目白研心中学校
スペシャルレポート<第3回>
どのレベルで入学しても着実に伸ばす
細やかな指導と充実したプログラム
「英語スピーチ入試」や「次世代スキル入試」といった独自入試を行う目白研心中学校では、2021年度入試から新たに「算数特別入試」を導入。一般的な受験勉強をせずに入学した生徒も着実に学力を伸ばし、グローバル人材へと育成する目白研心流“All-Round Education”を紹介する。
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基礎の徹底と個々のレベルを見極めた細やかな指導
独自入試で入学した生徒や帰国生など、一般的な受験勉強をしてこなかった生徒たちは、得意分野と他の教科に学力のばらつきがあることが多い。しかし同校では、どのレベルで入学した生徒も着実に学力を伸ばし、ここ数年で大学合格実績を大きく伸ばしている。着実に学力を伸ばす指導について、今年度から教頭として就任し、中1の数学も担当している齋藤圭介先生と、英語科の教員として長く同校の英語教育に携わり、現在は教頭の吉田直子先生に話を聞いた。
2021年度から「算数特別入試」を導入
同校では2科・4科入試のほかに、独自入試として「英語スピーチ入試」「次世代スキル入試」「適性検査型入試」を行ってきたが、2021年度から新たに「算数特別入試」が加わる。計算力問題50題と思考力問題という2コマの試験では、難しいだけの問題は出題しないという。計算は好きだが文章題が苦手な子にぜひ受けてほしい、と齋藤先生は説明する。
齋藤圭介教頭先生
「思考力問題では、計算力だけでは測れないものを判定したいと考えています。何か書けば0点にはならない問題です。例えば、1、2、3、4という4つの数字を自由に使って、なるべく10に近い数を作るという問題。4321と書いたとしても0点にはなりませんが、12-3/4など、もっと10に近い答えを書けた子がいれば、そちらの方が点数は高くなりますね。ほかには、『10km』『30分』『遅れて』などのキーワードを与えて、作問する問題も考えています」
計算力問題のサンプルは、同校のホームページに公開されている。入学前に必要なのは文章題を解く力より、基礎的な計算力だと齋藤先生は語る。
「文章題の勉強は、入学前にやっていなくてもかまいません。基礎的な計算力さえあれば、本校に入学してから伸ばすことができるからです。文章題なんて、みんな嫌いですよね。文章題が好きだという受験生に会ったことがありません(笑)。例えば、食塩水の問題は、中学に入ってから方程式のところですぐにやります。食塩と食塩水とパーセンテージという3つのことを考えると難しくなってしまうのですが、食塩の量だけ見ればいいとわかると、みんな『なんだ、簡単だったんだ!』と言っていました。小学生のときに何度やっても解けなかった問題でも、本校に入学後には簡単に解けるようになるので心配はいりません」
文章題に取り組んでいくうえで重要になるのが、たし算、ひき算、かけ算、わり算という基礎的な計算力だという。
「受験勉強をしてきた子でも、ほとんどがどんなに早くても4年生からしか受験勉強をしていません。ですから、3年生までに習った基礎的な計算に時間がかかる生徒が多いのです。本校では、生徒のレベルに合わせて、小学校の算数を中1のうちに100%にしていきます。一方で、すでにレベルが高い生徒には、個別に課題を出して伸ばしていきます。少人数制なので一人ひとりにしっかりと目が行き届きますし、入学してから頑張る生徒が多いです。受験勉強を頑張りたい気持ちはあるのにうまくいかなくて、100%頑張りきれていないと感じているなら、ぜひ本校の入試にチャレンジしてほしいです」
高い英語力を持つ生徒には取り出し授業を実施
同校では、早くから英語に興味を持って英会話を学んでいる児童などが力を発揮できる入試として、「英語スピーチ入試」を2018年度から導入。入学時からすでに高い英語力を持つ生徒に対しては、取り出し授業を行っている。一般のクラスでも少人数制なので、個々のレベルに応じた指導がしやすいと、吉田先生は語る。
吉田直子教頭先生
「中1の場合は7時間ある授業のうち、4時間が日本人教員、3時間がネイティブ教員による授業(ACEプログラム)です。帰国生や英語スピーチ入試で入学した生徒など、英検準2級以上を持っている子は、日本人教員の時間に取り出し授業を行い、ネイティブ教員によるオールイングリッシュのCLIL(クリル)方式*で進めています。日本人教員のクラスでは、習熟度別に授業を実施。ネイティブ教員による本校独自のACEプログラムも中学生は1クラス10人程度という少人数制なので、どのクラスも個々のレベルや進度に応じて学習を進めていくことができます」
*理科や社会などの教科学習と英語の語学学習を統合したアプローチ。
個々のレベルに対応した細やかな指導を行っているが、どのレベルでも指導の理念は「継続は力なり」だという。その象徴ともいえる取り組みが、定期試験時に行われる「MVP(Measurement of Vocabulary Proficiency)」と呼ばれる英単語テストだ。
