スクール特集(桐蔭学園中等教育学校の特色のある教育 #11)

学校説明会に1年生、3年生、6年生が登壇! 発表から伝わる入学後の成長
桐蔭学園中等教育学校では、5月から「夏の説明会シリーズ」と題し、生徒や卒業生が登壇する学校説明会を開催。3年生が司会を務め、1年生、3年生、6年生が登壇した説明会(7月18日開催)を取材した。
2027年度から「里山プロジェクト」本格始動
学校説明会はキャンパス内にあるシンフォニーホールで行われ、受付では器楽部の演奏で参加者が迎えられた。プログラムは、玉田裕之校長先生のお話からスタート。その後、教員と生徒によるリレー形式で授業や行事について語られ、最後に入試の解説で締めくくられた。
「子どもたちの生きていく時代は、私たち大人が誰も経験したことのない新しい時代です。本校は『自ら考え判断し行動できる子どもたち』を教育ビジョンとし、そのために必要な力と大学受験に必要な力を共通したものと考えて教育プログラムを作っていく、新しい進学校を目指しています」(玉田校長先生)
同校では、「アクティブ・ラーニング型授業」「探究(未来への扉)」「キャリア教育」という3つを柱とした教育活動を行っている。すべての教科で「アクティブ・ラーニング型授業」を取り入れていて、対話や発表に不安を感じる児童もいるかもしれない。しかし、最初に「聞き方」を学ぶ機会があるので安心してほしいと玉田校長先生は語った。聞き手がよいと話す側も安心して話すことができるので、1年次から行う1分間スピーチなども自信を持ってできるようになり、達成感へとつながっていく。
「新しい話題として、2点お知らせします。今年度から、全学年で生成AI(Gemini)を全員が使えるようにしました。AIの使用を抑制するのではなく、活用の時代に入ったと考えています。先に答えを知ろうとして考える機会が減るという懸念もあると思いますが、そうなるのは学び方が身についていないからなので、学び方を身につけることが大切なのです。自分のために勉強するという自覚がないと、力が伸びない時代になってきました。不安もあるかもしれませんが、AIは学びの伴走者というイメージで活用していきます。そしてAIの時代だからこそ、より必要になる身体性を伴った学びとして、キャンパス内にある里山を活用したプロジェクトも展開していきます。来年横浜で開催されるGREEN×EXPO 2027で、生徒たちが里山について発表する場も確保しました。今年度はアフタースクールで任意の参加ですが、来年度には1年生から探究授業として里山プロジェクトに取り組んでいきます」(玉田校長先生)

▶︎開会前、来場者を出迎える演奏が器楽部によって行われた

▶︎玉田裕之校長先生
教員と生徒がリレー形式で語った授業や行事の特色
授業や行事については、福田先生と賀永先生が説明した後、生徒たちが登壇して体験談を発表。1年生は、クラスの雰囲気、好きな授業、行事などについて語った。
「最初はみんな緊張していましたが、学校生活に慣れてきたら小学校からの内進生も中入生も関係なく、ずっと一緒にいたかのようにみんな仲がいいです」(Oさん 1年生)
「アクティブ・ラーニング型授業」は、「個」の学習から「協働」の学習、 そして「個」としてふり返ることで、生徒一人ひとりが自らの学びを定着・発展させていく流れで行われる。
「僕の好きな授業は国語です。自然と討論になることもあり、意見を言い合って考えを深めていきます。4人班での意見交換は友達と考えを深めることができ、まだ話したことのない人とも仲良くなることができて嬉しかったです」(Kさん 1年生)
英語教育の説明では、2年次にブリティッシュヒルズ(福島県)での国内留学(2泊3日 希望制)に約半数の生徒が参加すること、3年次には韓国での語学研修(全員参加)があることなどが語られた。韓国では英語村に1週間滞在し、英語漬けの生活を行いながら韓国の学生との交流なども楽しむ。
「ブリティッシュヒルズは、外国人スタッフの方々と共に英語を学び、英国文化を体験できる場所です。SDGsについてすべて英語で話す授業や、英語での謎解きなどを行い、楽しく学びました。3月には韓国で語学研修があるので、その時には完璧にコミュニケーションが取れるように今から準備したいです」(Iさん 3年生)
生徒たちが楽しみにしている行事の1つである鸞鳳祭(文化祭)は、9月19日(土)と20(日)に開催される。鸞鳳祭には1年生から5年生までが参加し、1年生から3年生がF棟で、4年生と5年生がE棟でそれぞれの企画を発表。鸞鳳祭執行部のOさん(3年生)が、鸞鳳祭の装飾について説明した。
「鸞鳳祭のテーマや装飾、予算などを一から考えて作り上げるのが、私たち鸞鳳祭執行部です。私はその中で装飾課に所属しています。みんなで装飾案を考えたり、意見交換をすることを通して、私は以前より自分の意見に自信を持って発言することができるようになりました。たくさんの方にご来場いただけたら嬉しいです」(Oさん 3年生)

