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しょうなんしらゆりがくえん

湘南白百合学園中学校

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デジタルパンフレット

スクール特集(湘南白百合学園中学校の特色のある教育 #3)

心を一つにして合唱し、団結力を育む音楽コンクール

湘南白百合学園中学・高等学校は毎年6月に、全校生徒による音楽(合唱)コンクールを実施している。70年以上の歴史を誇る伝統行事を見学し、指導者の音楽科教諭と高校3年生に話を聞いた。

ホールの人数を制限し、各教室に演奏をライブ配信

6月24日(金)、同校の創立75周年記念講堂<白百合ホール>にて「第71回 音楽コンクール」が開催された。午前に中学校の部、午後に高等学校の部を設定し、感染症予防のためにホールの定員を削減。代わりにライブ配信を行い、高校生は中学生の演奏を、中学生は高校生の演奏を、それぞれ教室で鑑賞した。

音楽科の岡本千佳先生によると「6月29日は学園の守護聖人である聖パウロの祝日で、それに合わせて毎年6月に音楽コンクールを実施しています。白百合学園には姉妹校がいくつかありますが、音楽コンクールの歴史は本校が最も古いと聞いています。例年、6月の初旬から各クラスで生徒が主体となって合唱の練習を始めます。新年度のクラス作りをしていくうえでも、大切なイベントになっています」と話す。

コロナ禍以前は、どの学年も課題曲のミサ曲と、自由曲の2曲を合唱していた。しかし、「ミサ曲は2つのクラスが合同で歌っていたため、このコロナ禍の状況では同時に舞台に上がるのは不可能で、現在は自由曲のみを合唱しています」と岡本先生は言う。なお、一昨年はコンクール自体が中止となった。「中学生は高校生の合唱を聴いて憧れの気持ちを抱き、多くのことを学びます。高校に進んで『あの時、先輩たちが歌っていた○○の曲を歌いたい』という声もよく聞きますね。ですので、本来ならば全員がホールで鑑賞するのが望ましいのですが、何とか考えた形がオンライン中継となりました」

▶︎音楽科 岡本千佳先生

合唱を通じて、リーダーシップやメンバーシップを学ぶ

合唱曲は音楽の授業の中で、先生がいくつか提案した曲の中から選んだり、生徒の希望と先生の意見を擦り合わせたりして決定する。また、生徒たちの自主練習は、指揮者や伴奏者、パートリーダーなどが中心となって行っている。以前は練習時間の制限もなかったため、朝練習に取り組むクラスも多かったそうだ。

岡本先生の話では、練習の仕方も学年が上がるにつれて上手になるという。「中1は初めての経験なので、最後まで通して何度も歌ってみよういう練習が多いですね。中2、中3になると、指揮者などのリーダーが授業の中で教員が指摘していることを書き留め、それを中心に練習を組み立てていきます。学年と共に彼女たちの耳も成長しているので、友だちが歌っているのを聞いて『ここはもっとこのように歌おう』といったアドバイスができるようになります。高校生は自分たちでしっかり練習ができるので、私たちの指導も、『歌詞をどう扱うか』『伴奏を含め、パートのバランスをどう作り上げていくか』というように生徒たちに考えさせるようにしています」

そして、岡本先生は音楽コンクールを通じて、次の2つの力が生徒たちに備わると話す。「まず、音楽的な要素として良いものを良いと気づく力が育まれます。生徒たちは『この曲をこのように歌うと、こんなに良い結果が出るんだ』という経験をします。同時に達成感を味わい、音楽の素晴らしさも体感することができますね。
2つめは、精神的な部分の力です。音楽コンクールのある6月末は、クラスのだいたいの様子がわかってくる時期です。リーダーは周囲の状況を見つつ『どういう声掛けをしたら、みんなをまとめることができるか』と考えて行動し、リーダーシップを身につけていきます。一方、リーダーのもとで合唱に取り組む生徒はメンバーシップやクラスが同じ方向を向く大切さを学び、クラス全体で協調性や団結力を育んでいきます」

クラス同士で健闘を称え合い、高3生は合同合唱を披露

毎年、同校の音楽コンクールは、プロの音楽家を審査員として招き、今年度も、声楽、合唱指揮、作曲と専門分野の異なる3名の先生が審査を務めた。当日は最初に中学1年生の挨拶があり、午前の中学校の部は1年の桜組、菊組、梅組、百合組の順で合唱が行われ、2年、3年へと続く。演奏後はどのクラスにも惜しみない拍手が送られ、3学年の合唱がすべて終わると校長先生が審査結果を発表。今回は努力賞の該当クラスがなく、3位、2位、同率1位が2クラスと、3年の4つのクラスが賞を受賞し、学年トップ賞として、1年、2年それぞれ1つのクラスが選ばれた。

昼休みをはさみ、午後の高等学校の部も、1年の桜組からスタートした。「今の高校1年生は、中2の時にコンクールが中止、中3では放課後練習が禁止でした。ある意味、本格的な自主練習をしたのは今回が初めてなので、苦労が多かったと思います」と岡本先生は生徒を思いやる。しかし、本番では堂々とした合唱を披露し、きれいなハーモニーを響かせていた。次の2年生の合唱は、さらに1年の経験を重ねた分完成度が高く、貫禄のようなものも感じられた。入賞を競うコンクールは昨年から1,2年だけで行われ、3年は結果発表の後に学年全員で合唱をする。そして、高等学校の部の審査結果は、中学校と同じく1位から努力賞までを最上学年の2年のクラスが獲得し、学年トップ賞も1年の1つのクラスが選ばれた。生徒たちは各賞が発表される度に盛大に拍手をして、互いの健闘を称え合った。

