スクール特集(湘南白百合学園中学校の特色のある教育 #7)

実体験から視野を広げ、自分自身を「更新」する国際教育プログラム
湘南白百合学園中学・高等学校では、多彩な国際教育プログラムが用意されている。2026年度の海外・国内研修について、スリランカ研修に同行した伊海真美先生(国際教育委員会)と高1の生徒に話を聞いた。
プログラムを自分で選べる海外・国内研修(高1・必修)
同校では、一人ひとりの好奇心に応える多彩な国際プログラムを用意。希望者対象のターム留学や海外研修だけでなく、中1から高1までは学年と習熟度に適した体系的・段階的な必修プログラムを実施している。
「国際教育というと英語のイメージが強いかもしれませんが、本校では英語はツールの1つとして考えています。もちろん、確かな英語力を確立していないと使いこなすことはできませんが、目指すのは英語というツールを使ってどのように自分を表現するのか、何を伝えたいのか、何ができるのかを考えて実践することです。授業で学んだ英語を使ってみる機会として、中1ではTGG(TOKYO GLOBAL GATEWAY)、中2ではBritish Hills(福島)でのプログラムを実施しています」(伊海先生)
中3では、地元である湘南の魅力を世界に発信するオリジナルの旅行プランを立案する「English Career Program」を実施。少人数グループでネイティブ講師と一緒に、リサーチや議論を行ってインバウンドを意識したプランを考える。他者を尊重しながら行うコミュニケーション、クリエイティブな作業、プレゼンテーションなども盛り込んだプログラムとなっている。そして、国際教育の集大成として高1で実施しているのが海外・国内研修だ。
「中学の3年間は、学校が用意した必修プログラムに全員参加となっていますが、高1になると、自分で選ぶことも重要だと考えました。必修ですが、海外・国内のプログラムから自分がより積極的に取り組めそうなものを選べる選択制です。教員同士や保護者とのコミュニケーションを通して今の生徒に必要なプログラムを見出し、本校だからこそできる体験としてふさわしい行き先やプログラムごとの目的を設定しています。世界情勢なども踏まえて決めているのでプログラムは固定ではありませんが、2026年度はサンディエゴ研修、マルタ研修、スリランカ研修、台湾研修、国内研修を実施しました。全員が100%満足できるプログラムは難しいですが、ベターなものを選んで取り組めるように用意したので、生徒が選んだプログラムに大きな偏りはなかったです」(伊海先生)

▶︎伊海真美先生
湘南白百合らしい経験ができるプログラム
サンディエゴ研修では、サンディエゴ大学を訪問してワークショップを体験するハイレベルなプログラムを設定。カトリック信者が多く、夏休み中の語学研修が盛んなマルタ共和国では、他国から集まった生徒と一緒に語学研修に参加したり、ホームステイなどで文化交流を楽しむ。2026年度は、初めてスリランカと台湾での研修も実施された。
「欧米以外のエリアも検討し、今年度はアジアでも実施することにしました。スリランカでのメインは、現地の学校との交流です。今回私も同行しましたが、名門女子校とガールズ・ホームと呼ばれる養護施設、そしてへき地にあるローカルスクール(公立学校)の3校と交流しました。スリランカは発展してきているもののまだ開発途上なので、格差のあるところで自分たちに何ができるか考えることも、カトリック校のミッションだと思っています。小さな島国ですが自然豊かで歴史的文化遺産も充実しており、仏教の国を訪れることも貴重な経験です。現地では、名門女子校に通う家庭でのホームステイと、ローカルスクールの近くにある5つ星ホテルに滞在しました。5つ星ホテルに滞在するのは贅沢と思われるかもしれませんが、開発途上国における5つ星ホテルの役割を知るよい経験になると考えています。雇用やインフラ整備などにつながるメリット、格差が広がるというデメリットなどを考えることも、国際教育の一環です」(伊海先生)
生徒たちは、ガールズ・ホームを訪問する際には、何ができるか考えて支援物資を持って行ったり、名門校では彼女たちなりに存在意義を考えていることを知ったり、都会と地方の差についても実体験として学べていたという。
「台湾研修は、日数も少なくして海外へのハードルを下げて、異文化に触れる導入として実施しました。国内研修は、湘南エリアでフィールドワークを行うプログラムです。まず、外国人や地域に住んでいる方から、インバウンドで困っていることなどをヒアリングします。見えてきた課題から、訪日外国人に楽しんでもらいながら、住んでいる人たちもハッピーになれるように解決策を考えます。国際教育というと海外や留学が連想されやすいですが、そういったイメージの壁を壊したいという思いもあります。誰でもどこでも、お互いを理解してリスペクトし、助け合っていけるように理解を深めていくことが、本校の教育方針にもつながっていく国際教育だと考えています」(伊海先生)

