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三輪田学園中学校

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デジタルパンフレット

スクール特集(三輪田学園中学校の特色のある教育 #7)

自分で考えて行動する力を磨く探究ゼミ「MIWADA-HUB」始動!

2021年度から、総合学習の時間に「MIWADA-HUB(探究ゼミ)」を導入。前期の活動内容など、9つの講座の中から3つを紹介する。

三輪田学園中学校では、2021年度から総合学習の時間を使って「MIWADA-HUB(探究ゼミ)」をスタート。大学のゼミのように生徒が自ら選んだ講座に所属し、その中で課題を設定して、情報収集、整理・分析、発表を行う。ゼミを担当する安田智昭先生(社会科)、三浦槇子先生(家庭科)、依田美希先生(国語科)と、それぞれのゼミに所属している中2の生徒に話を聞いた。

中学で「学び方」を学び、高校での探究につなげる

2022年度から高校で新しい学習指導要領が実施され「古典探究」や「地理探究」「日本史探究」など「探究」のついた科目が7つ新設される。自分で課題を発見し、調べることが重視される科目が増える中で、高校での学びにうまくつなげていくためにも「MIWADA-HUB」のような学びが必要だと考えたと安田先生は説明する。

「自分で課題を発見し、自分で頭を働かせて答えを見つけていく学習が求められています。そのような中で、中学の段階から『学び方』を学ぶことが必要だと考えました。「MIWADA-HUB」は、中2と中3の2年間、前期と後期にそれぞれ別のゼミに所属します。4つの講座で学び方を学び、2年間を通して高校への学びにつなげて行きたいと思っています」(安田先生)

今年度から中2で導入された「MIWADA-HUB」は、主要5教科に保健体育、家庭科、情報、教科横断(日本の伝統文化)を加えた9講座。生活に関連したテーマを設定し、実験や観察を通した探究(理科)、英語の論理構成を知り、論理的思考力を養うディベート(英語)など、生徒の興味や関心がそれぞれ違うことを考慮して多様な講座が用意されている。

「ゼミの担当教員は1人ですが、内容については各教科の教員たちで話し合って決めました。講座を選ぶ前に、生徒たちは「will-list」を作成しています。将来やってみたいこと、今興味があることなどを30個、リストアップしてみるのです。その30個が9つの講座のどれと関連が深そうか考えさせて、3つの講座に絞りました。その3つから、前期と後期に1つずつ、2つのゼミに所属することになっています。中学生のうちに興味や関心のある分野を見つけることは、高1や高2で進路について考えるときのベースにもなるでしょう」(安田先生)

国語科のゼミ「数奇☆モノ!!」(担当:依田美希先生)

「数奇☆モノ!!」と題した国語科のゼミでは、頭の中にある大好きなもの、つい考えてしまうものから「問い」を生み出すことを目指す。担当している依田先生は「自分らしい発想」を探るために、擬人化した動物たちが描かれた鳥獣戯画を使ったという。

「初回に趣味や好きなものを聞いたら、生徒たちはドラマやアニメ、俳優など、具体的なものを挙げました。どこが気になっているのか、自分らしい発想はどこにあるかなど、探究につなげられる視点をまだ持っていなかったのです。そこで、鳥獣戯画から5つの場面を選んで、セリフを想像して吹き出しを書くという作業をしてもらいました。その作業は、自分にはこんな視点があるという気づきにつながり、他の人と共有することで、同じ場面に対して別の視点があることにも気づきます。実際にやってみると、何か物を売っている場面や悪代官がいる場面をイメージするなど、オリジナルの物語が描かれていました」(依田先生)

ほかにも、宮沢賢治の小説を映画化した『銀河鉄道の夜』(アニメ版)や芥川龍之介の小説『藪の中』を題材に、自分らしさを探していった。

「アニメ映画『銀河鉄道の夜』は、主人公たちが動物の姿で描かれています。動物が服を着ていることが気になる子もいれば、気にならない子もいるでしょう。様々なシーンが、自分だけが気になるポイントに気づくきっかけになると思って取り入れました。芥川龍之介の『藪の中』は、犯人が誰か明かされていないので、答えは1つではありません。小説の中から根拠を探して仮説を立てることは、文学研究のみならず、全ての探究活動にもつながっていきます。根拠固めのやり方を教えたり、グループ学習で友達と意見交換したりしながら、自分の意見を述べることを学んでいきました」(依田先生)

前期の最後には、自分で決めたテーマについて個人発表を行う。生徒たちは自分が気になっていることに向き合えるようになり、成長が感じられたと、依田先生は語る。

「例えば、『人にはなぜ苦手なものがあるのか』『なぜ学校は朝から通わないといけないのか』などをテーマに選んでいました。前期に探究とはどんなものかを学んだので、後期には、問いの立て方などが一段階上がった状態で探究していけると思います。三輪田祭でも生徒たちの発想力には驚かされているので、後期のゼミでどんな探究をしていくか楽しみです」(依田先生)

▶︎依田美希先生

「数奇☆モノ!!」を選んだ生徒2人にインタビュー

――どのような課題に取り組みましたか?

