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スクール特集(獨協中学校の特色のある教育 #3)

生徒が環境ファシリテーターに!地域とつながる環境教育を実践

ビオトープ作りや屋上緑化など、実践的な環境教育に力を入れている獨協中学校。今年度は新たに、地域の小学校とつながる取り組みを始めました。その活動とは?

学校内にビオトープや獨協の森、屋上作物園などを備え、環境教育に力を注いでいる獨協中学校。中学・高校生で構成する「緑のネットワーク委員会」では、ビオトープの管理や屋上緑化に取り組み、今年度からは生徒たちが近隣の小学校に出向いて、環境の授業を行っています。学校から外へ出て、地域とつながる教育を実践している同校。その活動について、委員会顧問の塩瀬治先生に話を聞きました。

緑のネットワーク委員会 顧問 塩瀬治先生

地域の学校と関わることで社会貢献を目指したい

「21世紀を生きていくためには、他の生き物と共存共栄が必要である」。そんな理念のもと、長年に渡って環境教育に力を入れている獨協中学校・高等学校。武蔵野の自然を再現したビオトープや獨協の森を作り、屋上に簡易作物栽培装置を設けるなど、都心の学校としては、充実した環境教育施設を備えています。そして、ビオトープの管理や屋上緑化などの活動をしているのが、中学・高校生約40人が所属する「緑のネットワーク委員会」です。今年度は新たに、オリジナルの箱型ビオトープを製作し、それを近隣の小学校に設置する取り組みも始めました。
 「一時期、学校ビオトープは総合学習に活用されるなど、注目を浴びていましたが、今は管理の仕方がわからず、放置されているケースが多くあります。そこで、地域の学校と関わり、ビオトープを管理する活動をしようと考えました。生徒たちも、学校ではできない体験学習ができますし、その活動が、獨協の教育理念でもある『社会貢献』につながればよいと思ったのです」。塩瀬治先生は新たな活動を始めた経緯をそう語り、ビオトープの成り立ちについても説明をしてくれました。
「ビオトープはドイツ語で、『生物が生きていくための空間』という意味です。1970年代、ドイツは戦後の復興を遂げ、人々の暮らしは豊かになったものの、身近な自然は失われていきました。『果たして、こういう生活は人間らしい生き方なのだろうか?』という疑問が国民の中に生まれ、『次世代の子どもたちのためにも、多様な生物空間がある社会をつくろう!』という気運が高まります。そして、ビオトープ法を含む、ドイツ連邦自然法が制定されました。ビオトープには、このような社会的な背景があるのです」。

小学校に箱ビオトープを設置し、生徒による環境の授業を実施

今年度の「緑のネットワーク委員会」の活動は、ゴールデンウィーク前、屋上緑化からスタートしました。4階はゴーヤ、ナス、ピーマン、トマトなどを、5階にはアケビ、ブドウ、パッションフルーツ、メロンなどを植えました。ここ数年、屋上の温度が上昇傾向にあり、以前育っていたゴーヤなどが育たなくなったため、すだれを屋根にしたテラスを設置して、高温対策も行いました。
 次に取りかかったのが、箱ビオトープ作りです。大中小の3種類の木箱を用意し、その中に水や土を入れて、水中、水辺、陸地の違う環境をつくり、植物を植え、ヤゴやメダカを放流。そして、この箱ビオトープを見てもらうために、近隣の小学校や、幼稚園、保育園の先生たちを招待しました。その結果、文京区立関口台町小学校から、「ぜひ取り扱いたい」という要望があがり、同小学校に設置する運びとなりました。
 「あらかじめ校長先生には、『箱ビオトープの維持や管理は、本校の生徒が行います。と同時に、生徒たちに環境の授業をさせてほしい』とお願いしました。つまり、生徒たちが環境ファシリテーターになって、メダカの育成にふさわしい環境や、地域に元から生息する植物のことなどについて説明をしたり、身近な自然を体感できる環境の場を、児童たちと一緒に考え、作り上げていく活動をしたかったのです」と、塩瀬先生。

