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桐蔭学園中等教育学校

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スクール特集(桐蔭学園中等教育学校の特色のある教育 #9)

「ありたい自分」を宣言!キャリア教育の一環として行う「プレゼン型三者面談」

桐蔭学園中等教育学校が行っているキャリア教育は、社会に出たときにどんな自分でありたいか考えることを重視。5年次に行う「プレゼン型三者面談」について取材した。

桐蔭学園中等教育学校では、「新しい進学校」として「アクティブラーニング型授業」「探究(未来への扉)」「キャリア教育」からなる3つの柱を掲げている。桐蔭学園としては4年前から行ってきた「プレゼン型三者面談」を、共学化後の中等教育学校でもキャリア教育の一環として実施。共学1期生が5年次に保護者と教員に向けて行ったプレゼンについて、6年生担任の山本英門先生と6年生の生徒2人に話を聞いた。

三者面談で生徒が「ありたい自分」をプレゼン

同校ではキャリア教育の一環として、1年次から朝のホームルームなどで毎日1人ずつ「1分間スピーチ」を実施。「将来の夢」や「いま一番夢中になっていること」などについて発表し、表現力や傾聴する姿勢、自己肯定感などを養う。日々のホームルームでは、生活や学習をふり返るために「活動日誌」を記入。教員がコメントを書いて返却することで、信頼関係も構築されていく。そしてそれらの集大成となるのが5年次に行う「プレゼン型三者面談」だと、山本先生は語る。

「6年間を通して将来を見据えた『ありたい自分』を問い続け、自分がどうありたいかを形づくるためのキャリア教育を行っています。1分間スピーチや探究の授業で学んできたことをふり返り、自分の言葉で『ありたい自分』について語る機会となるのがプレゼン型三者面談です。ちょうど受験の1年前にあたる、5年生の12月から3月にかけて行っています。ここでしっかりと『ありたい自分』について語れる生徒は、受験も乗り切れると思っています。なぜならば、生徒たちの中にしっかりとした『学ぶ理由』があるからです」(山本先生)

今までとは異なる「新しい進学校」を目指す同校では、「ありたい自分」についてしっかりと話せることと受験に向けて身につける学力は、どちらもなくてはならない両輪だと考えているという。

「大学名や学部ではなく、『あり方』から話せることが5年次での到達点だと考えています。○○大学に行きたい、○○学部で学びたいというだけでは弱いのです。将来どうありたいかという点から、大学での学びについて考えていってほしいと思っています。『ありたい自分』という目指すものがあり、学ぶ理由があるからこそ、勉強を頑張ることができ、受験に向けて学力を上げていくことができるのです。話す道筋は、オリジナルのワークシートを使って準備します。自分は社会でどのように貢献したいか、そのために大学で学びたい学部・学科、それに向けた現状の把握や課題、模擬試験のふり返りから今やらなければならないことなどを、ワークシートに沿って書くことで整理できます。生徒が10分間程度話したら、保護者や教員が内容を深める質問をするという流れです。面談について保護者には、肯定的な反応をしましょうという約束をしています。一般的な三者面談では落ち込むような話をされることもありますが、プレゼン型三者面談は、誰も嫌な気持ちにならない、未来志向の面談なのです」(山本先生)

▶︎山本英門先生(6年生担任・英語科)

6年生(高3)の生徒にインタビュー

▶︎写真左より:Aさん(6年生)、Kさん(6年生)

Aさん(6年生)
Kさん(6年生)

――プレゼン型三者面談でどのようなことを話しましたか?

Aさん 五感の1つである触覚について研究したいと思っているので、それについて重点的に話しました。VRで触覚を再現できるようになれば、かなり汎用性の高いものになると考えています。例えば、医療現場の訓練に触覚が加わるとリアリティの高いものになりますし、エンタメの分野でも触覚が加わると、今まで以上に没入感のあるゲームを体験できると思います。触覚に興味を持ったのは塾に通っているときに、講師だった大学生が触覚の研究をしていたので、論文を見たり触覚についての知識を得たことがきっかけです。テニス部で活動していたときに、イップス*みたいな症状になってしまいました。改善するためには練習が必要なのですが、テニスは広いコートが必要なのでいつでもできるわけではありません。そんなときにVRで触覚も再現できれば、ラケットでボールを打つときの衝撃なども体感できてイップスの改善につながるかもしれません。そういった分野で貢献できたらいいなと思っています。

*「イップス」とは、スポーツ競技や楽器の演奏などの緊張する場面で、いつものようなパフォーマンスを発揮できない状態。強い緊張や不安などの心理的な要因により、無意識的に筋肉が硬直することが原因の1つとされている。

Kさん 私は医師を目指していて、将来なりたい姿は明確だったので、目指すきっかけや大学についての話をしました。今の学力を分析して、できていることとできていないこと、目標に近づくために何をしたらよいかなどです。医師を目指す最初のきっかけは、テレビドラマでした。その頃にタイミングよく、ドクターヘリ見学会を開催している大学があったのです。そこで説明をしてくれた医師のようになりたいと思うようになり、そのためには医学的な知識だけでなく、人間性も大切だと思いました。中学生のときは、友達と関わるのがあまりうまくなかったので、大学では人との関わり方も学べたらいいなと思っています。

――三者面談当日はどのような気持ちでプレゼンしましたか? また、保護者の反応はどうでしたか?

