私立中学

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りっきょうじょがくいん

立教女学院中学校

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スクール特集(立教女学院中学校の特色のある教育 #13)

異なる文化や価値観を理解し、思いやりを育む「フィリピン国際交流プログラム」

立教女学院中学校・高等学校は、海外5つの姉妹校と交換留学を行っている。今回は30年以上続くフィリピン姉妹校との交流プログラムについて、担当教諭と生徒に話を聞いた。

同校は、フィリピン、アメリカ、ニュージーランドにある姉妹校5校と、長期または短期の交換留学を行っている。派遣プログラムは、ホームステイや寮生活をしながら現地の授業に参加し、受け入れプログラムは、来校した留学生と生徒が、授業や行事など学校生活を通して交流を図っている。ここではフィリピン・ケソン市にあるTrinity University of Asia High School(以下トリニティ)との交換留学を取り上げ、2025年春の派遣プログラムで引率をした英語科の山本純先生と、参加した2人の生徒に話を聞いた。

戦争の歴史やフィリピンのリアルな生活に触れる派遣プログラム

「トリニティは本校と同じ聖公会に属する学校です。1987年に校舎が火事になり、本校が支援のため献金を送ったことから交流が始まりました。まず、1990年にトリニティの2名の生徒を受け入れ、1997年からはフィリピンへの派遣プログラムもスタートしました。これまで留学生の受け入れが32回、本校からの派遣も17回を数え、この3月には中3と高1を合わせて8名の生徒が参加しました。ちなみに、トリニティとの交換留学は、5つの姉妹校の中でも最も古いプログラムとなっています」と山本先生は説明する。

8日間のプログラムのうち、最初の2日はマニラ周辺を観光する。「マニラには太平洋戦争の痕跡が数多く残っています。本校は修学旅行で、長崎(中3)と沖縄(高2)を平和教育の一環として訪れるのですが、フィリピンを訪れることで、生徒たちは太平洋戦争の歴史をさらに深く知ることになります。また、スモーキーマウンテンと呼ばれる巨大なゴミ集積所を訪れ、日本では見ることのない風景や人々の生活、空気感に触れる経験もします」

マニラ観光の後、生徒たちはトリニティの在校生の家庭にホームステイをして、ホストシスターと一緒に登校し、授業や学校の活動に参加する。

トリニティからの受け入れプログラムは、毎年10月に10日間の日程で行われ、留学生は中3のクラスに編入する。「休み時間になると、留学生の周りは話をしたい生徒であふれかえっています」と、山本先生は笑う。「英語圏の出身ではないから、自分のつたない英語でも話しかけやすいと思う生徒もいるみたいですね」。また、留学生はマーガレット祭(文化祭)にゲストとして招かれ、フィリピンのダンスを踊ったりして、自国の文化を紹介しているそうだ。

▶︎英語科 山本純先生

フィリピン国際交流プログラムに参加した生徒にインタビュー

Mさん 高校2年生
Tさん 高校1年生

Q.フィリピン国際交流プログラムに参加した理由は?

Mさん フィリピンへ行く前に、ユネスコのスタディツアーでカンボジアに行ったことがあります。その頃から国際協力に関心を持ち、将来は世界の子どもたちのために何かできることをしたいと考えるようになりました。また、中3の時にトリニティから留学生が来て、私は校内のホストシスターを務めたのですが、その時の交流が印象に残り、今度は私が向こうへ行ってもっといろいろなことを知りたいと思いました。

Tさん 土曜集会や長崎の平和学習などで、戦争について考える機会がありました。「戦争ってなぜ起こるのだろう?」と自分なりに考えた時、相手の価値観や文化的背景を理解できていないからではないかと思うようになりました。フィリピンで異文化理解のきっかけを作ってみたい、また、国際交流プログラムの中でも、フィリピンが一番、異文化を感じられる国だと聞いて、参加を決めました。

▶︎Mさん

Q.マニラを観光した時の感想を教えてください。

Mさん スモーキーマウンテンで、電線が辺り一面に張り巡らされていたり、ゴミがあふれたりしている状況を見て衝撃を受けました。また街で、可愛らしい女の子に、「Give me money」と声をかけられ、「これは解決しなければならない問題だ」と強く感じました。

Tさん アメリカンセメタリーという戦争被害者の墓地に行きました。日本でも戦争について学んでいたけれど、フィリピンで何をしたかについてはあまり知らなかったので、驚いたし、心が痛かった。でも、学ぶことができて良かったです。また、日本は過去にフィリピンの人たちにひどいことをしたにも関わらず、私たちは温かく迎えてもらい、ありがたいと思いました。

▶︎Tさん

Q.トリニティの学校やホームステイの思い出は?

