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デジタルパンフレット

スクール特集(本郷中学校の特色のある教育 #4)

料理や裁縫も大切な経験! 可能性を狭めずに自分の力を磨く6年間

難関大学への進学実績や運動部の活躍が注目されている本郷中学校・高等学校。座学だけでなく、家庭科などの実技教科も大切にしている同校の教育について新校長に話を聞いた。

1923年に創立して以来、校訓「強健・厳正・勤勉」のもとで「社会でリーダーたる人材」を育成してきた本郷中学校・高等学校。国語科の教員、教頭、副校長を歴任し、2024年度から第10代校長に就任した木村友彦先生に、受け継がれている伝統と新たなチャレンジなどについて話を聞いた。

自分と違う考えを持つ人とも寄り添える力

同校は、「社会に貢献できる人材の育成」を大きな目標として掲げ、「文武両道」「自学自習」「生活習慣の確立」を教育方針としている。

「3つの教育方針は、強健(心身両全にして、困難に耐えうる)、厳正(志操堅固にして、自らに厳しく中正な判断をなしうる)、勤勉(責任を重んじ、誠心誠意つねに自己の務めに精励する)という校訓を現代の中で活かすための取り組みです。様々な経験を通して、内発的な好奇心や目標意識を持って勉強を続けられる自律した学習者となり、人と協働して何かをやりとげる力を培ってほしいというメッセージとして、生徒たちに伝えています。私自身は、塾や公立中学等で様々なタイプの生徒と関わった経験を経て、2000年から本校の生徒たちを見て来ました。どの生徒にもそれぞれよいところが必ずあるので、それを導き出せるように接することを心がけています」(木村校長先生)

同校の伝統は大切にしつつ、グローバル化にも対応できるような生徒を育むためには、意見の違う人たちとも様々な経験をすることが大切だと木村校長先生は考えている。

「今の中学生が社会に出て働くころには、母国語が違う人や価値観、世界観が違う人たちとのコミュニケーションが必要になってくるでしょう。学校は均質な閉ざされた空間ではありますが、行事やクラブ活動などを通して、いろいろな意見がぶつかり合う場面を経験し、自分と違う考えを持つ人とも寄り添える力を培っていくことができます。みんなで1つのことをやり遂げるときには葛藤が生まれますが、意見が違うからと切り捨てるのではなく、違いを大切にして、なぜ違うかを考えてほしいです」(木村校長先生)

▶︎木村友彦校長先生

コロナ禍前以上の「本郷祭」を目指して新たな1歩

コロナ禍を経て、新しいことにも果敢にチャレンジしようとする生徒がこれまで以上に増えていると木村校長先生は語る。

「本郷祭(文化祭)は、生徒たちにとって大きな楽しみです。コロナの影響でできない年もありましたが、制限もなくなってきて、生徒たちにコロナ禍前にやっていたことをやりたいという思いがでてきました。コロナ禍前には、中庭で各クラブが焼きそばや焼きとり、ラーメンなどを作って販売する屋台が人気でした。コロナ禍ではできなかったので、再開したいという思いもありますが、先輩が後輩に伝承してきたものが途切れてしまっている状態です。1万7千人ぐらいの来校者がいる中で、昼食の確保についても考えなければなりません。そこで今年はキッチンカーを呼ぶという初の試みに取り組み、一方で有志の1団体が屋台を出店しました。失った経験値を復活させるために、保健所に行って衛生管理の講習を受けたり、火を使うので安全管理に注意するなど、新たな歴史を作るための1歩を踏み出してくれたのです。1団体からの再スタートですが、楽しさだけを求めるのではなく、衛生面や安全面にも気を配ることもできたので、来年度以降につなげていける1歩だったと思います」(木村校長先生)

