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スクール特集(東京立正中学校の特色のある教育 #4)

部活動から見えてきた嬉しい成果!“梅ちゃん先生”の学校改革2年目

“梅ちゃん先生”こと梅沢辰也校長による、生徒たちを幸せにするための学校改革が進行中。部活動から見えてきた2年目の成果をレポートする。

2019年4月に校長として就任した梅沢辰也先生は、「生徒たちを幸せにする」という強い思いのもとで、5つの目標を掲げて学校改革を進めている。2020年度は、ソフトボール部が18年ぶりに東京都中学校秋季新人大会で優勝、女子バレーボール部が7年ぶりに東京都中学校新人大会で準優勝という大きな成果があった。そこから見えてきた生徒たちの変化や3年目に向けた思いなど、梅沢辰也先生(校長)、加藤啓吾先生(国語科/バレー部顧問)、内山満雄先生(社会科/中学ソフトボール部監督)に話を聞いた。

校長・梅沢辰也先生が目標として掲げる5つの学校像

・「全員レギュラー」補欠は1人もいない学校
・「挑戦と失敗」を応援する学校
・「なぜ」を追求する学校
・「教室から世界を変える」と挑戦する学校
・「文部両道の極み」を希求し、授業が面白くて部活動が楽しい学校

先輩の背中を見て1年生が大きく成長

18年ぶりに都大会で優勝を果たしたソフトボール部は、2年生が3人、1年生が11人という、圧倒的に若いチームで戦った。バレーボールと比べてまだ競技人口も少ないが、伸ばすためには少ない中でも競争が必要だと、内山先生は語る。

「試合に出られるのは10人ですが、極力、出るメンバーは固定しません。いろいろな選手に、いろいろなところでチャンスを与えて、客観的な判断でレギュラーを決めるようにしています。当初は、1年生が上級生になったときに、いい結果を出せるようにチーム作りを進めていましたが、夏休みに入るころには思った以上に1年生が伸びてきました。引っ張っていく立場の2年生が少ない中でも、3人ともチームの中心として育ってくれていたのです。そして、大会が始まる前に高校生と練習試合をして、ベスト4に入るレベルのチームにも勝つことができたあたりで、選手たちも自信がついたようですし、私も手ごたえを感じました」(内山先生)

ソフトボール部の指導は18年目になり、過去にも優勝経験があるという内山先生。過去のチームには絶対的な存在がいて、その選手を中心に勝ったこともあった。しかし今回は、そのような選手がいない中で、試合を重ねるにつれてチームが一丸となっていったという。

「実力では、過去にはもっと上だったチームもたくさんあったと思います。今回、このチームがよかったところは、先輩と後輩の関係性など、チームのまとまりです。特に決勝戦は、今までにないほどのまとまりを見せ、勢いと団結力のすごさを感じました。とにかく、選手に恵まれていたと思います。1年生の実力は、入学したときには、特別にすごいと感じるほどではありませんでした。しかし、3年生や2年生が練習に取り組む姿を見て、1年生もついていきました。ソフトボール部は、放課後の練習をメインにしているので、朝や家での練習に決まりはありません。しかし3年生が自発的に朝練を始めたら、それを見た後輩たちも朝練を開始。言葉で言うだけなら簡単ですが、先輩たちが自分の背中で見せたということが、大きかったと思います」(内山先生)

▶︎内山満雄先生(社会科/中学ソフトボール部監督)

“全員レギュラー”のチーム力で体格差のある相手にも勝利

都大会で、準優勝を果たした女子バレーボール部。他校の選手に比べて圧倒的に身長が低いこともあり、ベスト8で負けてもおかしくなかったと、加藤先生は振り返る。同校に選手を送り出したジュニアチームの監督は試合が見られなかったため、「どうやったらこんな結果になったの?」と驚いていたという。

「今のチームには、絶対的なエースや野球でいう先発完投型の選手はいません。しかし、試合中にミスをして動揺してしまった選手がいたら、同じくらいの力を持つ控え選手と交代させることができるのです。何度か危ない場面もありましたが、メンバーチェンジによって落ち着きを取り戻し、よい流れを引き寄せることができました。ビデオを見て、『このワンプレイが大きかったね』『ここのサービスエースが大きいね』と交代した選手の活躍をふり返ることができたのも、この大会の収穫です。スタメンだけでなく、控えの選手も得意分野で個性を発揮できたことは、まさに校長が目標としている“全員レギュラー”なのだと思います」(加藤先生)