コンクールのフィナーレを飾る高3の合同合唱は、150名以上の生徒が舞台と1階席の半分近くまで広がって歌うため、ホールには高2生だけ残り、高1生は教室に戻ってオンラインで鑑賞した。合唱曲は、歴代歌い継がれてきたオラトリオ『天地創造』より「み空は語る神の栄誉」。高3生たちは最後の音楽コンクールに思いを込め、5分以上にも及ぶ曲をドイツ語で歌い上げた。

高校3年生にインタビュー

音楽コンクールが終了した直後、高3の合同合唱で指揮者を務めたTさんと、ピアノ伴奏者のWさんに、本番の感想や音楽コンクールの思い出などについて話を聞いた。

▶︎写真左より:Wさん、Tさん

Q 合同合唱を終えて、今、どんな気持ちですか?

Tさん ホッとしました。過去に2回、指揮を経験しましたが、これまではクラスをまとめればよかったんですけど、今回はその4倍の人数がいます。みんなを巻き込むのが難しく、全体練習も体育館で2回、ホールで1回の計3回だけだったので、正直不安でした。無事に終えることができて本当に良かったです。

Wさん 緊張が一気にとけました。実は1週間前のリハーサルでは、途中で声が止まってしまうくらい完成からは程遠く、私のピアノも不完全でした。みんな「どうする? 間に合う?」とざわざわしていて、でも、そこから練習に身が入り、徐々にできるようになっていきました。本番は全員が底力を発揮し、声の届き方も今までで一番素晴らしかったです。

Q 本番まで、どのように練習をしてきたのでしょうか?

Tさん 朝礼で聖歌を歌う朝礼係がクラスに3,4人いるので、その人たちに前に出てきてもらって、一緒にマイクを通して歌ってもらうなど、少ない練習時間を工夫しました。おそらくこの学年は、本当の音楽好きは少数派だったと思います。けれども、そんなことに関係なく、最後の行事ということで、みんなが団結し、日本語とは違うドイツ語の子音の歌い方も頑張って練習をしていました。

Wさん 確かにこの学年は、球技大会などスポーツのほうが私を含め盛り上がる人が多かったかもしれません。でも、合唱の練習をしているうちに、みんな楽しくなって昼休みも口ずさむ人もいたりして、音楽のパワーに巻き込まれている感じがしました。

Q 昨年は放課後練習ができなかったそうですが、その時のことを教えてください。

Tさん 私はアルトのパートリーダーをしていたのですが、歌わずにポイントを伝えることが難しかったですね。練習方法としては、各パートの音を自宅のエレクトーンで弾き、それを録音して*Google Classroomで配信し、みんなに音を覚えてもらいました。また、朝やお昼休みに、自分たちの合唱の音源や、YouTubeで配信されているお手本の曲を流していました。

*Googleが学校向けに開発したWebサービス

Wさん 私のクラスでもアプリを使って音源を配信し、それぞれ自宅で練習をしていました。また、歌詞を黒板に書いて、みんなで意味について考えたり、ここは切なく歌おう、ここから明るく歌おうなどと表現の仕方を話し合ったりしました。授業以外で歌を合わせられるのは昼休みくらいでしたが、歌詞を深読みすることで、感情を込めて歌えるようになりました。

Q お二人にとって、音楽コンクールはどんな行事ですか?

Tさん 自分が目標をもって、頑張ることができる行事です。体育大会や球技大会は、運動がそこまで得意ではないから、みんなの足を引っ張らないようについていく感じですが、音楽は小さい頃からやってきたので、自分がみんなを引っ張っていける唯一の行事だと思っています。また、回を重ねるごとに『どうやったらみんなが練習したいと思ってくれるだろうか』と考えられるようになりました。最後に指揮者を務めることもでき、いい思い出になりました。

Wさん みんなで一つのものを作り上げる、すごく大きな行事だと思います。スポーツ系の行事は輝ける人が決まっていますが、もちろん歌にも得意、不得意はあるけれど、合唱は上手くやろうというよりも、みんなが気持ちを一つにして声を出すことが大切です。合唱を通じてクラスがまとまり、それが音楽ならではの良さだと実感しています。

Q 最後に、音楽コンクールを受け継ぐ後輩たちへメッセージを!

Tさん 来年も練習時間が限られたりして、不安の中で本番を迎えてしまうかもしれませんが、とにかく楽しんで歌ってほしい。どういう音程で歌うかというより、どうやったら聞いている人の心に響くかということを大事にしたほうが自然と楽しく合唱ができ、思い出にも残ると思います。

Wさん 伝統の音楽コンクールの中でも、挑戦があってもいいかもしれません。型を壊すというのではなく、自分の学年らしさを出してみたり、ジャズっぽい曲など新しいジャンルをやってみたりするのも面白いと思います。

【取材を終えて】
同校の創立75周年記念講堂(白百合ホール)は、音響などの設備が充実しており、舞台に立つ生徒も緊張した面持ちながら、誇らしそうに見えた。全校生徒を収容できるホールなので、本当ならば中高生が一緒に参加し、特に中学生は高校生の演奏を聴いてみたいだろうが、そうした中でもICTを駆使し、伝統ある行事にのぞんでいることは素晴らしいことだと感じた。また、合唱を通して、クラスの絆が築かれていることが、インタビューや当日の様子からも伝わってきた。

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