スクール特集(森村学園中等部の特色のある教育 #1)

英語を学び続けてきた努力を評価 2027年度から英語資格利用入試導入
森村学園中等部では、2027年度より第2回一般入試に英検等の英語外部試験を活用した英語資格利用入試を導入する。導入の経緯や英語教育の特色について校長の岡真由美先生に話を聞いた。
2027年度から英語資格利用入試を導入
森村学園の創立者は、幕末から明治にかけて日米貿易の先駆者として活躍した実業家・森村市左衛門。「独立自営」を建学の精神として掲げて同学園を創立し、彼の人生哲学であった「正直・親切・勤勉」は校訓として、社会に貢献できる人材の育成を目指す同校の教育に受け継がれている。
「日本の富が海外に流出することを憂いた森村市左衛門は、日本のために何かできないかと考えて、失敗を繰り返しながら日米貿易を行ってきました。そんな創立者の思いを継承し、本校ではキャリアについて考えるソーシャル・アントレプレナーシップ教育や独自のランゲージ・アーツ教育やSTREAM教育*なども行っていますが、特に力を入れているのがグローバル教育です。近年、ますますグローバル化が進み、多様な生き方や考え方を共有して、自分に何ができるか考えて発信する力が必要になってきています」(岡校長先生)
*Science科学・Technology技術・Roboticsロボット工学・Engineering工学・Art芸術/デザイン・Math数学など、これからの時代に必要とされる教育分野。
英語資格利用入試では、取得している英検級あるいはCSEスコアに応じて、2科・4科それぞれの判定点に加点。実用英語技能検定以外の英語外部資格は、CEFR 対照表に準じて得点化される。
「国語や算数、理科、社会を頑張ってきた児童には、4科や2科の試験で力を発揮できる機会があります。海外からの帰国生には帰国生入試がありますが、帰国生の資格に当てはまらない児童や、国内で英語を頑張ってきた児童には努力を評価する機会がありませんでした。英語を学んできたことや思考のプロセスに大きな可能性があると考え、これまでの努力が反映できるように英語資格利用入試を導入しました。早いうちから英語に魅力を感じ、学んでみようと思った児童に少しでも門戸を広げられたらと思っています。これまで頑張ってきたことの1つとして、ぜひ英語も入試に活かしてほしいです」(岡校長先生)

▶︎岡真由美校長先生
アウトプットの機会が多い英語教育
中1と中2の授業は、通常クラスと「EEルート(English through English Route)」と呼ばれるクラスに分かれて受ける。「EEルート」は、すでに英語使用経験があったり、一定のスキルを備えた生徒を対象としたオールイングリッシュによる少人数制のクラスだ。
「中1・中2は、コミュニケーションツールとして英語を使えるようになることを目指し、4技能のうちの『聞く・話す』力を中心につけていきます。ですから、すでに英語使用経験がある生徒などは、中1からさらに英語力を高められるようにEEルートを用意しています。中3・高1はより論理的に英語で考えて意見を述べる力の獲得を目指し、EEルートも一般クラスに合流して『読む・書く』力を高めるために文法をしっかりと学びます。高2・高3は創造的で知的な英語の活用を目指し、大学受験に関わる部分もしっかりと定着させることが大切です。6年間を通して、4技能の1つに偏らないように工夫して授業を展開しています。夏休みや冬休みなどには講習を行ったり、英検やIELTSを受ける際には対策講座を開講し、大学入試にも利用できる外部検定試験も積極的に受験するようにサポートしています」(岡校長先生)
英語の授業では、アウトプットの機会が多いのも同校の特色だという。2学期終業式の前には、英語科主催のレシテーション&スピーチコンテストが行われる。
「中等部はレシテーション(有名なスピーチや文学作品などの英文を暗記)、高等部は自分の考えを英語で表すスピーチコンテストです。全員参加のクラスラウンドで選ばれた生徒たちが学年ラウンドに進み、その優勝者が学年代表として全校生徒の前で発表します。自分の発表に向けて一生懸命に取り組み、また他の生徒の発表を一生懸命に聞くことで、それぞれ刺激を受けて、もっとできるようになりたいという思いにもつながっていくようです。本校は大学付属校ではないので、進路を限定することなく、生徒と教員との信頼関係を基盤に、生徒の力を最大限に引き出すことで、生徒はそれぞれの未来に挑戦し続けられるのです。受験に関しては、やりたいことが実現できる大学の中でも、ワンランクアップできるように、中1から高3へとステップを着実に進めて、希望の進路を実現するための力を養成していきます」(岡校長先生)
日常に溶け込んだ「異文化交流」
同校では、「国際交流・多言語教育センター」が中心となってグローバル教育を推進。国際交流関連プログラムの企画・運営のほか、日常生活の中に多文化が存在する空間をつくり出し、多元的な価値観に触れることを目指した様々なプログラムを実施している。
「例えば、多言語・多文化講座(希望制)でスペイン語講座を開講したり、学内にいろいろな国の衣装や楽器などを展示しています。カフェテリアとのコラボ企画『多文化ごはん』では、世界の様々な地域の料理を特別メニューとして提供し、生徒たちからも人気です。昼休みに海外からお招きした方の講座をランチミーティングのような形で開くと、生徒たちは自然に集まってくるなど、本校にとってグローバル教育は特別なことではなく、日常的に取り入れて生徒たちにも浸透しています。創立者から受け継いだグローバルの視点から、今やるべきことを精査して取り組んでいます」(岡校長先生)
同校ではJICAと連携して研修生の受け入れも行っており、中南米やタイなど、英語を母語としない国からの研修生もよい刺激になっているという。今年1月には、中南米12か国から来日した日系高校生20人を研修生として受け入れた。
「1月に実施したのは、ホームステイの受け入れも含め、授業や昼食、部活動などの学校生活を一緒に送る3日間の異文化交流です。日本舞踊、華道や茶道の体験を通して日本文化について学びながら交流を深めたり、逆にあちらの文化を教えてもらったりして交流を楽しみました。まもなく、タイからの研修生が来てくれることになっています。オンラインではなく、実際に来ていただくことで、海外の方たちとの交流も生徒たちにとって特別なことではなくなってきました。研修生が授業に入ったら、身振り手振りも使いながら教えようとしたり、語りかけてくれたら耳を傾けて理解しようとするなど、英語が得意、不得意に関係なく、中学生のうちから日常的に関わろうとする雰囲気ができています。そのほか、インターナショナルスクールの生徒を招いた交流なども行っています」(岡校長先生)


