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時代の変化に求められる教育を開拓
1923年、創立以来「和の精神のもと、世界に貢献する人を育成する」という教育方針で建学された明星学苑。今、あらたに時代の変化に即応するために、夢を追うための特進クラス(明星グローバルサイエンスクラス)の開設や真の国際化を目指したグローバル教育など、さまざまな新しい挑戦を始めている。今回は教頭であり、入学広報室室長でもある中村賀一先生に話を聞いた。
教頭 中村賀一先生
「私たちが教育を受けた時代と今ではかなり違ってきています。小学生が学んでいる内容も大きく変化しています。算数の授業でも単に覚えるだけではなく、クイズ形式にして興味を持てる内容にしていたり、歴史は年号を単なる語呂合わせから、その歴史の内容に結び付けて覚えるといったように、現実に結びつけたカリキュラムに変っています。我々も幅広いニーズに応じた教育体制を作っていく必要があると思い、さまざまなことに取り組んでいます」
次世代のリーダーを育てる「MGS」クラスを新設
2016年度より、難関大学や医学系大学への進学を目指す『明星グローバルサイエンスクラス(MGS:Meisei Global Science)』を設置している。その目的について聞いてみた。
「『グローバル』と『サイエンス』は、単に英語と科学ということではなく、さまざまなことが幅広く化学変化していく時代に、対応できるリーダーを育てたいということで名づけられています。たとえば英語についても習得することが目的ではなく、何かをするためのツールの1つと捉えている人が増えています。読み書きだけではなく、真のコミュニケーションとして使い、さらに深い理解ができることを目的にしています」。
中高一貫生と高校からの入学生のそれぞれに導入し、理・数・英に特化した中高6年間の連携授業を行い、グローバル社会の次世代リーダーとして、国際社会の中で活躍できる人材を育成していくのが目的だ。
「例えば近くにある東京農工大学の卒業論文を読ませてもらう機会なども作っています。最初は理解できないと思いますが『わからないということをわかる』ことが大切だと思っています。また中一では首相官邸の見学にいき、選挙について身近に考える機会を作ったり、生徒一人ひとりの才能や特性を伸ばし、新時代に対応できるリーダーを育てていきます」
コミュニケーションとして使える英語を習得
グローバル化する社会に対応するために、「語学教育」についても、さまざまな取組をしている同校。その内容について聞いてみた。
「語学をはじめとするコミュニケーション能力はもちろんのこと、文化や習慣の違いに対する理解も重要です。積極的に異文化に触れ、参加することで、自信を身につけることがグローバル教育には大切です。当校ではそんな機会も数多く用意しています。海外ホームステイや語学研修を定着させ、建学以来の『世界に貢献する人を育成する』という国際教育を実践しています」。
「まずは中学2年で「イングリッシュキャンプ」に参加、ネイティブの先生と一緒に4日間の合宿を実施します。生活を共にするなかで日常会話、英語劇の準備と発表、英語で日記を書くなど英語のコミュニケーション力を徹底的に磨く合宿です。またアメリカで結成されてから今年で45年を迎える非営利団体ヤングアメリカンズによる『ミュージック・アウトリーチ』と呼ばれる音楽を通した教育活動にも参加、英語で小・中・高校生たちと一緒にわずか3日間で、全くゼロから1時間の歌とダンスとパフォーマンスのショーを作り上げていきます」。
さらに中学3年の研修はカナダやセブへ。高校2年の修学旅行は、シンガポール・アメリカなど海外の行先を選択できる観光だけでなく、現地の大学生との英語による交流、現地家庭訪問など、英語体験ができるプログラムも豊富に用意されている。
イングリッシュキャンプの様子①
イングリッシュキャンプの様子②
セブ島研修の様子①
セブ島研修の様子②
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12歳から100歳まで明星生が共有する「凝念」
1923年、創立以来「和の精神のもと、世界に貢献する人を育成する」という教育方針で見学された明星学苑。その建学の精神のひとつである「凝念」についても聞いてみた。
「凝念とは、精神集中の一つで、すべての始まりと終わりの切り替えに『凝念』という言葉を発して心を落ち着かせることで、勉強やスポーツに真剣に向き合うことができます。一般的には黙想にあたりますが、姿勢を正し瞑目し、臍下丹田に力を込め、心を丹田に集中するように努力するもので、何事にも一生懸命、一心不乱に取り組む心の力を養います」。