Yさん 先生が選んだ鳥獣戯画の場面を見て、セリフを考えたのが面白かったです。同じ場面を見ても、みんなそれぞれ考えが違っているとわかり、自分でも他の人の視点で考えられるようになったら、力になると思いました。

Sさん 芥川龍之介の『藪の中』を読んだり、映画『銀河鉄道の夜』を見て、自分の考えたことをみんなで共有するのが興味深かったです。自分とは違う考えの人がいることがわかって、面白いなと思いました。これからも、もっといろいろなテーマで他の人と考えを共有してみたいです。

▶︎Yさん

――どのようなテーマで発表しますか?

Yさん 私は、何のために勉強するのかずっと疑問に思っていたので、勉強する理由について調べています。インターネットではたくさんの人の意見がわかり、本からは著者の考えが詳しくわかりました。それらを自分の考えと照らし合わせて、レポートをまとめています。

Sさん 私はお笑いが好きなので、人間はなぜ笑うのかについて科学的に調べています。笑いの意味について辞書で調べたり、論文も少し読んだりして、自分なりに調べたことをなんとかまとめられそうです。

▶︎Sさん

――将来の夢や目標を教えてください。

Yさん まだ決まっていませんが、今後、夢や目標が見つかったときに何でもできるように今から力をつけていきたいです。

Sさん 私は、ファッションデザイナーになりたいです。ゼミを通して、服などをデザインするためにも、人と考えを共有することが活かせると感じました。

家庭科のゼミ「エシカルライフ」(担当:三浦槇子先生)

「エシカルライフ」では、エシカルとは何かを学び、フェアトレードや食品ロスなど、生徒が関心のあるテーマについて探究する。最初に、人や社会、地球環境などを考慮して作られた商品の目印となる認証マークについて調べながら、どこに関心があるか明確にしていくことから始めたと三浦先生は説明する。

「マークについて調べた後は、プラスチックゴミや児童労働などそれぞれのテーマで探究を始めました。掘り下げるレベルの差はありますが、通常の授業より、あれこれ指示しなくても自分たちで進めていく力がついてきていると感じています。できあがってくるもののレベルも高くなってきました。生徒たちからは『自分と同じ興味を持った人が集まって、いろいろ意見を交わしながら進めるのが面白い』という声が聞かれます。環境問題などに対して、似たような考えを持つ仲間と話ができることが楽しいようです。発表用のスライドも、楽しみながら、どのようにすれば伝わるか工夫しています」(三浦先生)

緊急事態宣言下となり、前期は授業の中で学校の外に行くことが難しかった。しかし、学校以外で学ぶことも大切だと三浦先生は考えている。

「夏休み前に、自分でできる人は何か行動してみてほしいと伝えました。すると、家の中でゼロウエイストにチャレンジしてみたり、スーパーに話を聞きに行く子がでてきたのです。4月から探究ゼミをやってみて、やはり体験が大事だと思いました。本を読んだりインターネットで調べたりすることにもう1歩プラスして、生の体験が加わるとさらに深まります。状況にもよりますが、後期は簡単なことでもいいので、みんなでどこかに行って、学校の外で何かできたらいいなと思っています。このゼミを選んだ子たちは、自分が知ったことを周りにも伝えたいという気持ちを持つ子が多いです。できれば、外に発信する機会も作りたいです」(三浦先生)

▶︎三浦槇子先生

「エシカルライフ」を選んだ生徒2人にインタビュー

――どのような課題に取り組んでいますか?

Fさん 私はアニマルウェルフェアをテーマに、畜産の動物たちが野生本来の飼われ方を目指すためにできることなどを調べています。学校で開催された環境活動家・露木志奈さんの講演会がきっかけで、動物福祉に興味を持つようになりました。今は、ニワトリの飼育環境や卵の値段などについて調べています。夏休みには、スーパーに行って店長さんにインタビューもしました。

Tさん まず、サステナブル認証マークについて調べて、その後、エシカルに関連するワードの中から、自分が気になることを調べました。私は、ファストファッションについて調べています。ファストファッションが作られる現場の問題点などを扱った『ザ・トゥルー・コスト』という映画を見て、調べてみようと思いました。

▶︎Fさん

――調べてみて、どのようなことがわかりましたか?

