私立中学

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聖学院中学校

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スクール特集(聖学院中学校の特色のある教育 #4)

ICEモデルとICTの活用で、「気づき」を引き出し大きく伸ばす!

聖学院中学校では、2021年度から新科目「情報プログラミング」を導入。ICEモデルを採用した授業や高校の新クラスなど、より強化されたSTEAM教育について取材した。

聖学院中学校では、2021年度から新科目として「情報プログラミング」をスタートさせ、高校ではSTEAM教育をより強化した「グローバル・イノベーションクラス」を新設。これまで以上にアカデミックな内容になったSTEAM教育について、佐藤充恵先生(高校新クラス設置統括長/理科・STEAM担当)と山本周先生(情報科・STEAM担当)に話を聞いた。

テーマは「情報にワクワクしよう」

「情報プログラミング」の授業を立ち上げた背景には、1人1台の端末をあらゆる教科で活用できるようになってほしいという思いがあったと、山本先生は説明する。

「ツールを渡しただけで終わらず、他の教科にもよい影響がでるように活用していきたいと考えました。1学期は、Keynoteを使った自己紹介に取り組んでいて、動画制作や音入れまで行い、自分が好きなものをわかりやすく伝えることを目指しています。中学生ぐらいだと、好きなものについてひたすら熱く語ってしまいがちですが、情報を人に伝えるときには、わかりやすく伝えなければ意味がありません。そういったスキルも、中1から身につけてほしいのです。週1回の授業ですが、生徒たちは楽しみにしてくれているようで、『情報の授業を待っていました!』などと言ってくれます」(山本先生)

同校では、これまでは生徒が持っている端末を使っていたが、2021年度の中1からはiPadに統一。最初の5分で基本的なことを教えたら、生徒たちには自由に使わせているという。

「その日にマスターしてほしい基本的なことを説明したら、あとは自分たちで進めて、わからないことがあればサポートするという形で進めています。友達同士で教えあい、とにかくワクワクしながら楽しんでほしいです。たとえば、自己紹介の動画を撮影するために参考にするなら、YouTubeを開いてもOKとしています。YouTubeは、私も授業をつくるときに参考にしていますが、いい教材です。SNSなども、取り組んでいる課題とそのコンテンツが合っていれば見ても問題ありません。見ている動画やサイトについて生徒に質問して、つながりがあると答えられればOKです」(山本先生)

生徒が自由に進める形をとれば、遊びに傾いてしまう可能性もある。しかし、何かを規制するよりも、学びにつながる例をたくさん示してあげることの方がプラスになると、佐藤先生は語る。 

「もしiPadで遊んでしまう子がいるなら、それを規制しても違うことで遊んでしまうと思います。その子にとっての問題は、iPadではなく学びに向かっていないことなのです。そういう子がiPadというツールを使うことで、何かやってみようと思うきっかけを作っていく方がプラスだと考えます。自分に足りないものは、人を真似ることでできるようになっていくのです。iPadを活用すれば、書いたことを瞬時にみんなで共有することもできます。ものの見方が変わったり、感性が引き出されたり、変容が起きる使い方を、今後どれだけ増やしていけるかが大切だと思います」(佐藤先生)

▶︎山本周先生(情報科・STEAM担当)

▶︎生徒たちとKeynoteに取り組む

ICEモデルを採用した授業設計

同校では、授業設計にカナダのヤング博士が提唱するICEモデルを採用している。ICEモデルとは、I(Ideas=基礎知識)、C(Connections=つながり)、E(Extensions=応用)の頭文字をとった学習・評価方法。問いを立てることで学びのストーリーを作り、生徒が主体的に学びたくなる学習を成立させ、さらに、その学びを質的に評価できるフレームワークである。ICEモデルを採用することで、問いがあるから問いに向けて頑張りたくなり、頑張りたいからお互いの回答や作品を見たくなり、そこから気づきが引き出されて学びが蓄積されるという、よい循環が生まれていく。ICEモデルはICTと両輪で進めることが重要であると、佐藤先生は語る。

「生徒たちの気づきを引き出すには、仲間からの気づきが重要なので、発信した情報を瞬時に共有できるICTが力を発揮します。そしてICTの活用は、他教科へもよい影響を与えていることがわかりました。情報プログラムの授業でKeynoteを使った動画の編集をやっていると、理科の発表でも身に着けたスキルをうまく活用しています。生徒たちが他の授業でやったことを自発的に活かしているのを見て、これが教科横断だと思いました。教員側が教科横断を狙ってやろうとすると、あれこれ考えて教科接続で終わってしまうこともあります。それがICEモデルによって、目指しているものが教員同士も生徒とも共有できているからこそ、自然発生的な教科横断も実現できるのだと思います」(佐藤先生)

▶︎佐藤充恵先生(高校新クラス設置統括長/理科・STEAM担当)

「観る」ことを大事にするとものの見方が大きく変わる

中1の理科では「観る」ことを大事にしていると、佐藤先生は説明する。

「学んだことによって、見え方がどう変わったかが大切です。たとえば、1年生の最初は植物から入りますが、ハルジオンとヒメジョオンの違いにしても、特徴だけ教えて終わるのではなく、なぜそのような違いがあるかを考える授業にしたいのです。通学路で何気なく見ていた葉っぱの形が、授業で植物について学んだ後には気になるようになったら成功だと思います。生徒たちには、気づきと発見を大事にしてほしいです。そして、気づいたことを自由に言えて、みんなで共有できるような授業にしていきたいと思っています。たとえ、自分が出したものが間違いだったとしてもいいのです。いろいろな考えがあることを知ってもらえれば、みんなにも貢献できます。気づきや発見を共有するためには、ICTが大きな役割を果たしています」(佐藤先生)

