スクール特集(武蔵野中学校の特色のある教育 #1)
中1から週6時間オールイングリッシュ! 英語で英語を学ぶ「LTE」
武蔵野中学校では、英語で英語を学ぶ「LTE」を週6時間、日本人教員による英文法の授業を週4時間実施。実践的な英語力を身につける独自プログラムについて取材した。
武蔵野中学校では、英語で英語を学ぶ「LTE(Learning Through English)」(週6時間)と英文法の授業(週4時間)により、基本的な英語力に加えて「他人の話を聞く」「自分の考えを伝える」力を育成。英語教育の特色について、大橋義弘先生(中学校主任)と渡瀬宏先生(中学校副主任)、生徒2人に話を聞いた。
自然な形で英語力が身につく「LTE」
同校では、「他者理解」という教育理念のもとで、グローバルな時代に即応した「国際人」を育成。1967年にはリスニングに特化したLL(Language Laboratory)教室を東京の私立学校で最初に設置し、同年に沖縄の修学旅行でホームビジットを開始するなど、早くから時代に合わせた実践的な英語教育に力を入れてきた。
▶︎大橋義弘先生(中学校主任)
「各分野でグローバル化が進む中で、本当の意味で使いこなせる英語を身につけられるプログラムが必要だと考え、2009年度からLTEをスタートさせました。本校の生徒は、中1から週6時間はネイティブ教員による英語のシャワーを浴びているので、外国人との会話も物怖じせずにできるようになっていきます。実践的な英語力を身につけるためには、場慣れしておくことが重要です。最初の頃は、ネイティブ教員から話しかけられたら圧倒されると思いますが、数ヶ月で楽しいと感じられるようになっていくのです。ファーストステップとしては、英語が楽しいと感じられることが大切だと思います」(大橋先生)
ネイティブ教員によってオールイングリッシュで行われる「LTE」は、「英語で英語を学ぶ」がコンセプトになっている。日常生活におけるやりとりの中で英語を使い、自然な形で英語を学ぶことが一番の狙いだと大橋先生は語る。
▶︎LTEの授業
「英語を使ってコミュニケーションをする中で、グローバル社会で必要な7つのスキル(Share・Explore・Present・Try・Support・Self-Manage・Reflect)も身につけさせるプログラムとなっています。話を一方的に聞くだけの座学ではなく、とにかく英語を使ってみようと様々なテーマが用意されているので、わからなくてもまずはトライしていきます。このプログラムを通して、協力して課題に取り組み、困っている人がいたらサポートし、積極的に関わってトライしようとする力なども身についていくのです」(大橋先生)
英語をツールとして育まれる「プレゼン力」
「LET」は、グループワークやディスカッション、そしてプレゼンテーションを英語で行うことで、コミュニケーション力や実践的英語力を高めていけるように構成されたプログラムだ。
「本校は国際教育を行う団体と提携しており、LTEは東京インターナショナルスクールなどで行われている探究型プログラムをもとに作られた独自プログラムです。ネイティブ教員が制作したオリジナルのワークシートなども使いながら、楽しく英語に慣れていけるように授業を行っています。ワークシートやノートを使って単語や例文を学んでから、与えられたテーマについて英語でプレゼンを行うなど、英語に慣れていない生徒たちでも取り組みやすいプログラムです。探究的な学びを通して、英語だけでなく、学習者として大切な姿勢や捉え方を学んでほしいという狙いもあります」(渡瀬先生)
週4時間ある英文法の授業で、「LTE」で学んだことを日本人教員が整理してまとめていくので、「LTE」で学んだ表現などへの理解も深まっていく。
「6年間LTEの授業を受ける中高一貫生は、高校3年次に自分でテーマを見つけて調べ学習をして、構成を考えて英語でプレゼンするところまで行うことが最終的なゴールです。中高一貫生は学校からiPadを貸与されており、発表用のスライドなどもすべて英語で作成しています。LTEで培った力を実践する場も、中学と高校のそれぞれで用意しています。中3の6月に修学旅行の位置づけとして沖縄で実施しているのが、クロス・カルチュラル・プログラムです。宮古島などでの民泊体験と沖縄本島で外国人ファミリーと共に過ごすホームビジットなど、文化交流を行います。中3で海外生活を疑似体験し、高1では選択制でマルタ島語学研修(2週間)かニュージーランド3ヶ月留学で実際に海外生活を体験します。海外生活を経験した後に全員英検を受検しますが、中高一貫生は2級以上の取得率が高いです。中3で英検2級を取得する生徒もいますし、ネイティブ教員による英語のシャワーと並行して、日本人教員による英文法のまとめを行うことで、自然と英検取得に必要な力もついてきます。このような学びを通して、海外大学へ進学する生徒も出てきています」(大橋先生)
「LTE」を通して身につく力は、年内入試に必要な力のベースにもなっているという。
