スクール特集(東京女学館中学校の特色のある教育 #2)
東大・一橋大入学者から後輩たちへ 希望大学合格までの体験談とアドバイス
2018年に東大と一橋大に入学した先輩たちから、受験を突破した体験談と東京女学館での学生生活や後輩たちへのアドバイスを伺いました。
難関国立大学の合格者も輩出する教育環境
同校の2018年度の大学合格実績は、国公立では東大1名・一橋大3名、国際教養大1名、東京外語大1名など、私立では慶應大23名、早稲田大38名、上智大30名、立教大29名などとなっています。進路指導の方針について、進路指導部長の澤田明教諭に聞きました。
「本校では、生徒一人ひとりに6年間を通じて自分自身の頭を使ってしっかり考えることを重視しています。私たちに相談に来るときも、最初から結論を言うようなことはしません。その時点で、生徒自身の考えはどちらかに傾いているはず。我々教師は背中を押すのが役割だと考えています。6年間を2年間ずつの3ブロックで指導。各自が目標を持ち、その目標が達成できるように支援しています。
大学受験もキャリア教育の一環です。中2では、それまでの振り返りとして「自分史」を作るように指導。両親をはじめとした身近な人たちへの職業アンケートや恵比寿ロータリークラブの「15歳のハローワーク」などを実施します。自分を見つめなおし、将来を考え始めるきっかけとします。高1では、研修旅行で3分間スピーチを行います。情報の受け手ではなく、発信する側としての体験をするわけです。さらに1年をかけて論文を作成します。高2からは、理科系・文科系に分かれたクラス編成。担任との面談で志望大学、学部、学科を決定していきます。オープンキャンパスへの参加とシェアリングに積極的に参加、卒業生や教育実習生による受験ガイダンスも実施しています。
全学年共通で、各学年レベルに応じた豊富な学習講座も用意しています。中学では訂正ノート、問題集ノートなどの点検により、生徒一人ひとりの理解度に応じたきめの細かい個別対応を実施。単元テストや確認テストも行い、確実な定着を目指すようにしています」
▶進路指導部長 澤田明教諭
「努力に嘘をつかせない勉強をする」
Yさん 東京大学 理科Ⅱ類
この春から東京大学の理科Ⅱ類に通っています。今までと違う環境で新しい出会いに楽しい毎日ですが、自分の受験の体験についてお話したいと思います。はじめに受験勉強において最も重要なのは「努力に嘘をつかせない勉強をすること」です。受験勉強をしているのに成績が全然伸びないという時期がありますが、そのような時は自らの学習方法を振り返り、しっかりその理由を考えられるかどうかが勝敗を分けるのではないかと思います。
私は高校2年生の春からの2年間が本気で受験に取り組んだ時期です。その間、自分が正しい方法で勉強ができていると実感していたときは成績も伸びましたが、実感できずにただがむしゃらに勉強していたときは、成績があまり伸びませんでした。「成績が伸びないのは伸び待ちの時期なので待てばいい」などという情報を耳にすることもありますが、私は成績が伸びないのは学習方法に何らかの問題があるからだと思います。
加えて受験に関する情報を得ようとしたとき、基本的に見つかるのは成功した例ばかりだということです。そのため「受験なんてどうにかなる」と思いがちです。ところが現実には、受験で第一志望に合格する人は、全受験生の1割にも満たないと言われています。
私が早期に受験を始めたのは「東大が第一志望だったから」ではなく「このままではどこの大学にも受からない」という危機感からでした。受験においては「常に成功する人はほとんどいない」という現実から目をそらさないことが大切ではないでしょうか。
さらにどんなにいい成績をとっても、常に上がいるということも忘れてはならないと思います。難関校と呼ばれる大学への合格実績が並んでいますが、客観的に見てもそういった大学に合格した同輩は危機感を持って受験勉強に取り組んでいたと思います。
私は将来教育心理を学びたいと考えています。東京女学館で先生に恵まれたこともそう考える理由の一つだと感じています。私はメンタルが弱いのですが、担任の先生を含め、多くの先生方が声掛けをしてくださいました。国公立を目指す人が少ない中、先生方と相談することで自信をつけていくことができました。人に頼ることも大切だと思います。
「東大生は脳みそが違う。変わった人たちばかり」などという偏見を持たれることがありますが、私は高校3年生の春までソフトボール部に所属していた、いわゆる「普通の人」です。勉強時間の工夫をする必要はありますが、クラブ活動を続けることで一生の仲間ができたとも思っています。
これからも上位の大学を目指す人がもっと増えてほしいと思っています。上を目指すということは、それだけ犠牲を払うことでもありますが、同時に得られるものも多くなると実感しています。ぜひ目標は高く最後までがんばってください。
▶Yさん
「自分自身で考えることを大切に」
Fさん 一橋大学 社会学部