▶︎体育祭など行事について説明する生徒
「探究(未来への扉)」と「キャリア教育」
同校では、1年次から5年次に週1回、探究の授業を実施している。同校の模擬国連部は世界大会にも出場経験があるので、その経験を活かしてプログラムにした「グローバル探究」では、3年生全員が模擬国連を経験。半年間かけて、4人1組で1つの国を担当し、その国の立場から魅力や問題を発信する。6年生のSさんは、4~5年次に取り組んだ「ウェルビーイング探究」について語った。
「母の実家が営む食品問屋には跡継ぎがいないため、どうすれば会社を続けていけるのかについて研究しました。日本は小さな会社が多く、跡継ぎがいないことにより潰れてしまうケースが増えています。私はインタビュー調査や新聞記事などから、時代の変化に合わせてみんなに必要とされるサービスに変える大切さを学びました。近年、経営が難しくなり、別の会社に引き継いでもらうスタイルが増えていますが、母の実家は醤油屋としてスタートした約200年の歴史がある会社です。地域とのつながりを大事にしてきた社長にとって、他社に売ることは望んでいないとわかりました。私は、地元を盛り上げられる新しいビジネスを見つけられるよう、大学の経営学部でこの研究の続きをしたいと思っています」(Sさん 6年生)
「キャリア教育」の集大成となるのが、5年次のプレゼン型三者面談だ。同校では、生徒が担任の先生と保護者に対して、自分の進路について自分の言葉でプレゼンをするという形で三者面談を行っている。6年生のAさんは、自身が行ったプレゼンについて振り返った。

▶︎実家の事業承継に触れ、将来学びたいことを語るSさん
「僕は小学生の頃に読んだ『宇宙兄弟』という漫画がきっかけで、ロケット開発に携わりたいという気持ちが芽生え、大学で航空宇宙工学を学びたいと考えていました。しかし、夏休みに卒業生の方々から話を聞いたり、オープンキャンパスに足を運び、自分でも調べたりしていくうちに、航空宇宙工学は専門的な要素が多く、進路が狭まってしまう可能性があるとわかりました。もし自動車や鉄道など、他の分野で開発に携わりたくなった時に、航空宇宙工学では進路を変えるのが難しいと思い、改めて自分のありたい姿を考え直したのです。その時に見つけたのが機械工学でした。機械工学は、自動車、鉄道、そしてロケットなど、様々な機械の基礎を学ぶ学問です。進路の可能性をより多く残しておきたいので、大学では機械工学を学ぶことにしました。未来の自分がどうなるかわかりませんが、僕はどんな自分にでもなることができると信じています」(Aさん 6年生)

▶︎この日の学校説明会で活躍した生徒たち
登壇した生徒にインタビュー
Oさん(1年生 中入生)
Sさん(3年生 小学校からの内進生)
Aさん(6年生 中入生)
――説明会を終えた感想を教えてください。
Oさん リハーサルより、本番の方がうまくできたと思います。少し緊張しましたが、ステージに立ったら言葉がどんどん出てきました。
Sさん 司会を担当したのは、今日で4回目です。最初の頃はうまく話せるかなと緊張がありましたが、今は最初より滑らかに話せるようになったので、成長できたなと思います。
Aさん 僕は器楽部に入っていたので、4年間受付前で演奏をしていました。今回のメンバーは初心者が多く、初めて楽器に触るところから僕たちが教えてきたので、成長した姿に感動しました。

