目白研心中学校
スペシャルレポート 5
中・高合同の試合で中学生も活躍!
ラクロス部で育む「人間力」
公開日:2021.9.--
2028年のロサンゼルス五輪での復活が期待されているラクロスは、日本でも注目度が高まっている。目白研心中学校・高等学校のラクロス部は、チーム名「White Eyes」(中・高合同)で活動。1994年に創部以来掲げてきた「全国大会出場」という目標を2021年3月に達成し、秋の大会に向けて練習に励む「White Eyes」を取材した。
Index
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ラクロスは中・高生でも始めやすい競技
現在、中学1年生から高校2年生まで36人で活動しているラクロス部。ラクロスは大学から始めるスポーツというイメージが強く、中高生には知名度も低い。しかし、実は中学校や高校からでも始めやすいというラクロスのルールや練習について、ラクロス部顧問の竹内祐介先生(保健体育科主任/生徒指導部副主任)に話を聞いた。
ラインを引くことから練習がスタート
ラクロスは、先端に網の付いた「クロス」という道具でボールを運び、敵陣のゴールへシュートを放って得点を得るフィールド競技。試合は1チーム10人で行い、1人がゴーリー(ゴールキーパー)として守備に入り、 残り9人でアタック、ミディ、ディフェンスの3つのポジションを分担する。取材した日は、学校の近くにあるスポーツセンターで練習が行われた。練習は、まずグラウンドにラインを引くことから始めるのだと、竹内先生は説明する。
「サッカーなどと違い、まずグラウンドに自分たちでラインを引かなければなりません。例えば、ゴールを囲むサークル内にオフェンスの選手は入れないなどのルールがあるので、練習でもラインが必要なのです。ペアでパスとキャッチの練習をするときは、できるだけ経験者(黒のポロシャツ)と中1・高1(白のポロシャツ)がペアになるように組んでいます。クロスをくるくると回転させているのは、キャッチしたボールを遠心力で安定させるためのクレードルと呼ばれる動作。ダイレクトにシュートすることもありますが、キャッチしたボールは一度クロスにとどめてからパスするのが基本です。相手の位置によって左右どちら側でプレーするか決まるので、左右両方でパスやキャッチができるように練習します」
ラクロスは、コート内でボールを持って自由に動き回る。ボールがとても硬いため、試合ではアイガードやマウスピース、腕を保護するグローブを着用するのもラクロスの特徴である。時には激しくぶつかり合うこともあり、小柄な選手が多い「White Eyes」は、当たり負けしないための練習も積み重ねているという。
「生徒たちにどんな相手と練習試合をしたいか聞くと、体格差のある大学生とやってみたいという答えが返ってきます。それで、卒業生やコーチとのつながりで大学生のチームと試合をさせてもらい、だんだんと当たり負けしないようになってきました。ラクロスは、クロスからボールを落としても、コート内であれば拾うことができます。相手選手が落としたボールを拾って奪うこともできるのですが、体格差はリーチの差でもあるので先に拾われてしまうことも多いです。体格差があっても先に相手の前に出てボールを取れるように、ポジショニングも意識させています」
他のスポーツでの経験を活かした相乗効果
今年度、ラクロス部の部員は36人。高3は引退しているので、中1から高2が合同で活動している。ラクロスは、中・高の部活動として活動しているチームはまだそれほど多くなく、日本では大学から始めるイメージが根強い。だから、中・高で始めると、他のスポーツよりも活躍できるチャンスが多いのだと竹内先生は語る。
「2028年のロサンゼルス五輪で追加種目になるかもしれないという期待もあり、以前より注目度も高まっています。しかし、専門性が高い種目なので、急に部活動として創部できる競技ではありません。まだまだラクロス部がある学校は少ないですが、オリンピックに向けて中・高生が始めるにも、今はよいタイミングだと思います。小・中で他のスポーツを経験してきた生徒が集まれば、相乗効果も生まれます。例えば、バスケをやっていた子は、狭いエリアでの攻防に強いでしょう。陸上をやっていた子はスピード、サッカーをやっていた子は空間を把握する力など、他のスポーツで培ってきた力を活かすことができます。春季関東特別大会では、高3が主体のチームを相手に、本校は高3が引退後の高2主体のチームで戦いました。本校が得点できた1点は、中3の生徒が決めたゴールです。中学生だけの関東選抜チームもあり、本校からも毎年選ばれています。競技人口が少ない分、中学から始めても十分活躍のチャンスがあるのです」
