スクール特集(西武台新座中学校の特色のある教育 #1)
言語教育で学力・人間力が大きく向上
独自の言語教育に力を入れ、生徒の学力・人間力を着実に伸ばしている西武台新座中学校。その教育の特徴を英語科・社会科の各先生にうかがうとともに、実際に英語の授業を取材。西武台新座中学校の独自の言語教育とは?
2011年に創立した西武台新座中学校では、ディベートやプレゼンテーションなどの独自の言語教育に力を入れ、学力・人間力を大きく伸ばしています。その教育効果と、英語科や社会科での具体的な取り組みについてうかがうとともに、英語の授業を取材しました。
英語科教諭 高味直毅先生
「ディベート甲子園」初出場で準優勝
本校は2017年に創立6年目を迎えました。創立当初から言語教育を取り入れ、推進しています。その成果の一つに「ディベート甲子園*関東甲信越地区大会」で本校の中学3年生4人のグループが初出場で準優勝したことがあげられます。優勝したのは開成中学校。広尾学園中学校や開智中学校、渋谷教育学園幕張中学校などを抑えての快挙に、私たちの行ってきた言語教育の確かな手応えを感じることができました。
「ディベート甲子園」に出場したのは、私が顧問を務める英語部の部員たち。当時、「ディベート」などという言葉すら知らない彼らを「ディベート甲子園」の見学に連れて行ったところ、一人の女子生徒が「自分にもできる!」と言ったのです。そして、次の甲子園に出場したいと私に訴えてきました。
*読売新聞社・全国教室ディベート連盟主催、文部科学省後援。中学校・高校を対象に日本語によるディベート大会が全国規模で毎年開催される。
英語科教諭 高味直毅先生
ディベートに向けて周到に準備
その年の「ディベート甲子園」の論題は「刑事事件における実名報道を禁止すべきである。是か非か」というものでした。ディベートは、準備が非常に大切。まず、是とする場合のメリット・デメリットと、非とする場合のメリット・デメリットを徹底して洗い出します。出尽くしたところで、両方の立場で相手を納得させるための立論をし、さらに反論も予想した上で、それに対する再反論も用意する……。調べる労力と論理的思考をどこまで追求できるかという粘り強さが求められるのです。
生徒自ら成長を実感、成績も向上
実は、学生時代、私は英語ディベートのサークルに所属し、大学の授業も忘れるほど熱中しました。そこで得た自己肯定感をぜひ、生徒たちにも味わってほしいと願い、ディベート大会出場に誘導していったのです。ディベートはまさにアクティブラーニング。この取り組みによって、論理的思考力や判断力、表現力などが養われます。チームで課題を解決することを通じて協働力も伸ばすことができます。そして何より、自信が生まれ、自己肯定感が育つ。これこそがディベートの最大の意義だと考えています。
「ディベート甲子園」に出場した一人の男子生徒が、私の誕生日にメッセージを書いて贈ってくれました。「中1のころは人前で話すのが苦手だったけれど、先生のおかげで苦手ではなくなり、人間的にも成長できた」と。うれしくて涙が出ました。この活動、実績がきっかけとなり、本校では各教科でディベートを取り入れる動きが広まっているところです。
社会科教諭 河野芳人先生
ディベートやムービー制作に取り組む
社会科の授業では、ディベートやプレゼンテーションを積極的に取り入れています。「ディベート甲子園」での成果から、これはぜひ多くの生徒に広め、学びに役立てたいと考えたのです。テーマは「遣唐使は廃止すべきであったか否か」「江戸幕府は開国すべきであったか否か」など授業内容に合わせて設定し、グループごとに話し合い、調べ学習をして、ディベートに臨みます。
ディベート以外にも様々な工夫を授業に取り入れています。たとえば、中1では、授業で学んだことを小さい子どもに教えるための「紙芝居づくり」に取り組み、グループごとにiPadを使って制作しました。中2は、やはりiPadを活用した「歴史ムービー」の制作をこれからスタートするところです。「目指せ公地公民、奈良時代の成立過程」「貴族が活躍した平安時代と摂関政治」などのテーマでムービーをつくり、最後にプレゼンテーションも行います。
社会科教諭 河野芳人先生
主体的な言語教育が多くの効果をもたらす
ディベートやムービーづくりなど、生徒が主体的に取り組む授業は、多くの教育効果があります。授業で学んだことを振り返り、復習することはもちろん、「もし史実と違う道を選択していたら」と思考することによって、いわば生きた歴史を感じることで本当の知識が身につくのです。そんな訓練を続けることによって、現代社会の諸問題にどう向き合うべきなのか主体的に考えることができる力を身につけてくれればうれしいですね。
中1英語授業「英語で自己紹介をしよう!」
6月、中1の英語の授業を取材しました。この日の授業では「今までに習ったbe動詞と一般動詞を使い、英語で自己紹介をしよう!」という課題で、全員のプレゼンテーションが行われます。生徒は授業のために自己紹介の原稿を書き、各自のiPadでプレゼンテーションスライドも作成。原稿を暗記して、2分間のプレゼンに臨みます。
まず、先生がプレゼンのマナーについて教えました。「発表者は姿勢を正しく、大きな声で、視線は聞き手のほうへ。聞く人も姿勢を正し、視線は発表者のほうに向け、うなずきながら聞きましょう」
次に、グループに分かれ、一人ひとりがiPadで画像を見せながらプレゼンを行います。発表を聞いた生徒たちは、必ずフィードバック用のプリントにコメントを書き、それを口頭で発表者に伝え、発表者はもらったコメントを自分のプリントに書き留めます。授業の最後には、各グループの代表者がクラス全員の前でもう一度プレゼンを行いました。
すべての生徒が、きちんと原稿をまとめ暗記し、とても上手に発表できていました。発表する側・聞く側の双方がマナーを守ろうとしていることも伝わってきました。
グループ代表に選ばれた生徒に感想を聞きました
G君
みんなにしっかり伝わる文章を意識し、みんなのほうを見て発表しました。それに、聞く時の態度にも気をつけました。みんな一生懸命やっているのだから、自分も一生懸命聞こうと思ったからです。
Iさん
言いたいことを正しい英文で伝えられるように、事前に先生に教えてもらったりしました。自分の好きなことも紹介するようにと言われていたので、その点を注意してプレゼンしました。
英語科教諭 鈴木美冴先生
独自の言語教育で理解の定着を
今回の授業のねらいは、自己紹介のプレゼンテーションを通して、be動詞と一般動詞を復習し、しっかり身につけさせることです。自分を紹介するための英文を書く、暗記する、発表するという言語教育によって、理解を定着させられればと考えています。
プレゼンテーションでは、話す人と聞く人、双方の姿勢が大切です。その姿勢は、学校生活全般に波及します。発表者にフィードバック内容を書かせたのも、話す姿勢・聞く姿勢を全員に意識させるためです。もちろん、注意点を指摘するだけでなく、良かったところも見つけ、指摘し、真似してほしい。フィードバックをしっかりさせるのは、そんなねらいからです。
英語科教諭 鈴木美冴先生
生徒のプレゼンは、私が予想したよりはるかに上出来でした。授業が終わるころには、人前でもっと発表したいという生徒たちの意欲も伝わってきたくらいです。こうしたプレゼンやスピーチ、発音・発声に特化した指導などによって、生徒の英語力は大きく向上します。本校では、今後も一人ひとりの成長のために、全教員が力を合わせて頑張っていきます。