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2016/7/1(金)

帰国生入試のお悩み解決!入試内容から学校選びまで徹底取材!

受験のチャンスが広がる帰国生入試

経済のグローバル化に伴い、海外で働く日本人が多くなり、帰国生の数も年々増加しています。そうしたなか、帰国生だけを対象に入試を実施する中学校が増えています。試験の内容は様々で、なかには英語だけで受験ができる学校もあります。国内の一般生とは別枠で、進学を受け入れてくれる学校があるというのは、帰国生にとって貴重なチャンスです。実際、どのような帰国枠入試が行われているのか、海外・帰国子女教育専門機関「JOBA」のスクール総責任者である藤村幹雄さん、本部校運営責任者の井島歩さんに話を聞きました。

帰国枠入試を実施する学校が増加

首都圏の国立・私立中学校 帰国枠入試の概数(JOBA進学資料集ビブロス調べ)

※受験者、合格者数とも延べ人数

帰国枠の入試を実施している首都圏の中学校は約200校。しかし、1校当たりの受験者数は0~200名と、かなりばらつきがあります。また、受験者の数は年々増加していますが、帰国生を受け入れる学校の数も増加しているので、実質倍率は横ばいになっています。

近年は、英語やグローバル教育に力を入れる学校が多くなり、海外で様々な経験を積んできた帰国生を、学校が積極的に受け入れるようになりました。それに伴い、帰国枠入試の条件を緩和したり、試験科目を多様化したりと、帰国生にとって中学受験をする機会が広がっています。

たとえば以前は、帰国枠の受験資格は、帰国後2年以内、海外滞在期間は2年以上が多かったのですが、現在は帰国後3年以内、海外滞在期間も1年以上という学校が大半です。また、英語のみで受験できる学校もあり、塾に通わずにチャレンジする児童もいます。

また、帰国枠入試は、試験日が早いのが特徴です。東京都や神奈川県の一般入試の解禁日は2月1日ですが、帰国枠に関しては、10月半ばから1月に行う学校が多数です。よって帰国枠で受験をして、後から別の学校の一般入試を受けるという児童もいます。帰国生は、それだけ受験のチャンスが多いと言えるでしょう。

学校ごとに異なる帰国枠の入試科目

帰国枠入試の選抜方法は、各中学校によって異なりますが、3つに大別することができます。

(1).帰国生に対して定員枠を設け、国内一般入試と別日程・別内容で入試をする学校

(1)入試科目は、①国語(作文を含む)と算数、②国語と算数と英語(Essayを含む)、③国語と英語(+作文)または算数と英語(+作文)、④英語(Essayを含む)(+作文)、⑤作文(外国語・日本語)と面接 などのパターンがあります。

①は、基本問題から一般入試に近い問題まで、学校によって出題のレベルがかなり異なります。②も同様で、出題のレベルが各中学校で異なり、英語も長文読解・文法などが中心の筆記試験、Essayや英会話など、出題形式が様々です。また、英語よりも国語・算数、国語・算数よりも英語というように、学校ごとに教科の比重が変わることがあります。④は現地校、インターナショナルスクールへ通っている児童が主な対象となります。

(2).国内一般入試と同一内容で入試をするが、帰国生を別枠・別基準で選考する学校
(3).国内一般入試とほぼ同じ基準で選考する学校

(2)(3)帰国生を別枠で選考する学校であっても、一般国内児童と同レベルの学力を要求される場合があります。よって主に日本人学校や、塾などの補完教育が受けられる地域で生活してきた児童が出願をしています。十分な受験対策が必要なので、試験日の1~2年前に帰国して準備を始めるケースも多く見られます。

学校に足を運んで志望校選びを!

志望校を決めるには、まず学校の情報を収集することが先決です。インターネットやパンフレットでも情報は得られますが、親子で学校説明会や行事に参加して、実際の様子を見聞きしたり、雰囲気を肌で感じ取ることが、もっとも大切です。帰国生対象の説明会がない場合も、ほとんどの学校が個別相談を受け付けています。情報を集めたら、学校と家庭の教育方針をすり合わせ、子どもの性格に合う学校を絞り込んでいきます。

 6年間、子どもが通う学校なので、校風や教育方針は熟慮する必要があります。また、帰国生に対するキャッチアップが充実しているかどうかも、調べておくとよいでしょう。国語や理科、社会などの教科学習が遅れている生徒を対象に、補習を行っている学校もあります。メンタル面のフォローも確認しておくことをおすすめします。

英語力を向上するために、英語の取り出し授業を行っているかどうかも、保護者にとって学校選びの重要なポイントです。習熟度別の英語の授業をはじめ、放課後等にハイレベルな特別授業を実施している学校、一般クラスとは別に、英語やグローバル教育を強化した国際学級を設置している学校もあります。

そのほか、大学進学実績にも関心が集まっています。多くの保護者は、子どもの英語力は高めたいが、英語だけに固執せず、6年間を通して進路を決めてほしいと考えています。なかには英語が得意であっても、理系分野に進む子どももいるでしょう。となると、やはり卒業後の進路は気になる点です。学校によっては、帰国生の進学実績を、説明会や個別相談などで開示しているところがあります。また、大学の附属校を検討する時は、系列の大学に志望する学部があるかどうかも確認しましょう。

一般入試にも英語を導入する学校が増加

帰国枠入試を設定している学校は、一部の学校を除き、帰国生の受け入れを優遇しています。その背景には、帰国生のもつ英語力や、国際感覚、積極性、受験システムに縛られていない自由さなどを評価しているからです。とはいえ、帰国枠入試も、ある程度の受験の準備は必要です。英語の試験に関しても、読解、文法、語彙、Essay、会話など、出題形式が様々で、レベルも英検準2級から1級と、学校ごとに異なります。過去問や出題傾向を教えてくれる学校もあるので、問い合わせてみるとよいでしょう。 入試形態の動向としては、英語1科目の入試は減少し、国語・数学・英語の3科目の中から得意な2科目を選ぶ方式が増えています。理由としては、英語圏以外の帰国生を考慮していること、学校が英語以外の学力を求めていることなどがあげられます。

そして最近は、帰国枠だけでなく、一般入試の科目にも英語を取り入れた、いわゆる「グローバル入試」を実施する学校が増えています。それにより、海外滞在の期間の問題などで、帰国枠の受験資格を満たさない児童や、国内インターナショナルスクール生も、受験が可能となりました。 帰国枠入試の実施校、また帰国生にもチャンスがあるグローバル入試の実施校は、今後も増える傾向にあります。帰国生が国立及び私立の中高一貫校へ進学する環境は、確実に整ってきています。裏を返せば、それだけ帰国生に期待する学校が増えていると言えるでしょう。学校の情報を収集し、受験の対策を立てて、チャレンジしてみる価値は大いにあります。

■取材協力:海外・帰国子女教育専門機関JOBA・ガーデンシップセンター