スクール特集(文化学園大学杉並中学校の特色のある教育 #10)
豊富な英語の授業数×ネイティブ主導。どのレベルの生徒も確実に英語力アップ!
ダブルディプロマ(DD)の草分け的存在であり、英語教育に定評のある文化学園大学杉並中学・高等学校。DDコースの概要と英語教育の特色について、入試広報部長の西田真志先生に話を聞いた。
国外、国内大学とも合格実績が好調なDDコース
同校は2015年度、高校にダブルディプロマ(DD)コースを開設し、カナダのBC Offshore School*の授業と、同校の授業を同時進行で行っている。日本のカリキュラムでは、2年から文系と理系に科目が分かれ、カナダのカリキュラムでも3年から生物、物理、哲学のいずれかの選択授業が始まる。また、カナダのキャリキュラムには3年次に「キャリアライフコネクション」という進路を考える授業があり、その時間に自己啓発的な学びや、自己推薦書の作成などを行っている。
2ヵ国のカリキュラムを3年間で修了すると、2つの高校卒業資格(ダブルディプロマ)を同時に取得することができる。西田先生によると「これまで125名の生徒が卒業し、全員が両方の卒業資格を取得しました。DDコースは授業数が多く、生徒たちも大変ですが、安定したプログラムであると言うことができます」と話す。
また、日本とカナダの高校卒業資格が得られることで、海外大学の出願がスムーズにでき、国内大学においても海外校の卒業資格で受けられる特別入試と、国内生が受ける通常の入試のダブルで受験をすることが可能だ。DDコース1~5期生(125名)の大学合格実績は、海外大学45名、早慶上智ICU国公立33名、GMARCH関関同立37名であり「今年度は海外大学で初めて、トロント大学の合格者が出ました。トロント大学はカナダのトップ校で、世界大学ランキングでも18位の名門校です。国内大学は例年、総合型選抜や学校推薦型選抜で進学するケースが多いのですが、今年度は慶応大の看護医療学部をはじめ一般選抜で合格する生徒もいて、大学、学部の選択も幅広く行われた印象です」と西田先生。なお、今年度5期生(41名)は、海外大学15名、国内大学(総合型選抜・学校推薦型選抜)16名、国内大学(一般選抜)13名の合格者を出した(2022年3月時点)。
*BC Offshore School…カナダブリティッシュコロンビア(BC)州教育省によって認定されたBC州のカリキュラムを提供することができる海外校で、文化学園大学高等学校は日本初の認定校となる。
英語初心者の2割が1年間で英検3級以上を取得
2019年、同校は中学からDDコースへの接続がスムーズに行えるよう、中2・中3を対象にDD準備コースを開設した。また、英語教育も強化し、中学1年次ではDD7、アドバンスト7、スターター7の3つのクラスを展開し、生徒の英語の実力に合わせた授業を実施。DD7はカナダBC州の教員による授業が週17時間(英語10時間、数学5時間、サイエンス2時間)、アドバンスト7も英語の授業が週10時間あり、そのうち8時間をBC州教員が受け持ち、2時間をBC州以外のネイティブスピーカーの教員が英文法を指導する。スターター7は英語の授業が週9時間で、そのうち7時間をネイティブスピーカーの教員、2時間を日本人教員が英文法を指導し、スターター7の中で、さらにレベルを分けて授業を行っている。
中学2年次からは、DD準備コースと中高一貫コースの2つのコース制が始まり、英語のクラスはDD7が2年次ではDD8へ、アドバンスト7はDD準備8(初級、上級のレベル別)、スターター7はDD準備8(初級、上級のレベル別)または中高一貫の英語クラスへと移行する。
今年度は中学に149名(男子74名、女子75名)が入学し、英語のクラスはDD7に39名、アドバンスト7に19名、スターター7に91名で編成された。また、入学時の英検取得者数は、準1級が3名、2級が38名、準2級が11名、3~5級が19名で、全体の半数が英検の級を取得し、3割近くが2級以上であったという。
同校の英語教育の実績と期待度の高さは、昨年度の英検取得状況から伺える。2022年3月時点の中1生(現・中2生)の3級以上の取得率は60%で、その中には入学時に級を持っていなかった55名のうちの12名が含まれている。また、2級以上の取得率は29%で、入学時に準1級を持っていた9名のうち、2名が1級に合格した。中2の修了時では3級以上の取得率は81%にのぼり、そのうち入学時には級無し、または5級だった生徒19名が入学後に準2級まで取得したという。また入学後に準1級を取得した生徒も9名いる。
この数字から、西田先生は「英語の初心者、上級者双方とも確実にレベル上げができている」と見ている。その要因について「本校の英語の授業は、根底に『英語が楽しい』と思えるような内容と指導がされています。ネイティブの先生は、常に『間違ってもいいから答えてみよう』『細かいことは気にせずに話してみよう』というスタンスなので、生徒たちは臆することなく授業に臨むことができます。英語に苦手意識を持っている生徒も、自然に引っ張られていき、高いレベルの生徒は自分でどんどん伸びていく。そんな雰囲気が出来上がっています」と話す。
「また、スモールステップの作り方が、生徒の学習意欲を高めていることもあります。たとえばDD準備コースへ行きたいから、まず中1で4級を取ろう、最終的に高校のDDコースに進むなら、中2のうちに準2級を取っておいたほうがいいだろう、というように目標を設定し、英語の初心者でもDDコースを狙える流れを作っています。実際、現高1のDDコースには、中学から30名が希望し、全員が合格しましたが、そのうち15名は英語初心者です。DDコースに入るレベルは英検準2級~2級程度なので、中学でしっかり学習をすれば、そのレベルに到達することはそれほど難しくはないでしょう」
▶︎入試広報部長 西田真志先生
スタータークラスから力を伸ばしてきた中3生にインタビュー
実際、生徒たちはどのように英語力を伸ばしているのだろうか。中学に入学してから本格的に英語を学習し、2年間で英検準2級や2級を取得した2人の中3生に話を聞いた。
Mさん 中学3年生 DD準備コース(英語上級者クラス)
入学時は英検未取得、中1で3級、中2で準2級を取得
バスケットボール部所属
▶︎Mさん
Q 中1でネイティブスピーカーの先生の授業を週7時間受けてきましたが、どのような感想を持ちましたか?