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練習後の反省会で振り返りを共有
同校のラクロス部は、練習後に毎回反省会を行っていることが大きな特徴である。社会に出てからも活かせる力を育む、ラクロス部の活動について紹介する。
ラクロス部は1つの社会
同校のラクロス部は、大切にしている3つの柱として「礼儀正しく」「時間に厳しく」「チームワーク」を掲げている。試合に勝つことだけでなく、社会に出たときにラクロスを経験して得たことを活かせるような活動にしたいと竹内先生は語る。
「クラスでの人間関係以外にラクロス部を1つの社会として、時間を守らなければならないこと、先輩と後輩の間での言葉遣い、顧問とのやりとりなどを経験することが、1人の人間として自己の形成につながると考えています。例えば、大学入試の面接で『部活動を通して得たものは何ですか?』と聞かれたときに『目標に向かって諦めない力がつきました』などと答えるのは、どこの部でも当たり前の話です。それだけでなく、部活動を1つの社会として捉え、チームワーク、コミュニケーションの取り方などをしっかり学べるように指導しています」
ラクロス部では、毎回、練習後に反省会を行っているという。
「反省会は以前から行っていましたが、今のような形にしたのはここ数年です。2チームに分かれて練習を行っているので、チームごとに反省会を行います。練習している最中は、自分が思ったことを他のメンバーと共有するタイミングがなかなか取れません。自分が気づいたことに周りも気づいているかわからないまま、練習が終わることもあるでしょう。反省会をすることで、1人の振り返りが、36人の振り返りにつながります。お互いがメモをとって次の練習に活かせれば、チームとしてもプラスになるのです」
ラクロスで育まれる「人をフォローできる力」
同校では、グローバル社会で活躍する人材を育てるために「コミュニケーション力」「問題発見・解決力」「自己肯定力」という3つの力の育成を目標としている。ラクロス部での活動を通して、3つの力が育まれていることが感じられると竹内先生は語る。
「プレー中は先輩も後輩も関係なく、コミュニケーションを取らなければなりません。経験が豊富な先輩の方が気づきも多いでしょうし、1つ1つのプレーで先輩から声をかけていくことが、課題の克服につながります。練習や試合でのプレーや反省会から、問題を発見して解決策を考える機会も多いです。iPadで動画を撮影して考えたり、自分から周りに自分のプレーがどう見えたか聞いて謙虚に受け止めたりするなど、積極性も身についてきました。自主性を培うために、基本の練習メニューは生徒たちが組んでいます。最低限これをやるようにとアドバイスすることはありますが、課題を見出していつものメニューに必要な練習を加えるなど、キャプテンを中心によくやっていると思います」
竹内祐介先生
「自己肯定力」にもつながる勉強との両立については、週3回行っている朝テストをしっかりと積み重ねることが大切だと、竹内先生は説明する。
「朝テストは終礼で返却され、不合格の場合は補習を実施するので、補習の対象になったら必ず顧問に報告するようにと言っています。まずは、基礎になる部分を培ってほしいです。生徒たちは顧問に報告したくないから、しっかりやるでしょう(笑)。外部の施設での練習も少なくないので、電車の中でも勉強できるように単語帳を持ち歩くなど、時間の使い方を工夫するようにも言っています」
人間力を育む上で、ラクロスならではの魅力はどんなところにあるのだろうか。
「練習中にも『ナイスフォロー』という声が聞こえたと思います。ボールをパスしたりキャッチしたりする中で、ミスはつきものです。ミスをしてボールが転がったときには、誰かが必ずフォローします。その場に応じてどのような対応をすべきか考え、判断する力が必要です。練習や試合を通してフォロー力やその状況に適した対応力を身につけられることが、ラクロスの魅力だと思います」
ラクロス部「White Eyes」
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ラクロス部キャプテンにインタビュー
6月からチームをまとめているキャプテン(高2)に、ラクロス部の活動や勉強との両立などについて話を聞いた。
ラクロス部キャプテン Sさん(高2 内進生)
―― この学校を志望した理由は?
<Sさん> 新宿なのに緑が多く、オープンキャンパスで先輩が明るくていいなと思いました。制服がかわいいのも理由の1つです。
Sさん
―― なぜラクロス部に入部したいと思ったのですか?
