スクール特集(白百合学園中学校の特色のある教育 #6)
クラブの部長経験者が語る「5年間の部活を通して、私が成長したこと」
白百合学園中学高等学校では、豊かな人間性や自主性を育てるクラブ活動を大切にしている。生徒たちがどのような活動をしているのか、バスケットボール部、体操競技部、ESS部、美術部の元部長に話を聞いた。
同校のクラブ活動は、中学生は全員参加、高校でも8割近くの生徒が2年生まで活動を続けている。入試広報部長の瀧澤裕子先生は、クラブ活動の位置付けについて、こう話す。
「中高生が一緒に活動することで、同級生だけでなく、縦の人間関係も築かれます。中1生から見た高2生は憧れの存在で、反対に高校生にとって中1生は、純粋に何でも吸収していく存在。互いに切磋琢磨することができ、部活の存在は学校生活の中で、とても大きいと考えています。
また、クラブは基本的に生徒が主体となって運営します。何か困ったり迷ったりした時も、まずは自分たちで考える姿勢を大切にしています」
▶︎入試広報部長 瀧澤裕子先生
クラブの活動と入部を決めた理由
生徒たちはどのような部活生活を送ってきたのか、高校2年の元部長たちに話を聞いた。
▶︎写真左より:KNさん、KSさん、Tさん、Iさん
【お話を聞いた人】
KNさん 高校2年生 バスケットボール部元部長
KSさん 高校2年生 ESS部元部長
Tさん 高校2年生 美術部元部長
Iさん 高校2年生 体操競技部元部長
――所属していたクラブの活動と、入部した理由を教えてください。
KNさん 小学生時代、地元のバスケットボールチームに入っていて、中学でもバスケットを続けたかったので、迷わずに入部を決めました。活動日は週3回で、高校生が中心になって練習のメニューを考えます。そのほかに朝練があります。私は早起きが得意でしたが、大変な部員もいるようです(笑)。
KSさん ESSは英語のオリジナル劇を創るクラブで、脚本も自分たちで書きます。白百合では中1生に向けて2週間の部活のPR期間というものがあり、私はやりたいものが多く、ほとんどのクラブを見学しました。ESSはダンスショーをしていたのですが、先輩方がきらきら輝いているのを見て「私もここの一員になりたい」と、見学後はESS以外考えられなくなりました。
Tさん 美術部は普段、自主制作をしています。学園祭では、校門前に飾るアーチをみんなで作ったり、パンフレットの案を出したりしています。また、1人2つの作品を作り、展示をします。私は絵を描くのが好きで、経験豊かな美術の先生もいらっしゃるので、このクラブを選びました。
Iさん 小学生の時に学園祭で体操競技部の発表を見て、先輩方がとてもかっこよく、その時から入部を決めていました。私は小学校時代に体操を習っていましたが、部員は経験者と初心者が半々くらいで、それぞれのレベルに合わせて練習をしています。
部活の思い出、部員同士の交流
――約5年間の活動のなかで、楽しかったこと、辛かったことを教えてください。
KNさん 楽しかったのは高2の1年間です。コロナもあって、なかなか練習ができなかったなか、久々に夏合宿をすることができました。合宿後に姉妹校の大会と、関東地区カトリック校女子球技大会に出場し、優勝しました。5年間積み上げてきたものが発揮でき、とてもうれしかったです。
部活は楽しい思い出しかありませんが、あえて辛かったことといえば、中1の時に、先輩とコミュニケーションをとるのに緊張したことです。でも、今思うと、大したことではなかったですね。
KSさん 楽しかったことは山ほどあります。ESSは学年ごとに役割があり、中1はアンサンブルといって、後ろで歌を歌ったり、ダンスをしたりします。中2はオーディションに参加できるチャンスがあり、選ばれた人はキャストになることもできます。中3は全員裏方を担当し、高1は幹部といって、部長の仕事やダンスの指導、演技の指導などを行い、高2は全員キャストをします。いろいろな経験ができたのも楽しかったし、裏方や幹部をやって、さまざまな視点を持ったうえで、舞台を創っていけたのが良かったです。
