スクール特集(城北中学校の特色のある教育 #1)

男子校の底力! 1万人が熱狂する「城北祭」の舞台裏
城北中学校の文化祭は、中高合同で開催。2024年度を振り返り、「城北祭」の魅力と舞台裏を取材した。
城北中学校の文化祭は、中高合同で開催。コロナ禍では入場制限などを行って開催してきたが、ほぼ例年通りの開催となった2024年度は1万人超の来場者が「城北祭」を楽しんだ。「城北祭」の魅力や舞台裏について、文化祭実行委員会顧問と2024年度文化祭実行委員の生徒に話を聞いた。
生徒たちのやりたいことを実現させる「城北祭」
中高合同で行う「城北祭」は、企画から進行まで生徒主体で運営する人気行事だ。しかし、新型コロナウイルスの影響で、2020年度は中止となり、2021年度はオンライン開催となった。2022年度は人数制限などのルールを設けての開催、2023年度に入場者制限を行わずに例年に近い形での開催となり、2024年度にはほぼ例年どおりの開催が実現。2日間で約1万1千人の来場者が訪れて、クラス企画や部活動の発表などを楽しんだ。
「文化祭で生徒たちがやりたいことを自由に実現できるのが、本校の特色です。多様性の尊重というよい面もありますが、一方で、城北祭といえばこれというものがないことは弱点でもあるかもしれません。毎年テーマを決めて文化祭を行う学校も多いですが、本校ではテーマを決めてしまうとそれぞれの実現したいものがありすぎて、統一感が取れないという声があり、10年ほど前からテーマを決めていませんでした。日頃の研究発表をしたい部活動や、アミューズメント要素が強めのクラス企画などがあると、テーマを1つに絞ることが難しかったのです」(文化祭実行委員会顧問)
しかし、生徒たちから「テーマを決めたい」という声が出てきたため、来年度は再びテーマを決めることになったという。
「先輩たちはテーマを決めない方がよいという決断をしましたが、年度ごとの特色を出したいという声が出たならやってみればいいと思っています。やってみて失敗したとしても、それも1つの経験になるでしょう。本校では、安全面などに問題がないことであれば、生徒たちの『やりたい』という気持ちをできるだけ尊重したいと考えています」(文化祭実行委員会顧問)
▶︎鉄道研究部の発表
文化祭実行委員の生徒にインタビュー
Mさん 高2 2024年度委員長・オンライン部門長
Kさん 高2 2024年度副委員長・建築部門長
Tさん 高2 2024年度広報部門長
Fさん 高1 2025年度副委員長・広報部門員
――文化祭実行委員になったきっかけを教えてください。
Mさん 中3になって初めて来場者を迎えて開催することができ、文化祭って素晴らしいなと感じたんです。そのときは所属している山岳部で、来場者の方たちと一緒に双六をするという企画をやりました。中学受験をする予定の小学生と双六をしながら、「城北ってどんな学校ですか?」と質問されたりして、外部の方とコミュニケーションを取るのがとても楽しかったです。それで、次は実行する側にまわりたいと思って高1のときに文化祭実行委員になり、高3が引退して委員長を決めるときに、自分が委員長として文化祭を作り上げてみたいと思って立候補しました。
Kさん 僕も中3の文化祭でクラス企画が楽しかったのがきっかけです。そのときの企画は、「競人」と名付けた、来場者参加型のゲームでした。馬ではなく6人の生徒が仮装で50メートルを走ったりウサギ跳びをしたりして、観客は1着から3着までをデータをもとに予想します。事前に動画で何パターンか撮影して、教室のモニターで走る様子を見てもらいました。予想が当たったら、アヒルのおもちゃなどの景品がもらえるというゲームでしたが、とても盛り上がったんです。大人も子どもも大喜びしたり、悔しがったり。そんな文化祭という場を翌年も翌々年も続けて、もっと盛り上げていきたいと思ったので実行委員になりました。
Tさん 僕も中3のときに、鉄道研究部の展示をメインに参加してとても楽しかったので、いろいろな形で文化祭に関わっていきたいと思ったのがきっかけです。文化祭実行委員として活動していた先輩から声をかけてもらったり、M君たちがすでに活動していることを知り、このメンバーなら絶対楽しいだろうと思えたので自分もやってみることにしました。
Fさん 僕の場合は、中3のときにクラス企画に関わって楽しかったのですが、文実(文化祭実行委員会)の活動を見て大変そうだったので、入りたい気持ちはあったものの、すぐに動くことができませんでした。そんな気持ちがある中で、他校に通う兄が文実として活動していて面白いと言っていたので、自分もやってみようと思い、友達を誘って入りました。文実に入ると、準備の段階で先輩からいろいろなことを教えてもらえます。文化祭のパンフレットを生徒が頑張って作っていることや、城北祭名物のアーチを文実が中心となって作っていたことも知らなかったので驚きました。1万人規模のイベントで主軸となって動ける経験は、他ではなかなかできないと思います。今年度は8月に文実に入ったのでできることは少なかったですが、職業体験的な意味もあって文実の仕事は面白いと思いました。2025年度は、副委員長として頑張ります。
▶︎Mさん
▶︎城北祭名物のアーチ
――城北祭で人気の企画を教えてください。