もう1つ新たな試みとして、芸能人を招いた企画も行われた。

「これまで芸能人をお招きしたことはなかったのですが、今年は昨年のM1で優勝した令和ロマンの髙比良さんが本校の卒業生ということで、社会で活躍している卒業生に本郷祭を盛り上げてほしいという思いがあったようです。生徒たちが声をかけたら、忙しい中でスケジュールを調整して来ていただけることになりました。自分たちが楽しむだけでなく、来ていただくゲストにも楽しんでいただけるようなおもてなしを生徒たちなりに考えたようです。髙比良さんはラグビー部だったので、ラグビーのオープニングセレモニーを行い、相方の松井さんは他校出身ですが卓球部だったということで、卓球部の生徒との試合をセッティングするなどして盛り上げました。講堂で行ったトークイベントは、客席に限りがあるため在校生と在校生の保護者の中から抽選で選ばれた人が観覧しました。安全管理もしながら、会場に入れない人にも楽しんでもらえるようにと体育館でライブ配信を行うなど、より多くの来校者に楽しんでいただけるように配慮できたと思います」(木村校長先生)

▶︎コロナ禍を経て久しぶりに復活した本郷祭の屋台

可能性を狭めないための経験

今年に入ってから、同校の柔道場で合気道部が富士見高等学校合気道部と合同稽古を行ったり、料理研究部が三輪田学園の調理室にて三輪田学園高等学校調理部と合同調理を行うなど、女子校との交流活動によってもよい刺激を受けているという。

「男子校で料理研究部があるのは珍しいと思いますが、40人ぐらいの部員が活動しており、『としま豊かな食コンクール』で最優秀賞を受賞するなど、クオリティの高さでも評価をいただいております。本郷祭でもマドレーヌやパスタなどを販売すると、すぐに売り切れてしまうほどの人気です。女子校にお邪魔するとなると緊張すると思いますが、調理を通した協働でそれぞれが何かを得る機会となるでしょう。本校では家庭科の授業でも調理実習がありますし、被服実習でトートバッグなども作ります。いろいろな経験を積みながら、それぞれの個性を持った生徒と刺激し合って自身の力を磨いていってほしいです。他者との違いを知ることは、新しいものを見つけるためのよい機会でもあります。女子校との交流活動も、その一環といえるでしょう」(木村校長先生)

同校は、大学への進学希望100%に対応したカリキュラムになっているが、座学以外の保健体育や芸術科、技術・家庭・情報なども手を抜くことなく学んでいる。

「男子だから家庭科はやらないというのではなく、興味のあるものには積極的に取り組める環境を整えています。受験に関係ないからと削ってしまうと、自分の力を発揮できる機会を減らしてしまうことになるかもしれません。とりあえずやってみることが、これから生きていくために必要だと思います。本校にはかつて、工業課程機械科が併設されていたこともあり、そのDNAを受け継ぎ、木工実習や半田ごてを使ったものづくりの経験なども大切にしています。生徒たちには、自分で可能性を狭めないで、目的意識を持って取り組んでみることが大切だと伝えていきたいです。中高6年間は、どの方面に資質があるか考えるための時間でもあると思っています。数字には表れない部分で、今後の長い人生を切り開く力をどのようにして身につけるかを考えていってほしいです」(木村校長先生)

個性を活かして活躍できる場所

自分の持っている能力をみんなのために還元したいと思う生徒が増えていることが嬉しいと、木村校長先生は語る。

「本校では、朝のホームルームを利用して10分間の「朝読書」を行っています。中学では、1年を通して、自分のおすすめの本を1冊選び、学年ごとにまとめて「朝読書リレー」という冊子にしています。それを生徒たちが自分の端末で見られるようにデータ化したいと考えましたが、なかなかうまくいきませんでした。そんなとき、図書委員の高3生が綺麗にフォーマットに流し込めるプログラムを作ってくれたのです。受験勉強で忙しい中、後輩のためにと作ってくれたことが素晴らしいと思います。彼のように、自分の持っているスキルを誰かのために役立てたいと思う生徒が増えてきているように感じます。目立ちたいという気持ちから出る行動ではなく、自分が持っているものを大切にしているからこそ、人の役に立てることに喜びを感じられるのです」(木村校長先生)

