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明治学院中学校

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スクール特集(明治学院中学校の特色のある教育 #5)

広大なグラウンドで育まれる「自主性」。教育ツールとしてのラグビーの魅力

明治学院中学校のグラウンドは、約20,000平方メートルという広さを誇る。恵まれたグラウンドで、伸び伸びと練習に励むラグビー部を取材した。

56,000平方メートルの緑豊かなキャンパスで、伸びやかに生徒を育てている明治学院中学校。敷地内にある桜並木やビオトープから四季を感じながら、生徒たちは様々な体験を通して成長していく。2016年に全面人工芝化された約20,000平方メートルのグラウンドでは、複数の部活動が同時に練習することができる。この恵まれた環境を活かして活動しているラグビー部について、顧問の斎藤創先生(体育科・生活指導副主任)と中3の生徒に話を聞いた。

地域貢献と人材育成の役割も果たす広大なグラウンド

中学校のラグビー部は、高校のラグビー部で顧問をしていた斎藤先生が2011年に立ち上げた。当時担任をしていたクラスに、クラブチームで活動している生徒がいたことがきっかけだったという。

「中学校にラグビー部がないと、小学生からラグビースクールで頑張ってきた子たちは、週末しか練習ができません。本校のグラウンドを活用して、中学生にも部活動としてラグビーに触れる機会を作りたいと考えて創部しました」(斎藤先生)

練習は高校生と一緒に行い、公式戦には、同校の部員と小平市・東村山市の近隣中学校、都立武蔵中学校の生徒を含む、通称「大連合」チームで出場。同校のグラウンドは、「大連合」の練習場所になっているだけでなく、中学・高校ともに公式戦の会場としても使われており、小学生や中学生が所属するクラブチームにも開放している。

「2019年に開催されたラグビーワールドカップを機に、都内のラグビースクールに通う子どもは急増しました。しかし、中学生が平日にラグビーの練習ができる環境が少ないことが課題となっています。大連合の子たちは、普段は小さな公園などで練習しているので、水曜日と土曜日に本校のグラウンドで練習できることが嬉しいようです。広さがあり、寝転がったりしやすいので、他校の子どもたちも『いいグラウンドですね』と言ってくれます」(斎藤先生)

▶︎顧問の斎藤創先生(体育科・生活指導副主任)

部活動の時間は教育活動としても重要

近年は「大連合」として関東大会にも出場し、昨年は東京都の秋季大会で4位となり、初めての東日本大会出場を決めた。しかし、大会で成績を上げるのは二の次だと、斎藤先生は語る。

「年間を通して、部活動で過ごす時間はとても長いので、教育活動としても重要な時間だと考えています。ラグビーは、試合中にボールを持っている時間はたった何十秒の世界。ボールを持っていない時間の方が圧倒的に長く、ボールを持っていないのに相手にぶつかったりする変わったスポーツです。ボールを持っている選手がトライを決めて得点するために、ほかの選手が様々な形でサポートします。味方を生かすために、自分を犠牲にしながらボールをつなぐ『自己犠牲の精神』を持って取り組むことも、教育活動につながります。味方が出してくれたボールを大事にトライまで運ぶ中で、それぞれの気持ちがわかってくるといいチーム、いい個人に成長すると思います」(斎藤先生)

ラグビーはコンタクトプレイ(体をぶつけ合う)のスポーツなので、ぶつかり方の練習も必要だ。例えば、タックルする側とされる側の練習。ケガの多くは、タックルで地面に倒されたりするときに起きるという。

「ケガをさせないことが大前提ですが、それでも起きてしまうことはあります。ケガを最小限にできるように、体づくりや予防策、様々なシチュエーションを経験させることが必要です。コンタクトプレイの練習は、中学生と高校生を分け、同じような体格で練習するようにしています。ラグビーは『ノーサイドの精神』で、試合が終われば敵も味方もなく、お互いの健闘を称え合うスポーツです。これは観客も同じで、スタジアムの客席は野球のようにホームチームとビジターチームの客席が決められておらず、双方のサポーターが混在しています。よいプレーをしたら、相手チームのサポーターも『ナイスプレー!』と言って拍手するのが、ラグビーの面白いところです」(斎藤先生)

試合を通して育まれる「自主性」

高校のラグビー部は、創立当初から活動している伝統のある部。ラグビーを専門にやってきた斎藤先生が顧問になる前は、OBが監督として部を支え、歴史を積み重ねてきた。「時間を守る・挨拶をする・嘘をつかない」という部訓も、OBが作ったものだという。

「この3つは当たり前のことですが、できない大人も多いと思います。嘘をつかないということはごまかさないことだと理解して、生徒たちに伝えています。怒られたくないからごまかしてしまうことも多いので、正直に謝ったら私は許します。例えば、皿洗いを手伝ってお皿を割ってしまって、怒られるのは理不尽だと思うのです。形あるものはいつか壊れるものなので、わざと割ったのでなければ、手伝ってくれた気持ちを大切にしたいと思っています」(斎藤先生)

卒業後に学校を訪ねてくるOBたちは、「社会に出るといろいろあるけれど、ラグビー部の練習と比べたら何でもできる」と振り返る。

「きつい練習にも仲間と一緒に耐えることで、根性や精神力が培われるのでしょう。高校はマネージャーとして入部する女子も多く、今は7人います。マネージャーとは、マネージメントする人です。練習メニューをホワイトボードに書いて練習をスタートするので、それが滞らないようにサポートしたり、部員たちをよく観察して、必要だと思うことを考えて行動したります。気配り、目配りが大切なので、相手が喜んでくれるだろうと思うことができるようになります。OGも社会に出てから、様々な職場で重宝されているようです」(斎藤先生)

