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西武台新座中学校

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スクール特集(西武台新座中学校の特色のある教育 #4)

休校期間も毎日、オンラインによる双方向授業を実施

コロナ禍で休校を余儀なくされるなか、西武台新座中学校では毎日、動画配信とGoogle Meetを使ってみんなで学びを共有する2タイプのオンライン授業を実施。その内容を取材した。

新型コロナウィルスの影響で、新年度から学校が再開できないなか、西武台新座中学校は4月早々にオンラインによる授業を開始した。初めての試みであったものの、予測していなかった効果も出て、今後の学習指導の参考になったという。どのような授業を行ってきたのか、中学2年の学年主任である河野芳人先生と、同じく2年のクラス担任の真鍋京祐先生に話を聞いた。

動画配信とGoogle Meetを使ったリアルタイムの授業

開校当初より全生徒にiPadを用意し、ICTを活用した教育を行っている同校。3月の休校期間は、クラッシー(教育のクラウドサービス)を利用して課題などを配信し、新年度を迎えた4月からは、本格的にオンライン授業をスタートした。

「授業は2つの方法で実施し、1つは講義の動画をYouTubeに配信して見てもらうスタイル。もう1つは、Google Meetを使って、リアルタイムで双方向の授業を行うというものです。例えば50分間の授業のうち、前半の30分は動画を見て課題に取り組み、後半の20分は全員がMeetに集まって意見を共有するというように、1回1回の授業の構成を考えて、実践しました」と真鍋先生は話す。

「50分全部が一方通行の動画配信では、授業が成り立たないと思いました。いかに生徒たちが関心をもって学習に取り組めるか、積極的にオンラインの授業に参加できるか、教員全員で話し合って仕組みづくりをしました」と河野先生。

また毎日、朝と授業終わりにはホームルームを実施。真鍋先生のクラスでは、「大喜利大会」を催すなど、画面越しであっても生徒たちが楽しく顔を合わせる機会を設けたという。

▶︎河野芳人先生

▶︎真鍋京祐先生

違うタイプの授業を生徒がそれぞれ上手に活用

オンライン授業に対する生徒たちの反応はどうだったのだろうか。

「結構、前向きに取り組んでいましたね。普段の授業では、本当に生徒が課題に向かっているのかそうでないのかが把握しづらい時もありますが(笑)、画面では全員の様子がわかります。『今、集中しているな』という雰囲気も伝わってきますし、オンライン授業だからこそ集中力や自主性が伸ばせたところもあったと思います。また、1クラス15~20名という人数も、Google Meetの双方向授業には、ちょうどよかったのかもしれません。一人ひとりの顔が見られるから意見も交換しやすいし、私が担当している社会科では生徒が歴史の紙芝居を作り、プレゼンテーションを行うこともできました」(河野先生)

「動画コンテンツは『何度も繰り返して見られるのがいい!』という生徒の声をたくさん聞きました。得意な教科であれば、1回で理解できるかもしれませんが、苦手意識のある教科は、2回、3回と見ることで、わからないことがわかるようになる。普段は、同じ授業を繰り返すことがないので、動画配信が役立ったようです。また、Meetによる授業は、少しでもフィードバックをとれるように心がけました。生徒同士の声が入ることで、学習の振り返りができたと思います」(真鍋先生)

新たに見えてきたオンライン授業のメリットとは?

対面式の授業と比べて、どうしても制限のかかるオンライン授業だが、新しい発見やメリットもあったという。

「おとなしいタイプの生徒も、オンラインだと積極的になれることに気づきました。課題を出した時、普段はわからないことがあっても質問をしない生徒が『これは○○ということですか?』とテキストを送ってきたり、昼休みにMeetで質問室を開いていたら、いつもは現れない生徒が入ってきたり、リアルな場よりもオンラインのほうが動きやすい子がいることが発見でした。また、教員の指示も映像で的確に伝えられ、画面を通してグループ学習ができることもわかりました」(真鍋先生)