▶︎Oさん
――この学校を受験しようと思った理由や、入学していいなと感じたところを教えてください。
Oさん 校舎も広くて、説明会に来て自由な学校だと感じたので受験しました。「聞き方」について学ぶ機会があったので、いろいろな授業で発表するとき、発表する人の意見を聞いて、その人にメッセージを書くときにも役立っていると思います。同じ意見の人もいれば違う意見の人もいますが、「聞き方」を学んだからお互いの意見をしっかり聞いた上で自分の意見を書けます。
Sさん いろいろな経験ができるのがいいなと思っています。最初は中入生とは全然話せませんでしたが、授業中にペアワークをするうちに仲良くなれて、今では昔からの友達みたいに仲がいいです。
Aさん 文化祭など、生徒主体で動く行事が多く、友達関係が充実していると感じています。行事ではみんな熱く盛り上がって、存分に楽しんで、素晴らしい仲間だと思います。習熟度別授業などで、クラス以外の人とも一緒に授業を受けることが多いので、同じ学年で話したことがない人はほとんどいない感じです。

▶︎Sさん
――印象に残っている行事などを教えてください。
Aさん 行事も思い出深いですが、一番は器楽部での活動です。小学生の頃からチェロをやっていたので器楽部に入り、仲間と作り上げる音楽が僕の人生を豊かにしてくれました。5年間、器楽部の仲間と過ごした日々は、僕にとってかけがえのないものだと感じています。
Sさん 私もダンス部での活動です。文化祭が1年間の成果を見せる場となっていますが、 去年から大会にも参加するようになりました。ダンスの実力だけでなく、先輩や後輩とのつながりなどからも、自分の成長を一番感じられるのが部活だと思います。
Oさん 9月に開催される鸞鳳祭の準備を一生懸命やって、本番は自分も楽しめるようにしたいです。

▶︎Aさん
――将来の目標について教えてください。
Aさん 機械工学を学びたいと思った経緯は説明会でお話ししましたが、大学を卒業する頃には、自分の考え方や社会の状況も変わっているかもしれません。ものづくりに携われる環境を目指して、大学では社会に出る基礎を学んでいきたいと思っています。大学の研究室で実験や研究などを経験しながら、面白いと思ったものに挑戦していきたいです。
Sさん 大学などはまだ具体的に決めていませんが、音楽に関わる仕事がしたいと思っています。このシンフォニーホールでミュージカルを鑑賞したとき、その素晴らしさに圧倒されました。ダンスをしながら歌うのはとても難しいのに、ダンスも歌もうまいプロの舞台を見たことが、音楽に関連した職業を意識するきっかけになったと思います。ウイーン少年合唱団の合唱も聞きましたが、同世代の皆さんが少数で舞台に立ち、声量もすごくて、ホールに響く美しい歌声を生で聞くことができてよい経験になりました。
Oさん 「未来の扉」の授業で将来について探究するので、その中で見つけていきたいです。
<取材を終えて>
1年生、3年生、6年生が登壇したので、入学後の成長をイメージしやすかった。参加者アンケートには「生徒の話が端的で分かりやすかった」「在校生の話がとても聞きやすかった」などの声が多かったそうで、入学して約4か月しか経っていない1年生も堂々と発表できたのは、授業などで発表を積み重ねている成果だろう。6年生は2人ともとてもしっかりとした考えを持ち、「ありたい自分」について明確なビジョンを持っていることが伝わってきた。参加者からも、「6年生の生徒さんの探究の話をお聞きした中で、探究学習から夢を見出されたことに感動しました」「6年生の事業承継のお話をされた生徒さんのスライドがとてもわかりやすくて、すてきなお話がより際立っていました」などの声があったそうだ。敷地内の里山で300人以上の生徒たちがたくさんのタケノコを掘り起こしている動画が流れたときには、会場のあちこちから思わず声が上がっていたので、2027年度から探究授業として始動する「里山プロジェクト」にも注目していただきたい。
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