「MVPは学年やコースの枠を取り払って、中学・高校それぞれで行っています。中学生は『キクタン中学英単語』(3000語)、高校生は『キクタンBasic4000』の全範囲から60問出題します。朝テストで範囲を決めて繰り返し取り組み、MVPでは毎回1冊まるごとが試験範囲になるので、3年生のキクタンはボロボロです。個人としては1年生が3年生に勝つこともありますが、学年として見れば平均点はどんどん上がっていくので、やはり1年生は2年生に勝てませんし、2年生は3年生に勝てません。2018年度の例を挙げると、1年生の中間テストでは平均点が22点ですが、コツコツと努力してきた3年生の3学期末では平均点が50点。60点満点なので、3年かけてほぼ自分のものにできているといえます」
英検でも、地道な努力の成果が出ている。中3を対象に調査した3級以上取得者数は55%(2020年6月時点)であり、「中学校卒業段階で英検3級程度以上50%」という文部科学省の成果指標を中2でクリアしている。高校生では、高3の準2級以上取得者数(2020年6月時点)が57.3%。こちらも高2の段階で、「高等学校卒業段階で英検準2級程度~2級程度以上が50%」という文科省の成果指標をクリアしている。
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目白研心流“All-Round Education”
同校では、カナダやオーストラリアなど、20校以上の学校と姉妹校提携を結んでおり、国内外で様々な異文化交流プログラムを実施。実技教科や学校行事なども、グローバル人材の育成に重要な役割を果たしているという。幅広い教養を身に着けて、グローバル人材としての素養を育む、目白研心流の“All-Round Education”について紹介する。
グローバル人材としての素養を育む経験重視の教育
同校では、グローバル人材に必要な要素として、「多様なバックグラウンドを持つ人と円満な関係を築ける柔軟な心」「広い視野を持つための偏らない教養」「勉強一筋ではなく、10代に豊かな時間を過ごし、佳き友人を得ていること」「英語をツールとしたコミュニケーション力」を挙げている。これらを身に着けるために行っているのが、経験重視の“All-Round Education”だと、吉田先生は説明する。
「様々なバックグラウンドの人たちとコミュニケーションを取るためには、相手を受け入れたり話しかけようとする気持ちなど、心の寛容さが必要だと考えています。その基礎を高校時代までに作るためには、幅広くいろいろなことを知り、楽しむことが大切です。本校では経験重視の教育を行い、特進コースでも勉強一筋ではなくクラブ活動にも参加して、放課後の学習時間は自主性に任せています。教科書や参考書だけで勉強してきた子ではなく、いろいろな人と関わってきた経験がある子が、グローバル化が進む社会で有用とされる人材になると考えています」
視野を広げる様々なプログラム
実技教科の授業で大切にしていることは、「好き」という気持ちや「楽しむ」ことだと吉田先生は語る。
「例えば音楽は、理論重視型ではなく、音楽への気づきを育み、五感で楽しむコダーイ・アプローチで授業を展開しています。2019年には、オーストラリア・ブリスベンで開催された『Summer School Music Program』に、ピアノを習っている子やミュージカルの世界を目指している子など5名が参加しました。国際コダーイ協会会長のジェームズ・カスケリー先生が主催し、世界基準での質の高い音楽教育が展開されるプログラムです。世界中から総勢400人以上の参加者や教授陣が本校の姉妹校に集まり、英語による音楽の授業、ピアノやボーカルのレッスン、参加者による発表、コンサートなど、音楽と英語漬けの素晴らしい2週間を過ごしました」
音楽は万国共通の言語であり、芸術への理解や経験がコミュニケーションに果たす役割も大きいと、吉田先生は考えている。
「本校では一流に触れる機会として、毎年校外のホールを貸し切って『芸術鑑賞会』を開催しています。2017年には、東京芸術劇場で東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団による演奏。国際バレエアカデミアの創設者・小牧正英氏が本校の卒業生であるご縁から、2018年には新国立劇場(中劇場)で『くるみ割り人形』を鑑賞しています。2019年には英哲風雲の会による和太鼓公演を鑑賞するなど、日本の芸術文化に触れる機会も作っています」
一流に触れる芸術鑑賞会
保健体育の授業方針は、「どこでもスポーツ 誰でもスポーツ」。生涯スポーツを念頭に、誰でも簡単に楽しめるユニバーサルスポーツも取り入れている。キャンパス内にある大学との施設共有が可能なので、大小6つの体育館を有効に活用。どの体育館も冷暖房完備なので、季節を問わずよい環境で運動を楽しむことができる。
6つある体育館はすべて冷暖房完備
「簡単にできるスポーツとして、インディアカ*、ユニホッケー**、アルティメット***なども取り入れています。簡単な運動でも、一生続けられれば健康な人生につながります。スポーツが苦手でも、好きであってほしいですね。高3では、『学年体育』として、4種目の中から好きな種目を選んで、男女混合で『好き』を楽しむ授業を展開しています」
*羽根の付いた特殊なボールを手で打ち合う、バレーボールタイプのスポーツ。