大学に入って初めての一人暮らしを体験しています。何もかもが新鮮で刺激のある毎日を送っています。一橋大学を希望するようになったのは高校1年生のときに体験したオープンキャンパスでした。実は校舎がロマネスク様式で素敵だったというのも理由の一つです。また一橋は学部間の垣根がなく、いろいろな学問ができるというのも大きなポイントでした。
本格的に受験勉強を始めたのは高校2年生の春でしたが、私が受験勉強を通して大切だと感じたのは「考えること」です。一見あたりまえのようですが、日頃から自分自身の頭で考えているかどうかを確認しておくことは大切だと思います。
たとえば「なぜその大学に行きたいか」もっと突き詰めれば「どうして大学に行きたいか」を自分自身の将来の希望と合わせて考えておく必要があると思うのです。志望動機を明確に意識しておくことで、つらい受験勉強のなかでも目標を失わず努力し続けられたと感じています。
私は日本の教育の根底にかかわる仕事がしたいと考えています。そのためには教育学だけではなく日本の社会の動向なども学びたいと思い一橋大学社会学部を選びました。受験対策も一橋大学に焦点を合わせて努力しました。高校3年生になる春休みに過去問題を一度解いてみて、当時の自分に足りないこと、合格点に至るために何をすればいいのかを考え、重点的に対策するようにしました。
また一つひとつの問題について、どうして間違えたのか、どうすれば解けたのかなどを確認することも大切です。自分がその問題から何を学んだのかを考えることで、理解力の質が高まっていくのです。
受験勉強は、伸びている実感がなくあきらめたくなるようなときもありましたが、支えてくれる人も多く、本当に助けていただきました。受験勉強で学べることは学問的知識だけではありません。一緒に努力してきた友人が第一志望に合格すると、自分のことのようにうれしいし、友人も私の合格を喜んでくれました。「受験」を通して仲間の大切さも学ぶことができたと思います。
▶Fさん
「実は学校での勉強が一番重要」
Iさん 一橋大学 社会学部
私は高校3年生になっても、特に熱望する大学や学部もなく、なんとなく有名な大学を目指そうというくらいの考えでした。ただ経済とか法律とか、入学時からしっかり学ぶ内容が決まっていそうな学部より、入った後でいろいろ決められる学部がいいと思って一橋大学の社会学部を受けることにしました。加えて理科が好きだったのでセンター試験での理科の配点が高かったのも志望した理由です。
受験に対する意識が低かった私でも、ありがたいことに合格できたのは、中学生の頃から学校を中心に勉強し、授業や定期テストをまじめにこなしてきたからだと思います。東京女学館の先生方には、本当にお世話になりました。
受験勉強をするにあたり、たくさんの資料を読むなど、楽しむことも大切にしました。例えば地理の場合は映像を見たり、イラストを描いてみたり、自分が興味が持てるような工夫をすると身に付きやすいです。世界史も大局的な流れを頭に入れてから、細かい知識を学んでいくほうが効率が良いと思います。
英語は授業をとにかく一生懸命やりました。定期試験だけではなく英単語の小テスト・確認テスト・暗唱まで真剣に取り組みました。国語はセンター対策講座を取り、早めに現代文の読み方に慣れるようにしました。古文や漢文も学校の授業と過去問で対応しました。
実は私は数学が苦手でした。センターは学校の講座と過去問で乗り切りましたが、幸いにも社会学部は数学の配点が低いので合格しました。ただどんなに苦手で分からなくても、「とりあえず解答用紙を埋める」という意識は持つべきです。完答はゼロでしたが、私は部分点だけで合格したと思っています。
また私は勉強時間と成績は必ずしも比例するとは思っていません。疲れたまま根を詰めて勉強するより、思い切って気晴らしをするほうが効率が上がることもあります。
実は受験勉強をしている間、私は苦労という苦労をしたと思っていません。「受験を楽しむ」という感覚も大切だと思っています。よくよく考えたら、1度に同じ問題を、数百あるいは数千人(センター試験の場合は数十万人)が受けて競い合うなどという経験はめったにありません。入試の前日でも「明日はどんな問題が出るのか楽しみ!」くらいに思えたら勝ちだと思います。
▶Iさん
◆コラム◆
「自分を知り、自分に向いた勉強法を」
~Kさん 慶應義塾大学 医学部~
集中力はあっても、一度切れてしまうと取り戻しにくい。そんな性格の私は、日曜日にその週の学習計画を決めることにしました。そうすることで、今すべきことが常に明確になり、集中力が保てるようになったのです。成績がなかなか伸びず、悩んだ時期もありましたが、自分の努力を信じ、がんばり抜きました。後輩のみなさんの志望校合格を心から祈っています。
自分の生き方や特性を見抜き希望の大学を見定め、さらに的確な方法を見つけて受験に臨む。生徒と先生方がチームとなって力を発揮していることが、取材を通じて強く感じられました。