めいじがくいん
明治学院中学校
スクール特集(明治学院中学校の特色のある教育 #7)
イギリスとオーストラリア、2つの海外研修プログラムがスタート
明治学院中学校では、中3から参加可能な2つの海外研修プログラムがスタート。それぞれのプログラムについて取材した。
明治学院中学校・東村山高等学校では、2024年度から中3~高3を対象にイギリス・スタディツアー(10日間)とオーストラリア・スタディツアー(8日間)を実施。各ツアーのプログラムなどについて、英語科の曽武川道子先生とオーストラリア・スタディツアーに参加した生徒に話を聞いた。
新たな海外研修プログラムがスタート
同校は、50年以上前から国際交流プログラムを推進してきた。高校生を対象に夏休み中に行っている「40日間ホームステイ」(選抜希望制)は、アメリカでクリスチャンの家庭にホームステイ(各家庭に1人ずつ滞在)をするという同校独自のプログラムだ。
「40日間ホームステイは、キリスト教やアメリカの文化に触れる体験ができる本校の伝統的なプログラムです。期間が長いので、クラブ活動をしている生徒たちは参加しにくいということがありました。また、アメリカ以外の国へのプログラムも展開したいという思いもあり、イギリス・スタディツアー(英検3級以上)とオーストラリア・スタディツアー(英検準2級以上)を今年度からスタートさせました。イギリスのツアーは、世界各国から参加する生徒と語学研修やアクティビティを行う10日間のプログラムです。夏休み中の現地校を借り切って、寮生活を送りながら他国の生徒と交流します。こちらのツアーには、今年度は18人が参加しました」(曽武川先生)
一方、オーストラリア・スタディツアーは、ホームステイをしながら現地校に通う8日間のプログラム。現地校に通って授業にも参加するので、参加基準が英検準2級以上となっている。
「現地校では、それぞれの生徒にバディがついて、バディが受ける授業を体験します。ホームステイは1家庭に1人~3人で滞在するので、海外が初めてという生徒も安心です。今年度は20人の枠に29人が応募したので、抽選で20人に絞りました。どちらのツアーも短期間なので、英語をマスターすることを目標の1つとしている40日間ホームステイと違い、異文化体験や異文化交流を主な目的としています」(曽武川先生)
英語科 曽武川道子先生
「違いを知る」貴重な体験
イギリス・スタディツアーは、午前中にはレベル別にクラス分けをして英語の授業を行い、午後はスポーツやゲーム、映画鑑賞、物作りなどのアクティビティが用意されている。遠足の時間には、オックスフォード散策やテムズ川クルーズなども体験できるプログラムだ。
「今回私はこちらのツアーに同行しましたが、中国人の生徒がとても多かったです。そのほかイタリア人やカザフスタン人、フランス人などの参加もあり、いろいろな国の生徒と和気藹々とした雰囲気で様々な体験が楽しめるプログラムとなっています。サッカーやテニス、イギリスの国技でもあるクリケット、輪になって行うゲーム、特技の披露などもありました。特技の準備はしていなかったので、みんなでできるものを考えて、ソーラン節を踊ることにしました。小学校のときにみんな踊っていたので、練習なしでも踊ることができたのです。これらのプログラムを通して、生徒たちは国民性の違いなども感じとったと思います。例えば、中国人の生徒たちは授業中にスマホを見たり、途中で出て行ってしまったりまた戻ってきたりして、かなり自由気ままでした。本校の生徒たちはマナーがいいと褒められたので、自分たちの行動が外国の方たちにどのように見られているかを知る機会にもなったでしょう」(曽武川先生)
スタディツアーに参加した生徒たちは、英語へのモチベーションが上がったと曽武川先生は語る。
「自分の英語が通じたときは喜びを感じ、言いたいことがうまく言えないときはもどかしさを感じたりして、多くの生徒にとって英語をもっと頑張ろうと思うきっかけになったようです。スタディツアーを経験してから、授業中の態度が以前より意欲的になった生徒も少なくありません。オーストラリアのツアーに参加した生徒たちは、現地の学校でどんなことをしているのか見ることができ、授業にも参加しました。イギリスとはまた違う経験から、英語学習への意欲が高まっています。どちらのツアーも好評で、異文化交流や異文化体験という目的は果たすことができました。来年度以降は、もう少し定員を増やして実施できるようにしたいと考えています」(曽武川先生)
オーストラリア・スタディツアーに参加した生徒にインタビュー
Lさん 中3
――オーストラリア・スタディツアーに参加した理由を教えてください。
Lさん 中2のときに旅行でオーストラリアへ行ったことがあり、日本と違って広々として開放的な感じがいいなと思いました。もっとじっくり自然に触れたり、タスマニアデビルなどの動物に会いたいと思ったのが参加した理由です。プログラムに動物園へ行く時間もあったので、タスマニアデビルも見ることができました。
――コミュニケーションはうまく取れましたか?
