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聖園女学院中学校

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デジタルパンフレット

スクール特集(聖園女学院中学校の特色のある教育 #7)

人間形成に必要な力を育てる部活動。生徒のやりがいにつながる環境づくりへ

聖園女学院高等学校・中学校は、部活動を生徒の人間形成に必要な場として、教育的な観点から重視している。部活動の取り組み方や成果などについて、教頭の鹿野直美先生に伺った。

部活動を通して人間関係を築き、社会的スキルを養う

同校の部活動は、いずれも中学1年から高校2年の生徒が合同で活動している。加えて、聖歌隊・ハンドベルクワイアというカトリック校ならではの組織があり、こちらは他の部活と兼ねることができるという。

鹿野先生は部活動の位置づけを、こう話す。「学年を越えた人間関係を築き、人間形成に必要な力を育てる場であると考えています。そして、生徒たちが、『チャレンジ バイ チョイス』をする場でもあります。いわゆる大会やコンクールなどで勝たなくてはいけないといった勝利至上主義ではなく、各自でチャレンジの基準を決めて活動に励む。それが、学校生活のやりがいにつながっていけばよいと思っています。

部活動では、上級生が下級生をサポートし、みんなで支え合いながら、目標に向かっていきます。その過程のなかで、協働する力や社会に出た時に役立つスキルなどが養われます。また部活動には、本校の校訓である『信念』『精励』『温順』の精神が入っています。チャレンジをする人は信念をしっかり持ち、精励、つまり努力を惜しみません。また、仲間と一緒に活動することで、心を開いてコミュニケーションをとる力、温順、が育まれます。

私は聖歌隊の顧問をしているのですが、こちらが指示をしなくても、上級生が下級生に教えるという文化が根づいていると感じます。それは他の部も同じで、外部のコーチからも、『上級生の面倒見がよい』と、よく言われます。また、コーチをはじめ目上の人に対して、きちんと挨拶をする、お礼を言うなど、礼儀も身につきますね。このように部活動は、教育的な観点からとても重要だと考えています」

なお同校は、部活動の安全面を考慮し、年に1度、各部の顧問が目標や指針などを記した計画書を校長へ提出。言葉の暴力などがないよう、ハラスメントの研修なども行っているという。

▶︎教頭 鹿野直美先生

地域や大学など外部と連携した部活動指導

運動系の部活指導は、主に外部のコーチが行っている。また、今年度より、新たに硬式テニス部を「荏原湘南スポーツセンター(ESSC)」のコーチが指導することになった。鹿野先生によると「ESSCは、杉山愛さんや添田豪さんを指導されたコーチや、国体の神奈川県の監督を務めたコーチが所属する名門のテニススクールです。地域貢献をということで、指導していただけることになりました」と経緯を話す。

「ESSCのコーチには、ソックスから指導を受けました。競技のウエアには意味があり、ソックスも足への衝撃などでプレイに影響するため、テニス用を着用したほうがよいと教わりました。ラケットもその生徒に合ったものを選べるよう、スクールのラケットで試し打ちをさせてもらったり、ボールも適した硬さがあるということで、お下がりを寄付していただきました。お下がりといっても、学校のボールよりも新しく状態もよいものです。道具が変わり、プロの視点で一人ひとりに的確なアドバイスをしてもらうことで、技術が格段に向上しました。生徒たちも本質を知ったうえで、テニスを楽しんでいるように見えます」

また、陸上部、バスケットボール部、バレーボール部、ダンス部は、一昨年から玉川大学の「玉川アスレチック・デパートメント(TAD)」に所属する学生から指導を受けている。「TADは、アスリートを育成する組織ですが、コーチングや部活動の指導をサポートする勉強なども行っています。また、玉川大学には教育学部があり、保健体育の先生を養成している保健体育専攻もあります。本校の部活動では教育的な側面を大事にしているので、とても良いマッチングができたと思っています」と鹿野先生。

「玉川大学の学生コーチは、毎月、実践報告書を校長に提出しています。そこには、生徒が伸びたところと、それに対するコメントが細かく書かれており、なかには生徒に目標達成シートを書かせているコーチもいます。生徒も自分の良さを見てくれていることが嬉しいようで、張り切って練習をしています」