「教員側のメリットとしては、他の先生の授業を動画で見ることができたのが大きかったですね。今までは先生同士で授業を見学し合おうと思っても時間的な問題もあり、授業研究で見ることがほとんどでした。しかし、今回は若手からベテランまで全教員が、動画を配信することにしたのです。あるベテランの先生はスライドを使わず、資料を紙芝居形式にして用意し、黒板を背にしながら通常の授業のように講義をしたり…。様々な授業スタイルを見ることで気づきを得ることができ、教員のモチベーションにつながりました」(河野先生)

オンライン授業を受けた生徒へインタビュー

実際、オンライン授業を受けた生徒たちはどんな感想を抱いたのだろうか。中学2年生にインタビューをしてみた。

▶︎左より:Hさん・Mさん

Qオンライン授業で戸惑ったこと、面白かったことは?

Mさん 最初は慣れないのもあって、宿題の提出方法がわからず、提出期限まで出せないことがありました。面白かったのは、家にいても画面でクラスメイトの顔が見え、話ができるところ。最近の技術はすごいなぁと思いました。

Hさん 動画を見るだけでなく、Google Meetを使って話し合いをしたり、休校の間もいつもと同じように、みんなで意見を共有できたのがよかったです。戸惑ったことはあまりなかったけれど、時々、電波が悪くて画面が見づらい時がありました。

Q動画配信とGoogle Meetの授業では、どちらが楽しかったですか?

Hさん Meetの方がみんなの顔を見ることができたし、一緒に授業を受けている実感がもてて楽しかったです。

Mさん 私も同じです。動画は自分で止めて後で見ればいいや…と思うことがあったので、同じ時間に授業を受けるほうが集中できました。

Qオンライン授業で、ここが良かったと思う点は?

Mさん 何回も動画を再生できるところ。わからないままにしないで、きちんと理解できるまで、授業を見ることができるのが良いと思いました。

Hさん まとまった時間が取れて、1つひとつを丁寧に取り組むことができたところです。
朝にはホームルームがあって、授業の時間も決まっているので、生活のリズムが乱れなかったのも良かったです。

オンライン授業で見えてきたICTの効用

同校は2011年の開校当初から、生徒自らが課題を見つけて、アプローチをするアクティブ・ラーニング型のプロジェクト学習を実践。同時に、iPadをはじめとしたICTの機器を、生徒が主体的に学ぶためのツールとして利用している。「以前から東京大学の先生の協力を得て、ICTを取り入れた授業を研究してきたので、オンライン授業も瞬発力を発揮して取り組めたと思います」と河野先生は振り返る。「生徒たちもICTの環境に慣れているせいか、新しい取り組みや手法に対しても順応が早かったですね。大きなトラブルもなく、授業を進めることができました」と真鍋先生。

そして、2人の先生は、オンライン授業の経験を、今後の学習指導にも活かしていきたいと話す。

「まず、動画コンテンツの有効性を実感しました。繰り返し見ることができる動画を通常の学習にどう導入するかが、授業を組み立てる上でカギになると考えています。具体的には、生徒が自宅や放課後に事前に学習できるツールとして映像を用意し、学校では意見交換を行う『反転授業』を視野に入れていきます。また、学校が再開しても、しばらくは生徒同士が顔を突き合わせて学習をするのが難しいので、家で準備したことを学校で表現する授業を行っていきます。ICTはこのような時に役立ちますね。コロナの前と同じにはいきませんが、やはり一方通行の授業には後戻りしたくありません。グループ学習はしないけれども、グループ学習のような形態をICTを使って創り上げていきたいと考えています」

<取材を終えて>
3月からオンライン授業の準備を進めていた迅速な対応、授業の内容も、動画配信と全員で学びを共有するものを組みわせるなど、手厚く丁寧な教育を行っていることを実感した。同校は、ICTを活用した授業の経験値を積んでいるが、何よりも「良い授業を生徒たちに届けていく」ことを念頭において、先生たちが一丸となって取り組んできたことが、中身の濃いオンライン授業を実現したのだろう。

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