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立正大学付属立正中学校
スペシャルレポート <第3回>

「R-プログラム」で培う論理的思考力
未来を見据える力や実践力の土台を育成

心の教育と学力の二道を追求するため、同校独自の方法論「R-プログラム」を導入したのが2013年。中1から「R-プログラム」に取り組んできた生徒は、中学・高校とどのような成長を遂げているのだろうか。第3回となる今回は、中学教頭と国語教諭のふたりに「R-プログラム」の具体的な成果や手ごたえを語ってもらった。

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コラムリーディング+スピーチの成果

毎朝のSHRの時間で行われる、新聞の社説などを5分で読み、5分で自分の意見を200文字にまとめる「コラムリーディング」と、それをクラスの前で発表する「1分間スピーチ」。中1から高1までの4年間実施する中で、生徒たちがどう変化・成長をしているのか、中学教頭・教務部長の島村先生と国語教諭の竹内先生に具体的な話を聞いた。

  • 島村先生

  • 竹内先生

自分の意見を伝えることへの意欲・自信

「毎朝のコラムリーディング+スピーチにおいては、中学3年間で大きな変化が見られます。中1では新聞の社説を読むこと自体初めての生徒もいますし、意見を考えて書くこと、人前で話すことに慣れていない生徒もたくさんいます。ですが、論理的に考えて書き、それを発表するという経験を毎日繰り返すことで徐々に力がついていくのです。

限られた時間の中で自分の意見をまとめて発表する

例えば、最初は1文字も書くことができないという生徒でも、教員が『まずは口頭で意見を言ってみよう』『社説の中で印象的な言葉を書き出してみよう』など、生徒それぞれの特性を見極めながら指導することで、50文字、100文字、200文字と次第に書けるようになっていきます。

コラムリーディングは200文字を埋めることがゴールではありませんが、自分の意見を書けるようになるということは大きな成長です」。(竹内先生)

「学校外の論文コンクールなどに応募し、表彰される生徒も増えてきました。東京都が行っている『中学生の主張 東京都大会』では、近年、発表者や努力賞として上位20名に選ばれた生徒もいます。

また、校内で行う弁論大会では、自分の意見を皆の前で発表するのですが、中2・3になると『代表者として出たい』と希望する生徒が増えてきます。立正中学校には弁論部はありませんが、校外で行われる弁論大会に出場し、他校の弁論部の生徒と肩を並べて活躍している生徒もいます。

さらに、文化祭では、自己表現の1つの機会として、中学全学年で演劇を行っていますが、裏方ではなく『役を演じたい』という生徒が増えているのも印象的です。

  • 弁論大会

  • 演劇

『R-プログラム』によって皆の前でスピーチする機会が増え、本人も気づかないうちに人前で話すことに抵抗がなくなり、堂々と話す力が身についているのだと思います」。(島村先生)

教科を横断して発揮される論理的な思考力

「コラムリーディングで培っている『文章を読む→考える→書く』という力は、英語にも活かされています。
授業では『英語で話す力』を身につけることに注力していますが、そもそも話す内容が浮かばなければそれはできません。つまり、話したいことを文章化できなければ話すことができない。そのため、英語で自分の意見を書く機会も増やしています。

ネイティブの教員が行う英会話の授業

コラムリーディングによって『文章を読む→考える→書く』ということが日本語でしっかりできているからこそ、英語でも同じように『文章を読む→考える→書く』ができるようになり、それが『英語で話す力』につながっていくのです」。(島村先生)

「論理的に考える力がつくという点では、数学にもいい影響があるようです。特に証明問題は、問題の読み取り方や考え方がわかるようになり、手を付けられる生徒が増えています。 コラムリーディングで取り上げた題材は、英語の授業でも取り入れたり、LHRで賛成派・反対派の立場に分かれてディスカッションやディベートを行ったりして、学校生活全体を通して学びを深めています」。(竹内先生)

積極的に意見を交わし、コミュニケーションのベースになる力も磨く

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「自分」を知り、未来を描く力を養う

コラムリーディングで文章を読み(Read)、自分の意見をまとめ(Report)、気になった情報は「リーディングマラソン※」の中などで関連する書籍を自ら読んで知識を深める(Research)。さまざまな分野の知識の引き出しが自然に増えていくほか、スピーチやディベートで自分の考えとは違う他の意見に気づき、理解を一層深めていくことができるのも「R-プログラム」の魅力だという。

※「R-プログラム」の一環で、生徒一人ひとりが読書量を競う取り組み

自分の世界を広げ、多様性を認めるきっかけに

「中学3年間『R-プログラム』を実施することで文章や問題を読み解く力や構成力、人前で話す力などが身につき、高校1年生では大人でも頭を抱えるような国際社会の時事問題を題材に、自分の意見をまとめ、堂々とディベートができるようになります。そうした活動の中で疑問に感じたことを進んで調べたり、自分とは違う意見に発見や驚きを得たり、仲間の意見をふまえて自分の考えを見直したりと、生徒自身の世界が広がっているのを感じます」。(島村先生)

