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実践女子学園中学校

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デジタルパンフレット

スクール特集(実践女子学園中学校の特色のある教育 #2)

干潟体験を英語で発信!江戸から現在、未来を地球規模で考える体験学習

実践女子学園中学校では、グローバル教育の一環としてAEC(Advanced English Camp)を実施。今年度は千葉県の干潟を訪れ、その体験を英語で発表。最終日の様子を取材した。

実践女子学園中学校では、グローバル教育の一環としてAEC(Advanced English Camp)を実施している。例年のAECは、夏休みに箱根にある同校の寮でネイティブ教員や留学生と交流しながら、様々なプログラムにチャレンジする。今年度は新型コロナウイルスの影響で、千葉県で日帰りの干潟体験を実施。事前学習、干潟体験、英語での発表という流れで3日間行われたAECの最終日を取材し、グローバル教育部部長の東敬祐先生(美術科)に話を聞いた。

グローバル教育としての狙いは「地球規模で考えさせること」

夏休みの3日間を使って行われたAEC(Advanced English Camp)には、中1~高1の希望者約30人が参加した。今年度のAECで干潟体験を企画したことには、2つの大きな理由があったと東先生は説明する。

「生徒たちと日々接している中で、自然との関係が希薄だと感じることが多々あります。例えば、虫を必要以上に怖がったり、何でも『くさい!』と言うなど、自然と親しむ機会がないために自分の生活環境以外の視点を持ちにくくなっていると思います。虫の都合、草木の都合を想像しないことが多いのです。都会っ子であることが、社会に出てからいろいろな面でマイナスになるのではないかという懸念があります。これからの時代を生きる子どもたちには、都市と自然、人間と地球との関係について考えられる人間になってほしいと願っています。そのために、実体験を伴う自然に触れさせる学びの場を提供したいと考えて、今年度は千葉県にある盤洲干潟と谷津干潟の2カ所で干潟体験を実施しました」(東先生)

もう1つの理由は、同校の海外研修先が関係している。高校1・2年生が対象となっている「モートンベイ研修」は、オーストラリアのブリスベン郊外に2週間ホームステイをしながら現地校に通い、海洋研究にフォーカスした研修を行う。ブリスベン市にはブーンドル湿地があり、今回訪れた谷津干潟とは「湿地の保全に関する協定」を締結し、湿地を介した交流を図っている。

「谷津干潟は、シベリアからオーストラリアなどの南にある国を行き来するシギ・チドリ類にとって、渡りの途中で栄養を補給したり休息をとるための中継地として重要な役割を果たしています。谷津干潟もブーンドル湿地もラムサール条約登録湿地であり、先に日本の干潟を知っておけば比較ができ、その方が得るものがより大きいと考えました。また、今回学んだことを英語で発表し、その動画をオーストラリアの留学先に送る予定です。私たちがどのようなことを学んでいるか知らせるためでもあり、生徒たちがオーストラリアに向けて発信するという目的を持って干潟を体験したことに、大きな意味があります」(東先生)

グローバル教育としての狙いは「地球規模で考えさせること」だと東先生は語る。

「グローバル教育は、地球全体の中で、人間としてどうやって生きていくか考えられるように育てることだと思っています。自然を知って育つのと知らずに育つのでは、考え方が大きく違ってくるでしょう。学校でできること、授業でできることのほかに、夏休みなどでしかできないことを企画したいと思い、今回、自然に触れる学びの機会を作りました。英語そのものを学ぶことがメインではなく、体験から学び、感じたことを発信するツールとして英語を使うプログラムです」(東先生)

▶︎グローバル教育部部長 東敬祐先生(美術科)

江戸時代との比較で「豊かさ」について考える

東先生には、観光地となっている海水浴場ではできない体験をさせるために、干潟体験をぜひ実現させたいという強い思いがあったという。

「海水浴場の砂浜で生き物を観察しようとしても、あまり多くの生き物を見ることはできません。海水浴場は人の手が入り、人が常にいることが、生き物が生息しにくくなっている要因の1つです。一方、干潟ではどこを見てもカニが歩いていたり、貝や鳥もたくさんいて、砂地には日光がよく届くため海草なども生えています。潮の満ち引きにより多くの酸素が供給され、河川から栄養が運ばれてくるので生き物が暮らしやすい環境なのです。生物の多様性や食物連鎖により、水の浄化作用も促進されます。盤洲干潟は東京湾で最大級の干潟で、手付かずの自然が多く残っています。一方、谷津干潟は、開発が進む中で熱心な保護活動によって奇跡的に残された貴重な干潟。2つを比較しながら、活発な生き物たちの様子をぜひ見てほしいと思っていました」(東先生) 

