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東京女学館中学校

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デジタルパンフレット

スクール特集(東京女学館中学校の特色のある教育 #5)

2026年度から国際学級が2クラスに!海外大進学や理系の進路選択が拡充

東京女学館の国際学級では、ツールとしての英語やグローバルマインドを備えた人材の育成を図っている。2026年度には多様な進路を実現するために、クラスを増設。進化する同学級の教育を取材した。

21世紀のグローバル社会を見据え、2004年に誕生した国際学級は、今年20周年を迎えた。新たな展開を目指し、2026年度からクラスを現在の1クラスから2クラスに増設するという。どのような教育を実践しているのか、国際副教頭のクリスタル・ブルネリ先生に話を聞くとともに、今年度アメリカの大学に進学する同学級の卒業生にもインタビューを行った。

多文化コミュニティの国際学級。英語は習熟度別で授業を実施

最初にブルネリ先生は、国際学級の特徴について、「英語が堪能な生徒だけが入学する、いわゆる英語に特化したクラスではありません。海外帰国生や日本で生まれ育った一般生、併設小学校からの内部進学生など、さまざまな学習歴を持つ生徒が一緒に学んでいます」と説明する。「帰国生も英語圏の現地校に通っていた生徒、非英語圏の現地校やインターナショナルスクールに通っていた生徒、各国の日本人学校に通っていた生徒など、さまざまなバックグランドを持っています。まさに “多文化コミュニティ”であると言えますね」
 
そして同学級では、6年間のプログラムを支える3本柱として、「Practical English/活動や思考をする際のツールとしての英語を習得」、「Inclusive Leadership/集団の中で自己の役割を認識し、積極的にそれを果たすインクルーシブリーダーシップ*を育てる」、「Intercultural Understanding/日本文化を学び、異文化との相互理解を深める」を設定している。

英語の学習は中学校では、3段階の習熟度別、少人数グループによる授業を実施している。「中1の英語初心者のグループはアルファベットから学びます。英検準2級以上の上級者のグループは、英語を使ってディスカッションやプレゼンをするなど、英語圏の学校のような学びにチャレンジします。学年が上がるにつれて全体の英語力も向上していくので、高校では2段階のレベル別で授業を行っています」と、ブルネリ先生。なお、中3までに英検2級以上、高3までTOFEL iBT80以上を取得することが、同学級の目標である。

*インクルーシブリーダーシップ…一人ひとりが主体的に課題を共有し、協働しながら課題解決に向けて集団全体を高めていく力

▶︎国際副教頭 クリスタル・ブルネリ先生

北米型Language Artsの授業や、海外交流活動を推進

国際学級の学びの特色は、英語圏の現地校に近い形態の「Language Arts」の授業を展開していることだ。英語は「読む・聞く・話す・書く」の4技能をバランスよく伸ばすとともに、話し合いや発表などアウトプットをしながら、実践的な英語運用能力を養成。高校では社会性の高いテーマの英語教材を使用し、発信力や表現力の強化を図っている。

ブルネリ先生は、「中学では文学を中心に学び、1年生はおとぎ話、2年生はギリシャ神話や詩、3年生は小説などを読みます。また3年生は中学の集大成として、『ロミオとジュリエット』の英語劇を生徒全員がキャストになって演じます。劇を創るなかで表現力が磨かれ、インクルーシブリーダーシップも身についていきますね。高校にあがると、『模擬国連』に取り組み、国際問題を多角的な視点で考えていきます」と話す。

また、高1ではクラス全員が参加する「アメリカ・ボストンリーダーシップ研修」(11日間)を実施。プログラムには、現地の女子大学生とのディスカッションや、ハーバード大学、マサチューセッツ工科大学のキャンパスツアー及びワークショップ、国連本部の見学などを組んでいる。「この研修は、Language Artsで培った英語を試す良い機会になっています。自分の話す英語が相手に通じた経験は自信になり、勉強のモチベーションにもつながります。また積極性も養われ、今まで手を挙げなかった人が生徒会に立候補するなどの効果も出ていますね」と、ブルネリ先生は言う。

さらに同校は、国際学級を問わず、さまざまな海外研修や留学制度を用意している。「本校の海外交流活動は、韓国やタイ、マレーシアなど英語圏の国だけではありません。なかでもアジアの地域が多いですね。その1つ、韓国文化研修では、歴史館の見学や現地の女子校生と交流をするのですが、生徒は歴史の見方が日本とは違うことを知り、その一方で音楽やアニメなど共通の話題で会話が弾み、最後は別れを惜しむくらい親しくなります。また、これからの時代は、アジアの人と同じ職場で働くことも増えていくことでしょう。交流活動を通じて、異なる文化や価値観を尊重する心を育てていきたいと思っています」(ブルネリ先生)

国際学級の卒業生にインタビュー

国際学級の卒業生で、この9月からアメリカのリベラルアーツ・カレッジであるグリネル・カレッジに進学する橋本花さん。渡米前に、6年間の学校生活や今後の目標などを語ってくれた。

【お話を聞いた人】
橋本花さん:国際学級15期生。4歳の時に1年間フランスに滞在、小1~小2までアメリカ・ミシガン州に滞在し、現地校に通う。高1~高2の1年間ドイツに留学。今秋、柳井正財団の海外奨学金を得てアメリカ・アイオワ州のグリネル・カレッジ入学を控えている。

▶︎橋本花さん

—国際学級に進学した理由と、入学時のクラスの印象を教えてください。

自分と同じような帰国生がいて、英語も伸ばしていけそうだと思い、国際学級を選びました。最初の印象は、クラスメイトが個性的で、全体的に賑やかだということ。担任の先生は、「そのうちあなたたちは姉妹、家族のような関係になっていくから」とおっしゃっていましたが、その時は信じられませんでした。

―英語の授業はどうでしたか?