明星中学高等学校では木曜日の1時限目に道徳の時間があり、中学校の全生徒と高等学校の全生徒が一週間ごとに交代で講堂に集まる。そこで「凝念」が行われ、心を落ち着かせて校長先生のお話しを聞く。この時間が心の力を養う礎となる大切な時間として代々大切にされている。
「本校の伝統である『凝念』の教えは、明星の創立以来脈々と受け継がれてきました。中学1年の12歳から1期生である104歳まで『共通言語』として心の中に生き続けているものでもあります。校舎や制服、周りの景色が変わっても、この『凝念』については80~90歳代の卒業生が学校に来ても変わらないと言ってもらえます。地域の方々にも『凝念』については理解され、当校の特徴として見守ってもらっています」
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今年、入学した中学1年生にインタビュー
進路選びは、自分の興味や適性を見極め、将来自分がどうなりたいかの目標を設定することから始まる。どのような方向に進路を選んでも必要となる基礎学力づくりをしっかりと行うだけでなく、さまざまな分野に対する興味や自律心を育て、自己実現できる人材の育成を目指している。今年入学した中学1年生に明星学苑での体験について聞いた。
左:MGSクラス 中学1年生 S君/右:本科クラス 中学1年生 Aさん
MGSクラス 中学1年生 S君 「本が好きで図書委員になりました」
2016年より、中1・高1学年にMGSクラス(明星グローバルサイエンスクラス)を スタートさせ、次世代のリーダー育成により一層力をいれている。今年このクラス に入学したS君の将来の夢は教師になること。インタビューを紹介しよう。
――「明星」を選んだ理由を教えてください。
家から近いというのもあるのですが、生徒がみんな明るくて真面目なところがいいと思いました。また図書館が素晴らしく、圧倒的な蔵書量も本好きな僕には魅力でした。今は図書委員をしています。みんなに本のおもしろさを知ってもらえればうれしいです。
―― 入学してみて学校生活はどうですか
卓球部で週に4回練習しています。前回のオリンピックで選手が活躍しているのを見て、挑戦してみたいと思いました。卓球部は、部員もたくさんいて活気があります。みんな頑張っています。イングリッシュキャンプでネイティブの先生と話せたのが、とてもいい経験でした。中3で全員が参加するセブ留学も楽しみにしています。
―― 入学してみて勉強はどうですか
今は数学が少し難しいと感じていますが、頑張っています。どの授業も細かいところまで説明してくれるので興味を持って取り組めます。おもしろい先生が多く、印象的でやりがいのある授業ばかりです。
―― 将来の夢はなんですか?
小学校の教師になりたいと思っています。明星に入学してからは本当にみんな仲がいいのですが、実は小学時代に少しいじめられた経験があります。そのとき担任の先生に助けられた思い出があり、教師という仕事は素晴らしいと思いました。今は毎日学校に行きたくなるので、周りからも変わったねと言われます。
本科クラス 中学1年生 Aさん「苦手な数学が得意になりました」
―― 「明星」を選んだ理由を教えてください。
兄が明星高校に在校していて文化祭に来た時に、楽しそうな学校だなと思いました。絵やイラストがいろいろなところに飾ってあるうえに、イラストレーション部が作品を発表していて、いつか私も入りたいと思ったのがきっかけです。
―― 入学してみて学校生活はどうですか
イラストレーション部は高校生からなので、今は家庭科部に入っています。文化祭ではクッキーを300個位売るので前日から大変ですが、とても楽しいです。お菓子を作ったら毎回レシピを持って帰ることができるので、家で作ってみたりしています。
―― 入学してみて勉強はどうですか
いま、数学が一番おもしろいと思っています。公式が決まっていてわかりやすく感じます。実は小学校までは算数が苦手でした。明星では分からないところは先生がきちんと説明してくれますし、補習もしてくれるので、今では得意になってきました。 英語はかけるだけではなくイングリッシュキャンプに参加して、話したことが伝わった時にうれしく感じました。私は父親が英語の教師なので、家でもときどき細かいことを指導されています。
―― 将来の夢はなんですか?
母親が司書をしていることもあって、私も司書を目指しています。本に囲まれた仕事にあこがれているんです。
インタビューで感じたこと
MGSクラス、本科クラスの生徒さんお一人ずつに取材し、感じたのは明星学苑の良き伝統の上に打ち出された新たな方向性が軌道に乗りつつあるということ。多くの生徒さんたちが、それぞれの夢を持って学校生活を楽しく過ごしていることが伝わってきた。