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サレジアン国際学園中学校

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デジタルパンフレット

スクール特集(サレジアン国際学園中学校の特色のある教育 #5)

思考力、言語活用力をはじめ21世紀に必要な力を育てる教育を促進

2022年、校名変更と共学化を果たしたサレジアン国際学園中学校高等学校。同校が取り組む21世紀型教育の現状と今後の展望について、募集広報部部長の尾﨑正靖先生に話を聞いた。

全教科でPBL型授業に取り組み、論理的思考力を育成

同校は、“21世紀に活躍できる「世界市民」の育成”を目標に掲げ、「考え続ける力」「コミュニケーション力」「数学・科学リテラシー」「言語活用力」「心の教育」の5つを重点項目とした教育活動に取り組んでいる。

尾﨑先生は「変化の激しい21世紀の社会で活躍するには、与えられた知識を処理する能力よりも、自ら課題を発見し、自分の力または周りと協働して問題解決する能力が求められます。そこで、本校はすべての教科で*PBL型授業を取り入れ、実践しています。自分の意見を持つ、他者と議論する、プレゼンで考えを伝えることを積み重ね、生徒の論理的思考力を育てていきたいと考えています」と話す。

「その一環として、今年度より中学校の全学年で中間テストを廃止しました。成績は、日常的な学びが5割、期末テスト5割の割合でつけます。日常的な学びをどう判断するかですが、教科によっては単元の確認テストを行うものの、授業での発表やプレゼン、レポート作成など、“自分の考えを表現する”ことに重きを置きます。これまで以上に知識の暗記型から思考型教育へ移行したいと考えています」

*PBL型授業(Project Based Learning)…1つの正解のない課題に対して、生徒が主体的に最適解を構築していく学び。トリガークエスチョンを投げかける→個人で最適解を構築→グループディスカッション→グループの結論選択→プレゼンテーションというプロセスを経る。

▶︎募集広報部部長 尾﨑正靖先生

本科クラスは、中2~高2が一緒に学び合う「ゼミナール」活動を実施

同校は本科クラスとインターナショナルクラスの2つのクラスを設置し、本科クラスでは、「研究者として学ぶ」ことを重視した教育を展開している。その最たる取り組みが、中学2年~高校2年生合同のゼミナール活動だ。

ゼミナールは「文藝批評・文化論ゼミナール」「Math-Lab~数楽研究室~」「プログラミングゼミ」「理論物理学研究室」「*E研」「野生生物研究室」「クラブヒストリア」「entrepreneur(アントレプレナー)養成講座」の8講座があり、生徒はその中から興味関心のあるゼミナールを1つ選択。そして各自テーマを設定して研究を行い、高校2年生は学びの集大成として最終論文を執筆する。

「4学年の生徒が同じ文献を輪読したり、一緒に実験をしたり、また、高2が取り組んでいる個人研究の発表を下の学年が聞いて意見をしたり、上級生が下級生に研究のアドバイスをしたり…。毎週金曜日の5、6、7校時に大学のゼミナールのような学び合いが行われています」と尾﨑先生。

現在は「E研」や「文藝批評・文化論ゼミナール」の選択者が多く、次年度以降は、E研の中から科学系の分野を取り出したり、文藝批評と文化論を分けるなどゼミの再編を検討しているという。

また中学1年生は、2年次から開始するゼミナール活動に向けて、研究の基礎となるアカデミックスキルを学ぶ。
「昨年度までは、身近な事柄から興味関心を広げて学術分野につなげる、という流れで授業をしていました。今年度は一段レベルを上げ、初めに『自然科学、人文科学とはこういう学問だ』と学術分野から入り、それが『日常生活にどう関わっているか』を考察する順序に変更しました。生徒が将来のキャリアを見据え、自分がどんな学問に興味があるのかを把握したうえでゼミを選んでほしいと考えたからです」

尾﨑先生は今後のゼミナール活動として「外部のコンテストやコンクールに出場する機会を作っていきたい」と語る。「また、研究に取り組んできた成果を、大学の総合型選抜などにも活かしていきたいです」

*E研…21世紀の大きな課題である環境問題やエネルギー開発について考える研究室。

インターナショナルクラスは、高2でデュアル・ディプロマ・プログラムを導入

インターナショナルクラスは、英語習熟度別にアドバンストグループ(AG)とスタンダードグループ(SG)の2つのグループで授業を実施し、中学では週10時間、英語の授業を設けている。

AGは、英語、数学、理科、社会の主要教科を、各専門分野の外国人教師がオールイングリッシュで指導し、平均して週の3/5は英語による授業が行われている。一方、SGの英語の授業は外国人教師が主導、日本人教師がサポートに入るチームティーチングで実施。SGの生徒も各年度末のアセスメントで承認されれば、AGへの移動が可能だ。なお、同校の外国人教師は全員、本国のマスターの資格と教師の経験を持つ専任教諭である。

