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目白研心中学校
スペシャルレポート 4

仲間や卒業生の存在が内発力を高め、
希望の進路を叶える真の進学校への道!

公開日:2021.7.--

2009年に共学校として新たなスタートを切って以来、進学校化を進めてきた目白研心中学校。「コミュニケーション力」「問題発見・解決力」「自己肯定力」という3つの力の育成、体験重視型教育、学習支援センターなどの成果として、2021年度大学合格実績の大きな伸びが注目されている。

Index

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不測の事態でも前向きに取り組む“折れない心”

2021年度の大学合格実績は、GMARCHへの合格者が17名から68名に大幅アップするなど、前年度を大きく上回った。2012年に校長として就任して以来、学習支援センターの開設をはじめとする様々な試みに着手してきた松下秀房校長先生に、コロナ禍での大学受験について話を聞いた。

休校中も「学びを止めない」を最優先

新型コロナウイルスの影響を大きく受けた昨年度、一番に考えたのは「学びを止めない」ことだったと、松下校長先生は振り返る。

「いきなり休校になり、まず考えたのは高3の授業でした。受験を控えた高3は、4月~12月までで1年分の授業を終えなければならないからです。オンライン授業を行う前にアンケートをとったところ、生徒が使える端末がない家庭もあったので、すぐに用意してタブレットを貸与しました。しかし、理解度の確認などは、やはり対面の授業が必要です。休校が解除された6月からは、通常の対面授業に切り替えました。中学は、1クラス20人前後なので、密にならずに教室で行えます。しかし高校は、1クラス30人前後です。教室だと密になってしまいますが、幸いなことに系列の目白大学はオンライン授業を行っており、大学の教室は使われていなかったのです。そこで、大学に交渉して、200人~300人が入る広い教室を使って、クラスを分けることなく高校生の授業を行うことができました」

松下秀房校長先生

休校中の遅れを取り戻すために、夏休みを例年の半分にし、2学期も早めに開始した。残念ながら実施できなかった運動会や修学旅行といった行事の分も、通常授業として行うことで高3は12月までに1年分の授業を終えることができたという。

「本校の生徒たちは、全員に上位の大学に合格する力が十分にあるわけではありません。新型コロナの影響だけでなく、大学入試改革により入試制度が変わることもあり、生徒たちの戸惑いが予想できました。諦めてしまう子がでないように、精神面のケアにも気を配りました。例年より担任による面談を多くするなどして、生徒の進路計画に沿ったサポートを心掛けています。高3は3コース、6クラスに分かれているので、クラスに合わせてきめ細やかな関わり方ができました。一般選抜で挑む特進コースや英語難関クラスと、総合型選抜や学校推薦型を利用する他のクラス、それぞれに合った関わり方が必要です。生徒の進路に寄り添ったサポートができたことも、今回の結果につながったと思います」

長期間の受験に耐えられる“折れない心”

大学受験は期間が長いので、最後まで集中力やモチベーションを保てる“折れない心”が重要だと、松下校長先生は語る

「共通テストには私立も参加しているので、受験は1月中旬から始まりますが、入試を3月に実施している大学もあります。本校の生徒は中間層が多いため、3月に試験を受ける生徒も多いのです。最初に受けた大学が不合格だと、落ち込んだり、挫けそうになりますが、昨年度の高3は諦めませんでした。そこには、本校の体験重視型教育の積み重ねで育まれた“折れない心”があったからだと思います。“折れない心”は、体験によってつくられます。10代でいろいろな経験をして、成功すれば自己肯定感が育まれます。失敗することも多いですが、失敗ではなく、教訓として受け入れられるようになることが大切なのです。経験を重ねることで、失敗したから『ダメなんだ』『できないんだ』と思うのではなく、『次にどうすればいいか』を考えられるようになっていきます」

同校で実施している「朝テスト」も、大切な体験の1つである。

「英数国の3科目は、必ず身につけてほしい分野に関して週3回、朝に10分ぐらいの確認テストを実施しています。テストは終礼で返却され、不合格の場合は補習を行って同程度の問題で再テストを実施。確実に理解して、1日を終えるようにしています。社会に出てからも、わからないことをそのままにしておいては仕事がうまくいきません。そういったことも、中高時代に経験しておくことが大切です。本校の生徒たちにとって、その日の学びはその日のうちに完結させることが、当たり前になっています。朝できなかったことも、帰るまでにはできるようになるのです。その積み重ねが、失敗に押しつぶされず、教訓として受け入れて立ち直っていくことができる、心のバネになっていくのだと考えています」

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学習支援センターの活用とロールモデルからの刺激

学習支援センターは、基礎学力の定着や学習習慣の確立を目指して2013年に設置された。部活の後に夜8時まで勉強できる環境を整え、基礎から入試問題の対策まで行える施設だ。チューターが常駐しているので、わからない問題があるときは質問できる体制も整っている。

卒業生により理想の学習環境が実現

松下先生は2012年に校長として就任し、その翌年に学習支援センターを設置した。基礎力を身につけ、自学自習の出来る生徒を育てることを目指してきたが、近年は卒業生からも大きな成果が出てきているという。