<Sさん> 運動が好きなので最初は陸上部に入ろうと思っていたのですが、個人競技があまり得意ではないので迷いました。ラクロスは初めて聞いた競技だったので目新しさに惹かれて、個人競技より団体競技の方がいいかなと思ってチャレンジしました。
―― 今までで、一番印象に残っている試合について教えてください。
<Sさん> 中2のとき、高3の引退試合でもある「Teen's Cup 関東女子中高生ラクロスリーグ戦」で公式戦に初めて出させてもらいました。先輩たちと戦って、勝てたことが嬉しくて印象に残っています。勝てたことは嬉しかったのですが、苦手な部分が出てしまい、ミスも多くて悔しい思いもありました。私はディフェンスなのですが、守るだけでなく、自分たちのゴールからボールを遠ざけて相手ゴールに近付ける「クリア」というプレーもします。それが苦手だったのですが、今はできるようになりました。
―― どうやって苦手を克服しましたか?
<Sさん> 私は人の動きを見て吸収できるタイプではないので、練習の後に先輩に「どうでしたか?」と自分の動きについてアドバイスを求めて、それをもとに少しずつ変えてみたらできるようになりました。
―― 練習後の反省会では、どのような話をしますか?
<Sさん> 練習の後には毎回自分のノートに思ったことを書いて、それを反省会で共有します。それぞれが感じたことを共有して、それを課題として次の練習で取り組み、試合までに改善してできるようになったことも多いです。ノートに書いたことは、自分だけでなく、みんなの役に立ちます。練習の後に毎回反省会を行っている部は、目白研心の他の部活でも、他校のラクロス部でもあまりないと思います。
―― キャプテンになって何か変化はありますか?
<Sさん> 6月にキャプテンになり、先輩が引退して1番上の学年になったので、みんなをまとめるのは大変だと感じています。先輩たちがやってきたことを次につなげていくことの大変さも実感し、先輩たちの偉大さが改めてわかりました。高2はみんな意識が変わって、責任感がでてきたと思います。
―― 先輩からどんなことを学びましたか?
<Sさん> ラクロスのプレーだけでなく、部活中の動きや上下関係など、いろいろなことを教えてもらいました。プレーでは同じポジションの先輩から、苦手なプレーを克服するためのアドバイスなどをもらいました。
―― キャプテンとして、今後の目標は?
<Sさん> 昨年度は全国大会に行けたので、秋の「Autumn Cup 中高生女子ラクロス秋季関東大会」でも全国大会出場が目標です。その目標に向かって、チームがまとまって、プレーもうまくなって、みんなが試合に出られるようなチームにしたいと思っています。
―― 顧問の先生やコーチについて教えてください。
<Sさん> 先生は気さくに声をかけてくれるので、話しやすいです。できていないところを指摘してくれたり、厳しさと優しさのメリハリがある指導をしてくれます。青山学院大学からコーチが来てくださっていますが、技術的なことを中心に教えてもらいます。質問しやすくて、ディフェンスのことなどを聞けて心強いです。
―― 勉強と部活の両立はどのようにしていますか?
<Sさん> テスト前などは、学習支援センターにこもって勉強しています。20時まで利用できるので、部活が終わった後に利用する人も多いです。勉強はあまり得意ではないので両立は大変ですが、頑張りたいと思っています。
―― 先輩たちはどのように両立していましたか?
<Sさん> 高3まで6年間ラクロスを続けて明治大学に合格した先輩は、ラクロスもうまいのに、陰ですごく勉強しているのが伝わってきました。学習支援センターを利用していたり、常に勉強道具を持っていたりして、毎年、頑張っている先輩が多いです。
―― 将来の夢や目標はありますか?
<Sさん> まだあまり具体的に考えていませんが、部活で学んだことを活かせたらいいなと思っています。上下関係や時間の大切さ、当たり前のマナーなども学べたので、それを活かして仕事をしたいです。
取材を終えて
この日も反省会が行われ「もっと声を出していきましょう」「3対3でパスかゴールか迷ってしまったので、もっと早く判断できるようにしたいです」など、それぞれの意見が共有された。グラウンドの片付けをしているときに、他の作業をしている生徒の荷物がグラウンドに残っていたら「誰か荷物を持っていってあげて」と自然にフォローし合う様子も印象的だった。
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