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スクール特集(獨協中学校の特色のある教育 #11)

海外で学び、世界を知る。自分を変える挑戦―獨協の多彩な海外研修

獨協中学・高等学校では、語学だけでなく、異文化や環境教育、現地の人々との交流を通して学ぶ海外研修を多彩に実施している。成長段階に応じた挑戦が、生徒の視野と可能性を広げている。

一人ひとりの成長過程で選べる海外研修プログラム

1883年、獨逸学協会の事業として創立された獨協中学・高等学校。そのルーツには、ドイツの文化や学問を取り入れ、日本の近代化を支える人材を育てようとした歴史がある。「広く国際的な視野をもって学ぶ」という精神は今も受け継がれ、海外研修はその実践の場の一つとなっている。その特徴は、語学の習得だけを目的とせず、生徒の興味や成長段階に合わせて多様な体験を選べることだ。

中3から高2の希望者が参加する「ドイツスタディツアー」では、ベルリン、ハノーファー、ミュンヘンなどを訪れ、環境教育施設や学校を視察する。現地の高校生との交流やホームステイを通して、共通のテーマについて共に学び、考える機会もある。

中3から高1が対象の「イギリス語学研修」は、コッツウォルズを中心に約2週間。現地のボランティアファミリーと生活を共にしながら、英語力の向上を目指すアクティビティ、街に出て英語を使いながら現地の人々と交流するプログラムなどを用意している。

中3から高2が対象の「イエローストーンサイエンスツアー」では、世界最初の国立公園として知られるアメリカのイエローストーン国立公園を舞台に、間欠泉や野生動物などを観察。恐竜の化石を研究する施設も訪れ、科学と環境を体験的に学ぶ。

さらに、高1・2には、ニュージーランドの現地校で約3週間学ぶ語学留学を実施。2025年度からは高1対象の「ニュージーランドターム留学」(約3カ月間、現地校に通う留学)も始まり、初年度は4人が参加した。現地校の授業や生活を通して、英語力だけでなく、異なる文化や考え方に触れる機会となっている。

「男子中高一貫校として、それぞれレベルの異なる海外研修を複数の学年で選べるようにすることで、一人ひとりの生徒が『今の自分』に適した挑戦をおこなえるよう、日々環境を整えています」と話すのは、入試広報室長の古池俊明先生。毎年異なる研修に参加する生徒もおり、語学、異文化理解、環境教育など、それぞれの興味や関心に応じて選択できる機会が用意されている。

▶︎入試広報室長 古池俊明先生

海外に出て気づいた、自分自身の変化

実際に海外研修を経験した生徒たちは、どんなきっかけで参加し、何を感じたのだろうか。3人に話を聞いた。

話を聞いた生徒
Tさん(高1):中3でドイツスタディツアー、高1でイギリス語学研修に参加
Sさん(高1):中3でイエローストーンサイエンスツアー、高1でドイツスタディツアーに参加
Yさん(高2):高1でニュージーランドターム留学に参加

――海外研修に参加しようと思ったきっかけは?

Tさん ヨーロッパに行ったことがなく、学校がドイツと深い関わりを持っていることにも興味があったので、まずドイツに挑戦しました。ホームステイ先ではみんなが英語を使い、たくさん会話をしたことで、英語で話すことに自信がつきました。その経験から、次はもっと英語力を伸ばしたいと思い、イギリス語学研修にも参加しました。ドイツより長い2週間のホームステイで、英語を母語とする人たちと生活をすれば、さらに実践的な英語力が身に付くと思ったからです。

Sさん 最初はドイツに行こうと思っていました。でも中3の時の自分は、英語に自信がなく、一人でホームステイをするのは少しハードルが高いと感じました。そこでワンダーフォーゲル部の先輩に相談したら、山にも登れて、日本語のガイドも付くイエローストーンのサイエンスツアーを勧めてくれたんです。実際に行ってみると、つたない英語でも意外と通じました。話すのが苦手でも、相手が汲み取ってくれる。その経験があったので、翌年は「これならドイツにも行ける」と思い、本命に挑戦しました。

Yさん 中2で英検2級に合格して、英語に自信を持ったのがきっかけです。この学校は海外の人との交流も盛んで、インドネシアの留学生との交流会やPASCH Treffen(※1)にも参加し、自分にはコミュニケーションを取る力もあるとわかりました。将来は国際的な仕事をしたいと思っているので、その第一歩としてニュージーランドターム留学に挑戦しました。

※1 PASCH Treffen(パッシュの会)…ドイツ外務省が主導する国際教育イニシアティブ「未来のパートナー学校(PASCH)」に認定された国内の学校の生徒や教員、卒業生が集まる、交流・発表会合

▶︎Tさん

▶︎イギリス語学研修

――海外で印象に残ったことは?