ラグビーの試合中は、監督と選手はハーフタイムしかコミュニケーションが取れない。流れていく試合の中で、選手たち自身で臨機応変に判断しなければならないのだ。生徒たちにも常々、自分で考えて行動するように、斎藤先生は指導している。

「大人が子どもたちに『いい子だね』と言うときは、大人にとって『都合のいい子』なのです。生徒たちには、大人にとって都合のいい子にはならなくていいと言っています。自分で考えて行動し、もしそれが間違っていたら『ごめんなさい』と頭を下げられればいいのです。監督が右に行った方がいいと思って指示しても、試合をしている全員が左に行く方がいいと思うなら、その方が結果はうまくいくと思います。右に行けといったら右に行くような、いい子である必要はありません。2015年のワールドカップでは、南アフリカ戦の最後に監督はゴールを狙えと指示を出しましたが、選手たちは逆転を目指してスクラムを選びました。それが、あの劇的な勝利につながったのです。子どもたちにも、そのような自主性を育んでいってほしいと思っています」(斎藤先生)

ラグビー部に所属する中3の生徒にインタビュー

Iさん 中3 フォワード
Mさん 中3 フルバック/センター
Oさん 中3 フォワード

▶︎写真左より:Oさん、Mさん、Iさん

――ラグビー部に入部した理由を教えてください。

Iさん 小学生の頃からラグビーをやっているので、中学でもラグビー部しか考えていませんでした。ラグビーを始めたきっかけは、幼なじみがラグビーをやっていて、試合を見に行ったりするうちに面白そうだと思ったからです。
 
Mさん 僕も小学生の頃からラグビーをやっていたので、中学でも入部しました。始めたきっかけは、小学校の友達がやっていたからです。

Oさん 小学生の頃はサッカーをやっていたのですが、リフティングが苦手だったので向いていなかったようです(笑)。中学校では別の部活に入りたいと思い、見学した中で一番面白そうだったのでラグビー部に入りました。

――ラグビーのどんなところが楽しいですか?

Iさん 相手に当たって、ゲイン(ボールを前に運ぶ)できたときです。

Mさん ラグビーは1人ではできないスポーツなので、仲間と一緒に練習して、みんなの思いが伝わってきたときに楽しいと感じます。

Oさん 自分のプレーが、得点につながっていると感じられたときに嬉しいです。

――この学校を志望した理由を教えてください。

Iさん ラグビー部があることと、英語に力を入れているのがいいなと思いました。

Mさん 小学生の頃から英語習っていて、英語をもっと話せるようになりたいと思っていました。英語に力を入れていて、ラグビー部もあったので志望しました。

Oさん 大学まであるのがいいなと思いました。

――入学してみて、この学校のいいなと思うところを教えてください。

Iさん 自主性を重んじていて、校則が緩いところです。体育の授業は、グラウンドも体育館も広くて楽しいです。

Mさん 去年はコロナの影響で縮小して開催されましたが、ヘボン祭(文化祭)など、行事がいろいろ面白いです。

Oさん 学校全体が綺麗で、グラウンドや図書館などの設備がいいと思います。 

――将来の夢を教えてください。

Iさん スポーツ関係で英語を使う仕事ができたらいいなと思っています。例えば、ラグビーチームで、外国人選手の通訳などがしてみたいです。

Mさん 海外へ行って英語を使う仕事がしたいので、今のうちに英語をしっかり学びたいです。

Oさん 中学で英語に興味を持ったので、英語に関係がある仕事がしたいです。

――部活動を通して成長したと思うところを教えてください。

Iさん ラグビーはチームメイトとの連携が必要なので、人とのコミュニケーションや関わり方がうまくなったかなと思います。高校生や他校の生徒との交流も、よい経験になっています。

Mさん ラグビーは、自分からタックルしたりするので、自主性が求められます。それが普段の生活や勉強にも、活かされていると思います。

Oさん 個人の力だけでは絶対勝てないので、チームメイトと協力できるようになってきたことで、成長を感じています。

――ラグビーをやってみたいと思っている小学生に、メッセージをお願いします。

Iさん やったことがないとタックルなどが怖いと思うかもしれませんが、練習しているうちに当たることが好きになってきます。ラグビーは、小柄な人でも個性を活かせて、みんなが活躍できるスポーツです。体づくりが大事なので努力も必要ですが、それも楽しみながら積み重ねていけると思います。

Mさん どんな体格でも、それぞれに適したポジションがあります。初めてだと怖いと思うかもしれないけれど、タックルが成功すると達成感があり、やっていくうちに当たることも楽しくなってきます。

Oさん プレーによっては体格差で不利になることもありますが、日々の努力で補えるところも多いと思います。体格に自信がなくても大丈夫です!

<取材を終えて>
取材した日は、グラウンドを広々と使って、高校生と中学生(大連合チーム)は別々に練習していた。これほど広いグラウンドで練習することは、都心の学校では難しい。体育の授業でも生徒たちに好評だというこのグラウンドを、ぜひ実際に見て広さを体感していただきたい。

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