私立中学

女子校

りっきょうじょがくいん

立教女学院中学校

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スクール特集(立教女学院中学校の特色のある教育 #6)

キリスト教系の中学生がモスクを見学

立教女学院中学校では「土曜集会」を年10回程度実施している。「隣人を大切にして、平和な社会をつくろう」をテーマに通常のカリキュラムでは出来ない多彩な学びを展開。今回は、イスラム教寺院モスクを見学する中学2年生を取材した。

キリスト教教育の柱となる特別プログラム「土曜集会」

生徒自身が広い視野で考え、主体的に生きる力を育む「土曜集会」。2018年度は「つながるいのち―多様性をみつめて―」を中学生へのサブテーマとし、身近な人だけでなく、遠くに存在する「いのち」を見つめ、これからの歩みを考えるきっかけとなるようなプログラムが用意されている。2001年にアメリカで起きた同時多発テロ(9.11)を機に、2002年度からは諸宗教について学ぶプログラムを実施。中学1年次は「聖路加国際病院礼拝堂」(築地)、中学2年次は「東京ジャーミイ」(代々木上原)を訪れ、中学3年次は校内のチャペルに宝泰寺住職を招いて仏教法話を聞く。

生徒たちには「土曜集会ノート」が配られており、毎回プログラム終了後に聴いた「内容」と「感想」を書いて提出する。ノートは教員がコメントを書いて生徒に返されるが、3月にはそのノートを元に各プログラムについて代表者が発表する場も用意。1年間を振り返り、学んだことやこれからの課題をまとめ、他の生徒が感じたことをシェアするプログラムとなっている。

ガイドの下山茂氏がイスラム教についてわかりやすく解説

今回ガイドを務めたのは、「東京ジャーミイ」広報担当の下山茂氏。20代後半でイスラム教に入信し、現在はイスラム関連図書の編集・出版などを手がけている。「日本ではイスラム教があまり知られていないことが残念」と語り、イスラム教を正しく知ってもらうために見学のガイドなども行っている。

生徒たちが1階のホールに入ると、下山氏はこの建物についての説明を始めた。代々木上原にモスクが建てられたのは1938年。ロシア革命(1917年)後、中央アジアで生活していたイスラム教徒たちは迫害を受けて、安住の地を求めて各地へ移った。そして、日本へ移住してきたイスラム教徒たちが代々木上原に開設したのが「東京回教礼拝所」だ。しかし、その建物は老朽化に伴い1986年に取り壊され、2000年に現在の「東京ジャーミイ」が完成。建築資材や調度品のほとんどをトルコから運んできたそうで、東京にいながらトルコに来たような雰囲気が味わえる。

建物の説明が終わると、2階の礼拝堂へ移動。ここから生徒たちは長袖・長ズボンにスカーフを着用する。内装には幾何学模様や植物模様が使われており、生徒たちは見慣れている教会とは異なる美しさに目を向けていた。下山氏は、「コーラン(イスラム教の聖典)は、人々にとって、生きていく上でのガイドブックである。人生は長い旅であり、迷ったり悩んだりしたときに、コーランを読む」「イスラム教では、1日5回礼拝をする。生きていくためには食事が必要だが、それは体の栄養。心にも栄養が必要で、それが礼拝。3度の食事と3時のおやつ、夜食と考えれば、1日5回はそれほど多くない」など、中学生にもわかりやすくイスラム教について解説。

礼拝をする際に大切なこととしては、礼拝堂には聖地・メッカの方角を指す窪み(ミフラーブ)が必ずあること、下(絨毯)が清潔であること、そして、横一列に並んでお祈りをすることなどが挙げられた。礼拝堂の絨毯には赤いラインが描かれており、そのラインに沿って並べば、メッカの方角を向いて横一列になるようにデザインされている。横一列に並ぶのは、皮膚の色、民族、貧富の差、社会的地位などを超えて、皆等しい存在であることを意味しているのだ。

その後生徒たちは、イマーム(導師)によるアザーン(礼拝への呼びかけ)を生で聞くことができた。「アラビア語の意味はわからなくても、礼拝堂に響きわたるアザーンに耳を傾け、言葉が持つ力を感じてほしい」と下山氏は語る。イスラム教徒は、アザーンが聞こえると仕事の手を止めて、礼拝堂へ向かうのだ。鼻と額を床につける平伏礼など、礼拝のやり方を下山氏が実演して、この日のガイドは終了した。

▶︎「東京ジャーミイ」広報担当 下山茂氏

見学を終えた立教女学院中学校2年生にインタビュー

イスラム教についてどんなイメージを持っていましたか?