Aさん 当日は、すごく緊張しました。誰も助けてくれないし、自分の将来のことを人に話すことは勇気がいります。あの場で話したことはまだ完璧ではないと思いますが、自分の中にある気持ちをなんとか話そうと頑張りました。家では進路についてあまり深く話していなかったので、親は初めて聞いたという感じの表情をしていたと思います。

Kさん 私は、家でも日頃から将来の話をしています。三者面談で話したことは家でも話していたことだったので、親もだいたい知っている内容でした。ただ、医師になりたいと思ったきっかけは、きちんと話したことがなかったので、そこに関しては「そうだったんだ」という感じで受け止めていたと思います。

――三者面談後に変わったことはありますか?

Kさん 面談の最後に、先生から受験をするうえで「自分の長所は何か?」と聞かれて、改めて自分と向き合うきっかけになりました。そこから、何ができて何ができていないか考えるようになったので、面談を機に将来のビジョンがより明確になったと思います。医師になりたいという気持ちも強くなり、もう後には引けないという感じです(笑)。

Aさん 自分がやりたいことを整理するための、いい機会になりました。目標に向けて学力をどう上げていくか、どのように行動していくか、勉強や周りの人たちとどう向き合っていくかなどを考えるようになったと思います。自分でやりたいことを宣言してしまったので、やはり後には引き下がれないという感じです(笑)。それが原動力になって、勉強も頑張れています。

――面談で課題として挙げたことは改善できましたか?

Aさん 以前は寝るのが遅い時間だったので、翌日の授業で眠くなることもあり、早く寝て早く起きる習慣をつけようと思いました。YouTubeの動画を見てしまうと時間の無駄が多くなるので、3月の修学旅行を機に全部やめると宣言して、今はゲームなども一切やめて勉強に集中しています。合格したら解禁します(笑)。それも原動力となっています。

Kさん 行きたい大学に合格するためには、学力がまだほど遠いので、どの教科で何をすべきか改めて考えました。先生から教科ごとにアドバイスをもらって、やるべきことが明確になったと思います。私も以前は、スマホを触ってしまうと勉強できなくなっていました。動画を見ながら勉強しても身が入らないので、やめると意思表示をして、よく見ていたアプリをこの4月に削除しました。受験の結果はまだ出ていませんが、苦手な科目も自分から勉強するようになるなど、前より成長したと思います。

――この学校のいいところ、好きなところを教えてください。

Kさん 今はもう受験モードに入っている人が多いので、あまり遊びに行ったりはしませんが、休み時間やお昼に友達とおしゃべりするのが楽しいです。授業が教科ごとのクラス編成のレッスン制(習熟度別授業)なので、教室を移動するときにコミュニティが広がってきています。放課後に特別講習(希望制)を受けているので、終わった後に*ラーニングコモンズでその内容でわからなかったことを友達に聞いたり、教え合ったりするといい刺激になります。

*この4月に5・6年生校舎に完成した共用の学習スペース。生徒会の生徒がデザインを考案した。

Aさん 僕も、レッスン制で他のクラスの人とごちゃ混ぜで授業を受けるので、いろいろな人と話すようになり、友達の輪が広がるのがいいなと思っています。家だと勉強が退屈ですが、学校に来ると友達と話してストレス解消にもなるので楽しいです。

ラーニングコモンズはリラックスしながら勉強できる空間

――部活動について教えてください。

Kさん 中学までハンドボール部で活動していました。ハンドボール部は学年で一番といっていいぐらい人数が多いので、いろいろな人とコミュニケーションができて楽しかったです。男子はけっこう強かったので教えてもらったりして、女子も勝てるように頑張ろうと試合に向けて練習に励んでいました。

Aさん 6年間硬式テニス部で活動していましたが、みんな明るくて、愉快で少しやんちゃな仲間でした(笑)。一緒に活動していて楽しかったですし、お互いを高め合える仲間がいたのでいい部活だなと思います。

――将来の目標について教えてください。

Kさん 第1志望は、東北大学の医学部です。

Aさん 国公立は東京大学の理科Ⅰ類、私立は慶應義塾大学の環境情報学部か理工学部を目指しています。

ラーニングコモンズを新設

同校では、4年生まではF棟、5年生からはE棟へ移動し、使用する教室も変わる。共学1期生が5年生になって初めてE棟を使うようになった昨年度から、E棟での生活をよりよくするために生徒会・レボリューション課の生徒たちが主体となって学習環境づくりの活動をしている。

「空いている教室を使って作った自習室は、個人机があるので勉強に集中できます。シーンとした中で勉強する自習室と、教室のガヤガヤした雰囲気の間のような空間を作りたいという提案がレボリューション課からあり、リラックスできてみんなで使えるラーニングコモンズを新たに作りました。企画からレボリューション課の生徒が中心となって、居心地のよいカフェのような、サードプレイスをイメージして作ったスペースです。18時半の最終下校まで使えるので、それぞれの目的に合わせて活用しています」(山本先生)

<取材を終えて>
桐蔭学園に対して以前の進学校としてのイメージを持っている保護者の皆さんは、「新しい進学校」を目指す同校が大きく変わったことに驚くかもしれない。まずは「ありたい自分」を実現するための学びが重要であり、その延長線上に大学受験があると考えているのだ。プレゼン型三者面談は、生徒たちが迷いなく行きたい方向を見据えて受験勉強を進めるために、重要な役割を果たしている。「新しい進学校」を目指す同校のキャリア教育についても、ぜひ注目していただきたい。

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