スクール特集(目黒日本大学中学校の特色のある教育 #8)
1期生が学校生活を振り返る!「目黒日大だからこそ経験できたこと」
日本大学の準付属校となって6年目を迎えた目黒日本大学中学校。1期生が入学当初からの学校生活を振り返り、同校だからこそできた経験について語ってくれた。
2019年に日本大学の準付属校となった目黒日本大学中学校は、2024年度に中高一貫生が6学年そろった。日出中学校・高等学校時代のよさを受け継ぎ、「目黒日大」としての学校づくりの中心となってきた1期生(高3)と、広報部主任の天野正貴先生に話を聞いた。
日出時代から受け継がれている「挨拶」と「明るさ」
現在高校3年生となったKさんが同校を初めて訪れたのは、小学6年生の秋。文化祭シーズンに何校か訪ねた中の1校が、日出時代の同校だったという。
「先生や在校生が『こんにちは』と挨拶してくれたり、『○○の企画やってます!』などと明るく声をかけてくれたこと、先生と生徒が話す様子を見て距離が近いなと感じたことが印象に残っています。文化祭の後、この学校についてもっと知りたいなと思って学校説明会に参加しました。それから家族で話し合って、探究学習や中3の短期留学など、勉強以外でもいろいろな経験ができ、日大への進学を視野に入れつつ国公立大や難関私大にもチャレンジできるなら、自分の可能性をさらに広げられると思えたので受験することに決めました」(Kさん)
2019年4月、目黒日本大学中学校の1期生として入学したKさん。神奈川県からの通学なので、友達が1人もいない状態から中学校生活がスタートした。
「入学後のオリエンテーション期間にはグループ活動が多く用意されていて、グループのメンバーは先生がランダムに決めていきます。自己紹介から始まり、一緒に調べ物をしたりしながら、いろいろな人とコミュニケーションが取れる機会がありました。4月に1泊2日のオリエンテーション合宿があり、スポーツなどを通してクラスの仲がさらに深まっていきます。当時は文化祭が10月にありましたが、その頃には1年目とは思えないほど団結力が育まれていました」(Kさん)
Kさん(高3)
グループワークの楽しさを知った探究活動
同校は、学年ごとにテーマを決めて探究活動を行い、集大成として3月に発表コンクールを実施している。
「最初の授業で先生が『探究には正解はないし、限界もない』と言ったことが印象に残っています。教科の勉強とは違う面白さがありそうで、挑戦してみたいという気持ちになりました。ゼロから調べることやフィールドワークなども初めてでしたが、進めていかないと発表できないので必死で取り組み、グループワークの楽しさを知ることもできました。高3になった今でも、探究活動での思い出をみんなでよく話しています」(Kさん)
中1のときに取り組んだ日本伝統文化をテーマにした探究活動は、特に印象に残っているという。
「僕たちのグループは、七五三について調べました。由来を調べたり、みんなの七五三の写真を見て盛り上がったことも覚えています。七五三といえば神田明神が有名なので、神社の方にお話を聞いたり、ショップに来ている人にインタビューもしました。普通に発表するだけではつまらないのでクイズ形式で発表したら、みんなの反応がとてもよかったです。発表コンクールの予選を勝ち抜いて決勝に進むことができたとき、みんなでガッツポーズをしたことも覚えています」(Kさん)
学校説明会開催に協力した後でにっこり
同好会からスタートして3年目に軟式野球部を創部
小学生の頃から野球をやっていたKさんは中学校でも野球をやりたいと思っていたが、入学当初は野球部がなかった。1年生で野球をやりたい人が6人いたので、まずは同好会を作ったという。
「生徒手帳に同好会が作れると書いてあったので、顧問になってくれそうな先生にお願いして同好会を立ち上げました。まずは屋上の運動場でキャッチボールや簡易的なゲームから始めましたが、中1の終わり頃にはやはりグラウンドで練習したいという思いがありました。とはいえ、6人だけではグラウンドを借りても試合ができません。そこで、先生を誘って試合をしようという話になり、駄目元でお願いしたら、快くOKしてもらえたのです。休日でしたし、先生方に協力してもらえると思っていなかったのですが、碑文谷の球場を借りて先生対生徒で試合ができました。初めて試合ができて、とても楽しかったです」(Kさん)
