スクール特集(獨協中学校の特色のある教育 #9)
ドイツ語を学ぶ環境や留学制度を整備。新たなグローバル教育を展開!
創立時からドイツ(獨逸)と縁があり、外国語及びグローバル教育に定評のある獨協中学校・高等学校。今年度から導入する留学プログラムをはじめ、新たな取り組みを取材した。
1883年(明治16年)、獨協中学校の前身である獨逸学協会学校が創立した。当時、世界の最先端といわれたドイツ文化や学問を取り入れるために設立された獨逸学協会が、事業の一環としてつくった学校だ。以後、同校は140年以上にわたり、外国語教育やグローバル教育に力を入れ、今年度からは新しい取り組みも始動した。その内容や目的について副校長の坂東広明先生に伺った。
実践を重視した英語教育、 ドイツ語は中学3年から履修が可能に
「本校の外国語教育の大きな特色は、英語のほかにドイツ語が学べることです。これまでは高1から第2外国語(選択科目)として授業を行っていましたが、今年度より1学年前倒しをして、中3から学習できるようになりました。
ドイツ語を2年間学習した人が選抜対象となる「PAD(ドイツ連邦共和国定期招聘事業)」という留学制度があるのですが、中3から学べば高2で出願できます。大学受験が始まる前に挑戦できる環境を整えたいと思い、そのようにしました。最近はドイツ語を学びたいという生徒も増えており、本校から直接、ドイツの大学へ進学する道も作っていきたいと考えています」と坂東先生は話す。
また同校は、ドイツ外務省の主導で、ドイツをキーワードに世界2000校以上の学校がつながるネットワーク「PASCH(パッシュ)」の提携校でもある。提携校であることで世界標準のドイツ語教育を受けることができ、年度末の検定試験で好成績を収めれば、ドイツ短期留学も可能だ。さらに、ゲーテ・インスティトゥート(ドイツ政府が設立した公的な国際文化交流機関)が実施するプログラムやイベントにも参加ができるという。
もちろん英語教育にも力を入れている。英語の授業は週6時間、うち4時間はインプット、2時間はアウトプットと運用練習に充てている。実践を重視し、全員参加のレシテーションコンテスト(中1)や、スピーチコンテスト(中2)を実施、中2~高2はオンライン英会話の授業も行っている。1回のセッションは約30分、特に中3は年間約15回と集中して取り組んでいる。
「オンライン英会話は、男子学生というのも関係しているかもしれませんが、効果が高いですね。思春期の男の子は、人前ではなかなか言葉が出ないことも少なくないのですが、相手と1対1では話をせざるをえません。こうした状況が成果に現れているのでしょう」と坂東先生。
▶︎副校長 坂東広明先生
ドイツの学生と相互交流を図り、 自立心を育む留学プログラムを新設
同校は、海外研修プログラムも充実している。今年度はアメリカ・シアトルから渡航先を変更し、イギリスのロンドン郊外でホームステイ(中3~高1の希望者)を実施する。約2週間、現地のボランティアファミリーと生活を共にしながら、英語力をつけ、異文化を体験する。
ドイツへの研修旅行(中3~高2の希望者)も2013年度から行っている。「ベルリンやハノーファ、ハイデルベルグなどを訪れ、ホームステイをしながら現地校の視察や生徒との交流を図ったり、環境教育施設で学んだり、さまざまな体験学習をします。このツアーは旅行会社の企画ではなく、本校と現地の人々とのつながりで作られたオリジナルのものとなっています」と坂東先生は言う。
「また昨年は、訪問先でもあったケーテコルビッツ校とエコレアインターナショナル校の2校と、正式にパートナー協定を結びました。今年はケーテコルビッツ校から15名、エコレアから22名の生徒が訪れる予定で、保護者にもホームステイの受け入れをしてもらいます。両校とも環境教育に熱心な学校で、本校ともテーマ性を持って学び合える関係性があります。今度6月に訪れるエコレアの生徒は、学校で取り組んでいるSDGsについて日本語で発表してくれるそうで、互いに貴重な体験ができそうです」
さらに今年度は、高1、高2の希望者を対象とした、約3週間のニュージーランド語学留学プログラムが新設された。2人1組でホームステイをしながら現地校に通うというプログラムで、イギリスやドイツの研修と違い、教員は引率をしない。2025年度からは高1の3学期に、ニュージーランドのターム留学もスタートする予定だ。