相手の意見を聞くことで自分の思考や興味の傾向に気づくことも

「また、スピーチ、ディスカッション、ディベートで相手の意見をしっかり聞く習慣ができ、自分と違う意見であっても間違っているわけではなく、批判せずに受け入れることが自然とできるようになっているのも嬉しいですね」。(竹内先生)

自分の強みに気づき、進路を考える手掛かりになる

「日常的に『R-プログラム』に取り組む中で、『私は発表することが得意』『私は文章を考えることが好き』など、生徒自身が自分の得意不得意に気づくようになるのも、『R-プログラム』の特長です。

自分だけでなく、生徒同士が得手不得手を認識することで、グループワークなどでは自然と互いを補い合う姿も見られます。一人ひとりの多様性を受け入れることが自然と身についていくようです」。(竹内先生)

生徒同士が切磋琢磨し、学んでいく

「自分の強みに気づくことで、どう働きたいのか、どう社会に貢献したいのかなど、将来を考えるきっかけになったり、自分が進む道を見つける手掛かりにもなったりもしています。その発見が『R-プログラム』の一環である『キャリアデザインプログラム』という進路学習を通して、さらに具体的に未来を描く足掛かりになればと考えています」。(島村先生)

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「社会」を知り、活躍できる力を養う

「R-プログラム」のもう一つの大きな柱となるのが『キャリアデザインプログラム』だ。卒業生に話を聞く「職業講話」、実際に働く体験をする「職場体験」、その体験をもとに製作する「職業新聞」とそのプレゼンテーションなど、中1から3年間さまざまな形で「社会」に触れ、将来どう働きたいか、そのために今何をするべきかを学ぶプログラムになっている。

中2では、仕事内容をまとめる「職業新聞」を製作する

目先の選択ではなく、将来を見据えた選択を

「私たちは、中学生のうちに『働くこと』を身近に感じ、将来の自分を思い描く力を身につけることが大切だと考えています。
そのため、将来の計画を立てることがスムーズにできるように『キャリアデザインプログラム』を用意しています。

  • 中1を対象として行う「職業講話」。中学・高校時代の話や、社会・仕事の話を卒業生から聞く

  • 中2の「職場体験」の前には外部の講師を招いてマナー講習を行い、社会で働く意識を高める

高校に入学するとすぐに、文系理系の選択、大学進学、さらにその先…と生徒は将来に関することを考える機会が増えます。
『文系か理系か』と目先の選択からするのではなく、将来自分がどんな仕事をしたいのか、どんな生き方をしたいのか、ということから、今自分に必要な選択ができるようになってほしいと考えています。

実際、『キャリアデザインプログラム』での活動や経験から、偏差値や知名度で大学を選ぶのではなく、“自分が将来やりたいことを実現できる環境”を重視して進路を決める生徒も増えてきています。
例えば、『職場体験』の際に博物館で働いたある生徒は、そこでの仕事にやりがいを感じ、学芸員を目指すようになり、その資格を取得できる大学への進学を希望しています」。(竹内先生)

「職業体験」での経験が将来就きたい仕事に結びつく生徒も多い

社会で活躍できる人材を育成する

「もともと『R-プログラム』は大学入試のためだけでなく、論理的な思考力、人前できちんと自分の意見が話せる力など、社会人になってからの実践力を伸ばす目的があります。

中1からコラムリーディング+スピーチ、『キャリアデザインプログラム』など、日常的に『R-プログラム』に取り組むことで、早い段階で自分の強みに気づき、未来の自分の姿を思い描き、それに向かって必要な力を身につけていくことができます。学年が上がるにつれて徐々に力をつけ、自信を得ていく生徒たちを見ていると、社会で活躍できる素養を高めることができていると感じるのです。

今後、高校では新学習指導要領として、『総合的な探究の時間』(総合探究)など、自身で設定した課題について情報を集めて整理し、それをまとめ、発表するといった主体的に深く学ぶことに重点をおいたカリキュラムが導入されていきます。
この探究活動は、Read、Report、Researchの力を養い、将来を見据える力、そして社会に出てから活躍できる力をつける『R-プログラム』の延長だと私たちは考えています。そのため、新学習指導要領の導入後はこれまでの『R-プログラム』の実績をベースに、高校でもより一層学びを深めていけるようにする予定です」。(島村先生)

時代の変化を見据えた「R-プログラム」によって、生徒たちが「自分」と「社会」を深く知った上で、将来必要な実践力を身につけていけることが分かった。中学3年間でしっかりと培った土台を高校でも継続して磨き、発展させていけるのも魅力だ。社会で活躍できるスキルはもちろん、豊かな人間性も培うこのプログラムに今後も注目したい。

【 Back number 】立正大学付属立正中学校のスペシャルレポート<第2回>

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