スクール特集(昭和学院中学校の特色のある教育 #3)
個性を伸ばす5つのコース制始動
これまでの特進クラス、総合進学クラスに加え、更に個性を伸ばすクラスを新設。2020年、創立80周年を迎える昭和学院の新コース制とは?
中1、中2は「インターナショナル アカデミー」「アドバンスト アカデミー」「ジェネラル アカデミー」の3コースで学び、中3になると、アドバンスト アカデミーコースが3コースに細分化され、全5コースから自分の個性や適性を伸ばせるコースを選択することができる。もちろん、高校からの入学も可能だ。コースごとに特徴のあるカリキュラム内容を校長の大井俊博先生に聞いた。
多様性が生み出す化学反応に期待
大井校長が着任して以来、昭和学院は「チーム昭和」を合言葉に、さまざまな改革に着手してきた。今回、5つのコースを設定することで、生徒たちが持っているさまざまな個性・感性、能力・適性を開花させ、認識し、伸ばしていって欲しいという。それは、すなわち、多様性を生み、お互いを認め合う風土を作ることにつながる。
「現在も多彩な中学入試で、多様な生徒が入学してきています。その影響もあり、中学校が非常に活性化してきました。個性、感性がほとばしるというか、授業にものすごく活気が出てきています。さらに高校進学時に、高校入試で入ってきた生徒と出会ったときにどのような化学反応が起きるのか、今から楽しみです。今回の5つのコースを設定することでさらに多様な生徒との出会いが生まれ、お互いの力が融合し、切磋琢磨できる機会が整ってくるでしょう。各コースで個性を伸ばし、多様性が絡まり合って化学反応を起こし、生徒たちにハイレベルな変化をもたらすことを期待しています」(大井校長先生)
英語に特化して国際人を育てるIAコース
グローバルに活躍する人材を育てるインターナショナル アカデミー(IA)コースでは、海外大学をはじめ国際基督教大学(ICU)、東京外語大学、上智大学、その他国際教養系学部への進学を目指す。世界で活躍するための一つの手段としての英語を身に付けるコースだ。
「特徴は日本人教員の担任とネイティブの担任のダブル担任性。オールイングリッシュのホームルームもしますし、オールイングリッシュの英語の授業はもちろん、ゆくゆくは英語以外の授業も英語で行えるように体制を整えていきたいと思っています。また、中学でも高校でも短期なり長期なり留学を経験させ、視野を広げていくようなカリキュラムも設けています。交換留学も積極的に行うべく、現在、オーストラリアでは4校と提携しており、今後も新たな留学先を開拓していきます」(大井校長先生)
現在もイングリッシュキャンプやオーストラリアでの語学研修など、英語に力を入れている同校。IAコースでは語学研修とは別に中学生のころから海外留学を経験し、語学スキルはもちろん、グローバルな視野を広げ、英語を武器に勝負したいという生徒を育てていく。高校生になったら、全員に1年ほどの留学も経験させたい考えだ。留学時の単位は互換して、進級も可能。
「日本の大学を受けるための受験勉強という点では1年遅れてしまうかもしれません。しかし、TOEFLやSATなどのスコアを評価してくれる大学も増えているので、留学で身につけた英語力で高スコアを取り、AO入試を選択することができます。また、在学中に留学を含め海外の大学に進学する準備をし、卒業後は海外に行くという選択肢もあります」(大井校長先生)
東京大学など、難関国立大学を目指すTAコース
東京大学など最難関の国立大学を目指す生徒を育てるのが「トップグレード アカデミー(TA)コース」だ。少人数制で一人ひとりに合わせたハイレベルな学習指導を行う。幅広い知識をもとにした教科横断型授業や探究学習、マイゼミなど、自分で考え主体的に勉強することで自らの思考の幅を広げていく。
「難関大学に合格するにはありきたりの力では無理です。自分の持っているさまざまな能力を総合的に駆使しなくては、新しい入試も突破できないでしょう。TAコースでは一つの講座を複数の教員が見る、教科横断型の授業も行います。また、探究学習など一つのテーマに対していろいろな視点から考え、分析し、まとめ、表現していく、といった今求められている力を鍛えていく授業を行います。それぞれの進路に合わせ、自分の能力をさらに伸ばせるよう、自由に選択科目が取れるようカリキュラムしています。TAコースは毎日の補習もあり、7時間授業になります。それだけ真剣に学んでいただきたいということです」(大井校長先生)