今回は、中2が13人、中1が15人いる中で、中2のチーム力で勝負したと、加藤先生は説明する。

「技術だけを考えれば中1にもいい選手はいたので、試合に出られなかった1年生は『なんで?』と思ったでしょう。しかし結果として、先輩たちは体格差のある強敵に、チーム力で立ち向かい、勝利をつかんだことに納得していると思います。そして次は、自分たちの番だと思っているはずです。今回の勝因は、技術以上に、結束力や思いのようなものが大きいと思います。技術の差が出ているのは『努力してないから』ではなく、身長やバレーを始めた年齢が早いとか遅いとか、そんなことも関係しています。本校に入学してから、思いをこめて練習してきたこと、仲間同士の励まし合い、ボール拾いなどで練習を支えてくれた仲間への感謝など、直接プレーに関わらないことでも、チームは作られていくのです。その思いを試合中に出せたことが、勝利へとつながったのではないかと思います。練習をやらされているとか、罰があるから練習するとか、先生が怖いからとか、そのような気持ちではなく、よい意味での競争が生まれて、先輩がリードしてくれたことで結果がついてきたのです」(加藤先生)

▶︎加藤啓吾先生(国語科/バレー部顧問)

今回、ソフトボール部の優勝が先だったので、バレー部も「私たちも負けられない!」という思いがあっただろうと、加藤先生は考えている。そして女子の勝利が、男子バレー部へのよい刺激にもなったという。

「中学の男子バレー部は、まだ人数が少ないので他校との合同チームで試合に参加しています。中学からバレーを始めた子も、今はバレーが楽しくてしょうがないという感じになりました。今回の都大会で男子も強豪校からかなり点数を取ることができたのは、女子からのよい刺激もあったと思います。生徒たちは、他の部とも切磋琢磨し、クラスメイトは他の部であってもチームメイトと同じぐらいの関係だと思っているようです。ソフトボール部の優勝がかかった試合があれば、先にバレー部の大会が終わっているなら、彼女たちは喜んで応援に行きます。そんなところが、本校のよい校風です」(加藤先生)

見えてきた「文部両道の極み」

梅沢校長先生が目指す「文部両道」は、勉強を頑張る生徒と部活動を頑張る生徒がいるという意味ではなく、1人の生徒が両方頑張る「文部両道」だ。部活動と同じような感覚がつかめれば、部活動を頑張っている生徒たちは学力も伸ばせるはずだと梅沢校長先生は考えている。そのことは、現場で指導している教員たちも実感できるようになってきたという。

「運動部の子たちは、勉強もよく頑張っているなと感じています。私は中1の担任をしていますが、学年の上位3位は部活動をほぼフルにやっている子たちです。これが、校長の目指す『文部両道』なのでしょう。もちろん、それぞれに得意、不得意があります。ですから、部活を頑張りながら勉強も上位というのは難しいですが、手を抜かないことが大切です。宿題をしっかりやる、授業はきちんと聞くなど、最低限のことを頑張るように指導しています」(内山先生)

同校では、ICT教材「すらら」を取り入れている。学習の進捗をコンピュータが管理しているので、以前は、進みが遅いため部活に遅れてくる子がいたという。しかし今は、遅れる子はほとんどいない。先輩たちのアドバイスが後輩に伝わって、引き継がれているのだ。そのようなチームだから、試合でもよい結果がでてきたのではないかと、加藤先生は語る。

「頑張る力や我慢する力など、部活と勉強のどちらで先に養われているかわかりませんが、どちらもいい方向に行っていると感じています。例えば、理解力。部活では、ただ力を入れて打っても飛ぶわけではないので、物理学的なこと、スポーツ科学的なことも教えます。そういったことも、ちゃんと理解して練習しています。一方で、中1のクラスで国語の授業をしていると、理解力がすごいなと思う子が何人かいますが、だいたいソフトボール部員ですね。『主人公が4月に上京し、それから半年が経ち……』という文章があったら、書かれていなくても時間の流れを読み取って『半年後だから今は11月頃』とわかるのです。中1ぐらいだと、文章を流して読んでしまいがちですが、ソフトボール部の子たちは、理解力が優れていると感じます」(加藤先生)

同校では、部活動を頑張りながら、生徒会でも活躍している生徒も多いという。

「運動部の子たちは、中・高の生徒会役員になっている率が高いです。学校行事やボランティア活動、新入生歓迎会などで頑張ってくれています。自分の見えるところだけ見ていてはうまくいかないということを、部活動を通して学んでいるので、それが生徒会活動などにも活かされているのだと思います」(加藤先生)

「梅ちゃん先生の幸せになる授業」がじわじわと浸透

様々な成果が見えてきたことは、梅沢校長先生が進めている学校改革によって、生徒だけでなく教員たちにも変化が起きているからかもしれないと、加藤先生は話す。「梅ちゃん先生の幸せになる授業」*と題して行っている「校長講話」も、生徒たちの間にじわじわ浸透していることが実感できるという。例えば、「ものの見方」。講話では、コップを例に挙げて、コップ以外の名前や役割を考えてみることで、思い込みをなくせば様々な見方ができることに気づくきっかけを作った。