▶︎交流する国の国旗を校内に飾るのが同校の習わし
2026年度からの新たな取り組み
2026年度から学年を越えた放課後英語講座、「After-School Step Up English」がスタートした。中2から高2までの希望制で、現在、38名が参加している。ただ英語を話すだけでなく、テーマに沿ってプロジェクトベースのグループワークを行い、3~4回を1セットとしてサイクルをまわすプログラムだ。
「帰国生など、英語によるアウトプット力が高い生徒と一般の生徒はそれぞれが発言しやすいように分けて、中高ミックスの縦割り2クラスで行っています。本校では、ヨーロッパ発祥のランゲージ・アーツを、他者への思いやりを基調とする日本人のメンタリティーに配慮した独自の学びに改良した授業を行っていますが、この放課後講座はその英語版というイメージです。初回は、物語の登場人物を分析してグループごとに発表しました。次回からのテーマは、絶滅危惧種です。テーマも多様で、中高の縦割りクラスなので、英語以外の成長にも期待しています。下級生でも帰国生だと英語が得意な生徒もいますが、上級生は考え方がしっかりしているので、『もっと英語が話せるようになりたい』『あんな考え方もあるんだ』などと、先輩、後輩それぞれからよい刺激を受けているようです」(岡校長先生)
同校では、在学中にオンラインで2年間アメリカの高校の授業を受講して、卒業時に日米の卒業証書を手にすることができるUS Dual Diploma Programを導入。今年度からは、イギリス留学へのサポートとなるプログラムも始動するという。
「イギリス系大学に進学したいと考える生徒がいるのですが、ファウンデーションコースによって進学のハードルが高くなっていると感じていました。イギリスの大学は3年制なので1年次から高度な専門講義が始まるため、高校を卒業した日本の学生がそのまま入学するのが難しいのです。そのギャップを埋めるために、留学生向けのファウンデーションコースという準備過程があります。高校を卒業してから9か月~12か月間、現地の学校などに通って大学への入学資格を得るのが一般的です。ファウンデーションコースはいろいろな面で負担が大きいので、なんとかできないかと思い、本校でプログラムを用意することにしました。本校に在学中に現地でファウンデーションコースと同等のプログラムに通い、帰国してからは元の学年で学ぶことができます。そうすることで、高3卒業時にイギリス系大学に直接入学できる切符を手に入れることができます。イギリス系の大学(学部)は原則3年で卒業ができるため、アメリカ等の海外大学に進学することに比べ、卒業が前倒しできるメリットがあります」(岡校長先生)
同校は「海外大学進学協定校推薦入試制度(UPAS)」が利用できるほか、マレーシアの名門大学への指定校推薦やオーストラリアの名門8大学の1つ、ニューサウスウェールズ大学(UNSW)のファウンデーションコースとの連携など、独自の協定による海外大学への道も開かれている。
「現在高3で、マレーシアの大学に進学したいという生徒がいますが、すでに現地に見学に行ったそうです。今年度は、私もアメリカの大学へ視察に行くことになっています。私自身が体感して生の情報を得て、生徒たちに還元できることにつなげていきたいです。他の教員も、マレーシアでいくつかの大学を視察したり、インドに視察に行きます。生徒たちには主体的に学んでほしいと思っていますし、本校の教員にも主体的に学び続ける土壌があります。生徒たちの『これやってみたい!』と教員の『これやってみよう!』が合致して、新たな取り組みにつながったケースもありました。教員が生き生きしていると、生徒も生き生きしますし、その様子を見て教員もさらに生き生きするという、よいエネルギーの循環が生まれていきます。教員も生徒も活気にあふれていることも本校の特色なので、それは今後も大切にしていきたいと思っています」(岡校長先生)
<取材を終えて>
取材後に校内を案内していただいたが、あちこちで異文化を感じる展示があり、生徒たちの日常に溶け込んでいることが実感できた。現在は、まもなく来校するタイからの研修生を迎えるために、図書館でもタイに関する本の特集コーナーが作られるなど、様々なところで準備が進められている。今年度から始まった放課後英語講座や導入予定のファウンデーション留学プログラムによって、生徒たちの可能性もさらに広がるだろう。







