▶︎サンディエゴ研修

▶︎台湾研修
「体験」して「知る」ことから広がる世界
研修の前後には、事前学習と事後学習を実施。高1のプログラムを国際教育の集大成と位置付けてはいるが、事後学習で完成とは考えていないという。
「中高の6年間は種まきの時期であると考え、卒業して社会人になった先まで見据えたプログラムです。研修後すぐに、英語力やコミュニケーション力がアップすることを期待されるかもしれませんが、本校の国際教育プログラムは即効性を期待するものではないと伝えています。大学に合格することがゴールとも考えていませんし、これから先の何十年を彩る土台となるのがこの6年間です。教科書や本を読んでも、五感をフルに活用しなければわからないこともたくさんあります。研修の成果は遅効性であり、必ず何らかの糧になると信じて実施しています。種が芽を出して育ち、花が咲くためには、時間と水やりが必要です。その点を保護者の皆さんにもご理解いただいています」(伊海先生)
国際教育プログラムを単独で考えるのではなく、同校で実施している探究講座なども含めて、全てがリンクしていると伊海先生は語る。
「本校の生徒は環境問題に敏感ですが、それはスリランカに滞在中も感じられました。今はSDGsが浸透していますが、本校では早い段階から先取りで取り組んできた自負があります。そういった他のプログラムや部活動などのすべてがリンクして、価値観や視野が更新されていきます。今回、生徒たちの反応で、『こんな生活や生き方があるんだと知った』という感想が興味深かったです。単なる想像で終わらせず、実際に行って答え合わせをして、自分なりに受け止めて理解しています。これまでは湘南白百合や藤沢という狭い地域の中で過ごしていた生徒が、自分とは違う世界があることを認識して世界が広がって、何ができるか考え始めたことが嬉しかったのです。こんな世界があるという気づきから、知識の引き出しを増やして自らを更新していくことが、未来を拓く力につながっていきます」(伊海先生)

▶︎スリランカ研修 サリーを着て

▶︎スリランカ研修 シギリアロック
高1の生徒にインタビュー
Yさん(高1 マルタ研修に参加)
Aさん(高1 サンディエゴ研修に参加)
――この研修に参加した理由を教えてください。
Yさん マルタ島に行った先輩から絶対行った方がいいと力説されたので、行ってみたいと思いました。カトリック信者が多く、教会がたくさんあることも、マルタ研修を選んだ理由の1つです。

▶︎Yさん
Aさん サンディエゴ大学でPBL(Problem-Based Learning)のプログラムがあるので、ぜひ体験したいと思いました。私はディズニーが好きなので、最終日にディズニーランドの観光が入っていることも魅力的でした。

▶︎Aさん
――一番印象に残っていることを教えてください。
Yさん マルタ研修では、午前中に学校で勉強して、午後にはいろいろなアクティビティを楽しみました。一番印象に残っているのは、最終日に行ったゴゾ島クルーズです。ゴゾ島名物の蜂蜜を見ることもできて、帰国する前に勉強と離れた観光ができてよい思い出になりました。
Aさん 身寄りのない人たちに食事を配っている施設を訪問して、果物の仕分け作業を体験したことです。日本ではボランティアをしたことがなかったので、貴重な経験になりました。アメリカはボランティア活動が活発で、5歳ぐらいの子も作業していて、生活の一部になっていることが興味深かったです。現地のガイドさんから、高校や大学の単位にボランティア活動が含まれているという話も聞いて、日本との違いを感じました。