辛かったのは、中3の時にコロナで、裏方の活動がほとんどできなかったことです。高1で部長になって、少しずつ活動が再開しましたが、1日に2時間しか講堂が使えないなどの制限がありました。対面の練習があまりできず、家でダンス動画を撮って配信したり、振り返りや連絡もオンラインで行ったりしていたので、部員たちとコミュニケーションをとるのが大変でした。
Tさん 楽しかったことも辛かったのも、自分が部長を務めた高2の時です。思い出深いのは、私立の学校が集まって作品を展示する合同展です。その展示会は先生が関与せず、会場を手配することからセッティングや受付など、すべて生徒だけで運営します。部長としてみんなを率いながら開催し、達成感がありました。
辛かったのは、中1を勧誘する部活のPRの時。美術部では中1生が描いたイラストを缶バッジにする取り組みをしたのですが、個性豊かな人が集まっているクラブなので、みんなが同じように動いてくれず、まとめるのが大変でした。
Iさん 器械体操部は少人数ということもあり、先輩と後輩の仲が良く、部活が終わっておしゃべりをしながら帰るのが楽しかったです。また、体操は個人スポーツなので、新しい技に挑戦する時も、やり方がそれぞれ違います。私は慎重なタイプだけれど、勢いのある人もいて、性格の違いを見て、自分について改めて知ることができました。
辛かったのは、足を怪我して、長期間練習ができなったこと。それでも、自分なりに筋トレをしたり、各部員の練習を見て、気付いたことを伝えたりしていました。自分の練習ができなかったのは辛かったけれど、部員1人ひとりと向き合えたのは良い経験でした。
――部員同士の交流はどうでしたか?
KNさん 朝練もあり、部員とは毎日のように顔を合わせるので、日に日に仲良くなりました。また、カトリック校女子球技大会は、中1~高2まで出られる大会で、高校生のメンバーの中に中学生が入って練習したり、コミュニケーションもたくさん取り合いました。
KSさん 1つの舞台を創っていくには、ダンス、歌、演技、照明などの裏方、どれが欠けても完成しません。必然と交流が深まり、同じ役割を担う同期とはさらに絆が強まりました。
Tさん 美術部は上下関係がそれほど厳しくないクラブですが、学年の間に少し距離があるように感じたので、自分が部長になってからはどの学年とも積極的にコミュニケーションをとるようにしました。オンラインでも「今日の部活は誰が来るの?」などと声をかけるようにしました。
Iさん 全体的に仲の良いクラブでしたが、同期の存在は大きかったです。新しい技に挑戦する時、怪我をして怖くなった私を励ましてくれたり、部長として部をまとめる時も、たくさん助けてもらいました。また、私は後輩にもたくさん意見を言ってもらった上で部の方針を決めて行きたかったので、いつでも話しやすい雰囲気を作るように心がけました。
学業との両立、部活を通じて成長したこと
――部活と学業の両立はどのようにしていましたか?
KNさん 授業に集中し、授業中に8~9割は吸収できるように心がけました。また、睡眠時間は削りたくなかったので限られた時間でいかに効率を上げるか、隙間時間をどうやって見つけるか、先輩や母に聞いたり同期とも話し合ったりしました。高校生になってようやく自分の生活リズムが完成したと思います。
KSさん 部活のある日は、興奮しているのと疲れもあって、中1、2年の頃は思うように勉強ができませんでした。周りの方々に相談したら「授業を一番大事にしてみたら」と言われ、授業で学んだことはその場で理解するように努め、わからないことは先生に質問して、学校ですべて解決してから家に帰るようにしました。
Tさん 私は通学時間が長いので、行き帰りの電車の中で、暗記や小テストの対策をしていました。家では絵も描きたいので、隙間時間を利用しながら勉強と好きなことのメリハリを付けるようにしました。
Iさん 私も授業に集中し、授業終わりは必ずと言ってもいいほど先生に質問をしました。たとえば「古文の単語がわからない」と質問すると、その単語の背景まで教えてもらえることがあります。そういうプラスの情報や雑談を聞くのが好きで、全部ノートに書き留め、それを見ることで楽しく勉強を進めることができました。
――部活を通じて、自分が成長したと思うことは?