「留学プログラムは、英語力の向上や国際的な視野を広げるとともに、生徒の精神的な自立を促すことが狙いです。特にターム留学は、学校1校につき生徒1人という配置を考えています。現地にはコーディネーターもいますが、基本的には自分で考えて行動し、困難なことにも自力で対処していかなくてはなりません。そうした体験は生徒を大きく成長させます。周りの生徒にも影響を及ぼし、集団としての自立心も育まれるのではないかと考えています」と坂東先生は期待をする。
グローバル教育に関心をもつ獨協生へインタビュー
同校の外国語教育、グローバル教育を生徒たちはどのように捉えているのだろうか。この夏季休暇にイギリスのホームステイに参加する中学3年生と、ドイツ語履修者で「*国際ドイツ語オリンピック」日本代表(国内大会1位)として、7月の国際大会に出場する高校3年生に話を聞いた。
*国際ドイツ語オリンピック…2年に1度、世界中でドイツ語を学習している生徒を対象に、リスニング、面接、リーディング、作文、プレゼンテーションなどの総合力でドイツ語の力を競う大会。世界から数百万人が参加し、ドイツで行われる国際大会には、各国の選考を勝ち抜いた14~17歳の生徒が100人程度集まり、約1週間かけて順位を争う。
Nさん 中学3年生
—イギリスのホームステイに参加をする理由は?
入学する前から、獨協の海外研修に興味がありました。応募した理由は大きく2つあります。学校ではネイティブの先生も日本人にわかりやすい英語を話してくれますが、ローカルな英語に触れたり、自分の英語が伝わるかを試してみたいということと、多様な人たちと交流して意見交換をしてみたいということです。それに、テニスとラグビーをやっているので、どちらも発祥の地であるイギリスに行ってみたいと思いました。
―英語や海外に興味をもったきっかけは?
本格的に英語を勉強したのは中学校からですが、英語ディベート部に入って話すようになったら、どんどん英語が面白くなっていきました。海外に興味をもったのは、映画がきっかけです。会話にユーモアがあり、実際に外国の人と話をしてみたいと思いました。
―今後の目標や将来の夢を教えてください。
イギリスは自分にとって初めての海外なので、ホストファミリーとたくさん話がしたいです。そして来年はもっとクオリティの高い会話ができるように英語力をつけ、ニュージーランドの留学にも挑戦したいです。
将来は医療系に進み、発展途上国の人たちの治療に携わりたいです。医療が進んでいるか否かで、同じ人間として幸せな時間を過ごすことに差が生まれていると思うので、その差を少しでも埋められたらよいと思っています。その時に英語も活かせるといいですね。
Kさん 高校3年生
—ドイツ語を学ぼうと思ったきっかけは?
テレビをつけたら語学番組をやっていて、それがドイツ語でした。英語以外の言語を学ぶのも面白そうだないなと思い、ドイツ語の授業を選択しました。
—どのようにしてドイツ語の力をつけていったのですか?
授業以外では、PASCH校のイベントに参加して、ドイツ人と話す機会を作るようにしました。学校のドイツ研修旅行にも参加しました。日本でドイツ語を勉強していても、実際の体験はまた違うものがあります。ホストファミリーにいろいろなところに連れていってもらったり、生物教育園で環境について学んだり、楽しい体験をたくさんすることができました。さらにドイツが好きになり、勉強のモチベーションが上がりました。
―卒業後はどんな進路を目指したいですか?
大学は外国語学部に進学して、ドイツ語学科を選択しようと考えています。その先はPASCH校を認定しているゲーテ・インスティトゥートか外務省に勤めて、ドイツと日本の架け橋になるような仕事をしたいです。
―最後に、国際ドイツ語オリンピックへの意気込みを!
今はスピーキングを中心にドイツ語の学習を進めています。国際大会には62カ国の生徒が集まるので、他の国のことも勉強しています。ここまでがんばってきたからには世界一を目指し、優勝カップを持ち帰ります!
<取材を終えて>
創立当初から世界を視野に入れてきた同校だが、現在も社会の情勢や目の前の生徒に対応したグローバル教育に取り組んでいる。坂東先生によると、保護者からも外国語教育や海外研修のプログラムに対する期待は高いそうだ。ドイツ語学習の強化やニュージーランド留学の導入で、さらに生徒の可能性が広がっていくのではないだろうか。
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