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明治学院中学校

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スクール特集(明治学院中学校の特色のある教育 #3)

礼拝から1日が始まる キリスト教に基づく「人づくり」

キリスト教に基づく人格教育を基盤に、中・高一貫教育を展開。150年以上にわたり受け継がれてきた創立者の精神や、2019年にスタートした高大接続科目などを取材した。

創立者・ヘボン博士の精神を受け継ぎ、「キリスト教に基づく人格教育」を教育理念として掲げている明治学院中学校。同校にとって重要な意味を持つ毎朝の礼拝や大学との連携による新たな取り組みなどについて、校長の伊藤節子先生に話を聞いた。

宣教医であり、教育者であり、事業家でもあったヘボン

同校の創立者は、ヘボン式ローマ字を考案したことで知られるヘボン博士。開業医として医療に携わりながらもキリスト教の伝道に使命感を持っていたヘボン博士は、開国したばかりの1859年にクララ夫人とともに来日した。伝道や医療活動を行いながら、日本の将来を担う若者を育成するために、1863年にヘボン塾(英学塾)を開校。このヘボン塾が、明治学院の源流となる。

「ヘボン博士は、ニューヨークで小さな医院を開業して大病院にまで発展させた評判のよい眼科医でした。しかし、伝道への強い使命感からその病院や自宅を売却して来日したので、たいへん惜しまれたそうです。来日した一番の目的はキリスト教の伝道でしたが、眼科だけでなく外科手術などの医療活動も無料で行いました。日本最初の洋式目薬『精錡水』を処方したのも、ヘボン博士です。医療活動と並行して、ヘボン博士夫妻は日本人に対する教育活動を開始しています。さらに、日本語のアルファベット表記を可能にしたヘボン式ローマ字も考案しました。伝道のためには聖書を日本語に訳す必要があり、辞書を編纂するためにローマ字が必要になったのです。ヘボン博士は、聖書の日本語訳事業でも中心的な役割を担っていました。このように優れた人格者であるヘボン博士にあやかり、高い志とそれを可能にする実力をつけることが、明治学院全体の教育目標として受け継がれています」(伊藤校長先生)

道徳人・実力人・世界人の育成

1963年に明治学院東村山高等学校が開校し、1966年には明治学院中学校が白金から東村山に移転。中高一貫教育の体制が、東村山の地に整った。当時の校長であり、7代目明治学院学院長の武藤富男氏が掲げた教育目標が、現在も受け継がれている「道徳人・実力人・世界人の育成」である。

「道徳人とは、自分の命には意味があること、それぞれに使命があることに気づき、社会貢献できる人です。実力人は、その使命や目標に向かって、自分に与えられている能力や才能を高めて発揮できる人。そして世界人は、世界を視野に、世界を舞台に働くことができる人です。これらを育む土壌にあるのが、自分を大切にするのと同じように、隣の人も大切にしようという『隣人愛』。中高時代は、自分に自信がなくて自分を大事にできない子もみられますが、それぞれがかけがえのない命であり、『あなたが大事』であることに気づいてほしいのです。そして同じように、『隣の人も大事』にできるようになるにはどうしたらよいか、それをわかって卒業していってほしいと思っています」(伊藤校長先生)

中高時代は成長への前段階であり、種まきの段階だと考えていると、伊藤校長先生は語る。

「聖書の一節に、『私(弟子であるパウロ)は植え、アポロ(力のある指導者の一人)は水を注いだ。しかし、成長させてくださったのは神です』という言葉があり、その子の中にあるものが大きく成長していけるように、種をまいて水を注ぐことが中高時代の役割だと考えています。ですから、学習面だけでなく、生活面の情報なども教員間でしっかりと共有しています。中学は各学年4クラスありますが、学年主任や担任などで構成される学年団全員で4クラスを担任しているという感覚です。学年団が集まる学年会を毎週開き、校長と副校長、中高それぞれの3学年主任が集って、週1回、生徒たちの情報を共有する場を設けています」(伊藤校長先生)

明治学院大学の単位を先取りできる「高大接続科目」

2013年に創立150周年を迎えた同校は、200周年、さらにその先の未来を見据えて、「隣人と生きる世界市民の育成」を明治学院全体のミッションとして掲げ、大学との連携もより強化している。その1つが、2019年から始まった明治学院大学単位認定講座「教養原論」だ。「推薦進学コース」の高3生を対象に、「アカデミック・リテラシー」で行う授業の一部を高大接続科目とし、明治学院大学の履修単位として認定する。

「明治学院大学各学部の教員による、質・量ともに大学レベルの講義を全14回履修し、大学1年生春学期の単位を先取りできる講座です。2019年度は、『他者と向き合う』を共通テーマとし、『世界を分断する壁』(国際学部国際学科)、『他者とのコミュニケーションの基盤を認知心理学から考えてみよう』(心理学部心理学科)、『法律学からみて:成年後見制度概論』(法学部法律学科)、『映画を読む』(文学部芸術学科)など、様々な切り口で講義が行われ、生徒たちはレポートなどに取り組みました」(伊藤校長先生)