また同校は、中学校1期生である中学3年生が高校2年に進級する2026年度に、西オーストラリア州教育省と提携したデュアル・ディプロマ・プログラム(DDP)を導入することを決定している。DDPとは、国内の学校に通いながら、海外校のカリキュラムも同時に履修し、2つの国の卒業証書(デュアル・ディプロマ)を取得できるプログラムのこと。つまり、必要な単位を修得した生徒は、サレジアン国際学園高等学校と西オーストラリア州の高校卒業資格(WACE)を得ることができ、海外大学進学の選択肢がより広がることになる。

すでに中学校のAGでは、英語、数学、理科、社会の授業をオーストラリアの教育に沿ったカリキュラムで実施し、DDPの下地作りをしているという。

本科とインターナショナルの生徒が共に学ぶ「ハイブリッドクラス」を形成

3年目を迎えた同校は、これまで本科とインターナショナルを分けていたクラス編成を、3期生から合同にした「ハイブリッドクラス」を作るなど、新たな取り組みも始めた。現在、中学1年のクラスは、本科、インターナショナルAG、SGの生徒がそれぞれ1/3の割合で所属している。

「委員会やクラブ活動は、本科もインターナショナルも一緒に行っていましたが、どこか学校生活の中で壁ができていました。それを解消したかったことと、異なる個性や長所を持つ生徒同士が学びの面でも交流をすれば、相乗効果でもっと力が伸びていくのではないかと教育的なメリットを考えました」と尾﨑先生はハイブリッドクラスを導入した理由をこう述べる。

「クラス運営はインターナショナルのスタイルを引き継ぎ、外国人教師と日本人教師のチームで担任、副担任を務めます。朝礼やホームルームなどは英語を使用し、日本人教師がサポートをします。また、本科、AG、SGの生徒、各1~2名で構成するバディグループシステムを作り、学校生活で困った時やさまざまな活動で助け合いをします。たとえば、本科やSGの生徒がわからない英語をAGの生徒に教えてもらったり、反対にAGの中には海外の学習歴が長く、日本の数学や理科を不得意とする生徒もいて、本科の生徒がフォローしてあげたりします。本校はカトリックミッションスクールであるので、自分の長所を他者に貢献する形で使うことを大事にしています。

同時に、自分の足りていないところを気軽に聞くことができる関係性を築くことも大切ですね。このような交流を通して、自分の個性や長所をより認識できるようになり、そのうえで中2から本科とインターナショナルに分かれ、専門的な学びへ向かえば良いと考えています」

尾﨑先生は「ハイブリッドクラスは、私たちの想像以上に良い効果が出ており、生徒たちの成長が楽しみです」と話す。

海外姉妹校との交流が復活し、2027年度には新校舎が完成

そのほか新しい動きとして、コロナ禍で中断していた姉妹校との交流が再開した。この3月には、フィリピン・ボランティア研修が行われ、中3~高2の生徒約30名が参加。同校の創立母体であるサレジアン・シスターズは、教育や社会事業に従事した修道会で学校もつくっており、その姉妹校の生徒との交流や、フィリピン支部が行っているストリートチルドレンの支援を共にした。

サレジアン・シスターズの姉妹校は世界97カ国にあり、そのうちASEAN諸国の姉妹校を招待したインターナショナルウィークも3月に開催した。「今回はフィリピン、香港、オーストラリアの生徒が訪れ、授業に参加したり、文化交流などをしました。今後は参加国を10カ国ぐらいに増やし、サミット的な交流をしたいと思っています」と尾﨑先生。

さらに同校は、現在のキャンパスとは別の場所に、地下1階、地上5階の新校舎を建設中だ。現校舎の1.4倍の広さになる新校舎は、2027年4月の使用開始を予定している。「教室にはプロジェクターを複数設置し、議論やプレゼンなどができる吹き抜けの多目的スペースもつくります。また、理数系の設備にも力を入れ、物理、化学、生物の理科室にはそれぞれラボを、情報の授業などを行うパソコン室にはデータサイエンスラボを併設。21世紀に活躍するために必要な力を身につけられる校舎を準備しています」

最後に尾﨑先生は、現在の学校の様子と今後の抱負を次のように語る。
「PBL型授業やゼミナールの活動を通して、本科の生徒は自分でどんどん学びを深め、自分の意見を伝えることも当たり前になっています。また、中学生の3割以上が入学時に英検2級以上を持ち、インターナショナルAGの生徒は全ての学年で1/3を占め、日常に英語がある学校になっています。この先は英語を学ぶだけでなく、英語を使って何かをするという学びに変わり、研究にも英語が使われるようになるでしょう。1期生が高校3年になる頃は、英語教育に留まらない次のフェーズに進むのではないかと期待しています」

<取材を終えて>
本科クラスは探究に力を入れ、インターナショナルクラスは英語活用力を高めるというように、それぞれの教育方針が明確で、実際に稼働している印象を受けた。また、DDPの導入やハイブリッドクラスの新設など、現状よりさらに生徒の力を伸ばしていこうと、学校改革の勢いを感じた。

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