日(金)にマーガレット祭を開催。その週は、Google Classroomを使って、各団体の展示や発表が配信された。新型コロナウィルスの影響により、これまでとは全く違う形での文化祭となった。
「6月末まで分散登校が続き、運営委員会で話し合いのときをもって、企画書を学校に提出したのが8月の終わりでした。企画書も一から練り直す必要があり、どうやってオンライン配信をするのか、どんな内容のコンテンツを募集するか、動画を作成するにも尺をどれくらいにするのかなど決めることがたくさんありました」とマーガレット祭運営委員長のOさん(高2)は、実施までの経緯を語る。
「マーガレット祭のテーマ『新時代』も、運営委員の中で決めました。いつもは全生徒に募集をかけ、いくつかピックアップしたものを、再度アンケートをとって決めていたのですが、今年はそういう時間もとれず、既に決まっていた生徒会のスローガン『進時代』を引用し、漢字一文字を変えました。『新時代』には、社会情勢が厳しい中でも、自らの意思で突き進み、向上心を持って新しいマーガレット祭を作っていこう!という意味を込めています」
マーガレット祭運営委員会は、高校の生徒会役員と、高1・2の各クラスの運営委員で構成されている。例年であれば、そこに中学校生徒会役員も入るが、今年は密な集まりを避けるという意味もあり、高校生のみで運営を行った。
「今年は中学の生徒会(企画運営委員会)は、管理・運営には携らず、一参加団体として『学校の魅力紹介』というコンテンツを制作しました」と中学校生徒会長のNさん(中3)は話す。「アンケートを取り、学校の魅力ランキングを作ったり、1年生はまだ学校のことでわからないこともあると思うので、質問を受けて企画運営委員が答えたりする動画を作りました」
高校生徒会もいつくかのコンテンツを作成したが、中でも反響が大きかったのが『運動部企画』のコンテンツ。「今年は、運動部の大会がなくなり、運動部の人たちは引退試合もできませんでした。少しでも思い出に残るものができないかと考え、各運動部の動画をつなげ、後輩からのビデオメッセージを作りました」とOさん。
クラブや委員会は、それぞれの活動の様子などを動画にし配信した。「試合ができない運動部も、クラブの紹介をしたり、過去の試合映像を使ったりして、コンテンツを作っていました。水泳部は毎年、ゲームを企画しているのですが、今年は泳ぎ方のレッスンをしていました。団体ごとに、いろいろな発想があって面白かったですね」
▶︎マーガレット祭運営委員長 Oさん(高2)
▶︎中学校生徒会長 Nさん(中3)
マーガレット祭週間 タイムスケジュール
生徒たちは、配信されるコンテンツを、帰宅後に自宅で視聴する。また、高3美術、高3書道、中学図書委員会、中2などの団体は校内展示も行われた。
オンラインでも楽しめる文化祭を目指す
Oさんは、今回のマーガレット祭を開催するにあたり「みんなに楽しんでほしいという気持ちが一番にあった」と話す。「オンラインの文化祭でも、毎年やってきたことは、なるべく実施したいと思いました。その一つが食品の販売です。今年は食堂の特別メニューという形で、タンタン麺やハヤシライス、たこ焼き、クレープなどを販売しました」
「また、恒例のスタンプラリーは、今年は各コンテンツの最後に文字を1つ入れてもらい、文字をつなげてできた言葉を応募すると景品がもらえる、という企画にしました。景品は、先生が描いた絵をパッケージにしたガムです。これがとても好評で、何度も景品を取りに来る生徒もいました。立教女学院の生徒は、先生が動画に出演したり、関わってくださると、とても喜ぶんですよ(笑)。コンテンツの視聴を促すためにも、いいアイデアだったと思います」
オンラインならではの工夫も盛り込み、新しい文化祭を作り上げたが、Oさんたちは「本当にみんなが楽しんでくれるのか、最初は心配だった」と言う。
