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東京女学館中学校

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デジタルパンフレット

スクール特集(東京女学館中学校の特色のある教育 #3)

「なりたい自分」を探究し、一人ひとりを丁寧にサポートする進路指導

東京女学館中学校・高等学校は、一人ひとりに丁寧な進路指導を行い、堅調な進学実績をあげている。進路指導部の先生と、東京大学、東京工業大学に進学した2人の卒業生にインタビューを行った。

将来の選択肢を広げ、後悔のない大学受験を目指す

「私たちが進路指導を行ううえで最も大切にしているのが『一人ひとりを丁寧にみる』ことです。ただ本人の希望に寄り添うのではなく、その希望が周囲の影響を受けて思い込んでいる場合もあるので『本当に自分のやりたいことは何か』を明確にさせて、実現を目指すように働きかけています」と進路指導部部長の井上聡先生は、指導の方針についてそう話す。

同校が細やかな進路指導を行うために重視しているのが面談だ。「高3では1学期の終業式前に、生徒全員が提出した志望進路について担任と進路指導部で一人ひとりの情報を洗い出し、話し合いを行います。具体的には、模試の結果を棒グラフにし、併せて目標校、実力相応校、滑り止め校の偏差値を折れ線グラフにして、本人の志望校と照らし合わせていきます。そのなかで『Aさんは、この教科の○○を克服すれば、志望校合格が近づく。こういう勉強をさせていこう』『Bさんは学部選びに一貫性がないので、志望校の選択をもう少し突き詰めよう』といった対策を考え、面談で伝えます。その時に、国公立大学を受けたいと思いながらも不安になっている生徒や、安定志向に傾いてチャレンジをあきらめようとしている生徒には、励ましの声をかけ、生徒たちが夏休みを有効に過ごせるように指導をしています」

同校の2022年度の大学合格者数は既卒生を含め、国公立8人、早慶上理ICU82人、GMARCH179人。また、医学部(医学科)は37人、医歯薬看護系を合計すると123人にのぼり、近年は右肩上がりの伸びを見せている。
進学先大学の受験方式の割合は、一般選抜71%、学校推薦型選抜(指定校)12%、総合型選抜(AO)9%、学校推薦型選抜(公募)8%となっている。「この数字を見て一般選抜が多いと思う人もいるかもしれませんが、本校の進学指導は、生徒が自身の夢と真摯に向き合い、最後まで頑張り続けることを大事にしています。もちろん、推薦型や総合型の入試で進学したい学部と自分の学びたいことが合致すれば、全力でサポートをします。しかし、そうではない場合は、堅実に学力をつけて後悔のない大学選びをするよう、進学した後の選択肢もしっかり残せていけるような指導を心がけています」

▶︎進路指導部部長 井上聡先生

自己を探究し、実現を支援する多様なプログラム

同校では、一貫教育の利点を活かし、6年間を2年ごとに分けた3ブロック制で生徒の志望進路の実現を目指している。中1・中2は、自分の能力や適性に理解を深めながら将来の生き方を考え始め、学習面では基礎の定着を徹底する。中3・高1では、社会に対する視野や考え方を広げ“なりたい自分”を探究し、自己の確立を図る。また、高1の2学期に文系・理系のコースを決定する。高2・高3は自己実現に向けて、自分の進路を自ら選び、志望校合格へと向かう。

進路を考えるプログラムは、中2の自分史作り、高1の箱根研修旅行、高1~高2の研究論文作成、年に4~5回、卒業生による講演会などを実施している。「卒業生は様々な経歴を持ち、なかには生き方を大きく転換した人もいて、生徒はそれぞれに思いを感じ取っているようですね。また、箱根研修旅行では、高1生全員が自分の将来について原稿を見ずにスピーチをします。人前で勇気を振り絞って自分の気持ちを打ち明けたり、スピーチに感動して大きな拍手が巻き起こったりと生徒同士が刺激を与え合い、自分自身や進路についてより深く考えるきっかけとなっています」と井上先生は言う。

研究論文作成は、昨年度まで高1で行っていたが、今年度より総合的な探究学習としてグループワークなどの協働作業も入れながら、2年間かけて取り組むことになった。「最初に重要となるのが、研究のテーマ選びです。自分の身近な疑問はすぐに見つけられますが、論文レベルに発展させるのが難しい面もあり、一方で、学問的な課題はなかなか入りづらいけれども、一度興味を持つと深めることができます。そうした観点からこの1学期は、東京女子大学、北里大学、防衛医科大学校・自衛隊中央病院の協力を得て、高1生対象の出張授業を行い、研究のヒントを得る機会を設けました」
講座は「化学現象のコンピューターシミュレーション」「現代社会はどういう社会か?-政治学入門」「人間中心設計で情報社会をデザインする」「くすりが『よく効く』ための条件~薬学が集学的な学問である理由~」「看護の価値と新たな挑戦~いのち・暮らし・尊厳をまもり支える看護~」「物理的な観点で生命の仕組みを知る生命物理学」「自衛隊の医師として」など文系、理系分野を合わせて14のテーマで行われ、生徒は最大3つの講座を選択することができる。なかには講義を聞いて興味を持った研究室を、後日、訪問する生徒もいたそうだ。