Tさん ドイツのホストファミリーと、政治や歴史について話したことです。学校とドイツとの関わりや、明治時代の日本がドイツを手本にしたこと、第二次世界大戦の敗戦国であることなど、共通点についても話しました。イギリスでは、文化や生活の違いを英語で共有しました。一方で、ドイツやイギリスの環境意識の高さに驚きました。イギリスのホストファミリーがベジタリアンでしたし、ドイツでは「BIO(※2)」と表示された商品が多く、日本との違いを実感しました。

Sさん イエローストーンで、自然を守ることについて考えました。山火事が起きても自然の推移に任せる考え方や、観光客によって外来植物が増えているという課題を知りました。ガイドの方は、「環境への影響があっても、人を立ち入らせないのではなく、それを学び、保全につなげていきたい」といった考えを話してくれました。自然を守るには、自然を知ることも大切なのだと考えさせられました。
ドイツでは、ホームステイ先の家族との生活が印象的でした。子どもも一人の人間として尊重されていて、「好きにすればいいよ」と任せてくれたり、こちらの意見を聞いてくれたりします。自分で考えることを大切にしているのだと感じました。

Yさん 友達との付き合い方が日本と違うことです。僕のホームステイ先は途中で変わり、大学生と社会人の兄弟がいる家庭と、2歳下と9歳の男の子がいる家庭の両方を経験しました。ニュージーランドの友達は、空いている時間があると、スマホで連絡を取り合うのではなく、それぞれの家を訪ねて遊び相手を探します。面と向かってしっかり話す習慣が、日本とは違うと感じました。
学校の授業も印象的でした。先生が問題を出し、生徒がグループで話し合う形式が多く、先生はグループを回ってアドバイスをするだけ。自分の意見を言うのも楽しいし、相手の意見を聞いて自分の考えを磨くのも楽しい。問題を解決するために、みんなでより良い方法を考えていく学び方は面白いと思いました。

※2 BIO(ビオ)…ドイツ語で「有機の」「オーガニックの」という意味。ドイツでは、有機農業の基準に沿って生産された食品などに表示される。

▶︎Sさん

▶︎イエローストーンサイエンスツアー

――海外研修を通じて、成長したと感じることは?

Tさん 適応する力がつきました。言葉も文化も違う場所で、最初は戸惑っても、そこに合わせて生活していく。そういう力は、この先いろいろな場所で生かせると思います。もう一つは、積極的に挑戦するようになったことです。海外に行くこと自体が一つのチャレンジで、行ってみたら楽しかったので、失敗してもいいから何事にも挑戦してみようと思えるようになりました。

Sさん 自分の意見を言う力とチャレンジ精神です。ドイツでは意見を聞かれることが多く、それまでは「どっちでもいいよ」と答えることもあったのですが、何がいいのかをその場で考えて伝えるようになりました。イエローストーンでは自分から現地の人にあまり話しかけなかったことが反省点だったので、ドイツでは自分から働きかけるようにしました。

Yさん 自立する力がつきました。ホームステイ先では、朝食や昼食を自分で用意し、洗濯も自分でしました。今では自分でちゃんと起きるし、家でご飯を作ることもあります。もう一つは、人の輪に入る力です。最初は日本人が珍しくてみんなが来てくれましたが、そこから自分で輪に入るには勇気が必要でした。一歩踏み出したことで、良い人間関係を築けたと思います。

▶︎Yさん

▶︎ニュージーランドターム留学

――将来の夢は?

Tさん 外交官など、海外と関わる仕事に就きたいです。まだ具体的には決まっていませんが、海外でいろいろな人と話した経験を将来につなげたいです。

Sさん 医師になりたいです。医師にもコミュニケーション力や英語力が必要ですし、相手の宗教や文化的背景を受け入れることも大切です。海外経験を通して、その大切さを実感しました。

Yさん NASAで働きたいです。そのために英語力を伸ばして、まずはJAXAで働くことを目標にしています。

経験を自分の中で終わらせず、学校や社会へ

「本校の目標は大学合格ではなく、『社会の優等生』になること」と古池先生は話す。大学進学も、将来社会に貢献するための手段の一つと捉えている。「社会に貢献するには、いろいろな社会を知らなくてはなりません。海外研修がすべてではありませんが、そのための一つの機会になっています」

だからこそ、海外で得た経験を自分の中にとどめず、学校や社会に生かしてほしいと期待する。「3人は、海外経験を自分の中だけで終わらせず、発信してくれています」。TさんとSさんは学校説明会で、約1,000人の参加者を前に海外研修について話す予定だ。Yさんは生徒会活動に参加し、Sさんは緑のネットワーク委員会にも所属している。イエローストーンやドイツで学んだ環境への関心が、今後の活動にもつながっていくだろう。

「海外に行った生徒は、皆大きな成長を遂げて帰ってきます。表情が変わりますね」と古池先生。異なる文化の中に身を置き、さまざまな価値観を持つ人と出会う。戸惑いや失敗も含めて経験を自分のものにし、次の行動につなげていく。「気がつくと、レベルの高いことをやっているなと感じることもあります。経験したことを、いろいろなところに還元しているんですよ」

今後は、ドイツの提携校との交流をさらに深めるとともに、ドイツや東南アジア諸国など、英語を母語としない国々との学び合いにも可能性を広げたいと考えている。「英語研修も大切ですが、母語が英語ではない国の人たちとも学び合う機会を増やしたい。大変さも含めて共有できると思います」

ドイツとのつながりは、海外研修だけにとどまらない。生徒は第2外国語として中3からドイツ語を学べるほか、PASCHのネットワークを通した交流や、ドイツ政府が招聘する独自の海外研修にも挑戦できる。創立以来受け継がれてきた国際的な学びを通して、生徒たちは世界への関心を深めている。

<取材を終えて>
印象に残ったのは、3人が「海外研修に行って終わり」ではなく、そこで得た気づきを次の挑戦につなげていたこと。異なる文化や価値観に触れることは、世界を知るだけでなく、自分の考え方や行動を見つめ直す機会にもなる。海外での経験が、その後の一歩を踏み出す力になっていることが伝わってきた。

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