Fさん スーパーで売られている卵は、飼育環境の違いによって値段の差があることがわかりました。安く売られているのは、小さなケージで飼育されているニワトリの卵です。卵をスーパーに並べるのではなく、こだわりのお店や専門店で販売したり、SNSなどでも発信して、アニマルウェルフェアについてもっと知ってもらえるようにできたらいいと考えました。

Tさん 洋服のコストを抑えるために綿花の栽培に大量の農薬を使うと、人体に悪い影響が出ます。コストを抑えるためにはいろいろな人が苦労しているので、すぐに捨ててしまわずに長く使っていけたらいいと思いました。

▶︎Tさん

――将来の夢や目標を教えてください。

Fさん 夢は看護師になることです。ナイチンゲールの伝記を読んでなりたいと思ったのですが、コロナ禍で働く医療従事者の方たちを見て、より強く思うようになりました。夢とは別ですが、化粧品を開発するときの動物実験などにも関心があります。ウサギの皮膚を使って実験してから発売されているものがあると知り、胸が痛みました。日本の現状やエシカルな化粧品なども調べてみたいです。

Tさん ゼミで調べていくうちに、エシカルやSDGsについていろいろ知ることができましたが、まだ知らない人もたくさんいると思います。そのような人たちに、情報を発信する活動ができたらいいなと思っています。

社会科のゼミ「歴史周辺散歩ブラみわだ」(担当:安田智昭先生)

「歴史周辺散歩ブラみわだ」では、学校周辺を歩きながら歴史を学ぶ予定だった。しかし、緊急事態宣言下となり、1回しか散歩にでかけられなかったことが残念だと安田先生は語る。

「1回だけでしたが、古地図と現代の地図の両方を見ながら歩いてみました。飯田橋の駅周辺には、今はビルが建っていますが、昔は水際に作られた荷揚げ場があったのです。『揚場町』という地名が残っていることを説明したり、荷揚げしている様子が描かれた浮世絵を見せたりもしました」(安田先生)

自分で選んだゼミなので、普段の授業以上に積極的に楽しそうに取り組む姿が見られたという。

「それぞれが決めた場所について調べて、パワーポイントでスライドを作って発表しました。例えば、学校の近くにある『一口坂』は『いもあらい坂』とも呼ばれています。このいもは疱瘡(天然痘)を表しているので、江戸時代の病気を調べたりして写真付きで解説をつけた生徒もいました。その場所をヒントに、それぞれの視点で話を広げて自分で問いを見つけることができたのです。あと2回授業が残っていますが、足りなかった部分などをもう一度調べ直して、レポートをまとめることになっています。前期に学んだまとめ方などを、後期のゼミにも活かして探究を深めていってほしいです」(安田先生)

▶︎安田智昭先生

「歴史周辺散歩ブラみわだ」を選んだ生徒2人にインタビュー

――どのような課題に取り組みましたか?

Uさん 学校の近くにある歴史的な場所について調べて、パワーポイントにまとめてみんなの前で発表しました。お散歩に行けなかった分、教科書に載っていない専門的なことを先生が教えてくれたのでよかったです。私は、湯島聖堂について調べたのですが、作った理由やそのときにどんなことが日本で起きていたか、どのように使われていたかなどが詳しくわかりました。

Kさん お散歩は1回だけでしたが、実際にその場所に行って、見て、先生に説明してもらえて楽しかったです。古地図は、今の地図と違ってわかりにくかったですが、先生が見方を教えてくれたので、自分でも古地図を見ながら「今の地図だと、どこだろう?」と考えてみました。

▶︎Uさん

――調べ方について、どんなことを学びましたか?

Uさん 内容的に足りないところもあったので、先生が補足してくれました。自分が思っていたよりもっと深いところまで調べた方がいいとわかったので、次はそこまで意識してみようと思いました。発表用の資料を作るときは、前期に学んだことを後期のゼミで活かしたいです。

Kさん 新撰組ゆかりの跡地について調べたのですが、マンションなどに挟まれて、小さな鳥居があるぐらいで、詳しく調べられませんでした。結局、新撰組のことを調べる感じになってしまったので、跡地についてもっと詳しい本などで調べられたらよかったです。

▶︎Kさん

――将来の夢や目標を教えてください。

Uさん 先生に言われて興味を持つのではなく、きっかけを自分で見つけて興味を持って、調べ、学べる人になりたいです。

Kさん もともと歴史が好きなので、歴史に関わる仕事ができたらいいなと思っています。

<取材を終えて>
「数奇☆モノ!!」のゼミで、鳥獣戯画や映画、小説を題材にして、自分らしさを見つけていった結果、生徒たちの視点が大きく変ったことが印象的だった。環境問題に関心のある生徒たちが刺激を受けながら高め合い、通学路の地名から江戸時代の出来事を知るなど、どの講座も興味深い。インタビューした生徒たちからも、楽しく、積極的に取り組んでいることが伝わった。

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