*「東京立正中学校の特色のある教育 #1」参照

「対戦相手によっていろいろな戦い方があることなども、伝わりやすくなったと感じています。小学生の頃は、『エースアタッカーなら、正々堂々とブロックをぶちやぶるべきだ!』と考えていたでしょう。しかし、身長差がある場合は『ボールを当ててアウトにするのが有利な相手』という見方もできるのです。ソフトボールを例にすれば、ピッチャーは全部ストライクを投げてはいません。ボール球を投げて、バットを振らせることもあるのです。生徒たちがこのような考え方を受け入れやすくなったのは、校長講話が伝わったからなのかなと思います。そしてこれは、生き方にも通じることです。大金持ちにならなくても、幸せになる方法はあるでしょう。物事の一面だけを見るのではなく、角度を変えて見ることが大切なのです。今はまだわからなくても、高3になって『やっと意味がわかった!』と言われるぐらいでもよいと思います。焦らなくてもよいのが、中高一貫教育のよいところです」(加藤先生)

校長として就任した2019年の春、梅沢先生が真っ先にソフトボール大会の会場に足を運んで応援したことも、大きな力になったと内山先生は振り返る。

「会場は都心ではなかったにも関わらず応援に来てくれたので、生徒たちも嬉しかったと思います。そしてそれ以降、大会ごとに応援に来てくれて、選手に声をかけ、保護者ともコミュニケーションを取ってくれました。“学校の顏”である校長が気さくに選手たちとコミュニケーションを取ることは、今までになかったことです。学校を挙げて応援してくれていることが生徒たちにも伝わり、それが練習への原動力にもなったと思います」(内山先生)

▶︎梅沢辰也先生(校長)

部活動を通した様々な学びの可能性

加藤先生、内山先生、梅沢校長先生の3人に、それぞれの立場から、今後、部活動を通して取り組んでいきたいことについて聞いた。

「私は、義務教育にプラスして、教科書に書かれたことだけが勉強ではないことも教えていきたいと考えています。人生のことや進路指導につながることもできたら、生徒も教員も、お互いが楽しくなりますし、それを求めている中学生も多いです。入学当初はバレーの選手になりたいと思っていた子が、高2ぐらいで選手は無理だと気づき、何かバレーに携わる仕事がしたいと思うかもしれません。携わる仕事としては、スポーツ医療やスポーツ栄養学から、スポーツビジネスへの発展も考えられます。例えば、岩手県には、バレーボール専用体育館、宿泊施設、コンビニエンスストアなどが入ったオガールベースという複合施設ができました。バレーボール専用体育館を核にして、公民連携で地域活性化を進めたプロジェクトです。しかし、このような形でバレーに携わる道もあることを、授業の中ではなかなか教える機会がありません。課外活動である部活動は、そういったことを教える場として適していると思います」(加藤先生)

「部活動を通して、考える力や人間力も高めてほしいと思っています。与えられたメニューをこなすだけでなく、この練習が何に役立つのか、どう試合に活かせるかを考えること。人間力とは、挨拶や返事、気配り目配り、例えば、お客さんが来たらそっと椅子を出せるようになることです。最近は、積極的に動ける選手が増えてきたと感じています。クラスの中でも、困っている子がいたら声をかけ、手を差し伸べられるようになってきました。こういったことは習慣にすることが大事なので、習慣にできるまでは繰り返し言い続けます。それは、部活動で技術を習得する過程と同じです。自主性にまかせる部分と、習慣になるまで言い続ける部分は、メリハリをつけて指導しています。今後は、ソフトボール部だけでなく、中学全体、そして東京立正全体が、そういう雰囲気になっていってほしいです」(内山先生)

「顧問の先生方のおかげで、このような活動ができていることは、本校にとって大きな財産だと思っています。もし、このような財産がなければ、作るところから始めなければなりません。ですから、この財産をさらに活かしていきたいと考えています。例えば、SDGsという課題に対しても、部活動と絡めて取り組んでいきたいです。誰かのために、何かのために行動するには、部活動の場がぴったりだと思っています。17あるSDGsの目標のうち、自分たちの部活動はどれに取り組むか、どうやって取り組んでいくか、生徒たちが考えるのです。気づいていないだけで、実はすでに取り組んでいる部もあるかもしれません。それを明確にしていけば、部活同士で刺激し合って取り組むことができ、カリキュラムに入れるよりよい形で浸透させることができるでしょう。部活動は、新たな学びや気づきにつなげる活動として最適です。来年度に向けて、東京立正らしいSDGsへの取り組みを準備しています」(梅沢校長先生)

<取材を終えて>
昨年度にインタビューしたソフトボール部の2年生は、「来年度は、まず都大会で優勝して、全国大会への出場を目指します。応援してくれている家族や先生のためにも、勝って恩返ししたいです」と語っていた。3年生になった彼女は、今回の試合には出場していないが、3年生が練習や勉強を頑張る姿を見て、後輩たちは成長したのだ。そして、活動を支えてくれている人たちへの感謝の気持ちも、後輩たちに引き継がれた。3年生も含めて“全員レギュラー”であり、“全員レギュラー”が実現すれば大きな力を発揮できると実感した。新たに準備しているという、部活動を通して行うSDGsの取り組みにも注目したい。

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