スクール特集(文化学園大学杉並中学校の特色のある教育 #14)
カナダのカリキュラムが学べる環境で、英語初心者~上級者全員がレベルアップ!
文化学園大学杉並中学・高等学校はダブルディプロマをいち早く導入し、ネイティブ教員主導の授業を実践。成果を上げている英語教育について、入試広報部長の西田真志先生に話を聞いた。
週9時間~17時間、レベルに合わせた英語の授業を展開
同校はカナダのブリティッシュ・コロンビア(BC)州の海外校として、日本で初めて認定を受け、今年で10年目を迎えた。初年度に、日本とカナダの2つの高校卒業資格を同時に取得できるダブルディプロマ(DD)コースを高校に設置。その後、中学校にもDDの準備コースをつくり、英語上級者は中学1年次より、英語初級者も2年次からカナダのカリキュラムを履修できる制度を整えた。なお、BC州の海外校は世界におよそ46校あり、約7,000人の生徒が学んでいるという。
西田先生によると、「DDコースは13人の女子高生(当時は女子校)からスタートしました。現在は中高合わせて380人以上がカナダのカリキュラムを学んでいます。近年は、英語を使って数学や理科などを学ぶ学校が増えていますが、本校は日本の教育課程を英語で学ぶのではなく、BC州教員がカナダの教育に沿った内容の授業を行っています」と話す。
▶︎入試広報部長 西田真志先生
英語教育は、中学1年次よりBC州教員を含むネイティブ教員主導のレベル別授業を実施。カナダのカリキュラムを学ぶ「DD7」は、BC州教員が週17時間、授業を受け持ち、そのうち数学5時間、理科2時間を各専科の先生が指導している。また、英語上級者のクラス「Advanced7」は週10時間、英語初~中級者の「Starter7」は週9時間(うち2時間の英文法は日本人教員が指導)と、圧倒的な英語授業数を確保。さらにStarter7では、中2からDD準備コースを希望する生徒を対象に、「Communication English」の講座(早朝週2回:BC州教員指導)を用意。その講座を受講し、年度末の審査(英検4級~3級程度)に通った生徒は、中2から「DD準備8」のクラスで学ぶことができる。
中学生の半数がカナダの教育を学び、中3の半数が英検2級以上を取得!
今年度、中学校に157人の生徒が入学し、DD7が33人、Advanced7は15人、Starter7は109人だった。また、中学全体の生徒数は429人で、そのうち5割以上の233人がカナダのカリキュラムを学んでいる。
「中学2年、3年だけで言えば、272人中185人(7割弱)の生徒がカナダ教員の授業を受けており、うち64人は英語初心者です。カナダのカリキュラムを学びたい生徒は年々増える傾向で、昨年度はStarter7から94人中60人がDD準備8に進みました。カナダの授業はテキストを使わず、PBLやプロジェクト型などアウトプットを重視した学習スタイルで、時にはモノ作りをしたり、生徒たちは楽しく取り組んでいます。DD準備コースの良さは、日本にいながらカナダの教育メソッドを体験でき、自然に英語も習得できることですね。今年のStarter7も87人の生徒がDDの学びを希望しています」と西田先生は言う。
「 こうした“英語で学ぶ”プログラムを、英語上級者向けに行っている学校は多いと思いますが、本校は初心者でもチャンスがあり、豊富な授業数とネイティブ主導の教育で、それ相当の英語力もつけることができます。現在、学校にはネイティブの教員がカナダ教員17名を含め28名います。先生が多い分だけ生徒と触れ合う機会も多くなり、グローバルな環境がつくられています」
生徒たちの英語力の向上は、英検取得率でも見てとれる。2024年3月、中学3年終了時点で、半数近くが2級以上を取得。2年終了時点でも、約6割が準2級以上を取得し、入学時に級を持っていなかった生徒も73人中48人が3級、14人が準2級に合格している。また、Starter7(94人)の伸びも高く、1年終了時に1人が2級、7人が準2級、15人が3級に合格している。
「本校では、中学3年間で英語初心者は英検2級、上級者は準1級の合格を目指しています。一般的には高校卒業程度の目標が2級とされているので、本校のレベルは高いと言えますね。また、今年の新1年生は、入学時に準1級を持っている生徒が過去最多の12人いました。準2級~3級のミドル層も増えていて、英語に関心のある生徒が入学しているという手ごたえを感じています。とは言え、級を持っていない生徒も75人いますし、データにも表れているように、入学後、力をつけていきます。初心者も上級者も確実にレベルアップできる教育ができているのではないかと思っています」(西田先生)
共学化1期生の大学進学実績が躍進。海外大学合格も過去最多に!