その他、進路および学習サポートとして、今年度よりチューター制度を導入。週に3回、チュータールームに3~5人の大学生チューターが常駐し、生徒とのやり取りを質問カードに記録をしてもらっている。「チューターは全員が卒業生で、生徒たちは日常の学習の質問から定期テストや大学入試の対策、海外留学のアドバイス、学校生活の悩み相談まで、さまざまなことを聞いているようですね」と井上先生。また昨年度から、学校生活や家庭学習の取り組みを記入する「フォーサイト手帳」を採用し、自己管理の徹底も図っている。

さらに同校は、朝や放課後、夏や冬の長期休暇を利用して年間200を超える学習講座を実施している。基礎的な学習から大学入試対策、演習を中心としたハイレベルな講座、体験講座などと幅広く用意し、毎年、1000名以上の生徒が受講しているという。

卒業生にインタビュー

2022年度に東京大学に進学、2020年度に東京工業大学に進学した2人の卒業生に、大学受験や東京女学館での生活などについて話を聞いた。

Sさん 東京大学 文科一類 1年生 
Oさん 東京工業大学 工学院 3年生

―志望大学を決めた時期や経緯などを教えてください。

Sさん 中学生の時に特段苦手な科目もなく成績も取れていたため、当時の先生から私大だけではなく国公立も狙ってみてはと提案されたのが、東大を意識し始めた最初のきっかけです。高校進学後は国公立大学への進学を視野に入れるようになり、東大を目指していれば他大学受験にも対応できると考え東大を志望しました。また東大には進学振り分け制度があり、入学時にやりたいことが明確に定まっていなくても後から自分の興味に沿って学部を決められるので、その点でも東大に魅力を感じ目指そうと思いました。

Oさん 高2までは「東大王」などのテレビのクイズ番組に感化されて東大に憧れていましたが、成績が追い付かなかったので、考え直しました。私は、決められた時間内に一定数の問題を解かなければならないセンター試験が苦手で、東工大のように数学の問題を3時間かけて解くというほうが向いています。東工大の入試スタイルは私大と似ているところがあるので、掛け持ちも可能だと思い、東工大を第一志望に決めました。

▶︎Sさん

▶︎Oさん

―大学受験前、先生とどのように関わってきましたか。

Sさん 高3の時の担任の先生が東大入試に理解を示してくれ、学習面だけでなくメンタル面も大いに支えてもらいました。たとえば「模試でこういう採点をされたけど、たぶん私の解き方で合っていると思うんだけどなぁ...」などちょっとした愚痴も聞いてもらい、とても気持ちが軽くなったのを覚えています。夏、秋共に東大模試ではあまり良い成績を残していた方ではありませんでしたが、英語が得意科目であったため英語さえキープできればどうにかなるかなぁと思いあまり深く捉えてはいませんでした。先生方をはじめ、クラスの雰囲気がいい意味で非常に穏やかでほのぼのとしていたので、そうした環境の中で自分の思うように勉強ができたのも良かったです。

Oさん 私も高3の担任の先生に、たくさん声をかけてもらいました。大学別の模試の結果が返ってくると「ここは○○先生に教わったほうがいいよ」と様々な教科の先生を紹介してくださり、塾のオープン模試なども解き直しをしてもらっていました。印象に残っているのは、センター試験プレテストを受けた時に、私は東工大の足切りに届いていなくて、担任の先生から「これで本当に大丈夫かよ」と明るい口調で言われたことです。反対に深刻に言われていたら、プレッシャーになったと思うので「まぁ、一緒に対策を考えよう」と明るく励ましてもらったのがうれしかったです。

―東京女学館の6年間で培われたことは何でしょうか。

Sさん 女学館にいた時はあまり意識していなかったのですが、日本の伝統文化に触れたりテーブルマナーや礼儀作法を学んで身につけたことが、今とても役に立っていると感じます。先生方や友人と良い関係性を築くことができたのも一生の財産ですね。

Oさん 私は6年間、体育委員をやっていて、体育大会にとても思い入れがあります。女学館の体育大会は学年対抗で、私たちの学年は中1から気合いが入っていて、中2に勝ったことがあり、団結力が強かったですね。もともと負けず嫌いではありましたが、体育大会でさらに助長され、それが大学受験にも活かされたのかなと思います。

―将来の夢や目標を教えてください。

Sさん 私の周りには、1年生から司法試験予備試験の勉強を頑張っていたり、明確な目標を持って官僚を志していたりと、意識が高く尊敬できる人がとても多いです。そういう姿に刺激を受け、法曹を目指してみようかな、または英語や第2外国語で学んでいる中国語を活かせる仕事もいいかななどと、今は視野を広げながら将来を模索しているところです。

Oさん 入学当初はロボットや機械に関心がありましたが、学んでいるうちにプログラミングなど情報系に興味を持つようになり、そっちの方面に進みたいと考えています。来年は研究室に所属して、大学院に進学するつもりです。

【取材を終えて】
進路指導は時に合格実績偏重になることもあるが、同校では、生徒自ら「自分の進みたい道」を選ぶことを重視し、そのためのサポートを行っている。大学受験がゴールではなく、大学進学後、その先の将来のことを考えた指導を行っていて、いわゆる予備校とは一線を画していると感じた。また、受験前に不安的になるメンタルを、先生たちが支えていることも、卒業生たちのコメントから伝わってきた。

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