2014年、文化学園大学杉並中学・高等学校は、カナダのブリティッシュ・コロンビア（BC）州の海外校として、日本初の認定校となった。同年、高校に日本とカナダの2つの高校卒業資格を同時に取得できるダブルディプロマ（DD）コースを設置。その後、中学校でもカナダのカリキュラムを学べるプログラムを作り、英語上級者は1年生から、英語初心者も2年生から履修ができる制度を整えた。

同校の英語の授業は、中1から生徒のレベルに合わせて、ネイティブ教員主導で行われている。カナダのカリキュラムを学ぶ「DD7」は、BC州教員が週17時間、授業を受け持ち、そのうち数学5時間、理科2時間は各専科の先生が指導している。また、英語上級者向けの「Advanced7」は、英語の授業数が週10時間（うち8時間をカナダのカリキュラムで学ぶ）、英語初～中級者対象の「Starter7」は週9時間（うち2時間の英文法は日本人教員が指導）と、圧倒的な英語授業時間を確保。さらに「Starter7」では、中2から「DD Prep8」を希望する生徒を対象に、「Communication English」の講座（朝7:50から週2回：BC州教員指導）を設けている。その講座を受講し、年度末の審査を通過すると、「DD Prep8」でカナダのカリキュラムを学ぶことができる。

なお、中1でDD7を選んだ生徒は、中2→中3は原則DD8→DD9（高校はDDコース）に進む。Advanced7の生徒はDD Prep8→DD Prep9、Starter7は中2でDD Prep8または本科を選択し、中3はそれぞれDD Prep9と本科に進級する。

今年度、同校の中学校に164人の生徒が入学した。DD7が36人、Advanced7が9人、Starter7は119人だった。「DD7やAdvanced７に入る英語上級者（どちらも英検2級程度以上）が一定数いて、英語初心者が多いのは例年通りですが、最近は英検3、4級を持つミドル層が増えてきました。少しアドバンテージのある英語力をさらに伸ばせる学校として、本校を選んでくれているのではないでしょうか」と、西田先生は分析する。実際、2月1日の午前入試で合格した生徒の大半が、英検保持者だったそうだ。

「とは言え、70名の生徒は入学時に英検を持っていません。しかし、本人のやる気さえあれば、1年後にはカナダの授業を受けられる英語力(英検4級～3級程度)をつけることができます。今の中学2年生が1年の時、78人がDDprep8の希望を出し、うち62人がDD Prep8に進みました。英検も中1が終了するまで30人が3級、9人が準2級を取得し、3級合格者の中には入学時に級を持っていなかった生徒も11人いました。学年全体でも、中1の間に6割近くの生徒が3級以上を取得しています」

中学3年生で見ると、2005年3月時点の英検取得率は、準1級以上が17％、2級以上46％、準2級以上69％となっている。「本校はスモールステップを大事にしていて、英語初心者はまずは中1で3級、高校に上がるまでに2級取得を目指します。一般的には高校卒業時の目標が2級とされているので、生徒たちは速いスピードで力をつけていることがわかります。一方、英語上級者は中3で準1級以上を目標にしており、こちらも結果が現れています。英語初心者も上級者も確実にレベルアップできる教育ができているのではないかと思っています」（西田先生）

▶︎英検取得者数

現在、同校では、中2、中3生の74％がカナダのカリキュラムを学んでいる。西田先生は、「カナダの授業は、プロジェクト型学習など、基本的に生徒主体型のスタイルをとっています。生徒たちは意見を言い合ったり、活発に授業にのぞんでいますね」と話す。「先生たちも、英語をツールに様々な学問を教えるという考え方なので、英語力の差はあまり問題にはなりません。たとえばDD Prep8の場合、英検3級程度の生徒は3級の語彙力で課題をこなし、準2級の生徒は準2級の語彙力で課題をこなします。DD8も同様で、英検準1級以上と2級の生徒が一緒に学んでも、授業の質が下がることはなく、上級者からのクレームも一切ないですね。これがペーパーや講義型の授業だと、勝手が違うかもしれませんが…。また、カナダの授業は生徒数が24人以下の設定で行われるので、全員に目が行き届き、それぞれの生徒に合わせた教え方ができます」

そして、11年前に13人の女子高生(当時は女子校)でスタートしたDDコースだが、現在では中高合わせて約400人の生徒がカナダのカリキュラムを学んでいるという。なお、同校にはカナダ教員18人を含め29人のネイティブ・スピーカーの教員が駐在し、学校全体がグローバルな雰囲気を醸している。

「近年は、インターナショナルクラスなどを設置し、“英語を使った学び”を取り入れる学校も増えてきました。しかし、その多くは、英語上級者だけが対象となっています。本校は英語が0ベースの生徒でも、3年間の豊富な英語授業数とネイティブ教員の指導で力をつけ、高校で本格的なDDの学びを受けることができます。私としては、2科、4科の試験で入学し、毎日、学校の勉強にしっかり取り組んでいたら、思っていた以上に英語力が伸びた。そのことで自信がつき、可能性を感じ取ってくれたら嬉しいですね」（西田先生）

同校は2018年度に共学化し、今年3月に中学入学の２期生が卒業した。学校改革後、大学進学実績は堅調に伸び、2024年度は海外大学が過去最多の44人、国公立大も最多の14人、早慶上理ICU25人、GMARCH関関同立に51人が合格。同校初の国際教養大学の現役合格者も出た。

8年目になるDDコースでは、ブリティッシュ・コロンビア大学が３人、トロント大学１人をはじめカナダの大学に10人、またエディンバラ大学(イギリス)、メルボルン大学（オーストラリア）、シドニー大学（オーストラリア）、アムステルダム大学（オランダ）などの海外大学に合格が出ている。