TAコース生は特待生となるため、授業料は免除される。また、特別特待生になると入学金も免除。勉強に集中できる環境を整えている。
難関国公立大学・私立大学を目指すAAコース
千葉大学や早稲田大学など、難関国公立大学、私立大学を目指すのがAAコースだ。このコースには2種類あり、勉学を中心に難関大学を目指す「アドバンスト アカデミー(AA)コース」とスポーツに打ち込みながら難関大学を目指す「アスリート アカデミー(AA)コース」に分かれる。
「『アドバンスト アカデミーコース』は今まで当校にあった特別進学コースを踏襲しています。基礎から応用までを網羅した質の高い授業を行い、放課後にはゼミ形式での補習を実施します。長期休暇中の選択制講座や学習会などでさらに自分の能力を高め、希望する大学への入学を目指します。
一方、『アスリート アカデミーコース』は文武両道の生徒を育てることを目的としたコースです。当校はスポーツも盛んでインターハイに出場するような生徒が大勢います。そして、そのような生徒の中にはオール5の成績で難関大学に進学する生徒も少なくありません。今まではそういった文武両道の生徒向けのコースがありませんでしたので、今回、新設しました。放課後は部活に打ち込み、インターハイで好成績を取り、筑波大学や慶応大学、早稲田大学などの学校推薦型選抜や総合型選抜での入試を目指します。もちろん、一般入試で進学することも可能です」(大井校長先生)
多種多様な選択肢が可能なGAコース
自分の進みたい、学びたい、を見つけ自分をデザインする「ジェネラル アカデミー(GA)コース」。これまでの総合進学コースだ。中学1、2年で学んだことの中から、自分がどのコースに行きたいのかをセレクトし、自分でキャリアデザインを行う。
「『あなたの楽しみが未来を創造する』という言葉の通り、いろんなことができる、チャレンジできるのがGAコースです。中学1、2年で自分がどんな道に進んでいくのか、将来どんな仕事に就きたいか、そのためにはどの大学のどの学部を選ぶのか、学びながら見つけていきます。親や先生が決めるのではなく、主体的に自分でキャリアデザインをしていくことがこのコースの特徴です。勉強でもスポーツでも芸術でもなんでもいいのです。自分のやりたいことを見つけ、学びたいことが学べるカリキュラムを設定しています」(大井校長先生)
80周年に合わせ制服も一新
構想2年。80周年に向けて制服も一新する。今以上に中学生らしい、そして高校生らしいデザインに。紺のブレザーでフォーマル感を取り入れ、中学生は昭和レッド(赤)を基調に、高校生は昭和ブルー(青)を基調にした明るいデザインだ。男子は紺のブレザーとグレーのスラックスで、女子もグレーのスラックスを選択することができる。夏はポロシャツを取り入れ、中学生は白、紺、ピンク、高校生は白、紺、水色から選ぶことができる。
「コーディネートも主体性を持って決められるよう選択肢を増やしました。みんなが同じものを着るのではなく、それぞれの個性を出して、自由に選べるようにしています。始業式や終業式はフォーマルに、それ以外は自主性を尊重するといったメリハリを付けます。フォーマルとインフォーマルを理解しておけば社会に出ても通用しますから。デザインは文化祭で在校生や来場者にアンケートをとるなど、みんなで決めました。導入は来年入学する生徒たちからですが、在校生の中にも欲しいという生徒がいるので、ポロシャツだけは在校生も買えるようにしました」(大井校長先生)
<取材を終えて>
次々と進化を遂げる昭和学院中学校。細分化されたコース設定は、多様性が叫ばれる今の時代にマッチしたものと言えよう。個々の個性や能力が伸ばせる、それぞれのコースのカリキュラムは魅力的だ。「インターナショナル アカデミーコース」や「アスリート アカデミーコース」など特徴のあるコースもあり、第1期生がどのような進路を選ぶのか、今から楽しみだ。