Lさん みんな優しくてフレンドリーだったので、すぐに親しくなれました。僕に付いてくれたバディは、小6と高1の2人です。先生方はゆっくり話してくれますが、バディは普通のスピードで話したので、最初は聞き取るのが大変でした。高校生のバディは僕が聞き取れないことがわかるとゆっくり話してくれるようになり、日本語も少し話せたので、コミュニケーションが取りやすかったです。
――ホームステイ先はどのような家庭でしたか?
Lさん ドアを修理する仕事をしているご夫婦で、犬を2匹飼っていました。最後の土曜日にはご夫婦が経営している牧場に連れて行ってくれて羊に餌やりをしたり、牧場の中にある果樹園でパッションフルーツを摘んだりして楽しかったです。ホームステイは、高校生と一緒に滞在しました。
――帰国して変わったことはありますか?
Lさん 親と一緒の旅行とは違うので、現地では身のまわりのことを自分でしたり、洗濯を手伝ったりするようになりました。帰国してからもやるようになったので、母も喜んでいます。いろいろやってもらえることは当たり前ではないとわかり、親の存在がありがたいと改めて思いました。
――英語学習に関して、次の目標などはありますか?
Lさん 現地のスラングがあまり聞き取れなかったので、次に行く機会があれば挨拶の言葉などを調べてから行きたいです。学校では習わないような言葉だったのですが、ホストマザーが教えてくれました。
――文化の違いを感じたことはありますか?
Lさん シャワーを浴びる時間が短かったり、バスタブがなかったりして、水が貴重だということがわかりました。お皿を洗うときには、犬にお皿をなめてもらってから洗っていたので、それぐらい水が大切なのだと思います。
――外国との関わり方について変化はありますか?
Lさん 将来は、アメリカやオーストラリアで働きたいと思うようになりました。行く前も少し考えてはいたのですが、行ってみて思いがより強くなったと感じます。医学や科学 に興味があるのですが、規模が大きかったりサポートも充実していて、給料もよいと聞いたので、日本で同じ仕事をするより魅力的だと感じました。
――ソーラン節を披露した反応はどうでしたか?
Lさん 日本で練習していって披露しましたが、オーストラリアにはないタイプの踊りなので、楽しそうに写真を撮っていました。
――日本語の授業に参加してみて、どのように感じましたか?
Lさん どの学年も日本語に興味持っていて、授業では七夕の短冊を書いていました。簡単な日本語を話せる人は日本語で話しかけてきてくれたので、日本語を話したいと思っている人が多いようです。金閣寺について勉強していたので、知っていることを説明してあげました。金閣寺などの寺院に行きたい人や、行ったことのある人も多かったです。親が日本で働いているという人もいました。オーストラリアの人が日本語やお寺など、日本に興味を持ってくれていることはとても嬉しかったです。
――卒業までにまた海外へ行ってみたいですか?
Lさん 来年の40日間ホームステイにも参加したいので、説明会に応募しました。オーストラリアにまた行きたいので、日常会話のレベルを上げておきたいです。今、英検2級の1次試験には合格しているので、これから2次試験の対策を頑張ります。
<取材を終えて>
イギリスとオーストラリアのプログラムには、それぞれの魅力がある。英検級が参加条件となっているので、参加するために英語を頑張ろうという生徒も増えるだろう。短い期間ではあるが、インタビューしたLさんは、多くのことを吸収して成長したと感じられた。2024年度3学期には、高1と高2を対象としたニュージーランド・ターム留学(3カ月間)もスタートし、高校生になると海外体験のチャンスがさらに広がる点にも注目していただきたい。