私立中学

女子校

じょしびじゅつだいがくふぞく

女子美術大学付属中学校

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デジタルパンフレット

スクール特集(女子美術大学付属中学校の特色のある教育 #2)

表現力や伝える力を重視!女子美の学びにつながる入学試験

美術教育をベースに、これからの時代に必要な創造力や表現力などを磨き、自立した女性の育成を目指している女子美術大学付属中学校。入学試験にもこのような教育スタイルが反映されている。

同校の入学試験は、2科・4科の一般入試と、作文スタイルの「女子美 自己表現入試」があり、後者は、昨年度に導入された。今回は、2019年度(平成31年度)の出題傾向、及び入試に関連する教育活動について、入試委員長の小島礼備先生、教務主任・数学科の高城史子先生、国語科主任の村田智美先生に話を聞いた。

国語は小説から出題。文の構成力も重要

 2019年度の入学試験は、第1回が2科・4科選択入試、第2回が女子美 自己表現入試、第3回が2科入試となる。
国語の試験の大きな特徴は、小説を出題していること。「受験生と同じ年代の子どもが主人公になっている小説を扱うことが多いですね。場面の様子をきちんと把握しているか、登場人物の言動の意味や、気持ちを理解しているかがポイントになります。また、解答は記述式なので、文の構成力や表現力などもみていきます」と国語科の村田先生。
「想像力が豊かで、物語が好きな子が多いというのが本校の受験生の特徴だと思います。試験中も物語に没頭しているのがわかりますし、入学後に『あの話の続きはどうなるの?』と聞いてくる生徒もいて、図書室の本を紹介したりしています。当日の試験は、登場人物の気持ちを素直に読み取りながら、解答するとよいでしょう」
小説以外には、知識問題や漢字が出題される。

 算数は、基本的な計算力、観察力、読解力など総合的な力をはかる問題を作成している。「図形の問題をイラストのようにしているのも、女子美らしいところです。過去に葉っぱの形の面積を求める問題を作ったのですが(写真参照)、2つの葉を組み合わせると円になることを見つけるのが解き方のポイントです。本校には、『心をこめてものを観る』という合言葉があり、算数(数学)もそのようなものの見方を大切にしています」と教務主任・数学科の高城先生は話す。

▶教務主任・数学科 高城史子先生

▶参照写真:葉っぱの形の面積を求める問題

自分が主人公の創作文を書く「自己表現入試」

 2018年度より、テーマについて想像したことを作文にする「女子美 自己表現入試」を実施。「具体的には、女子美に入学したことをイメージし、自分を主人公にして物語を創作してもらいました。昨年の受験者は64名でしたが、着眼点や発想が面白かったり、場面描写が鮮明だったり、興味深い作文がたくさんありました。今年度の入試も、同様の内容となります。事前にテーマをお知らせしますので、本校の生徒になったつもりで、学校生活の様々な場面をイメージしておくとよいでしょう」と小島先生はアドバイスをする。
「採点はまず、問題を理解していることが前提となります。そのうえで発想力や表現力、構成力、伝える力などを複合的にみていきます。これらの力は、入学後の本校での学びに、深く結び付いていきます」と村田先生。「受験の準備をする時は、ビジュアルの情報を、『きれいだなぁ、面白いなぁ』だけで終わりにするのではなく、人に伝えられるよう言葉に起こすとよいでしょう。マンガや動画の内容を文章にしてみたり、家族の方が会話の中で、『○○のどこが面白かったの?』と質問するのもおすすめです」

美術の要素と他の教科をリンク

 入学試験は、その学校の教育スタイルなどが反映されるが、同校の場合、柱になるのはどのようなものなのだろうか。
「女子美は、表現をすることが基本の学校です。生徒たちには、自ら表現したいものを持ち、さらに人とは違うオリジナリティーも意識してほしいと思っています。それと同時に、いろいろな価値観があること、多様性を受け入れる寛容さもとても重要です。そして本校は、通常の教科のテストも記述が多く、多角的なものの見方をしたうえで、きちんと言葉で表現することを大切にしています」と村田先生は言う。
 「多角的な視点は、数学でも活かされます」と高城先生。「数学は、答えが1つでも、そこに至るまでの方法はいろいろあります。自分で工夫して答えを導き、その考え方を表現する。そういう面では、数学も表現することが求められる教科だといえますね」。
 また同校の学びは、美術とリンクしたものも多い。理科では、元素記号をキャラクターにしてみたり、社会科では、それぞれの生徒が都道府県の観光大使になり、ビジュアルを用いてプレゼンテーションをしたりしている。「今後は、入試にもこれらの要素を取り入れた問題を作っていきたい」と小島先生は話す。

▶入試委員長 小島礼備先生

自分の個性も相手の個性も認め合う

 このような教育スタイル、教育観は同校の校風につながっている。「自分を表現することや個性を尊重する学校なので、『ありのままの自分でいられる』と生徒たちが言っていますね。周りの目を気にせず、6年間、自分のやりたいことに没頭できます。その一方で、“ものづくりが好き”という共通項があり、生徒同士が目標に向かって励まし合い、共に成長できる環境があります」と村田先生。
「ものづくりをすることは、自身を深く見つめること。その中で、自分の長所に気づくことがあります。同じように、友だちのことも作品を通してその人の思いがわかります。自分を理解し、相手のことも認められる。私と友だちの良さは違っているけれどその両方を大切にしよう。そんな思いやりの精神が女子美には根付いています」と高城先生。

 最後に、この学校の教育を通して、生徒たちがどのように成長してほしいのか、3人の先生に語ってもらった。
「本校は、考えたり、感じたり、表現したり、伝えたりする経験をたくさんすることができます。そうした経験の積み重ねが、生きる力となり、大人になった時の自分を助けます。のびのびとした環境で、自分の好きなことに打ち込み、自分の人生を豊かにしてほしいですね」(小島先生)

「女子美で学んだり、感じたり、吸収したりしながら、常に表現をし続けてほしい。表現することに喜びを感じ、そのことで周りの人も幸せになれる。そんな人生を歩んでもらいたいです」(高城先生)

「生徒たちには、美術の力をもって自立をしてほしいです。これは100年前から変わらない学校の理念でもあり、おそらく100年後も変わらないことでしょう。近年は美術を活かせる仕事の幅が広がり、先輩たちも様々な分野で活躍しています。新しい価値を見つけたり、価値を作ったり、提言したりできる女性になってほしいと願っています」(村田先生)

取材を終えて

AI時代に必要なのは、独創性や創造力、表現力だと言われている。同校は、以前から美術教育を通じて、このような力を伸ばしてきた実績がある。今回の取材では、美術の授業だけでなく、入試から他教科の授業内容にまで「美術」が浸透していることがわかった。付属校だけに、高校受験、大学受験に挑む必要がないことは、生徒たちにとってとても大きなことに違いない。しかし、同校の場合は、受験回避という意味以上に、自分の好きな“ものづくり”に大学まで含め10年間にわたって追求できることが、何よりも重要なのかもしれない。しかも、それが将来の仕事にもつながっていくのだ。合う児童には本当に合う。女子美術大学付属中学校は、そんな学校だと感じた。

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