Tさん:イスラム教はルールが厳しくて閉鎖的なイメージがありましたが、実際にモスクを訪れてみたらとても開放感があり綺麗でした。キリスト教では聖歌を歌うことや、チャント(詠唱)をすることがあります。イスラム教も歌のようなアザーンで礼拝の呼びかけをすることに、とても驚きました。

Sさん:私は以前、サウジアラビアやトルコに住んでいたことがあります。毎日5回流れていたアザーンや、礼拝堂の装飾などがとても懐かしいです。現地の学校でイスラム教について学ぶ機会もありましたが、詳しく習っていなかったこともあり、女性のスカーフが信仰の証であることなども改めて知ることができました。1日5回の礼拝が、心の栄養だというのもわかりやすかったです。礼拝のとき、横一列に並んでいることは見て知っていましたが、それが平等を意味するとは知りませんでした。逆に序列が厳しいイメージがあったので、そうではないと知ることができてよかったです。

▶︎写真:(左)Sさん/(右)Tさん

キリスト教以外の宗教について学んでみてどのように感じましたか?

Tさん:違う宗教に触れることは、とても新鮮でした。今日、このモスクに来てイスラム教についていろいろと知ることができたので、今後もキリスト教だけにとらわれず、他の宗教にも触れてみたいと思いました。

Sさん:せっかくイスラム教国に住んでいたのに、詳しく知らないこともあったので、イスラム教についてもっと知りたいと思いました。機会があればお祈りの仕方も習って、実際にお祈り体験をしてみたいです。

立教女学院中学校・高等学校 教務主任 髙嶺京子先生にインタビュー

「土曜集会」を実施するようになった経緯を教えてください。

「土曜集会」は、1982年度から年10回程度実施するようになりました。「基礎学力」(学び)、「集団生活」(交わり)と並び、本校の教育方針の基本となる3本柱の1つ「キリスト教教育」(奉仕)の一環として行っているものです。イースター礼拝やニューイヤーコンサートなどの定番プログラムのほかに、各界からゲストを招いての講演会、音楽鑑賞、映画鑑賞など、広く世界に目を向けて、豊かな人間性を育めるようなプログラムを年度ことに用意しています。世界的にはスタンダードになっている言葉や考え方でも、日本ではあまり一般的でない場合は通常の教科カリキュラムでは学ぶ機会がありません。「土曜集会」は、そのような言葉や考え方に触れる機会としても、重要な役割を果たしています。

「土曜集会」への参加を重ねていくことで、生徒たちにはどのような変化が見られますか?

「土曜集会」で様々な分野の話を聞いたり、様々な体験をすることで、進路を決める頃には「○○大学の○○学部に行きたい」ではなく、何をやりたいのか、どの方向に進みたいのかが明確になっていきます。例えば、2016年度には医師・中村哲氏をお招きしました。中村氏は、アフガニスタンで治療を行う中で、飢えと渇きは薬では治せない、人々が生き延びるためには、まず水資源を確保する必要があることを痛感し、医師でありながら用水路建設事業を行って支援活動を続けています。このプログラムをきっかけに、医療だけではなく、さらに広い意味での国際協力に関心を持つようになった生徒もいました。

「土曜集会ノート」にはどのような役割がありますか?

「土曜集会ノート」には、各プログラムの「内容」と「感想」を記録してあるので、高2や高3になって進路に悩んだときなどに、自分はどんなことに興味があり、どの方向に向かうべきかを考えるのに役立ちます。また、中高6年間、およそ10回×6年=計60回、体験を「書いて振り返る」ことを積み重ねていくので、大学入試改革で注目されているポートフォリオ評価などにもつながっていくと考えています。

イスラム教について書かれた本もたくさんあるが、生徒たちの関心を引き出す力は、モスクの美しさやアザーンの響き、そして下山氏の熱い思いが込められた言葉にはかなわないと感じた。中学生のうちにこのような機会を重ねていけば、固定観念によって可能性を狭めることなく、様々なことに関心が持てるようになるだろう。

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