スクール特集(昭和女子大学附属昭和中学校の特色のある教育 #10)
先生が語る“昭和女子の今”Vol.7(若手教員編)
先生の声を通じて、学校を知る企画。第7回は、国語科、理科、英語科の若手の先生が登場。教科で育成したい力や、担任をしているコースの特色について話を聞いた。
これまで様々なカテゴリーで、先生を紹介してきたシリーズ。今回は、国語科、理科、英語科の若手の先生に、教科及びコースの特色や、育てたい生徒像についてインタビューを行った。
<お話を聞いた先生>
多田 紗季先生 (3年目) 国語科 本科コース6年(高3)担任
小松 遼先生 (4年目) 理科 スーパーサイエンスコース5年(高2)担任
太田 千遥先生 (5年目) 英語科 グローバル留学コース2年担任
写真左より:太田 千遥先生、小松 遼先生、多田 紗季先生
教科で伸ばしたい力と授業の特色
――教科として、どのような力を伸ばしていきたいですか?
多田先生 大学へ進学し、社会へ出た時、自分の考えていることや感じていることを他者に伝えることは、コミュニケーションを構築していく上でもますます必要になります。それもただ主張するのではなく、相手の立場を考えながら伝えることが大切です。そのような力を国語の学びを通じて育てていきたいです。
本校では、授業以外でも「感話」といって、朝の3分間スピーチをしたり、毎年の学寮*1で短歌を作ったりするなど日頃から表現の活動を行っています。日々私たちを取り巻く環境は変化し、求められる力なども多様化していますが、自分の気持ちや考えを表現して伝える力や相手を想う想像力は変わらずに重要な力だと考えています。
小松先生 自然科学の学習では、ある意味、感情を排除し、データに基づいて客観的に判断できる力を育成したいと考えています。たとえば、遺伝子組み換えと聞くと多くの人が「なんとなく怖い」という印象を持ちがちです。しかし、「遺伝子とは何か。それを組み換えるというのはどういうことか。それによってどんなことが可能となり、また引き起こされるリスクには何か」ということを正しく説明できる人はあまりいないかもしれません。生徒たちには、それぞれの物事を正しく理解し、その上でデータをしっかり見て考察をしてほしい。自然科学の基礎的な力量を育てていきたいです。
太田先生 英語科も国語科と似ていて、英語をツールとして自分の考えを表現し、相手に伝える力を養っていきたいと考えています。また、本校はボストン研修*2をはじめ、海外研修や留学のプログラムが数多くあります。また、そのようなプログラムに向けて日本でしっかりと準備をして土台を作ります。このような体験を通じて、国際理解力も身に付けてほしいですね。
――これらの力を育成するために、授業で工夫していることはありますか?
多田先生 現代文でも古典でも、作中人物の心情が描かれている部分では「これはどういうことだと思う?」と問いかけをしています。生徒が自分に引き付けて考えられるよう、また、いろいろな情報や立場に立って想像できるよう授業を組み立てています。
また、本校では「昭和の100冊」という読書の道案内冊子(中学校編、高等学校編)を毎年、国語科の教員が作っています。それを活用した読書指導や感想文の指導を行うなど思考の幅を広げ、表現する機会を多く取り入れています。
小松先生 定義を明確にして、その定義を自分の言葉で説明できるように生徒たちを指導しています。たとえば生物の学習で「生体内で起きる化学反応を何と言いますか?」と質問すると、すぐに「代謝」という答えが出てきます。それで終わるのではなく「代謝とは何か」を説明するところまで進めていきます。定義があいまいになると、問題も解決することができません。自分の言葉で説明することで理解が徹底できるので、そのような授業の仕方を心がけています。
太田先生 中学生では、まず英語に慣れること英語が楽しいと思う気持ちが大事です。苦手意識を持たないよう英語が自然と耳に入り、話せるような環境を作っています。ある程度英語の力がついてきたら、発表やレシテーション、ネイティブの教員とのインタビューなど、実践の場を多く設けています。自分の話したことが相手に伝わったという経験を増やし、自信を付けてほしいと思います。
また、グローバル留学コースは、朝礼・終礼を英語で行ったり、日頃の日常会話から英語を取り入れたりしています。授業では、リスニングをした後にディクテーション(書き取り)をしたり、ニュースをテーマにディスカッションをしたり、少しでも長く英語の世界に浸れるように工夫をしています。そのせいか、生徒からも英語で発言することが多くなりました。
*1学寮…1~5年生が、神奈川県足柄上郡の施設「東名学林」や千葉県館山市の施設「望秀海浜学寮」に宿泊し、共同生活や自然体験などを行う。
*2ボストン研修…アメリカ合衆国・ボストンにある学園所有の研修施設「昭和ボストン」を拠点にして行われる12日間の研修。毎年、中学2年生全員が参加し、グローバル留学コースは特別プログラムも用意。
育てたい生徒像と各コースの展望
――日々の学校生活を通じて、生徒たちにどのように育ってほしいですか? また、生徒の成長を感じたエピソードがあれば教えてください。
太田先生 好奇心をもって未知なことにもチャレンジし、困難な状況であっても最後までやり遂げられる力をつけてほしいですね。そのためには生徒が自己肯定感や自信をもつことが必要なので、私も褒めたり励ましたりしてサポートをしようと心がけて生活しています。
生徒の成長を感じたエピソードとしては、1年の後期に、英語で自分の尊敬する人をプレゼンテーションするという授業をしたのですが、ある生徒は尊敬する人のダンスをしたり、またある生徒は、事前に音楽を演奏したものを動画に撮って見せたり、みなそれぞれ発表の工夫をしていました。どうしたら相手に伝わるだろうか、自分で考えて行動をする。1年間の学びの中で、英語力プラス表現力がついていると実感しました。