同好会から部活動にするためには、部員が10人必要となる。2年生になると1年生を勧誘し、9人まで増やすことができた。
「1年生が3人入ってくれて9人になってからは、月1回ぐらいはグラウンドで練習できるようになりました。9人だけでは試合ができないので、ソフトボール部に協力してもらって練習試合をやったこともあります。ソフトボール部は全国レベルなので、ビックリするような球を投げてきて、ボロ負けしたこともありました(笑)。9人だと1人休んだらメンバーが足りなくなるので、担任の先生が助っ人に入ってくれたこともあります。3年生になった年に1年生が2人入ってくれたので、ついに軟式野球部となることができたのです。初めて大会に出られたときは、本当に嬉しかったです。ゼロからスタートして大会に出られるようになるまで、自分たちでできたことに大きな達成感もありました」(Kさん)
委員会や生徒会での様々な経験
Kさんは、中1から高3までずっと学級委員として活動している。学級委員はクラスでの活動のほか、学校行事での活動も多く、非常にやりがいのある委員会の1つだ。
「小学生のときはやったことがなかったので、みんなに声をかけることがうまくできない時期もありました。そんなときに相談に乗ってくれたのが、当時担任だった先生です。『最初は誰だってうまくできないから、焦らずやっていけばいい。頼りにしているし、信頼しているから、積極的にやってみてほしい』という言葉をかけてもらったことを今でも覚えています。その後、クラスのみんなから『何があったの?』と言われるぐらい変わって、チャイム着席ができないときなどに声をかけられるようになりました。嫌われたくないという思いもありましたが、それについても先生から『確かに一時的には嫌われるかもしれないが、後になったら正義は勝つ』とアドバイスをもらい、信じてやり続けました。言い続けた結果、今ではみんなも自然に受け入れてくれています」(Kさん)
中高6年間で、こんなにも幅広く、たくさんのことを経験できるとは思っていなかったとKさんは振り返る。
「高1のときに、中高一貫行事を考えたこともよい思い出です。中学生と高校生が深く仲良くなれるように、クイズラリーの企画を考えました。そのときの交流がきっかけで、今でも下級生と話したり、勉強を教えることもあるので、思っていた以上の結果を残せたと思います。中1から続けている生徒会の活動では、文化祭や体育祭の運営や当日の司会だけでなく、ゼロから企画したり、裏方としてYouTube配信もできるようになりました。行事以外でも、挨拶をもっと活発にするためにどうすればいいか考えたり、意見箱に寄せられた意見をみんなで話し合うなど、通常の学校生活だけではできないことをたくさん経験できたと思います」(Kさん)
入学当初から変わらない「人の役に立ちたい」という思い
Kさんは、入学時から人を助ける仕事がしたい、特に医療に携わりたいという夢があり、それは高3になった今も変わらないという。
「人の役に立ちたいという思いがずっとあったのですが、医療系から気持ちが少し揺らいだのが教師という仕事でした。勉強を教えることへの興味もあるのですが、この学校の先生方が仕事をしている姿が本当に楽しそうなんです。中3から高1ぐらいまで悩んで、家族や先生方にも相談しました。それでも、2つを並べて考えてみたとき、小さい頃に医師や歯科医師にお世話になった経験から、今度は自分が医師として人を助ける側になりたいという気持ちが強かったです。進路ガイダンスで、大学はゴールではなく通過点であり、将来どんな大人になりたいか、どんな職業に就きたいか考えながら志望大学を決めるようにと説明があり、高2になると、医療系の中でもどの大学のどの学部を目指すか考えました」(Kさん)
医療系に進むと決めたものの、模試の結果と合格レベルの差を考えると不安になったこともあったというKさん。そんなとき、背中を押してくれたのは教員たちの言葉だった。
「今の担任だけでなく、中1のときに担任だった先生や天野先生にも相談しました。時には、放課後に2時間ぐらい話を聞いてもらったこともあります。それぞれの先生が、それぞれの視点でアドバイスをくれました。まずは高いところを目指してみようと前向きに考えてくれる先生もいれば、人の命に関わる覚悟があるのかと厳しい意見を投げかけてくれた先生もいました。いろいろな意見を聞く中で、自分の気持ちを確認しながら固めていくことができたのだと思います。親戚の歯科医師に話を聞いて、歯学部でも医学部と同様に全身のことを学び、健康面で人の役に立てるとわかったので、歯学部を目指すことにしました。狭き門なので、浪人はしたくないという思いもあり、年内入試を目指して頑張っています」(Kさん)