この講座は、それぞれの学問の課題設定や方法、アプローチの多様性を理解することを目的としており、よりスムーズに大学の学びへと移行できる。このほか、明治学院大学への推薦進学以外を目指す「受験コース」も、演習中心の授業や、朝や長期休暇中の講習などにより、多様な進路に向けて強力にバックアップする体制がこれまで以上に整った。面談、模擬の解きなおしノート作成、出願指導など受験希望の生徒たちへの手厚いケアも行われている。

1日の始まりに欠かせない「礼拝」

同校では、毎朝20分間(2021年度から15分間)の礼拝を、中学生は講堂、高校生はチャペルに集まって行っている。約8割の生徒が入学後に初めてキリスト教に触れるが、同校での思い出を記す卒業文集には、礼拝のことを書く生徒も多いという。

「礼拝は讃美歌から始まり、聖書の解説をした後で、その日担当になった教員が様々な話をします。世の中で話題になっていること、ボランティアに行った話など、様々な視点の話を聞き、そこからいろいろなことを考える静かな時間です。中には退屈に思う話もあるかもしれませんが、何かは生徒たちの心に届いていると思います。毎朝のことなので、卒業後に礼拝がなくなることに寂しさを感じる生徒も多いようです」(伊藤校長先生)

新型コロナウイルスの影響で一斉休校になった際も、同校では授業よりも先にオンラインでの礼拝が開始された。2020年度から新入生全員にタブレット端末を貸与する予定だったが、休校前には間に合わなかったので、生徒たちは共通の端末がない状態でのスタート。家庭のインターネット環境を調査したところ、家族で端末を共有しているケースが少なくなかったので、都合のよい時間に視聴できるオンデマンド形式でリモートラーニングを行ったという。

「本校の教育にとって礼拝はとても大切なものなので、まずは礼拝の配信から始めました。礼拝に関しては8時40分に視聴してすぐにフィードバックしてもらい、フィードバックがなかった生徒には連絡。毎朝同じ時間に視聴することで、乱れやすい生活リズムを整える意味もあります。保護者から『一緒に見ています』という声をいただくこともあり、保護者の方たちも礼拝に参加できるよい機会にもなったようです。学校再開後も、感染防止対策として校内放送での実施となるので、早くみんな一緒に集まって礼拝ができるようになることを願っています」(伊藤校長先生)

リモートラーニングはテストや課題提出でフォロー

休校中の授業、生徒や家庭との連絡には、以前から使っているモバイルメールやClassi、Google Suiteを使いわけて活用。授業はライブではないので、きちんと授業を受けたかどうかのフォローが重要だったという。

「リモートで行った授業は、対面でやり直さないと決めています。通常、授業は45分ですが、動画で45分は生徒の集中力ももたないので、短くまとめるように各教員が工夫しました。ライブではないので、生徒がきちんと受講したか把握するために、課題の提出やテストなどをしっかり実施しています。Classiの学習記録でのやりとりなどは、私も毎日確認していました。教員たちのICT技術も急成長しています。Googleのビデオ会議システム「Meet」を使って担任と面談をした担任もいた他、心のケアとして、カウンセラーとつながれるようにもしました。急な休校となり、生徒や保護者の方たちも戸惑ったことと思いますが、ご理解やご協力をいただき、学びを止めることなく学校再開の日を迎えることができました。リモートラーニングも対面授業に代わるものとしてカウントしているので、夏休みは1か月とる予定です」(伊藤校長先生)

リモートラーニングと並行して、学校再開に向けて校内での感染防止対策も進められた。

「手洗いが基本なので、登校してすぐに手を洗えるように、校門の近くに手洗い場を仮設でたくさん作りました。校内の手洗い場も増設したり自動水栓に変えたり、換気のために網戸の手配もしています。手洗いが難しい場面の手指消毒にはエタノールを、手すり、ドア、机イスなどの消毒にはイソプロパノール(アルコールの一種)を用意。サーモグラフィーも2台設置するなど、できる限りの対策をしています。これらの対策やリモートラーニングを行うために、教員や職員が迅速に動いてくれたことに感謝しています。生徒たちが元気に集い、豊かな学校生活を続けられるように、今後も学校としてできる対策を徹底して行っていきます」(伊藤校長先生)

▶︎臨時に設けられた手洗い場

▶︎登校するとサーモグラフィーで体温をチェック

<取材を終えて>
5万6千平方メートルの広大な敷地は緑豊かで、生徒たちが伸び伸びと学校生活を送れる環境が整っていると感じられた。2016年に全面人工芝化された2万平方メートルのグラウンドは、その広さに圧倒される。理科の授業などでも使われるビオトープを散策してみると、里山を訪れたような心地よさに癒された。明治学院大学は文系なので、同校にも理系のイメージはないかもしれないが、ビオトープをはじめ、実験を行う理科教室や器具も充実しており、数学の習熟度別少人数制授業などで、きめ細やかな指導をしている点にも注目していただきたい。

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