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2015/11/27(金)

急速に広がる英語入試、その背景は?(第1回 1/2)

英語を入試の選択科目に加える私立中学校が急速に増えています。
2016年度は、首都圏(東京・神奈川・千葉・埼玉)の約50校が、日本国内で学んだ児童を対象とする入試に、英語を加えます。たとえば、国語・算数にプラスして、英語・社会・理科から1教科選択し、3教科入試とするケースや、従来の4教科入試と、国語・算数・英語の3教科入試の両方を実施するケースなど、さまざまです。

これまでは帰国生入試で英語を課すケースがありましたが、非帰国生に向けた入試で、英語を加えるのはこれまでにない新しい傾向です。なぜ、このような動きが出ているのでしょう。

なぜ、英語入試が急速に増えてきているのか?

現在、小学校5・6年生は、「外国語活動」として英語が必修となっていますが、国ではさらに、「グローバル化に対応した英語教育」の改革を打ち出しています。それによると、東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年を目途に、小学校の中学年(3・4年生)から英語を週1~2時間、高学年(5・6年生)では週3時間程度に増やすことを予定しています。中学校では、英語の授業は「英語で行うこと」を基本とし、高校では加えて英語による発表や討論なども行うことをめざしています。 一方、2020年より新しい大学入試が開始します。現在の大学入試センター試験に代わって、大学入学希望者学力評価テスト(仮称)が行われることになり、英語はライティングやスピーキングを含む4技能が重視されます。
現在各大学でも教育改革を進めており、英語のみで講義を行う大学・学部が徐々に増えている状況です。 以上のように、小学校から高校、大学まで英語教育が強化され、特に小学校~高校では、英語での「コミュニケーション能力」の育成に力点が置かれるようになります。英語教育の開始年齢も早められ、さらにこの先、小学校低学年からの英語教育も検討されることになるのではないでしょうか。

こうしたなか、私立中学校ではすでに多くの学校が英語教育・グローバル教育に力を入れ、成果を上げています。英語入試は、そうした教育の実績をもとに行われるものです。また、以上のような国を挙げて強化される英語教育の先をゆく動きともいえます。

では、実際にどのような英語入試が行われるのでしょう。今回、広尾学園中学校、東京都市大学付属中学校、山脇学園中学校の3校を取材し、それぞれの学校で行われている英語・グローバル教育の特色も含めて、英語入試について聞きました。

英語入試の中身は? case1 〜広尾学園中学校〜

インターナショナルコースを設置し、高い英語力・国際力を育成する広尾学園中学校では、同コースのAG(アドバンスト・グループ)の受験者を対象に、英語(英語による出題)・算数(英語による出題)・国語(日本語による出題)・面接(英語と日本語)の入試を実施しています。

AG入試について、池田富一副学園長は、

AG入試について
英検2級以上、または同等以上の英語力を有する男女を出願資格としています。これに該当すれば、日本の小学校で学んできた児童も受験できるし、帰国生も受験できます。英語の出題では、長文やポエムなどを取り上げ、すべて記述式です。エッセイも課します。英語の試験は思考力・論理性・表現力などを問う難易度の高いものになりますが、算数は公立小学校6年生レベル、国語は公立小学校中学年レベルです。本校ではAG入試のほかに、帰国生のみを対象とする国際生入試も行っており、入学後はインターナショナルコースのAGとしていっしょに学びます」――
インターナショナルコースでは、国際的な環境のなかで生徒がともに学び、すでに高いレベルに達している英語力を、さらに向上させ、卒業後の進路選択の幅を広げていくといいます。では、実際の授業はどのように行われるのでしょう。
「AGでは、社会の一部と、国語は日本語で行い、そのほかの教科は基本的に英語で授業を行います。これがかなうのは外国人教員が充実しているからこそです。本校では優秀な専任の外国人教員を18名そろえ、各教科の専門教育を行っています」
近年、広尾学園のインターナショナルコースは急速に注目度が高まっていて、受験生が毎年倍増する状況。これを受けて学園では定員を増やし、現中学1年生は2クラス・80名となっています。*
*インターナショナルコースはAG(アドバンスト・グループ)と、SG(スタンダード・グループ)があり、その合計人数が80名です。

AG入試をめざす受験生に向けたアドバイスとして、副学園長先生は次のように話しました。

AG入試をめざす受験生に向けたアドバイス
まず英語を一生懸命勉強しましょう。洋書をたくさん読み、英語での思考力や表現力を鍛えてください。過去問題も活用してしっかりと対策しておきましょう。面接では掘り下げて質問します。自分の考えを、理由も含めて答えられるようにしてください。コミュニケーション力は必要です。入学後は英語コンテストやインターシップ活動、ボランティア活動など、自分の得意分野や興味関心に合わせてがんばってほしい。本校は日本の法律に定められた学校であり、インターナショナルコースを卒業しても、日本の学校の卒業資格が得られます。また、授業を受けていればSATで高得点を取ることができますので、高校卒業後の進路は、国内・海外大学どちらも可能です。海外大進学もしっかりとサポートします」