職員室前の廊下には、ホワイトボードが設置された「ラーニングロード」と呼ばれる勉強スペースがある。中学生、高校生問わず誰でも利用でき、わからない問題があれば内線電話で職員室にいる教員を呼び出して質問することもできるという。
「年内入試で歯学部を受験すると決めてから、受験科目それぞれの先生に対策を聞きに行きました。どの先生も過去問を見ながら具体的なことを考えてくれたので、それをもとに自分で勉強を進めて、わからないことがあると休み時間や放課後に内線電話で先生を呼んで質問しています。塾に通った方がいいかなと思ったこともありますが、先生方は個別指導のように親身になって教えてくれるので、夏期講習以外は通塾していません。勉強以外のことでも、相談したいことがあるとすぐに内線電話をかけます(笑)。些細なことでも家族のように聞いてくれて、いい意味で先生と生徒の距離が近いから、相談もしやすいです」(Kさん)
「メリハリのある学校」での6年間で大きく成長
これまでの学校生活を振り返ると、些細な日常でもすぐに思い出せるという。同校の魅力を一言でいうなら、「メリハリがある学校」だとKさんは語る。
「体育祭や文化祭などの行事ではみんなが盛り上がり、勉強するときはみんな集中して取り組みます。文武両道に関しても、勉強と部活動の切り替えがすごいです。先生方は、個性を引き出してくれるのが上手だと感じます。前に出るのが苦手な人も、探究の発表などを重ねるうちに、積極的に前に出たり手を挙げられるようになっていきました。先生方は生徒のことをよく見ていて、例えば、文化祭で『歌うま(歌が上手い人を決める選手権)』という企画があるのですが、先生の勧めで出場した人が決勝まで残るなど、自分の可能性を広げてくれる機会が多いです」(Kさん)
同校の学校説明会は、有志の生徒たちが登壇して説明をしたり、学校案内のアテンドをしているが、毎回立候補する生徒が何十人もいるという。
「僕もずっと学校説明会に関わっていますが、コミュニケーション力がついたと感じています。中1のときは、初対面の人との会話に不安もありましたが、慣れてきたら『また来ます』と言ってもらえたり、次に来たときに『Kさん!』と声を掛けてもらうことも多くなりました。回を重ねるごとにコミュニケーションが楽しくなって、ますますやりがいを感じています。この学校が大好きで、先生方も大好きなので、心の底からこの学校に通えてよかったと思っています」(Kさん)
1期生は、中2と中3のときにコロナの影響でやりたいことができない時期もあり、それも含めて多くのことを経験したと天野先生は振り返る。
「生徒たちには、『教員をうまく活用してほしい』と言っています。Kさんは、部活動や行事、進路決定、受験対策など、あらゆる場面でそれを体現してくれました。私はKさんの授業を担当したこともなかったのですが、進路のことで相談に来てくれたりもします。私の友人で医師になった人がいるので、高校時代の彼らとKさんを重ねてみて意見を言いました。彼らの努力は並大抵ではなかったですし、人の命を預かることになるのだから、中途半端ならやめた方がいいと厳しめに話したことを覚えています。どの生徒にも本気でやる覚悟があるか確認した上で、それでもやるという気持ちなら応援するつもりです。Kさんは、素晴らしい中高一貫行事を考えてくれたメンバーでもあります。1期生の思いを引き継いで、今年度は高1が中心となって4学年が読売ランドでバーベキューを楽しむイベントを開催し、とても好評でした。12月の学校説明会では、1期生に中高6年間での成長実感を語ってもらう予定です」(天野先生)
<取材を終えて>
同校は職員室に約60人の教員がいるため、職員室前に内線電話を設置して生徒が教員を呼び出す方式をとっている。少し勇気がいるようにも思うが、日頃から教員と生徒の距離が近いからこそ、生徒たちはためらうこともなく内線電話で呼び出すことができるのだということがKさんの話から伝わってきた。1期生が語る成長実感を聞いてみたい方は、ぜひ12月の学校説明会に参加していただきたい。
広報部主任 天野正貴先生