小松先生 生徒には、客観的に正しい事実に基づいて行動できる力を身に付けてほしいと思っています。スーパーサイエンスコースの3~5年生は、自分で決めたテーマに1年かけて取り組み、最後に成果を発表する課題研究を行っています。1年の間には、実験や研究がうまくいかないこともあり、生徒は自然科学に取り組む大変さを身をもって知ります。それでも研究を続け、最後は発表までたどりつく。プレゼンや質疑応答をしている生徒の姿を見ると、最初の頃とは随分違うな、成長したなと感じますね。この先、大学や大学院で自然科学の研究をする生徒もいると思いますが、この経験があるかないかは大きいと思います。
多田先生 国語科の学びでも話しましたが、自分の考えたこと、感じたことを相手を慮りながら、表現することで、周囲や社会に良い影響を与えられる人に育ってほしいですね。それには、自分が何に対して思考したのか、感じたのか、小さなことでも興味関心をもつことが大事です。小学校、中学校の段階でいろいろなことに好奇心を持ってほしいと思います。
生徒のエピソードですが、本科コースの4年生から探究学習として、大学や企業を連携して研究する「LABO活動」や、ボランティアと課題解決をする「サービスラーニング」などの活動を行っています。昨年はコロナ禍で、サービスラーニングを選択している生徒の中には、ボランティア先が見つからず、活動が難航しているところもあったのですが、あるグループは自分たちでマスクを100枚以上手作りして老人ホームに寄付をしていました。自ら情報を収集する力や、自分の役割を認識して行動する力が身に付いていることに感心しました。
――それぞれのコースの展望と、ご自身の抱負をお聞かせください。
小松先生 スーパーサイエンスコースの目標は、徹底的な基礎学力の育成とともに理数系に抱いてきた興味をより高い次元に引き上げる、自分の希望する進路を実現できる環境を作ることです。それには、生徒自身が自分の興味や関心を、明確に把握することが重要になります。たとえば「生き物が好き」といっても、生化学が好きなのか、生理学が好きなのか、それとも生態学が好きなのかによって、「生き物との関わり方」は異なります。「特にこれが好き」というものを見つけられるようサポートしていきたいですね。
個人の目標としては、生徒が何を求めているのかをきちんとキャッチできる教員になりたいです。
多田先生 本科コースでは、予測不可能な時代に柔軟に対応できる力を養っていきたいです。自分の役割を認識するのもその一つですね。自分は社会でどういう立ち位置で貢献できるか、中高部での学習やさまざまな活動を通じて自分をしっかり見つめる姿勢を大切にしていきたいです。
6年の担任として、進路指導をする時は一人ひとりに向き合い、何がやりたいのか、何に興味があるのかを追求し、その上で夢の実現のために生徒に伴走していきたいと思っています。
太田先生 グローバル留学コースは、4年次に10か月のカナダ留学があります。自分がそこで何を学び、どんなことを身につけたいのか、目的をもって日々前進し続けられる力を中学3年間で養いたいと思っています。生徒たちには、前向きなマインド、活力を蓄えてほしいので私もそれらを持ち続け、お互いによい影響を与え合いながら成長していきたいです。
私も、教員として生徒のための最善の方法を模索する毎日ですが、自分も留学の経験があり、生徒たちも英語を学びたい、英語で学びたいことがたくさんある。その共通点をうまく噛み合わせ、一緒に目標に向かってがんばりたいです。
受験生へメッセージ
――最後に受験生へのメッセージをお願いします。
多田先生 小さなことにも興味をもって、たくさん本を読んでいろいろな世界に触れてほしいです。小さなことでも疑問をもって突き詰めていくと、実はその世界だけに限らず教科横断で見えてくることもあります。そして本校には、多様な体験の場があります。この学校で、自分の好きなこと、やってみたいことをぜひ見つけてみてください。
小松先生 本校は大学の附属校なので、普通の中学、高校にはない設備が充実しています。1台数億円もする電子顕微鏡も、借りることができます。大学との連携授業もありますね。また、スーパーサイエンスコースは、クラス替えがなく、似たような興味をもった生徒が集まって過ごすので、1つのチームとして切磋琢磨しながら、全体で高めあっていけます。
小学校時代にがんばってほしいのは、言葉の力を付けることです。実験をする時も言葉の精度が必要です。中学入学後でも、言葉で説明することが求められるので、しっかり学習をしてください。
太田先生 本校の強みは、ボストン校をはじめ、世界各国の学校とのつながりが強いこと、自分の可能性を伸ばしていけるプログラムがたくさんあることです。先輩の面倒見もよいですね。私が受け持っている中学2年生は、1年生が入学してくると、ワクワクして教室まで声をかけに行っていました。新入生を心待ちにしている先輩が多いことをみなさんにお伝えしたいです。
<取材の補足と感想>
これまで21人の先生に登場していただいたが、改めていろいろなタイプの先生がいて生徒を支えていることを感じた。同校は「チャレンジ」をキーワードに、生徒たちの指導を行っているが、先生たちの活動も同様だ。3人の若手の先生は、「これは生徒に必要だと思うこと、自分がやってみたいプログラムを、すぐに反映している」と話す。昭和には教員歴と関係なくチャレンジできる環境があり、また、今回のインタビューを通じて先生も生徒と一緒に成長をしていきたいという思いが伝わってきた。
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