A まず、入学してすぐ授業がオンラインだったので戸惑いました。画面越しにネイティブの先生とマンツーマンで話をしても、最初は聞き取ることができませんでした。それでも少しずつ英語に慣れて、意味もわかるようになったら話すのが楽しくなりました。
Q 英検の対策はどのようにしてきましたか?
A 一次試験は学校の夏期講習や問題集で勉強し、二次試験はネイティブの先生に面接の練習をしてもらいました。
Q DD準備コースを選んだ理由と授業の内容などを教えてください。
A DDコースはこの学校の魅力だと思っていたので、そこを目指そうとDD準備コースに入りました。カナダの先生の授業はプレゼンが多いのが特徴で、長文読解をした後に話し合いをしたり、発表をしたりする機会が増えました。3年から英語上級者クラスに入り、これまでよりも扱う専門用語が増えたと感じます。また、日常会話の言葉や、使っている教科書の内容も難しくなりました。
Q 英語の学習で心がけていることはありますか?
A 授業を集中して受けることです。先生の話をしっかり聞いて、自分が答える時もどうしたら相手に伝わるかを考えて授業に臨んでいます。あとは、ドリルやプレゼンの準備などの課題をきちんとやっています。
Q 今後の目標を教えてください。
A この6月に英検2級に合格することです。高校ではDDコースに入り、海外大学の進学を目指したいです。
Sさん 中学3年生 中高一貫コース
入学時は英検未取得、中1で3級、中2で準2級、2級を取得
音楽部所属
▶︎Sさん
Q 英語の先生や授業の感想を聞かせてください。
A 最初はネイティブの先生の言っていることが全くわからなかったので、意味を知るために「What does ○○ mean?」といった質問文のテンプレートを作りました。先生はいつも優しく教えてくれるので、質問を繰り返しているうちに自然と聞き取れるようになりました。また、自分が問いに答える時、わからなくて詰まっていたら最初のスペルを教えてくれるなど、答えられるように誘導してくれます。ネイティブの先生は、もっと自分の意見を主張するように強制するのかなと思っていましたが、そうではなくどちらかと言えば話すことをサポートしてくれるので、英語を好きになることができました。
Q 2年間で英検2級まで取得していますが、どのように英語を勉強しているのでしょうか?
A 中1からラジオの基礎英語を継続して聞いています。ラジオで聞いたフレーズを学校の授業で使って覚えることもあり、たくさん聞いて、たくさん話すことを心がけています。実際、授業でも話したり、プレゼンをしたりすることが多く、先生は親切なので、間違えたらどうしようという心配をすることは全くありません、また、英検は二次試験の前に、ネイティブの先生にマンツーマンで面接の指導をしてもらいました。
Q 英語を学ぶモチベーションは何ですか?
A 同級生にハーフの友だちがいて、オーストラリアのおじいちゃんの話などを聞くと面白いし、英語も身近に感じられます。英語が話せたら、世界中に友だちができるのかなと思うとワクワクします。
Q 今後の目標を教えてください。
A 今、英検準1級の勉強をしているのですが、スランプに陥っていて、もう少しボキャブラリーを身につけなければいけないと痛感しています。進路の目標はまだ定まっていないのですが、最近、環境問題や国際関係のことに興味を持つようになりました。
【取材を終えて】
今年の中学入学生の4割が英検2級以上を取得していることに、同校の英語教育に対する評価と関心の高さを感じた。西田先生によると、中1生の4分の1は帰国生だそうで、同校でさらに英語力が伸ばせると、見込んでいるのだろう。しかし、英語上級者だけではなく、MさんやSさんのようにほぼ初心者から自然に英語が好きになり、力を伸ばしていく生徒も多数いる。スタータークラスでも、ネイティブスピーカーが主導して授業を行っていることが成果につながっているのだろう。
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