Mさん 男子校なので活気もあって、「面白い企画にするぞ!」という気持ちが強く出ている企画が多いです。2024年度は、女装ミスコンがとても盛り上がりました。外見だけでなく、歌やダンスなども披露して、女装を通して自分の魅力をみんなに知ってもらおうというコンテストです。メイクや衣装選びも本人が行い、観客は美しさを総合的に判断して投票します。2024年度は、ダンスで自分の魅力を表現した生徒が優勝しました。優勝者は来校者も含めて投票してもらった結果で決まります。
Kさん 女装ミスコンは、来校者も含めてGoogleのアンケートフォームで投票して、優勝者を決めました。
Tさん 昨年、陸上部の有志が企画して好評だったので今年も行われましたが、1400人ぐらい入れる講堂が満席で、立ち見が出るほどの人気でした。とても盛り上がるよい企画なので、来年度以降も続いてほしいなと思っています。
Kさん 人気の企画が満席で生徒も来校者も盛り上がっているのを見ると、この大きな祭りの舞台を仕切っているのは自分たち文実だ、と誇りを感じます。
――部活動の発表について教えてください。
Mさん 文化部は日頃の研究について発表する部が多く、例えば数学研究部は、部員が作成した問題を配布したり、折り紙で幾何学的な立体(正十二面体など)を作る体験ワークを行いました。
Fさん 少林寺拳法部は、講堂で少林寺拳法を使った劇を行いました。拳法の演武が見られるだけでなく、エンタメの要素もあるので人気があります。
Kさん 2024年度は、クラス企画が約40団体、文化部が約40団体、運動部は10団体ぐらいが参加しました。そのほか、PTAやOBなども参加しました。
――受験を考えている小学生向けの企画はありますか?
Kさん 僕は化学部に所属していて、小学生向けの体験実験は毎年人気です。1人の小学生に1人の部員がついて、スライムを作る実験、蛍光灯の反射でいくつもの色が見える不思議な液晶管を作る実験など、小学生も手を動かしながら楽しんでもらえるように毎年工夫しています。普段の研究実験は大学レベルも含まれていて、中高生でも理解が難しい内容なのですが、それを巨大ポスターにして、小学生でも理解できるように、やさしく伝えるようにしています。小学生から質問がけっこう出てくるので、説明しがいがあって楽しいです。
▶︎化学部による研究の説明
――文化祭実行委員として活動して、大変だったことや成長したと感じることなどを教えてください。
Mさん 委員はそれぞれ文化祭をいいものにしようと考えているので、意見がぶつかることもあります。そのような場面をうまく収めたりする経験がなかったので大変でした。キッチンカーを依頼するときなど、外部の方とメールでやりとりする機会も多く、目上の方への言葉使いなども学べたと思います。チームワークが大切なので、みんなで力を合わせて1つのことを成し遂げるために必要な力も身につきました。
Kさん 文実の建築部門長としてやらなければならない業務が多く、宿題などと重なるとどちらも手を抜かずにこなすことが大変でした。うまくバランスをとり、勉強面でも成績を上げつつ、文実でも、大きなプロジェクトを綿密に少しずつ進めていける力が身についたと思います。
Tさん 文実として関わると仕事が増えますし、部門長としてやらなければならないことも多いので、やはり勉強との両立が大変でした。それでも、自分からやりたいと言ったことですし、大変だからこそ頑張ろうという気持ちになれたので、なんとか両立できたのだと思います。広報部門の主な仕事は、当日に配布するパンフレットの制作とポスターのデザイン募集です。パンフレットはWordを使って作りますが、データ量も多いので大変でした。同級生や後輩にも手伝ってもらいますが、部門長が中心になって作業を進めていきます。中1はテーマの提出が大町オリエンテーションの時期と重なったので、早く提出してもらわないと困るのですが、待ってあげたい気持ちもあって調整が難しかったです。
▶︎Tさん
――2025年度の城北祭はどのようにしたいですか?
Fさん 来年度は、文化祭全体でテーマを決めることになりました。10年ぐらい前まではテーマを決めていましたが、その後先輩方はない方がよいと判断したようです。僕は、全体の統一感を出したいので、あった方がいいと思いました。過去の文化祭について10年分ぐらいのデータを見たのですが、テーマがないといつの文化祭かわかりにくいという問題もあります。後から振り返ったときに、いつの文化祭かすぐに思い出せるように年度ごとの特色を出したいです。漢字や英語など、7案の中からテーマが決定する予定なので楽しみです。
▶︎Fさん
――来年度の開催に向けてメッセージをお願いします。
Mさん オンライン部門では、2023年度からYouTubeチャンネルでカウントダウン動画を公開しています。「城北祭まで残り○日」というショート動画を作っているので、当日までの様子もぜひ見てほしいです。
Kさん 毎年建築部門が中心となって建てる、高さ約4メートルのアーチが見所の1つです。設計の安全性は技術科の先生に確認して頂き、生徒達たちが木材を100本ほど買い、自分たちですべて組み立てます。正門の4.5メートルのアーチは他校ではなかなかないと思うので、次の城北祭に来てぜひ見てください。
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城北学園
<取材を終えて>
2024年度のパンフレットは44ページにも及び、クラスや部活動の企画が細かく紹介されている。パンフレットを見るだけでも、多様性に富んだ文化祭であることが伝わってきた。2025年度はテーマを決めて開催するとのことなので、多様性と統一感のバランスがどのように実現されるのか注目したい。