自然や環境をテーマに小学校と交流を深める

箱ビオトープの設置を機に、関口台町小学校との交流が始まりました。7月には、同小学校の校長先生と共に、環境担当の先生や、飼育部の児童たち15人が来校。屋上の作物園及び生態圏を見学し、その後、児童たちはスイカやナス、ピーマンなどの作物を収穫しました。「どうやって作物を育てているのですか?」「なぜ箱ビオトープには植物がたくさんあるのですか?」などの質問が児童から出され、生徒たちは、その都度、丁寧に答えました。また、自分たちが行ってきた簡易プランター栽培の方法や、鶏糞を再利用した特殊肥料についても、わかりやすく説明をしました。
8月に箱ビオトープを小学校に設置した際も、本校の生徒たちは箱ビオトープの作り方やメンテナンスの方法を説明したり、生物多様性やメダカの生態について話をしました。夏休み明け、小学生たちは箱ビオトープにメダカを放流し、生物の観察を開始。しかし、メダカはカラスに食べられたりして、全滅したそうです。そのことについて、緑のネットワーク委員会と小学校の飼育部で、「獨協と関口台町小学校はとても近いのに、なぜ小学校のメダカだけカラスに狙われたのか」と原因を探り、話し合いは、「どうして、カラスがこんなに多いのか」という地域の生態についても広がりました。絶滅の原因は特定できなかったものの、小学生が放流したメダカが、体の色が黄色いヒメダカであったため、「カラスに見つかりやすかった」という意見が多数を占めました。

高校生自然環境サミットでリーダーシップを発揮

このように全国に先駆けて、環境ファシリテーター教育を実践している「緑のネットワーク委員会」。過去には、「日本環境教育学会」のポスターセッションで発表をするなど、外部の活動にも積極的に取り組んできました。
毎年、「全国高校生自然環境サミット」にも参加。昨年度は開催校として、獨協の生徒たちが中心となって、企画や運営を行いました。その時のサミットに参加したのは、北海道から沖縄まで、全国14の高校。「東京の自然の成り立ち」というテーマをもとに、2日間を通してフィールドワークを行い、夜はグループで振り返りをしました。フィールドワークのガイド役もワークショップでのファシリテーター役も、獨協生が担当。そして2日目の夜、東京の自然の成り立ちをまとめると共に、「東京に自然と呼べるものはあるのか?」「東京に自然は必要か?」などの問い対して、ディスカッションを行いました。3日目は、高校ごとに「自然環境宣言」を発表し、サミットは終了。生徒たちは主催者として、無事に大役をやり遂げました。
「みんな精一杯、リーダーシップを発揮していましたね。このような体験を通して、企画力やプレゼンテーション力も磨かれたと思います」と塩瀬先生。

緑のネットワーク委員会 生徒たちの声

学校内外で、様々な活動をしている「緑のネットワーク委員会」の生徒たち。委員会に入った理由や活動のやりがい、環境について考えることなどを、語ってもらいました。

1つの目標に向かって、共に活動するのが楽しい

Iくん(中学1年生)
小学生の時から、自然に興味がありました。獨協は環境教育に力を入れている学校なので、委員会に入り、様々な活動をしたいと思いました。先輩から声をかけてもらい、ビオトープ作りや屋上菜園の水やりをするのは楽しいですね。1つの目標に向かって、みんなが一緒に活動する、自分の手で何かを作り上げることが面白いです。これからも先輩からいろいろなことを吸収し、外の活動にも参加したいです。

Iくん(中学1年生)