かつて、東京湾の内港の海岸一帯には広大な干潟が存在しており、古くから貝や海苔の養殖業が盛んだった。それは江戸時代の浮世絵にもよく取り上げられており、人々の生活が海や干潟と深い関わりを持っていたことがわかる。事前学習では、そのような浮世絵を見ることにも時間をかけたと東先生は語る。

「江戸時代には、豊かな江戸前の海があり、自然と共に生活していました。しかし、便利な生活のために自然の資源をないがしろにし、経済を優先してきた結果、いろいろな問題が起きています。盤洲干潟と谷津干潟は、東京湾でわずかに残っている干潟です。そこで江戸の人たちがやってきたことと同じ体験をするのだということを、イメージさせて出発しました。江戸時代と比べると、今の私たちは豊かな生活をしているように見えますが、本当の豊かさとはなんだろうと、子どもたちに考えてほしかったのです」(東先生)

最終日に行われた英語での発表

AECの最終日は、事前学習を踏まえて干潟体験で見たことや感じたことをグループごとに英語で発表した。各学年を2グループずつに分けて、グループごとに発表用のスライドを作り、一人ひとりが自分の担当部分について英語で発表。中1はどんな生き物や植物を見たかを中心にまとめ、高1は環境問題についても考察するなど、学年が上がるにつれて深く掘り下げた内容となっていた。

干潟で見た生き物としては、アオサ、クロベンケイガニ、チゴガニ、ツメタガイ、ヤドカリ、ゴカイ、ホンビノスガイ、アカエイなどが挙げられた。スライドは、干潟で見つけた生き物やプラスチックゴミの写真を使ったり、自分たちで撮影した動画を見せたりするなど、グループごとに工夫されている。事前学習や体験を通した感想として「プラスチックゴミが多いことに驚いた」「干潟での経験をもとに、自分たちに何ができるか考えていきたい」「ホンビノスガイは水を浄化する働きがあるけれど、生態系に影響を与えることもあるなど、よい面と悪い面があることを学んだ」(※)といったことが英語で語られた。

※北米から貨物船のバラスト水(大型船がバランスを取って航行するために積む水)に混ざって日本に来たといわれているホンビノスガイは、繁殖力が強く東京湾で急激に増加している。漁業資源にもなっているが、谷津干潟では漁業利用がないので増えすぎて、生態系にも影響を与えている。

準備時間が短かったこともあり、オーストラリアへ送る動画は後日改めて撮影されることになったが、どのグループも実際に干潟を体験したことと、そこから考察したことをしっかりと語っていた。

「知る」だけでなく、「体験」することが重要

海洋プラスチック問題は深刻であるが、多方面で取り上げられているテーマでもあり、すでに知っている生徒も少なくない。だからこそ「体験」が大事だと東先生は語る。

「海の環境を考える上では、やはり実際に生き物に触れることが重要です。地球上には人間だけでなく、いろいろな生き物が棲んでいることを体験から知って、だから大事にしようと思ってくれることへの期待も込めて今回の干潟体験を行いました。観光地になっているビーチでは、毎朝掃除をしてプラスチックゴミが山になっている状況などは見せないようにしています。今回はプラスチックにフォーカスしたわけではありませんが、観光地のビーチとは違う状況であることは事前学習でも伝えました。たくさんの生き物が生息する環境で、プラスチックゴミを見つけた生徒たちは、実際に起きている問題として考えるきっかけになったと思います」(東先生)

来年度のAECは、別の角度からの企画を考えているという。

「今回の干潟体験をスタートとして、今後もいろいろなプログラムを企画していきたいと考えています。例えば、日本は森林が多い国ですが、自国の木材ではなく輸入材を多く使っています。そういった背景を踏まえて、世界の森林で起きている事、環境と経済の問題について考えるきっかけとなるような体験を盛り込んだプログラムを実施していきたいです」(東先生)