しかし、「想像以上に、みんながコンテンツを見てくれました。『いつもなら自分の試合と、時間がかぶって見られない部活の発表を、今回はじっくり見ることができた』『オンラインでも文化祭の雰囲気を味わうことができた』といった声も寄せられました。また、食堂の特別メニューも、列ができるくらい人気だったのもうれしかったですね。たくさんの人が『文化祭をやって良かった』と言ってくれたので、やれる範囲の中では、成功したのかなと思います」
「私の周りでも、『マーガレット祭をやりたい』という声が多かったので、期待に応えられて良かったです」とNさんは話す。「そして、コロナ禍という今年の特別な文化祭に関われたのも、思い出深いですね。中学生徒会で企画をして、一つのことを成し遂げる達成感も味わえました。個人的には『運動部企画』の中で、私の所属している陸上部の後輩のビデオメッセージに感激しました」。ちなみにNさんたち中学生徒会の企画「学校の魅力紹介」は、「中学展示賞」で1位になったそうだ。
▶︎先生が描いた絵をあしらったガム
柔軟に対応する力と行動力を持って、新たな挑戦へ
今回の生徒たちの挑戦を、先生たちはどのように見ているのだろうか。
中学校生徒会顧問の遠藤先生は「文化祭を一から作るのは大変だったと思いますが、生徒たちは割り当てられた役を見事にこなしていました」と称える。
「今回、いつもは高校生が作成している開会式の動画を、中学校の企画運営委員に『作ってみたら?』と投げかけてみました。そうしたら、高校生とはまた違う創意工夫で、こちらが想像する何倍もの素晴らしい作品を完成させてきました。今年の中学生は、高校生の指示を得ることなく、自分たちから動かざるを得ませんでしたが、みんなで話し合いを重ね、柔軟に対応していました」
高校生徒会顧問の岩村先生も、「生徒たちの底力を感じた」と話す。「大人はすぐに、『これはできない』と考えがちですが、生徒は『こういう状況の中で何ができるか』と前向な発想をします。オンラインの文化祭をやると決まってから、企画書の提出までは短い時間でしたが、生徒は期待以上のものを出してきました。
私はOさんが中3の時、中学の生徒会顧問をしていて、その時も行動力がある生徒たちだと思っていました。2年を経た今は、自分の思いを貫くだけでなく、他の人のことも考えながら、行動できるまでに成長しました。将来社会に出た時も、自ら発信できる人になっていくだろうと、今回の活動を見て心からそう思いました」
そんな先生たちの言葉を受け、Oさんは改めてマーガレット祭を、次のように振り返った。
「私は、学校のために、みんなのために何かをしたいという思いで、生徒会に入りました。でも、約3か月間休校になり、何かをしたいけれど、何をしたらいいかわからない状況が続き、そうした中で、学校からマーガレット祭のお話をいただきました。だから、みんないつも以上に『何が何でも成功させたい』『沈んでいる気運を少しでも盛り上げたい』という思いが強くなり、前を向くことができたのだと思います。
そして、マーガレット祭を通じて『自分たちにもできるんだ』ということが確かめられ、自信がつきました。これからも何か新しいことを作っていけそうな気がしますし、挑戦し続けていきたいです」
▶︎写真右:中学校生徒会顧問 遠藤先生
▶︎写真左:高校生徒会顧問 岩村先生
<取材を終えて>
初めてのことを一から作り上げる、それも時間や諸々の制限がある中で実行するのは、並大抵のことではない。それを運営委員の人たちが成し遂げたのは、企画力や行動力、チームワーク力など、様々な要因があると思うが、何よりも彼女たちの強い意思によるものだと感じた。「コロナ禍の沈んだ気運を盛り上げたい」「生徒たちに楽しんでもらいたかった」というOさんの言葉が、とても印象的だった。その思いや熱量は、Nさんたち後輩にも、きっと受け継がれていくだろう。
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