作物の栽培は失敗から原因を探り、翌年に活かす

Yくん(高校2年生・副委員長)
小6の時、獨協の体験授業に参加し、ビオトープを見に行きました。その時、塩瀬先生がホタルについて語っているのを聞いて関心をもち、この学校に入学したいと思いました。
関口台町小学校に行った時は、「日本に元からいるメダカはクロメダカで、ヒメダカやシロメダカなど品種改良されたメダカと一緒に飼うと、クロメダカが絶滅する」という話をしました。屋上作物園は、ぼくの発案で、今年から二毛作にして、ブロッコリーや花を育てています。作物は、前の年の同じことをやっても育たないことがあるので、失敗から原因を探って、ステップアップをしなくてはならない。そのことを後輩にもつなげていきたいです。

右:Yくん(高校2年生・副委員長)

小学生の質問に答えることで振り返りができ、今後の対策へ

Tくん(高校2年生・委員長)
中3の研究論文で、ホタルをテーマしたのがきっかけで、委員会に入りました。活動自体は面白いのですが、夏、水温が高くなると、箱ビオトープの植物が枯れてしったり、昨年育った作物が、今年は育たないことがあったり、管理するのが大変ですね。
小学校での出張授業では、子どもたちが僕らの話に興味をもってくれたのがうれしかったです。小学生の質問に答えることで、自分たちも振り返りができ、今後の対策にも活かせます。委員会の活動で印象に残っているのは、文化祭の時に、箱ビオトープの資料をみんなで作成して発表したり、屋上を一般開放して、作物園やビオトープを多くの人に見てもらったこと。委員会の活動に関心をもってもらえました。

Tくん(高校2年生・委員長)

自然環境サミットに参加し東京ではできないことを体験

Sくん(高校2年生・副委員長)
中3の時は生物部に所属していて、もともと生物が好きだったので、緑のネットワーク委員会に入りました。小学校で自然や環境の説明をしたり、どうしたら子どもたちが関心をもってくれるか工夫をしたりすることも、いい経験になりました。
今年度も、島根で開催された「全国高校生自然環境サミット」に参加しました。当たり前ですが、緑や星の量が東京と比べ物にならないくらい多く、感動しました。川に入ったり、会や魚を調査している人の話を聞いたり、今までにない体験ができたのが良かったです。

Sくん(高校2年生・副委員長)

環境に対する問題意識を、広めていく大切さを知った

Kくん(高校3年生・元委員長)
 中1の時の担任が塩瀬先生で、誘われるがままに委員会に入りました。委員会は課外活動が多く、1年生の時から環境教育学会でポスターセッションをしたり、そこで有名な大学の教授と知り合えたり、環境のことだけでなく、様々な経験ができたのが良かったです。
昨年度の環境サミットでは、副実行委員長を務めました。住んでいる地域が異なる高校生たちと、東京の真ん中で、環境のことを考えることは、いい勉強になりました。環境の問題は、自分ひとりが取り組んでも変わらないけれど、多くの人が少しずつ意識を変えれば、変わっていく。そういう問題意識をみんなが持てるように広めることが、いかに大切であるか、活動を通して見えてきました。

一番右:Kくん(高校3年生・元委員長)

環境ファシリテーター教育を通して地球市民を育てていきたい

緑のネットワーク委員会では、今後も、ビオトープの維持・管理や屋上緑化活動を地域の人に紹介する活動を継続していきます。「来年度は、幼稚園や保育園などにも、活動の場を広げていきたいですね。そのためにも生徒たちは、生物観察の記録を続け、それをわかりやすく発表したり、参加者の意見や質問からフィードバックをして、よりよい活動方法を見つけていくことが大切です。環境ファシリテーターの資質を磨きながら、新しい環境施設を創り出していけたらいいですね」と塩瀬先生。
 最後に、実践的な環境教育を通して、どのような人材を育成したいのか聞いてみました。
「環境問題をはじめ、世界ではいろいろなことが起こっています。その問題をどうしたら解決できるか? と考えられる、地球市民に育ってほしい。多面的な視点で問題意識をもち、自分からアクションを起こして、解決できる人になってもらいたいと願っています」。

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