Mさん 学校ではタガログ語が使われています。ある日、クラスで生徒同士が話で盛り上がっている時、1人の生徒が「みんな英語で話そうよ」と言って、私たちを会話に混ぜてくれました。寄り添ってもらえたことが嬉しかったし、消極的と思われている日本人の私たちも、もっと自分からコミュニケーションをとらなければいけないと実感しました。ホストシスターはとても気遣いのある人でした。また家族はみんな歌が好きで、カラオケに行って、日本の曲も一緒に歌って交流したのが思い出深いです。

Tさん ホストファミリーがフィリピンの文化をたくさん体験させてくれました。たとえば、ご飯を手で持って食べたり、街に行った時にジープニーという乗り物に乗ったりしました。私も日本の文化を伝えたいと折り紙を持っていき、織り方を教えました。また、互いに自分の国の言葉を教え合うなど、たくさん交流することができました。

▶︎Trinity University of Asia High School(トリニティ)

Q.プログラムを体験して気付いたことは?

Mさん SMIS*で模擬国連の下調べをする時、たとえば貧困問題や教育格差もネットや本で調べます。でも、スラム街の実態はネットで見るよりも深刻で、実際に現場で見聞きすることの大切さを知りました。また、将来は子どもたちの幸せに関わる仕事がしたいと思っているので、世界の教育問題を解決するには、自分はもっと知るべきことがたくさんあることがわかりました。

Tさん 自分の考えの幅が広がりました。これまでは将来の可能性も、自分で狭めていたように思います。フィリピンでいろいろな価値観や考え方の人と話をしたり、様々な文化に触れて、「可能性は無限だ」と気付きました。

*SMIS…St. Margaret’s International Society。「国際交流グループ」と「国際教育グループ」があり、後者は模擬国連大会への参加を中心に、国際問題について理解を深める活動を行う。Mさんは今年度のリーダー。

Q.プログラムの経験をどんなことに活かしたいですか?

Mさん 私はこれまで自分の意見を主張することに戸惑いがあったのですが、フィリピンでは案外、自分の意見が肯定され、と言うよりも意見を言ったほうが仲が深まったように感じました。だから今、友だちにも自分の意見を言い、もちろん相手の意見も聞いて、互いをより知り合うことで関係性も強くなりました。

Tさん プログラムを通じて、互いの文化や価値観を理解して寄り添うことができたら、もっといろんな人が意見を言いやすくなると思いました。私も相手を理解しようという気持ちを大事にしたいと思っています。また、自分の将来の可能性が広がったと思えるようになったので、いろいろなことに興味や関心を持ち、挑戦したいです。

プログラムに込めた「平和をつくる人へ」という願い

山本先生は、フィリピン国際交流プログラムの良さや成果を次のように語る。
「本校とトリニティは、キリスト教の教えを土台とする建学の精神を共有し、30年以上の年月をかけて信頼関係を築いてきました。長い歴史を経て磨かれた、手作りの交流プログラムに参加する生徒たちは、ホームステイ先で家族の一員として迎えられ、学校では温かな友情を築くことになります。

フィリピンは隣国ではありますが、日本とは異なる習慣や文化に戸惑うことも多くあります。生徒たちは現地で多くの人々からの助けを得て生活します。そのことに感謝しつつ、自分が日本でいかに恵まれた日々を過ごしているかにも思いを新たにし、さらに感謝の気持ちを強くする生徒も多いです。

トリニティの敷地を一歩出れば、人、車、バイク、家が密集する街並みが広がり、露店や小さな食堂にいる人々、ストリートバスケに興じる子どもたちの様子を目にします。生徒たちには、そこで生活する人々に思いを馳せ、世界の広さや多様性を感じ取ってほしいです。

本校の国際交流プログラムには、世界中に友情の輪を広げ、生徒一人一人が平和を作る人になってほしいという願いが込められています。派遣プログラムに於いても、受け入れプログラムに於いても、生徒たちには隠せず積極的に異文化交流に挑み、隣人を愛し、平和を求める心を養ってほしいと願っています」

<取材を終えて>
同校の国際交流プログラムは、1990年に開始したトリニティを筆頭に、2000年にアメリカ、2004年にニュージーランドの姉妹校というように歴史が長く、学校独自の手作りであることが特徴だ。なかでもフィリピンのプログラムは、戦争の歴史や発展途上国の生活など、現地に行かなければわからないことを学ぶことができる。実際に生徒たちはいろいろなことを経験して学び、それが1人の人間として成長につながっていると感じた。

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