中1から英語の小説を読んで、みんなで話し合ったりプレゼンをしたり、高3までグループワークがあって楽しかったです。ただ、中3の「ロミオとジュリエット」の英語劇は、コロナ禍で人形劇の動画に変わり、分散登校でレコーディングも一緒にできず、残念でした。

—高1でドイツ留学をした経緯や、留学の思い出を教えてください。

アメリカにいた小学生の頃から留学をしたいと思っていました。同級生が強制送還されそうになって、学校をあげて阻止したことや、私自身が外国人としてサポートを受けていたことから、難民や移民問題に関心を持ちました。また、動物福祉にも興味があり、ドイツはそれらの分野が進んでいたので、留学先に選んだのです。
ホームステイ先は小さな村で、バスで片道45分の現地校に通いました。留学前に勉強したドイツ語はあまり役に立たず、全く話せなかったので、最初は苦労しましたが、言葉がわかるようになるにつれて生活に馴染んでいきました。留学中に、ロシアによるウクライナ侵攻が始まり、避難してきた人たちに学校や地域でさまざまな支援をしました。そのような出来事がきっかけになり、大学でも難民、移民問題を学ぼうと自分のビジョンが固まりました。
私にとってドイツ留学は、単独で行った初めての海外でした。そこで友だちを作った経験が自信になり、帰国後は自分の意見をきちんと伝えることやユーモアをまじえることなど、人との付き合い方も上手になったと思います。

―卒業後の進路はどのように決めましたか?

ドイツに留学して、大学でも留学をしたいと考えるようになりました。最初は日本とアメリカ、両方の大学を受けるつもりでしたが、担任の先生から「海外大学一本でも大丈夫だと思うよ」と言っていただけたので、アメリカに絞りました。また、ブルネリ先生はアメリカの大学のご出身なので、志望校選びから出願、奨学金申請、進学先決定まで伴走してくださいました。先生方にはエッセイの書き方など、いろいろと相談にのってもらい、私は海外進学塾に通っていなかったので、学校のサポートがなかったら海外大学受験は厳しかったと思います。グリネル・カレッジは、社会正義のための活動が盛んで、留学生も多くインクルーシブな環境があり、履修の自由度が高く、私のしたい勉強ができることが決め手となりました。

模擬国連

—6年間の学校生活で得たことは何でしょうか。

一番は友だちです。中学時代はぶつかることもあったけれど、喧嘩も経て仲が深まりました。F組(国際学級)は団結力が強く、体育大会でも派手に応援するなど、盛り上がり方が尋常ではありません(笑)。高校になると、「国際学級に入ればよかった」と他クラスの人から羨ましがられたこともありました。

オーストラリア姉妹校の生徒たちと

—今後の目標や将来の夢を教えてください。

大学で社会学や政治学、国際関係学を学び、そこから移民、難民問題にアプローチしたいと思っています。将来の夢はジャーナリストになること。難民問題に触れていると、報道の仕方に疑問を持つことがあり、私は弱い立場の人に寄り添うような記事を書いていきたいです。最近は、安全保障や外交を扱うNPOの活動に参加していて、その分野にも興味を持つようになりました。政治的なところから人権問題にアプローチするのもありかなと、考えています。

多様な進路選択を可能にし、さらなるグローバル化を目指す

ボストンリーダーシップ研修

ブルネリ先生は、橋本さんが海外大学を受験する際、学校を選ぶところからサポートをしたという。「アメリカの大学は数が多く、総合大学か、リベラルアーツ・カレッジか、奨学金が使えるか、どんな地域がいいのかなど、一緒に考えて大学を探しました。また、学校内にはICEC(異文化相互理解センター)があり、週3回、スタッフが来ているので、海外大学や留学などの相談をすることができます」

そして同校は2026年度より、国際学級を現在の1クラスから2クラスへ、一般学級を5クラスから4クラスへと変更する。ブルネリ先生は、国際学級を増設する経緯を次のように話す。「国際学級は今年で21年目となりました。これまで日本文化体験やイングリッシュキャンプ、アウトプット型の英語の授業など、さまざまな試みをして、今ではこれらが一般学級でも実施されています。また近年は、橋本さんのようにレベルの高い海外大学に合格できる生徒も出てきました。今後は海外大進学をより推進するとともに、国際学級として次のステージへ行くことが必要だと考えています。

その1つが理系の進路選択を可能にすることです。これまでは文系が中心であったため、理系に進む生徒はクラスを変えなくてはなりませんでした。2クラスになることで、文系、理系、国内、海外を問わず、希望の大学に進学しやすいカリキュラムを提供することができるようになります。

また新たな学びとして、現在、『ケンブリッジ国際認定校』としての登録を申請しているところです。申請がおりてケンブリッジの国際教育プログラムを導入できれば、日本の大学のみならず海外大学への門戸が大きく開き、進路の選択肢が格段に広がります。このように国際学級は、さらなるグローバル化を目指していきます」

<取材を終えて>
近年は、英語に特化した国際コースを作る学校も多いが、同校の国際学級は入学時の英語力は問わず、他校とは一線を画している。とはいえ、英語教育には力を入れ、国内外の大学進学実績は高く、今後の新しい取り組みにも期待をしたい。また、橋本さんのインタビューで印象的だったのは、最初は大変だった人間関係が、6年を経て家族のようになったということ。これからアメリカの大学で学び、どんな活躍をしていくのか楽しみだ。

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