AECに参加した生徒2人にインタビュー

Yさん(高1)
Iさん(中1)

▶︎写真左より:Yさん(高1)、 Iさん(中1)

――AECに参加したきっかけを教えてください。

Iさん 母に勧められて申し込んでみました。自分から興味を持ったわけではありませんでしたが、行ってみたら干潟はとても楽しかったです。

Yさん 友達に誘われて行ってみようと思い、今回はじめてAECに参加しました。いろいろなことがわかったので、参加してよかったです。

――事前学習で知ったことと実際に見たことは同じでしたか?

Iさん 同じだと感じました。見て実感できることが多かったので「百聞は一見にしかず」だと思います。

――盤州干潟と谷津干潟には、違いがありましたか?

Iさん 棲んでいる生き物が違っていました。盤州干潟は海藻などの植物が多かったけれど、谷津干潟は鳥や貝殻が多かったです。

Yさん 私も生息している生物に違いがあると感じました。鳥などの種類は谷津干潟の方が多かったです。

――干潟にネイティブ教員も同行しましたが、印象に残っていることはありますか?

Iさん 干潟で先生が動画を撮影していて、ネイティブの先生にインタビューされたときは戸惑いました。はじめはどう答えていいのかわからなかったのですが、take2ではなんとか英語で答えることができたのでよかったです。

――英語での発表はどうでしたか?

Yさん 生き物に関する単語などは、聞いたことがないものがたくさんあって難しかったですが、伝えたいことは自分なりに説明できたと思います。

――グループの話し合いでは、一番伝えたいことはどの部分に決めましたか?

Iさん 見つけた生き物です。まずは、いろいろな生き物がいたことを伝えようと思いました。

Yさん 環境問題については下調べで知っていたので、実際に現場にゴミが落ちていたり生き物が死んでいるのを見て、自分たちに何ができるか考えました。今起きている問題を、みんなに伝えられたらいいなと思ってまとめました。

――干潟でプラスチックゴミを見つけましたか?

Iさん 流れ着いている量が多くて、どれくらい生き物の体の中に入っているのだろうと思いました。 

Yさん ペットボトルがけっこうあって、日本のものではないゴミが流れてきているのを見た子もいます。漢字が書かれていたので、たぶん中国から流れてきたのだと思います。

――そのようなゴミを見て、何ができると思いますか?

Yさん プラスチックゴミを減らすために、自販機で飲み物を買わずにマイボトル持参したり、買い物のときはエコバッグを使ったりするなど私たちにもできることがあります。少しずつ実行していけば、少しでも改善できると思います。以前からレジ袋の問題は知っていたので、スーパーで買い物をするときはエコバッグを持参するのが習慣になりました。ペットボトルはたまに買ってしまうこともありますが、気をつけるようにしています。

Iさん プラスチックゴミを減らさないといけないので、もしレジ袋を使ってしまったら、それを何度も使うようにしています。

――この学校のいいなと思うところを教えてください。

Iさん フォークソング部に入っていますが、部活がとても楽しいです。先輩がいろいろ教えてくれて、「敬語を使わなくていいよ」と言ってくれるなど、話しやすいです。今はスピッツの曲などを、ギターを弾きながら練習しています。

Yさん 私は行事が好きです。例えば球技大会は、実行委員が盛り上げようと頑張ってくれて、委員以外も何ができるかみんなで考えます。クラスごとに応援グッズを作るので、タオルは何のキャラクターにするかとか、どうしたら優勝できるかなどを話し合いました。私のクラスは、とてもチームワークがいいなと感じています。

――将来について教えてください。

Iさん まだはっきりと決めていることはありませんが、今は部活が楽しいので、音楽の分野に興味があります。

Yさん CAになりたいと思っているので、英語を武器にできるように頑張りたいです。留学も考えています。

<取材を終えて>
今回のAECには、ただ体験するだけでなく、体験したことをオーストラリアへ発信するという目的があった。その目的があるからこそ、体験からの学びも深まり、ツールとして英語を使うことにも自然に取り組めたのだろう。グローバル教育としても、体験学習としても、そしてSTEAM教育としても充実したプログラムだと感じた。

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