同校は2018年度に共学化し、この3月に中学入学の1期生が卒業した。学校改革後、大学進学実績は堅調に伸び、2023年度は国公立大8人、早慶上理ICU31人、GMARCH関関同立74人が合格。早慶上理ICUは過去最多、同校初の宮崎大学医学部の現役合格もあった。
7年目になるDDコースの卒業生も、ブリティッシュ・コロンビア大学(カナダ)が4人、トロント大学(カナダ)3人、またエディンバラ大学(イギリス)やメルボルン大学(オーストラリア)、セゲド大学医学部(ハンガリー)など初の合格校も出て、7期生43人のうち37人が海外大学に合格。こちらも過去最多となった。
「DDコースで取り入れているカナダのプログラムは、BC州の高校生が受けている公教育と全く同じものです。世界的にも評価の高いプログラムで、現地生とスコアを競い合うのですが、本校の生徒は高いスコアを出しています。DDコースは2つのカリキュラムを学ぶので単位数(授業数)も多くなり、当然、勉強も大変になりますが、その覚悟を持ってDDを選んでいるので、勉強に対するモチベーションも高いのだと思います。レポートもきちんと提出し、良い成績を収めているので、トロント大学のような名門校にも出願ができるのです。ちなみに本校は、BC州の海外校の中でもトップクラスなんですよ」と、西田先生。
またDDコースは2023年度に、AP(アドバンスト・プレイスメント)を新たに導入した。APとは、IB(国際バカロレア)と同様、学習への高い意欲を示す高校生を対象とした高度な教育プログラムで、5月に国際試験が行われる。同校は数学の「微積分」を高2で必修、高3は選択科目としている。APを受講する利点は、海外大学の出願が有利になる、大学の単位として認定される、大学入学後に高いレベルの授業を履修できる、ことなどがあげられる。
さらにDDコース7期生は海外大学以外にも、ICU6人、早稲田4人、慶應1人、上智5人、東京理科大1人などと、国内の難関大学に多数合格している。「DDコースは日本とカナダの卒業資格が得られるので、早稲田大学やICUなど一部の国内大学では、海外枠の特別入試も受けることが可能です。受験のチャンスが増えることで、大学の選択肢も広がります」
「実際にDDコース1~7期生198人は、様々な進路を歩んでいます。また、卒業生の5割が海外大学か早慶上理ICUに進学していて、この数字から見ても、一部ではなく多くの生徒がこのレベルに達するだけの力をつけていると言えます」(西田先生)
DD導入、男女共学化、英語教育の強化など、さまざまな改革をしてきた同校。近年はカナダの教育メソッドを日本の教育に取り入れるなど、先生たちが勉強会を開いて授業のブラッシュアップに努めているという。こうした熱心な取り組みが、英語力とともに大学進学実績の向上につながっているのだろう。
【取材を終えて】
今年の新1年生は、DD7が33名、Advanced7が15名と約3割が英語上級者で、同校の英語教育に対する期待の高さが伺える。入学時の高い英語力をさらに伸ばし、海外大学などに進学する生徒が増える一方で、英語初心者も目に見える形で力をつけている。一握りの生徒だけでなく全員がレベルアップする、国際クラスではなく、誰もがカナダのカリキュラムを学べるチャンスがある、というのが同校の英語教育の魅力だと改めて感じた。
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