**ユニバーサルホッケーの略で、プラスティック製のスティックとボールを使用する安全性の高いミニホッケーの一種。
***フリスビーフットボールとも呼ばれる7人制のディスクスポーツ。
中3・高2の海外修学旅行で異文化交流
家庭科の実習が行われる調理室はオール電化。授業は“男子、厨房に入るべし!”という方針で、調理部に所属している男子も多いという。
「調理実習のメニューは、教科書にでてくるありきたりなものだけでなく、中1ではパスタやカップケーキ、1月には七草粥、だし巻き卵、味噌汁などを作ります。本校では中3でカナダへ修学旅行に行きますが、ホームステイ先で必ず1回、日本食を作ってホストファミリーに食べてもらうことになっています。異文化理解につながる取り組みとして行っており、その事前指導としても家庭科の授業が重要です。現地で手に入りそうな食材やカナダ人に受け入れてもらえそうな味を調べて、レシピを英語で用意。1年次から長期休暇中に調理実習課題を出したり、3年次に和菓子を作ったりもしています。それだけ準備をして頑張って作っても、ホストファミリーに喜んでもらえるとは限りません。一口食べた後、二口目には進んでもらえなかった子もいました。そのような失敗も、食材や味つけの違いなどを肌で感じる貴重な体験となるのです」
高校の修学旅行*は、2019年度より行先が九州から台湾になった。英語圏ではない地域へ行くことも、グローバル人材へと成長していくモチベーションを高めることにつながっているという。
*「Super English Course」は70日間の留学。
「現地の高校生と交流会を行いましたが、台湾の生徒たちも英語はそれほどうまくありません。しかし、話そうとする積極性が本校の生徒たちとは全然違います。来てくれたお客様をもてなそうと一生懸命に話してくれたので、その姿勢を見て自分たちに足りないものを感じとったようです。台湾の生徒たちは、グローバル化を強く意識して動いています。同じアジアの高校生たちから刺激を受けて、グローバルに活動するツールとして英語が必要であることを実感し、英語がもっと上手になりたいという気持ちになるのです」
台湾修学旅行
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高校2年生(特進理系クラス)にインタビュー
中学から同校に入学し、現在高校2年生(特進理系クラス)のKくんに、中学時代について話を聞いた。
Kくん 高2(特進理系クラス)
―― この学校を志望した理由は?
<Kくん> 英語に力を入れていることに魅力を感じました。説明会に参加して校舎を見学したら、教室やトイレなどがとてもきれいで、学習支援センターがあるのもいいなと思ったので受験しました。
―― 中学時代の学校生活はどうでしたか?
<Kくん> 部活はバドミントン部に所属して、楽しく練習していました。大学の体育館も使えて冷房もついているので、夏も快適です。家庭科の調理実習では、グループワークでパスタを作ったことが印象に残っています。まあまあ美味しくできました(笑)。「芸術鑑賞会」では、毎年広いホールを貸し切って鑑賞できるのがすごいなと思います。中3に上がるときに、「特進」「総合」「SEC」の3つからコースを選びます。7限目に模試の対策をしてくれるのがいいなと思って、「特進」を選びました。
―― 修学旅行(カナダ)はどうでしたか?
<Kくん> 思ったより英語が通じなかったことが印象に残っています。相手の言っていることはなんとなくわかるのですが、自分が言いたいことを伝えるのが難しかったです。それでも、頑張ってコミュニケーションを取ろうとしたことを覚えています。ホストファミリーにお好み焼きを作ったときは、「美味しいよ!」と言って喜んでもらえました。家庭科や英語の事前学習で、先生の意見も参考にしてお好み焼きに決めましたが、喜んでもらえたので嬉しかったです。
―― 中学の授業はどうでしたか?
<Kくん> 数学は、中学生のときに基礎を徹底的にやったので、しっかり身につきました。高校生になった今も、中学で学んだ部分でわからないことがでてきて困るようなことはありません。国語より数学の方がいいなと思うようになり、理系に進みました。ドラマに影響を受けて、看護師や薬剤師の仕事がしたいと思うようになったので、医療系の学部に進みたいと思っています。
―― この学校のいいなと思うところを教えてください。
<Kくん> 毎日学校に来るのが楽しいです。みんな元気なので、自分も頑張ろうという気持ちになります。
取材を終えて
「小3までに習った基礎的な計算に時間がかかる生徒が多い」という、齋藤先生の言葉が印象的だった。計算は好きなのに、文章題が苦手だから受験勉強がうまく進まないという児童も多いだろう。しかし、文章題が苦手でも、計算が得意な小学生は自信を持ってほしい。計算が好きで、基礎的な計算がしっかりできていることは、中学生になってからの伸長が期待できる大きなアドバンテージなのである。「とにかく計算が好き!」という小学生には、ぜひ「算数特別入試」にチャレンジしていただきたい。
所在地・交通アクセス
〒161-8522
東京都新宿区中落合4-31-1
広報部:TEL 03-5996-3133
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