同校は、ラグビーやサッカーといった運動部で活躍するイメージが強いが、他の分野でもそれぞれに活躍できる居場所がある。

「1人で本を読むのが好きな生徒もいますし、鉄道が好きな鉄ちゃんもいます。レベルの高いコンピュータスキルを持った生徒、料理が上手な生徒など、運動以外でもそれぞれの得意分野を活かして、お互いを尊重して認め合える環境です。本校では運動部、文化部問わず、部活動を大事にしています。技能指導もできる教員が多いので、教員も部活動で得られるものがたくさんあると思っています。教員の働き方改革も考慮して、OBによる指導の導入は考えていますが、外部業者に委託する指導などは考えていません。OBなどに協力してもらいながら、教員の負担を削減できる部分は調整していきたいと考えています」(木村校長先生)

時代に合わせて校則の見直し

100年以上の歴史がある同校の校則には、時代に合わなくなったものもある。そこで、生徒会が中心となって校則の見直しを進めているという。

「例えば、『流行の髪型を禁じる』という校則がありますが、『流行の髪型』の定義がよくわかりません。そういったものを見直すために、本校の卒業生である弁護士にも間に入ってもらって、きちんと手順を踏まえて、納得できるように見直しを進めています。彼はスクールロイヤーの経験もあり、現在の人権意識に照らし合わせて考えられるように法的なアドバイスをしてくれるので、ただ権利要求をすればよいというわけではないことも学んでいきます。現在本校では学校指定のリュックで通学することができますが、これも生徒たちからの発案でした」(木村校長先生)

学校生活を送る中での細かいルールについても、生徒たちにより見直されたものがある。

「図書室の向かいに、様々な用途で利用できる机や椅子が並ぶラーニング・コモンズがあります。別に整備されている自習室とは違い、仲間と相談したり問題を出し合いながら勉強できるスペースです。以前からあるルールとして『飲食禁止』となっていたのですが、夏は水分補給も大切なのでルールを変える必要性が出てきました。『飲み物を飲んでもいい』とするのは簡単ですが、みんなが気持ちよく勉強できるようにするためにはどのようなルールにしたらよいか生徒たちで考えることになったのです。すると生徒たちは、いくつかの公立図書館へ行って、ペットボトルや水筒など、蓋つきの密閉可能な容器での水分補給は可能となっていることを調べてきました。蓋のないカップの飲み物だと倒れたときにこぼれてしまうので、不可となっているのです。複数の施設を見に行って、このようなルールはどうですかと提案してきた行動力は、素晴らしいなと思いました」(木村校長先生)

▶︎生徒の発案により採用されたリュック

大学に合格することがゴールではない

学校説明会などでは、保護者の意識にも変化が見られるという。

「保護者から質問が多くなったのは、お弁当についてです。共働きの家庭など、お弁当が用意できない場合は、中学生も学食でランチをテイクアウトできるので安心してください。進学への期待については、○○大学へ進学させたいというよりは、生徒自身が希望する進路実現への期待が大きいようです。海外大学への進学希望も出てきていますが、海外大学に詳しい英語科の教員やネイティブ教員などが対応しています。また、日本の大学に進学してから、交換留学で海外大学に通うことを視野に入れて受験することも可能です」(木村校長先生)

中高の6年間で、希望する大学に進めるようなカリキュラムや指導体制を整えることも必要だが、合格することがゴールではないと木村校長先生は語る。

「人生は、高校を卒業してからの方が長いです。社会に出てからは、一生学び続ける力や他者を思いやる力、道を切り開くために何が必要か考えて自分で問題を設定できる力が必要となります。本校で学ぶ6年間で、その素地を作っていけるようにサポートしていきたいと考えています」(木村校長先生)

<取材を終えて>
男子校と女子校の交流活動は、非常に興味深い。特に、料理という女子が得意と思われがちな分野で、クオリティの高い活動をしている男子はどのような刺激を与え合うのだろうか。進学実績などの数字としては表れない、同校の活動にも注目していただきたい。

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