スクール特集(実践女子学園中学校の特色のある教育 #1)
大学との連携を強化し、様々な学びや体験につなげる「実践女子10年教育」
2021年4月、実践女子大学・実践女子短期大学の元学長が新校長として就任。より強化される大学との連携や、4月に入学した1年生の学校生活などを取材した。
生徒が日々、楽しく学べること。第一に学校に求められるのは、そのことだろう。まずは、1年生4人のインタビューをご紹介する。
▶︎写真左よりMさん、Yさん、Wさん、Hさん
学校生活についてインタビュー
――志望理由を教えてください。
Hさん 制服がかわいくて、特に赤いリボンがいいなと思って5年生のときに学校見学に来ました。来てみたら、先輩たちが明るくて楽しそうだったので、私もこんな風になりたいと思って受験しました。食べることが好きなので、食堂があるのもいいなと思いました(笑)。
Wさん 安全圏の学校として受験しましたが、入学したらとても楽しく通えているので、縁があったのだと思います。
Yさん 2歳年上の友達がこの学校に通っていて、塾から一緒に帰ってくれたり、勉強を教えてくれたり、応援の手紙をくれたりしたので、私もこんな風になりたいと思って受験しました。小学生のときに「ときわ祭」(文化祭)に来て、書道部でうちわに字を書かせてもらったときも、先輩が「上手ね」と褒めてくれたのが嬉しかったです。
Mさん 見学に来たときに校舎が綺麗だったことと、社会の授業を見学したときに意見が活発に出ていて楽しそうだと思ったので、この学校に通いたいと思いました。
――1学期を過ごしてみてどうですか?
Hさん いろいろな性格の子がいるので、合う子も合わない子もいます。その中で、合わない子を遠ざけるのではなく、その子たちとどうやって仲良くなるか考えて接しているので、コミュニケーション能力がついてきました。その子の嫌だなと思う部分ではなく、いいところに目を向けようと意識するようにしています。
Wさん 宿題などの提出物が先生から戻ってくると、細かいところまで見てくれていて、1つ1つ丁寧に、そして的確にコメントが書かれているのがすごいと思います。たとえば、代数の宿題では、途中式のときに単位は書かずに、最後に単位をつければいいことに、コメントで気づくことができました。
Yさん 女子校では、意地悪する子がいるのかなと、ちょっと心配していましたが、全然そんなことはなかったです。いい意味で、イメージと違っていました。メガネを忘れてしまった日に、後ろの席だと黒板が見えなくてノートが取れなかったのですが、「見せてあげようか?」と言ってきてくれたりして、みんな優しいです。周りが優しくしてくれるので、自分も優しくなれた気がします。
Mさん 10月の運動会に向けて、実行委員をやっています。人前で説明するのは苦手だったのですが、中学では成長したいと思ったので立候補しました。運動会の種目を説明したり、係を決めたり、責任のある仕事だと感じながら進めています。
――この学校のいいなと思うところを教えてください。
Hさん フレンドリーで面白い先生が多いです。今回この4人で会うのが初めてだったのですが、インタビューの前にも先生が一人ひとりの話を聞いて、緊張をほぐして、4人が話しやすい雰囲気を作ってくれました。
Wさん 私は被服部に入っていますが、先輩たちにわからないことを聞くと優しく教えてくれます。ミシンの糸のかけ方がわからなくなったときも、丁寧に教えてくれました。
Yさん 社会の授業では、先生が最近のニュースと絡めたり、資料もたくさん見せてくれて、最初にみんなに問いを投げかけてから授業を進めていくので興味が持てます。社会は苦手だったのですが、好きになってきました。
Mさん 他の3人に全部言われてしまいましたが(笑)、先生や同級生、先輩など、みんな優しくて、わからないことは丁寧に教えてくれます。
――将来の夢や目標などはありますか?
Hさん 動物が好きなので、将来は動物関係の仕事がしたいです。日本にはいない動物とも触れ合ってみたいので、入学前はあまり英語を勉強してこなかったのですが、英語を頑張っています。夏休み中の目標は、1学期に習った単語や文法を全部復習することです。
Wさん 小さい頃風邪をひいたとき、優しくしてもらったことから興味を持ち、薬剤師になりたいと思うようになりました。今はまだ理科と数学が苦手なので、得意な科目になるように伸ばしていきたいです。
Yさん 精神科の医師になりたいです。両親が医療関係の仕事をしていることもあり、小さい頃から興味がありました。小学生のときに保健の授業で、体と心がつながっていることなどを学び、心の病気を治してあげたいと思うようになりました。これから先、弁護士になりたいとか、他にも夢がでてくるかもしれないので、文系・理系どちらにも進めるように、全教科同じぐらいできるように頑張りたいです。
Mさん 小学生のときからアニメを見るのが好きで、アニメはどうやって声を入れているか調べたことがあります。そのとき、声優という仕事があると知り、声優ってすごいなと思い、自分も声優になりたいと思うようになりました。
――受験生に向けて、受験勉強のアドバイスをお願いします。
Hさん 受験勉強は楽ではなかったけれど、この学校に入学して楽しく過ごせているので、皆さんも頑張ってほしいです。
Wさん 私は受験勉強をする中で、間違えた問題を放置していました。皆さんは受験までに、間違えた問題はしっかりと見直しておいた方がいいと思います。
Yさん 受験勉強で一番効果的だったのは、練習問題の量を増やすことでした。土日には100問ぐらいやって、丸付けをして答えを覚えるくらい復習しました。12月に受けた模試では算数の偏差値が15も上がったので、最後まで諦めずに頑張ってほしいです。
Mさん 私は「この学校に受かりたい!」という目標を持ってから、勉強を頑張れるようになりました。皆さんも行きたい学校を見つけて、後悔のないように頑張ってほしいです。
