スクール特集(郁文館中学校の特色のある教育 #10)
野球部が甲子園を目指すように、東大合格を目指す「東大クラブ」発足!
郁文館中学校は、2023年度から「夢教育」メソッドによる東大合格者30名への挑戦をスタート。新たな教育環境「学力プレミア」とは?
独自の「夢教育」で、「人間力・グローバル力・学力」の向上を目指す郁文館中学校。2023年度から新たな教育環境「学力プレミア」を立ち上げ、「夢教育」メソッドによる東大合格者30名への挑戦をスタートさせる。「学力プレミア」により提供される教育環境と、「学力プレミア」始動に先駆けて誕生した「東大クラブ」について取材した。
2023年度から「東大合格者30名への挑戦」がスタート!
郁文館中学校が行っている「夢教育」は、同校で学ぶすべての子どもたちを「人生の主人公として輝かせる」ことをゴールに設定。その実現のために、大学合格をモチベーションとして発揮する推進力ではなく、それぞれの生徒に夢を持たせて、夢を追わせることで、学習への推進力を育ませることが大きな特徴である。同校ではこれまで、この「夢教育」をベースに、「人間力・グローバル力・学力」をバランスよく伸ばすことに力を入れ、推薦や総合型選抜などを活用し、夢の通過点である大学合格実績を積み上げてきた。
一方で、東京大学の入試問題を研究し続けてきた結果、入試傾向が「暗記能力重視」から、問題発見・解決力、創造力やイメージ力など「社会を生き抜くための力」を評価する出題に変化し始めてきたという。これらの力は同校の夢教育で育む力と重なっており、このような出題傾向であれば、「人間力・グローバル力・学力」のうち「学力」の部分を強化することで東大合格を夢の通過点とすることも可能だ。同校は、明治時代から東大の野球部と日々練習試合をしていたほど立地も近く、東大は同校にとっては最も身近な大学である。子どもたちが持つ様々な夢を実現させるためには、東大で学びを継続・発展させることでその可能性をより高めることができると考え、新たな教育環境として「学力プレミア」を立ち上げることとなった。「学力プレミア」は「人間力・グローバル力・学力」のうち「学力」の部分を強化して東大合格を目指すが、東大合格のみをゴールにした教育ではない。「学力プレミア」が目指すのは、東大の先にある「夢」、そして「人生の主人公として輝く未来」を実現させることである。
▶︎教科担当者による個別指導
「学力プレミア」が掲げる3つのミッション
「学力プレミア」は、「東大合格者30 名の輩出」「個別最適化学習の確立」「最高品質の授業・指導法の実践」という3つのミッションを掲げている。
2023年度から始まる「学力プレミア」を定着・進化させ、夢学園創立140周年を迎える2029 年度に、学園内の高校3校合計で30名、東京大学以上の合格者を輩出することを宣言。また、個別最適化学習を確立させるために、少人数制のクラスとレベル別・志望受験別の授業を取り入れ、生徒の学力を最大限に伸ばすための戦略シートを使用した指導を行う。さらに、教頭や教科主任による授業巡回を定期的に行ったり、ベテランから新任の教員までが一丸となって切磋琢磨できる研究授業などを通して、最高品質の授業と指導法を実践。質の高い授業を実現させるために、ゴールからの逆算に基づき、計算しつくされたカリキュラムを提供する。これらにプラスして、ICT の活用により生徒たちの学習状況を常に把握することで、より適切な指導を行っていくという。
このミッションを達成するために、東大合格へ導くプロフェッショナルたちが同校に集結した。2029年に迎える創立140周年をゴールとした「ネクストステージプロジェクト」のリーダー兼進路指導部長に、東大合格請負人として知られる近藤明夫先生が就任。近藤先生は、都立戸山高等学校や都立富士高等学校附属中学校で進路指導責任者を歴任し、東大合格への難しいミッションをクリアしてきた。近藤先生を中心に、都立日比谷・戸山・九段高等学校などで東大受験指導を歴任した荻野大吾先生(数学科)、駿台予備学校英語科講師として、毎年多くの東大受験生を合格に導いている稲名圭子先生(外国語科)といったプロフェッショナルが合格へと導く。
同校では、「学力プレミア」が始動することで学校全体が活気づき、「東大合格」を目指さない生徒にとってもよい影響があると考えている。3つのミッションは、どんな社会にも通用する思考力や表現力を育成する授業が展開され、高いレベルを目指して切磋琢磨する学校の実現にもつながっていくという。
▶︎現役東大生による講義
▶︎生徒を個別指導する近藤先生
新しい部活動「東大クラブ」発足
「学力プレミア」始動に先駆けて、同校では2023年に新しい部活動として「東大クラブ*」が誕生した。甲子園出場を目指すために野球部に入るように、東大合格を目指すために活動するクラブに入りたいという気持ちに応えるために「東大クラブ」を設立。進路指導部長による学習カウンセリング診断を受けたり、プロ講師や同校のベテラン教員による特別講習を受講するなど、東大合格を勝ち取るために部員同士で切磋琢磨する場となる。
*「東大クラブ」入会には一定の成績基準がある。
同クラブでは講演会やイベントも開催し、東大出身の先輩や東大受験のエキスパートから、東大に合格するための秘訣を聞く機会も得られる。今年5月には同クラブが特別に許可を得て、東京大学大学院工学系研究科の染谷研究室内を見学。同研究室は2003年の発足以来、一貫して有機エレクトロニクス(以下、E-Skin)の研究を行っており、TIME紙の表紙やCNNニュースにも取り上げられた。E-Skinとは、薄くて軽く曲げても壊れない、まるでキッチンラップのような耐久性に優れた新しいデバイスである。同研究室では、E-Skin特有の柔らかさや機能を生かし、服や肌に直接装着できる仕組みを研究。研究室見学では、E-Skinを使った特殊な生地を生成する機械や、紫外線を通さないフィルターで囲まれた部屋など、通常では立ち入ることができない研究室内部を見学した。同クラブでは、今後も東大に日本一近い立地を活かして、様々な活動を行っていく。
▶︎東京大学染谷研究室を訪問
<取材を終えて>
同校は、最寄り駅が東京メトロ南北線「東大前駅」であり、多くの生徒が東大生と同じ駅を利用して登校している。東大生を身近に感じることができる環境であるからこそ、「東大クラブ」の活動も活発に行えるのだろう。部活動として誕生した「東大クラブ」の活動と、今後の成果に注目したい。
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