KNさん 自分を律する力です。父から「部活で楽しい時間を過ごしているのだから、勉強もやらなくてはいけない。やらなければいけないことをやってから、楽しいことをするべきだ」と言われ、その通りだと思いました。あと、コミュニケーションの力がつきました。特に部長になってから、どうすれば人の意見を引き出せるか、どういう言い方をすれば相手に受け入れてもらえるか、考えて話すようになりました。できるだけ柔らかい口調で、自分の考えを明確に伝え「私はこう思うけど、どう思う?」と双方向で対話するようにしました。
KSさん 私は2つの大きな気づきがありました。1つは責任の重さです。中1の時、先輩が「1人ひとりが輝かなければ、舞台は成り立たない」とおっしゃっていて、私の輝ける場所がここにあること、そして自分の存在の大切さがわかりました。同時に、舞台を成立させるためにも責任を持たなければならないと強く思いました。
もう1つはコミュニケーションの難しさです。コロナ禍でオンラインでのやり取りも使いこなしましたが、相手の顔が見えない分、思いを伝えたり、気持ちを引き出すことの難しさを実感しました。特に部長は、自分だけが輝いていてもダメで、約70人の部員全員が輝けるように考え、行動しなくてはなりません。大変でしたが、コミュニケーション力やまとめる力が前よりも付いたと思います。
Tさん 美術部はあまり縛りがなく自由なので、自主性が磨かれたと思います。「私はこういう制作がしたいので、粘土がほしい、水彩絵の具がほしい」と先生に要望を伝えたり、自ら発信していかなければ自分のやりたい活動ができません。そういう積極性も身につきました。
Iさん 私は自分のことがわかるようになりました。体操競技部は部員のレベルがそれぞれ違うので、一人一人自分にあった練習方法を考えます。また、体操は怪我を伴うスポーツなので、体調がすぐれない時などの練習は、別のメニューを考えた方がいい。そういう判断も自分でする必要があります。部活を通じて「私ってこういう性格だったんだな」と知ることも多く、自分の行動パターンを知ることは、部活以外でも活かせると思います。
学校の魅力と受験生へのメッセージ
――受験生に向けて、白百合学園の魅力やメッセージを伝えてください。
KNさん 学年を超えて仲がよく、温かで素敵な雰囲気に包まれた学校です。受験生に伝えたいのは、白百合は幼稚園や小学校からの進学者もいますが、中学校で入学する生徒との壁は全くないということ。私は幼稚園からですが、中学から入学した友だちのほうが多いくらいです。高2の今では誰がどこから入学したという意識はなく、その点は心配しないで入学してほしいと思います。
KSさん この学校は、いろいろなことにチャレンジできる環境があります。私はフランス語に興味があり、高校では第2外国語でフランス語を選び、フランス語検定の準2級も取得しました。その時、1対1の補習を放課後に行っていただくなど、手厚くサポートをしていただきました。自分のやりたいことを伸ばしてくれ、周りの友だちも様々なことにチャレンジしている人が多いので刺激をもらえます。
また毎日、お祈りで始まり、お祈りで終わる生活ができるのも白百合学園ならでは。お祈りをすると心が落ち着き、今日も頑張ろうと思ったり、辛い時でも神様が見守ってくださっているという安心感があります。
Tさん 美術や音楽など、専科の先生方が充実していることが魅力だと思います。進路についても、経験豊かな先生に相談にのってもらえます。白百合は校則が厳しいと思うこともありますが、それを含めていい経験ができる学校です。
Iさん 授業、行事、部活、課外活動と、さまざまな経験をするなかで「これ、私好きかも」と自分の興味を見つけられる学校です。学校の行事にはボランティア活動も多く組み込まれており、皆ボランティアに自然に参加するようになります。また、友だち同士、先生との距離が近く、卒業生もよく学校に訪れ、家族のような関係を築くことができます。
最後に、瀧澤先生は、以下のように話した。
「クラブ活動を通して、皆がひとつひとつの経験、人との出会い、時間など、あらゆる全てに大事に向き合うことで成長していく姿をあらためて感じ、まさに白百合の校訓を実践していることを嬉しく思います」
【取材を終えて】
部活を奨励している学校は多いが、同校は中学生の参加を必須にするなど、とても重視している。最初は少し驚いたが、生徒たちの話から、部活を通じて人間性や社会性が築かれていること、また、自分たちでしっかり運営していることがよく理解できた。