授業、施設、人的財産なども含めて大学との連携を強化
実践女子学園の校祖である下田歌子先生についても長く研究してきた湯浅校長先生は、同校の原点は「若き女性の高き志」だと語る。
「下田歌子先生は16歳で上京し、教育により女性の品格を高め、さらに実践的な学業を授けることで自立の基礎とし、社会に貢献できる人材を育成しようとしました。本校はその志を受け継ぎ、現代に適する形での実現を目指しています」(湯浅校長先生)
今年度の高1は、多様な進路実現を目指した選択コース制の1期生であり、国公立大学や最難関私立大学を目指す「発展コース」と、実践女子大学や難関私立大学を目指す「総合コース」に分かれている。高2になると、「発展コース」は文系・理系を選択し、「総合コース」は、「文理コース」と「教養コース」のどちらかを選択。「文理コース」は受験科目に絞った履修、「教養コース」は主に実践女子大学への進学に対応し、幅広い選択科目が選べる。
「高校生は実践女子大学の授業を聴講できるようになっていますが、聴講した授業の単位を認定できるように準備を進めています。実践女子大学に進まない場合でも、大学での学びがどんなものか知るための体験として、役立ててほしいと考えています。現在構想中の『実践女子10年教育』は、実践に進学するための10年という意味ではなく、自分に合う進路を選ぶために、人的財産や研究なども含めて併設している大学を活用していくものです。たとえば今年6月から、高校生は大学の図書館を利用できるようになりました。実践女子大学への進学に関しては、専願と併願の内部推薦があります。併願の場合、実践への推薦を得たまま、他大学を受験することができるのです。GMARCHなどへの合格実績が伸びている要因の1つとして、併願推薦を利用して他大学への受験に挑戦できることが挙げられると思います」(湯浅校長先生)
▶︎校長 湯浅茂雄先生
3つの柱で“世界につながる実践女子”を育成
同校では、探究教育・グローバル教育・感性表現教育を3つの柱として、“世界につながる実践女子”を育成。感性表現教育として、中1と高3では礼法の授業を取り入れている。中1必修の「日本文化実習」では、華道、茶道、筝曲、和装着付、仕舞から1つを選択。日本文化を通して人との接し方や美しい立ち居振る舞いを学び、中2以降はクラブ活動として学びを続けることもできる。
「グローバルで活躍するには、日本人としてのアイデンティティーをしっかりと持っていることが大切です。礼法や日本文化実習で学ぶことは、すぐには役立たないこともあると思いますが、中高一貫だから身につけることができる貴重な財産となります。グローバル教育では、国際学級で成果を上げていたプログラムを全クラスに広げて、英語の授業をレベル別の少人数多展開で実施するようになって4年目です。国籍が様々な10人のネイティブ教員が指導にあたり、多様性という意味でもよい環境の中で、英語力も伸びてきています」(湯浅校長先生)
探究教育は、総合的な探究の時間を中心に、ユネスコなどが推奨するESD(持続可能な開発のための教育)を展開。中1から高1で行う探究授業「未来デザイン」では、「社会」「環境」「国際・異文化理解」という3つの視点から、現代社会の様々な問題について考える。「未来デザイン」の集大成となる高1の修学旅行では、ニュージーランド・シンガポール・沖縄の3か所から行先を1つ選び、現地の取り組みを体験。
「ESDは教科横断的な学習になるので、教員たちのきめ細やかな対応が必要です。本校では現在、17人の教員がESDを展開しています。1学年が約250人という規模ですが、教員たちは生徒一人ひとりに寄り添い、それぞれがのびのびと学べる環境を整えています」(湯浅校長先生)
有志による生徒広報「JJblossom」
同校では3年ほど前から、学校見学に来た小学生とその保護者を有志の生徒が案内をする「生徒タクシー」を実施している。そのルートなどを見直し、インスタグラムなども活用してもっと学校をアピールしたいという生徒たちが約60人集まり、今年度から「JJblossom(実践女子ブロッサム)」と名付けて活動を始めた。
「先日の校内見学会には、350組の保護者と小学生が来校してくださいました。『どの生徒さんも、元気に挨拶してくれます』『子どもが引っ込み思案なのですが、生徒タクシーの生徒さんに優しく声をかけてもらえて嬉しかったです』『部活の発表を見に行ったら、早く着きすぎてしまったのですが、生徒さんが椅子を持ってきてくれました』など、温かい感想をたくさんいただいています。このようなことは、急にできることではありません。これまでの学校生活の中で身につけてきたことが、自然に表れるのだと思います」(湯浅校長先生)
JJblossomの生徒たちは、インスタグラムに投稿する写真の撮影、文章やハッシュタグを考えたり、他校の学校案内を持ち寄って研究し、「他校で広報を担当している生徒とも交流したい」という意見が出るなど、積極的に活動しているという。
「大学にも、オープンキャンパス運営などをサポートするJ-STAFFと呼ばれる学生スタッフがいます。JJblossomの生徒たちは、J-STAFFと一緒にトレーニングを受けたりもしています。校長に就任して、中1から高3までの6年間は、大きく成長する大切な時期だと改めて感じました。生徒たちがより成長できる環境となるように、様々な場面で大学・短期大学部との連携を強化していきます」(湯浅校長先生)
<取材を終えて>
同校のインスタグラムやフェイスブックには、JJblossomの活動報告なども多く投稿されており、生徒目線での“実践女子愛”が伝わってくる。「生徒タクシー」の告知や報告も投稿されているので、まずはインスタグラムなどをチェックして、ぜひ実際に「生徒タクシー」を体験していただきたい。