「総合型選抜や推薦型選抜では、自分のことを自分で語れる力が必要となります。iPadにはKeynoteというアプリが入っているので、プレゼンの資料も作りやすいです。LTEだけでなく、様々な教科でプレゼン用の資料を作ったり、行事の振り返りなどのプレゼンを行う際にも、生徒たちはどんどんiPadを活用しています。高入生は内進生の約10倍の人数がいますが、プレゼンの力を比較してみると、人前で自分たちの考えを発表する機会が多い内進生の方が圧倒的に長けていると感じます。ニュージーランドやマルタ島での海外経験も含めて、内進生は総合型選抜や推薦型選抜で語れる材料も多いです。7つのスキルが磨かれていくことで、総合型選抜や推薦型選抜に必要な力も自然に培われていきます」(渡瀬先生)
▶︎渡瀬宏先生(中学校副主任)
▶︎LTEでプレゼンテーション
▶︎民泊
生徒にインタビュー
Mさん(中2)
Sさん(中1)
――この学校を受験した理由を教えてください。
Mさん ずっと水泳を習っていたので、中学校でも続けたいと思っていました。通える範囲の私立でプールがある学校があまりなかったのですが、この学校には温水プールがあって練習しやすいと思ったので受験しました。入学後は、一般水泳部に入部して水泳を続けています。
Sさん 姉が武蔵野高校のバスケットボール部に入っているので試合を見に来たら、チームの雰囲気がよくて、私もこの学校のバスケ部に入りたいと思いました。ミスをしても「次があるから大丈夫!」と励まし合ったり、円陣を組んだりしていたのが印象に残っています。バスケ部は、中高一緒に活動しています。
▶︎Mさん
――入学前の英語学習歴と「LTE」の感想を教えてください。
Mさん 小学生の頃は、学校以外で英語の勉強はしていませんでした。「LTE」の授業では、最初の頃は先生が何を言っているか全くわからなかったのですが、やっていくうちに段々わかってきて今はとても楽しいです。先生の言っていることがわかるようになってきましたし、先生が話している中に知っている単語が増えてくると嬉しくなります。
Sさん 小学生の頃は、週1で英語を塾で習っていました。スピーキングやリスニングではなく、筆記が中心の勉強です。「LTE」の授業では、やはり最初は何を言っているかさっぱりわかりませんでしたが、最近は内容もわかるようになったので楽しくなってきました。
▶︎Sさん
――「LTE」の授業はどのように行っていますか?
Mさん 新しい単元に入ると、みんなでスピーキングをしたり、例文を書き出して発表してから、プレゼンの資料を作る作業に入ります。今取り組んでいるのは、3単現(3人称単数現在形)のsについてです。3単現のsが付く例文に合わせた動画を作って、その動画を流しながらプレゼンをします。例えば、「彼はボールを投げる」という英文を説明するために、その動作をしているところを友達にiPadで撮影してもらって動画を作ります。
Sさん ワークシートを使ったり例文をノートに書いたり、宿題でその単元についてまとめてからプレゼンの準備をします。いきなり自分で考えるのではなく、プレゼンに向けた準備段階があるのでやりやすいです。今日の授業では、自分の住んでいる市や区の好きな場所についてのプレゼンをしました。英語でスライドを作って、それを見せながら英語で1人2分ぐらいの説明をします。前に出て発表するので緊張しましたが、間違えずにできました。
――勉強に関する目標を教えてください。
Mさん 英語を頑張って、大学を受験する前には英検2級を取得したいです。取得しておけば、大学受験の強みにもなると思います。
Sさん 勉強も部活動も頑張って、文武両道を目指したいです。バスケ部は中学生の部員が少ないので、まだ大会には出られません。今は、高校生に迷惑をかけないように練習して、高校生になったら大会を目指して頑張ります。勉強は、授業で学んだことなどを積み重ねて、テストでその成果が出せるように頑張りたいです。海外に行って英語を使ってみたいので、英語の勉強も頑張っています。
――将来についてはどのように考えていますか?
Mさん 理科が好きで、特に物理学や天文学に関心があります。理系の学部に進んで、宇宙について学ぶことが今の夢です。
Sさん 大学に進学したいと思っていますが、学部などはまだ詳しく決めていません。バスケ部の活動も、今のところは続けていきたいです。バスケットボールは、いい場所にパスができたり、できなかったことが徐々にできてくるなど、上達が実感できることが楽しいです。
<取材を終えて>
同校の「LTE」は、英語をツールとして使い、調べたり考えたことを人に伝わるように発表する経験を重ねていく。インタビューした2人が、「最初はわからなかったけれど、段々わかるようになって楽しくなってきた」と答えていたのが印象的だった。入学前にネイティブの英語に触れる機会がほとんどなかった生徒でも、取り組みやすく、楽しく学べるプログラムであることが2人の話からも伝わってきた。