「センターを利用して頑張った生徒が大学に入り、委託業者の採用試験に通ってチューターになって本校に帰ってくるという、よい循環ができてきました。予備校へ行かずにセンターだけで早稲田と慶応に合格して、慶応に進んだ卒業生から始まり、彼と同学年で明治に進んだ子など、現在は5~6人の卒業生がチューターとして教えています。在校生にとって身近な存在となるロールモデルを作ることが私の理想だったので、それが現実となり、たいへん嬉しいです。今の中高生は、自分と縁のない、昔の偉人の話を聞いてもピンときません。情報があふれているので、教員の言うことを100%信じてその通りにやる時代でもありません。チューターのように、あの大学へ行けばこんなふうになれるという、若いロールモデルの方がよい刺激になるのです」

学習支援センターには、仲間がいることにも大きな意味があると考え、個別ブースにはしていないと、松下校長先生は説明する。

「学習習慣がついていない子たちは、勉強ができると褒められた体験もないことが多いです。そのような子たちのやる気を引き出すためには、教員の力より仲間同士の力の方が内発力を刺激できます。学習支援センターでは個々に学習を進めていますが、『あの子も頑張っているんだ』『みんなも一生懸命だ』などと、仲間の様子が感じられる環境です。センター設置から8年目となり、少しずつそのような雰囲気がつくられ、結果につながってきたと実感しています。昨年は新型コロナウイルスの影響で、利用時間や人数の制限はありましたが、感染対策をしながら活用してくれました。チューターもオンラインでの指導など、様々な形で生徒たちのサポートをしてくれています」

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18歳で成人になる時代に必要となる力

2022年4月から、成年年齢が現行の20歳から18歳に引き下げられる。18歳で成人になる時代に、必要になる力について松下校長先生に聞いた。

二兎を追わなければ、二兎は得られない

昨年度は感染対策で様々な制限がある中でも、ハイレベルな文武両道を実現した生徒も出てきたという。

「中学から本校に入学し、ラクロス部で6年間頑張り、受験も諦めずにやり抜き、明治大学に合格した生徒がいました。また、中1から高3までチアリーディング部に所属し、総合型選抜を利用して上智大学に合格した生徒もいます。『二兎追う者は一兎をも得ず』ということわざがありますが、私は成長が著しい10代後半にはあえて『二兎を追え!』と言っています。勉強と部活や委員会という二兎を追った者だけが、二兎を得ることができるのです。そして実際に、見事に二兎を得た卒業生も出てきました。来年の4月からは、18歳で成人になります。社会に出たら、大人は二兎、三兎、四兎と追って、同時にやるのが当たり前です。高校生だからといって、二兎を追えないことはないでしょう。生徒たちには、『夢を終わらせるな 夢に終わらせるな 夢を追え』と言っています」

一斉休校を機に、ICTの活用が広がったが、見る力や聞く力だけでなく、読む力や書く力も、今まで以上に求められるようになると、松下校長先生は考えている。

「コロナ前は、単純でよく目に見えて想像しやすかったですが、コロナ後の世界は、人や国の情勢が複雑に絡み合い、先が見えなくなりました。ですから、読む力や書く力も、今まで以上に求められるようになると思います。特に書くことをしないと、10代は理解が進みません。書くことによって、理解力や記憶力は深くなるのです。ICTはツールとしては使っていきますが、見る、聞くだけでは知識が断片的になりがちです。興味や関心のある部分しか追わなくなる傾向があります。断片的な知識では、問いに対して答えることはできても、多くの人にわかってもらったり、人の心を動かすことはできません。読む・書く・聞く・話すという4技能的なことを、全科目で強化していくためには、ICTと教員の対面による力の両立が必要です」

不確実な時代に大人として必要な力

松下先生が同校に校長として就任して10年目となり、進学校として着実に変化してきたと感じているという。

「大学合格実績は、かなり目標に近づいています。設置した学習支援センターも成果がでてきており、自信を持っています。薬学や看護などの医療系に進む生徒も増え、理系も多くなりました。当初は短大への進学が多かったですが、今では9割以上が4年制の大学を目指しています。2021年度入試は数だけでなく上位の大学に合格した生徒も多く、初めて早稲田大学の国際教養学部にも合格者が出ました」

教育改革の柱として挙げている「コミュニケーション力」「自己肯定力」「問題発見・解決力」という3つの力についても、生徒たちの中に育まれていることを実感していると、松下校長先生は語る。

「高1で英検1級を取得する生徒がいたり、漢検や数検も受験する生徒が増えています。総合型選抜などに有利という面もありますが、検定が目標となり、勉強のモチベーションになっているのです。取得したことで認められれば、自己肯定感も高まります。問題の発見や解決も、低学年のうちから意識するようになってきたと感じます。生徒たちからも着実に、コミュニケーション力、自己肯定力、問題発見・解決力という3つの力が感じられるようになりました。コロナによって、しばらくは不確実な時代、不透明な時代が続くでしょう。そのような中で重要になってくるのは、やはり“折れない心”です。卒業してすぐに成人として扱われるようになる時代に向けて、たとえ失敗しても元に戻れる、バネのような力のある“折れない心”を育む教育を引き続き行っていきます」


取材を終えて

学習支援センターには、松下校長先生の言葉として「夢を終わらせるな 夢に終わらせるな 夢を追え」と書かれた紙が貼られている。この言葉を心に刻み、頑張った生徒たちが結果を出し、そんな卒業生を見て頑張ろうと思う生徒が増える。2021年度大学入試で難関大学の合格者が増えたことは、在学生たちにとってよい刺激となっただろう。来年度の結果にも注目したい。

【 Back number 】目白研心中学校のスペシャルレポート<第3回>

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