▶︎マルタ研修
――現地での生活や体験したプログラムの感想を教えてください。
Yさん 私はあまり英語が得意ではありませんが、授業はそれほど難しくないので、英語が苦手な人でも楽しく過ごせます。ホームステイ先も、湘南白百合の生徒を何度も受け入れている家庭で、簡単な英語を使ってくれるのでわかりやすかったです。3人で滞在しましたが、「何でも気軽に言ってね」と言ってくださり、親しみやすい家庭でした。学校でも、日本についていろいろ質問してきてくれる人がいて、話しやすい雰囲気を作ってくれました。
Aさん PBLは4~5人のグループに分かれて、各グループに現地の大学生がメンターとして付いてくれます。PBLは高度なイメージだったので緊張していましたが、楽しい雑談のような感じで、堅苦しさはなかったです。大学の庭にいろいろなお花が咲いていたので、押し花にして栞を作ったり、オリジナルのトートバッグを作りました。自分の内面を一番表していると思う花を選んでトートバッグに描いて、最終日にはグループの中で選んだ花について発表しました。日本ではなかなか体験できないプログラムだったので、体験できてよかったです。
――日本との違いを感じたことなどはありましたか?
Yさん マルタではエアコンを使わないのが一般的と聞いていたのですが、ホームステイ先にも本当にエアコンがなくて、40度を越える暑さでもエアコンなしで過ごしていることに驚きました。7日間過ごすうちにだんだん慣れてきましたが、帰国したらやっぱり日本はいいなと思っています(笑)。マルタの家は石や煉瓦で作られていたので、家づくりからも異文化を感じました。
Aさん 観光で街歩きをしているときなどに、積極的に挨拶をしてくれたり、「どこから来たの?」と声をかけてくれたりして、日本よりフレンドリーだと感じました。大学にはみんなで電車通学していましたが、ちょっと困ったことがあったとき、隣に座っていた人が「大丈夫?」と優しく声をかけてくれたことも嬉しかったです。
――研修後に変わったことや、影響を受けたことはありますか?
Yさん 今、学校に留学生が来ていますが、自分から積極的に話しかけられるようになりました。そうなれたのは、マルタで英語が得意ではなくても話せたことで、自信がついたからだと思います。
Aさん 英語は得意な方でしたが、現地では話すスピードが速くて聞き取るのが大変でした。文法だけでなく、会話もしていきたいという気持ちが強くなったので、もっとアウトプット力を磨いていきたいです。私たちのバディになった大学生は、興味のある分野をとことん突き詰めて研究していたので、私も見習いたいと思いました。まだ、この分野というのは見つかっていませんが、見つかったらその大学生の姿勢を目標にしたいです。
――将来についてどのように考えていますか?
Yさん マルタに行く前から、薬学に興味がありました。ステイ先で日焼け止めを塗っていたら、ホストマザーが「白浮きして使いにくいものもあるけれど、日本の日焼け止めは肌なじみがよくて白くならないし、日本製は信頼できる」と言ってくれたんです。日本の医薬品やコスメのよさを改めて知ることができたので、今まで以上に薬学への関心が高まりました。
Aさん 私は、アメリカに行く前から国際的な仕事がしたいと思っていました。今回、ホストファミリーや大学生、街で出会った方などと関わることができたので、国際社会で働く上でよい経験ができました。夢は変わるかもしれませんが、この経験を活かして、いろいろな視点から将来について考えていきたいです。
<取材を終えて>
初めて実施したスリランカ研修も、事前学習でしっかりと調べていたので、現地での生活で不便なことがあっても驚くことはなく、生徒たちの満足度も高かったという。世界情勢などによって今後の行き先は変わるかもしれないが、どのプログラムも同校らしさが感じられ、必修であるが選択できる点も非常に魅力的だと感じた。











































