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聖園女学院中学校

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デジタルパンフレット

スクール特集(聖園女学院中学校の特色のある教育 #2)

いのちの大切さと、自分の存在価値を再認識する「愛といのちの研修」

聖園女学院では毎年、高校1年生を対象に、現役助産師による講話や、妊婦体験などを行う「愛といのちの研修」を実施。いのちの大切さや、自分がたくさんの人に守られてきたことを再認識する研修を取材した。

いのちのつながりと自分の原点を振り返る授業

7月某日、聖園女学院の講堂に高校1年生が集まり、「愛といのちの研修」が行われた。この研修では、現役助産師である中島清美先生(神奈川県助産師会)が「いのちのはなし」について講話し、その後、生徒たちが妊婦ジャケットを着用したり、新生児人形のおむつ替えをしたりする体験学習を行う。
中島先生の講話はまず「助産師は生まれる人と産む人を助ける人です」と仕事を紹介するところから始まった。そして「生命の歴史は38億年といわれ、今日までいのちのつながりがあって今の自分たちがいる」「その間に1人でもいなければ、私たちのいのちはつながってこなかった」「私たちのいのちは1人に1つしかない」ことなどを語り、0.2ミリの小さな卵からいのちが始まって、胎児が成長する過程や出産の様子を絵や模型などを用いてわかりやすく説明する。
また、出産とは「生まれる力と産み出す力が合わさって、生きる力になる」こと、「赤ちゃんは頑張って生まれ、産むお母さんも頑張ってたった1つの奇跡のいのちがスタートした」「いのちは温かい」ことなどを生徒たちに伝える。
最後に「あなたたちは、すごく大変なことを乗り越えてここまで生きてきた。だから、自信をもってほしい。誕生日があるということは、その時にあなたを助けた何人もの人がいて、何人もの人が『おめでとう』と言ってくれたということ。あなたたちの未来が輝いて幸せであることを、また、いのちをかけて産み、育ててきた家族が見守っていることを忘れないでほしい」と話を結んだ。

その後、助産師会のスタッフと共に、生徒や男性教員も参加して、出産シーンを劇で再現。生徒は出産する人のお姉さんや助産師のアシスタント、先生は父親役になって、妊婦さんを支え、生まれた赤ちゃんのへその緒を切るところまでを実演。自ら手を挙げて劇に参加したフランスの留学生は「(出産について)びっくりしたし、ちょっと怖かった。けれど、ダイナミックなことが行われていたことが伝わった」と素直な気持ちを話してくれた。

妊婦ジャケットの着用や胎動を体験 母の苦労とありがたさを実感

講話の後は、妊婦ジャケットを着る体験や、新生児人形を抱っこしたり、おむつを替えたり、胎動システムで胎動を感じる体験学習が行われた。生徒たちは人形であっても、優しい手つきで赤ちゃんを抱っこしたり、おむつを替えたりしている。胎動体験では胎児の心音を聞いて、思わず涙ぐむ生徒もいた。
 そして研修の最後、中島先生から1人ひとりにハート型のピンクの画用紙が渡された。その紙を光にかざすと、小さな穴が空いている。「この針穴の大きさから、いのちが始まるのですよ」という言葉に、生徒たちは神妙な面持ちでうなずいていた。
中島先生は研修を通じて「自分のいのちを大事にする」ことと「人のいのちも大事にできる」こと、そして「大変なことを乗り越え、今のいのちがあるのだから、これからもがんばってほしい」というメッセージを送りたかったという。「聖園女学院は、キリスト教の教えをはじめ、“愛”や“いのち”の学習を大事にしています。生徒たちは、基礎的なものの考え方を理解しているので、今回は女性教育の目線で話をしました。自分が生まれ、将来、出産をするしないはそれぞれの選択ですが、この先は産む側にもなる。この研修が、これまでの人生の振り返りと今後の生き方を考えるきっかけになったらいいですね」

生徒たちは、中島先生の話や、体験プログラムを通して、どのような感想を抱いたのだろうか。
「妊婦ジャケットは想像よりも重く、足元も見づらい。この状態で生活するのは大変だと感じました」
「出産の様子を知り、1回だけでも大変なのに私は3人きょうだいなので、お母さんってすごいなと心から思いました」
「お母さんが自分を大事に育ててくれたことがわかり、ウルっと来ました。また、赤ちゃんが回転しながら出てくることなどを初めて知って、生まれる力と産む力があったから今の自分がいることに感動しました」
「お母さんはこんなに頑張って私を産んでくれたんだと実感しました。ありがとうという気持ちでいっぱいです」
「出産は赤ちゃんを取り上げて終わりだと思っていましたが、へその緒を切ったり、後の処理もあることを知りました。研修で、いろいろなことを教えてもらい、今まで以上にいのちを真剣に考えるようになりました」
「中島先生の話にあった『お産は病ではない』という言葉が印象に残りました。また、愛があるからいのちがあること、いろいろな人の支えがあって自分が生まれてきたこともわかりました。将来、自分が妊娠をした時、絶対にたばこやお酒は避けなければいけないし、これからの日々も大切にしたいと思うようになりました」

自分を丸ごと受け入れることが困難を乗り越える生きる力へ

入試広報部長の鐵尾千恵先生は「愛といのちの研修」を通じて、生徒たちに「自分は生まれてきただけで100点満点の存在」であることを再認識してほしいと語る。「『生まれてきただけで100点満点の存在』というのは、親御さんも同じだと思います。テストでも100点をとってほしいなどと、わが子かわいさゆえについ多くの期待をかけてしまいますが、原点は『生まれてきてくれてありがとう』だと思うのです。今日は生徒たちも家で研修のことを話すでしょうし、きっと親御さんに対して優しく接することでしょう」
また、高1学年主任の浅田貴子先生は「周囲と比較をしてしまって自分の存在価値を見失いがちな高校生のこの時期に、自分はかけがえのない存在であり、たくさんの人に待ち望まれ『おめでとう』と言われて生まれてきたことをここでしっかりと受け止めてほしいと思います。また、高校1年生は進路を考えはじめる時期でもあります。自分の能力をどのように生かそうかと考えるときに、まずは今の自分を認めるところからスタートしてほしいと思っています。この研修をきっかけに、助産師や医療系の道に進む生徒もいるんですよ」と話す。

「学校長の言葉に『あなたはありのままでいい』というものがあります。これは、ありのまま何もしなくてもよいという意味ではなく、オンリーワンである自分をもっと磨いていこうという、より良く生きることを促す言葉です。面談などでもこのような話をしていますが、今回、助産師さんの話や体験学習をすることで点と点が結ばれるのではないかと考えています。
繰り返しになりますが、進路を考える上でもまずは自分を受け入れることが大切です。将来、社会に出れば、理不尽なことやつらいことがたくさんあります。でも、自分は自分でいいと思えた経験のある人は、必ず立ち直ることができます。中高6年間のなかで自分を丸ごと受け入れた経験そのものが、卒業していく生徒へのプレゼントになればと思っています」(鐵尾先生)

<取材を終えて>
まず、中島先生が語る「いのちのはなし」にとても感動した。個人的なことだが、私自身、母親でありながら、初めて知る“いのちの営み”があったり、子どもに対して「生まれてきただけで100点満点の存在」という気持ちを忘れていたり、心に染み入るものがあった。おそらく生徒たちも“いのち”と“自分”について思うことがたくさんあったのではないだろうか。自分を受け入れることが困難を乗り越える力になることや、たくさんの人に守られてきた自分のいのちを今度は他者や社会に活かしていこうという考え方が特に印象に残り、共感できた。

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