他のクラブにおいても、地域の連盟や協会などから、指導者を派遣してもらっているそうだ。「生徒にとっても、学校の教員と違う立場の人から学んだり、いろいろな人とコミュニケーションをとることは、よい体験になると思っています」

生徒の目指したいものに合わせて部活動を運営

一方、文化系は、演劇部、軽音楽部、茶道部、手芸部、科学部、コーラス部、美術部、書道部があり、活動の仕方はそれぞれの部で異なっているという。

「演劇部や軽音楽部、美術部は、指導者から教わるというよりも、自分たちで表現したいテーマをもって自由に活動しています。また、文化系の部活動は、聖園祭(文化祭)が主な発表の場になっています。書道部は、作品の展示のほかに、大きな紙に書く書道パフォーマンスをしたり、コーラス部は、何年も前から手話を使ったコーラスを披露しています。科学部は小学生向けにスライム作り教室を開き、毎回、大人気ですね。

学校以外で活動することもあり、茶道部は指導者の紹介で、鎌倉や大磯の外部のお茶会に参加させてもらっています。最近は、近くの男子校の藤嶺学園藤沢と本校が生徒会活動などで交流があり、今年は本校茶道部が藤嶺学園藤沢に招かれ、お茶会を開くことになりました。
聖歌隊・ハンドベルクワイアも、コロナ禍前は地域の福祉施設や教育センターなどで演奏をしたりしていました。

手話を使ったコーラス

また手芸部では、個人の活動とともに共同作品にも取り組み、現在、講堂に飾っているクロス・ステッチの『最後の晩餐』は、10年余りかけて制作されたものです。顧問によると、背景の壁から天井にかけての紫のグラデーション部分は、刺繍をしても、しても、図案が浮かび上がらないため、気が遠くなるような作業だったようです。けれど、当時の部員は、『ここが一番しんどいところだから、私たちは背景から始める。人物の刺繍のほうが、後輩たちはやりがいがあるだろうから』と頑張っていたと聞いています」

このように、運動系、文化系とも、部ごとに活動の特色があり、専門の指導者から教わっている部もあれば、生徒が主体となって活動している部もある。そのことに対して鹿野先生は「このままのスタンスでよいのかなと思っています」と言う。「直近では、硬式テニス部が外部と幸運なマッチングをすることができましたが、だからといって、全てにプロの指導者を付ければよいとは思っていません。各部活が目指しているものに合わせて、学校がサポートをする。それが、活動のモチベーションだったり、生徒の居場所づくりになるのではないかと考えています」

生徒も先生もやりがいを感じる部活動の在り方を探る

近年は、学校の働き方改革をするため、藤沢市でも部活動の地域移行を推進しているそうだ。しかし、鹿野先生は「部活動が先生の手から全て離れてしまうのは、ちょっと寂しい気がします」と言う。「今後の課題は、先生の役割と外部指導者の役割を明確にし、よりよい連携のもとで、どのようなマッチングが生徒のやりがいにつながるのか、しっかりと吟味をすることです。そして、活動の内容にもよりますが、先生の負担を減らしつつ、先生自身もやりがいを感じられることが、新しい部活動の在り方なのかもしれません。たとえば、コーラス部の顧問は、音楽科の先生ではないのですが、部活紹介のときなどは、生徒と一緒に笑顔で手話コーラスをしています。

また、本校は部活を顧問が1人で抱えるのではなく、必要な時は先生同士で力を貸し合っています。私は音楽科なので、要請があればコーラス部のサポートに行きますし、演劇部の舞台照明や音声などは情報科の先生が教えています。そういう助け合いが自然に行われているのも、カトリック校ならではだと思っています」

最後に鹿野先生は、改めて部活動の大切さを語った。「繰り返しになりますが、部活動は生徒の人間形成に必要なもので、教育と切り離すことはできません。そして本校の部活動は、他者に勝つというより、己に打ち勝つことを大切にしています。自分と向き合い、仲間とともに困難を乗り越えたという経験は、生徒を成長させ、学校の思い出としても長く残るのではないでしょうか」

<取材を終えて>
部活動の外部移行が、国の指針としても勧められているが、同校はその流れに沿いつつも、生徒の希望に合わせた対応をしている。また、同校は全人教育を目指しており、部活動に対しても、私立校がなすべき教育と捉え、真摯に取り組んでいることが鹿野先生の言葉から伝わってきた。

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