1学期には、「想像植物ハンティング」と題して、気に入った植物について想像で分類するという課題に取り組んだ。

「好きな植物を1つ採ってきて、それに対して自分なりに想像力を働かせ、その植物がどんな生息地にあって、どんな特徴があるかをシートに書き出してもらいました。もちろん、本当の分類でなくていいのです。『これはこうゆう植物だ』と思っていると気づかないことが、自由に想像力を膨らませていいとなったら気づく特徴があります。ユニークな想像植物が多く、ネーミングもなるほどと思うものが多かったです。たとえば、『トウモロコシ2号隊(LV.3)』とネーミングした生徒は、『なぜかコンクリートの上に生息する。ラーメンに入れるとおいしいだろう』などと特徴を書いていました。見た目の特徴から書いているものや、見ただけではわからないところまで広げているものもあります。このような体験を通して、見えなかったものが見えるようになっていくのです」(佐藤先生)

360度カメラを使って引き出された感性

中1の1学期後半は、光に関する単元を学んだ。そこで、光と絡めて360度カメラ(RICOH THETA)を使った授業も実施。360度カメラを使った探究を「自分事」にするために、既存の課題解決型とは違うアプローチがしたかったと、佐藤先生は語る。

「授業では、最初に『私たちは心が動く体験を通して、自分の中に埋もれている感性に気づくことができる』というテーマを見せて、このテーマはどういう意味だと思うか質問します。生徒たちは自分のiPadを使って、自分なりの答えを提出しました。クラスメイトたちの答えを見比べながら、さらに答えを探っていきます。次に、『落ち着く』の要素を生徒たちに問い、その要素が満たされる空間や場所をグループで撮影。『誰にも指図されない、雨を感じる、一人でいられる』を要素として挙げたグループは、食堂の中で雨が落ちる音がする場所を撮影して紹介してくれました」(佐藤先生)

さらにもう1歩進めて、THETAを使って校内でできる自然体験を再現することにも挑戦した。

「大雨の後、通学路に雨水が流れているところを撮影して川の流れのように見える映像をつくったり、木々の間にTHETAを入れてジャングルにいるような映像を撮影していました。これらの経験をした後で、再度『埋もれた感性に気づくってどうゆうこと?』と問いかけると、最初に書いたものとは書く量も内容もまったく異なり、気づくことも増えていました」(佐藤先生)

THETAを使った授業をする前には、教員たちがまず使ってみて、どのような授業をしたらいいか考えたという。

「今からTHETAを使ってみるんだと、佐藤先生がウキウキしていたのが印象的でした(笑)。どの授業も、教員たちがワクワクしていることが大切です。生徒たちは、動画の中で植物になったり、アリになったり、木と木の間に紐を付けて飛ぶ虫の気持ちになったりして、人間としてではない視点が多かったことが面白かったです」(山本先生)

▶︎工夫しながら360度カメラで撮影

土曜日の特設授業「GIL(Global Innovation Lab)」

同校では、SDGsの基礎、プログラミング、データサイエンスなどに関するワークショップを通して、「真の思考好き」を育てることを目指し、土曜日の特設授業として「思考力Lab」を行ってきた。2021年度からは、よりアカデミックな内容へとブラッシュアップして名称も「GIL(Global Innovation Lab)」と変更。授業の中では時間が足りないことや、特別な装置が必要なことにも取り組んでいく。時間や装置の関係で授業の中ではICEモデルのICまでしかできない部分があれば、GILでEまで拡張させて、知識の活用を目指す。

「6月に、プログラミングで制御可能な『Scratchトースター』(パナソニック)を使って、オリジナルのクッキーを焼くことにチャレンジしました。プログラムで焼き時間などを変えることで、乾パンやしっとりクッキーなどを作ることが可能です。ホバークラフトを使った実験なども考えていますが、プログラミングが目的ではなく、自分でものづくりやことづくりをする中で、様々なことに興味を持って、いろいろなところにつながっていくことを目指しています。佐藤先生が使ったTHETAをプログラムで制御できたらいいななどと、頭の中ではいろいろと考えているところです」(山本先生)

▶︎『Scratchトースター』でクッキーづくり

高1のSTEAMは「色」からスタート

高校に新設された「GIC(グローバル・イノベーションクラス)」では、STEAMの授業を美術、情報、理科の観点で進めているが、2学期以降には徐々に融合していくという。

「高1のSTEAM(理科)では、『色の感覚ストレッチ』というテーマで授業をしました。見えている色は人によって違ったりするので、色はとても大事です。8色の中からそれぞれの生徒が担当する色を決めて、その色を見つけたら写真を撮るというワークを行いました。ストックしておいた写真をプリントアウトして、レーザーカッターで加工して単語帳のようなものを作ります。気づいたことなどをレポートとして提出してもらうと、『青色には高価な雰囲気を与える効果があると感じた』『黄色は交通関係のものが多かった』など、様々な気づきがありました」(佐藤先生)

STEAM(美術)の授業では、美術科の伊藤隆之先生による、卵テンペラ絵の具をつくる実験なども行われている。1学期のSTEAMは、テンペラ絵の具づくりと色の感覚ストレッチという、アナログとデジタルの両方で色について学んだ。

「伊藤先生の授業は、『色ってなんだろう』というテーマから入っています。卵テンペラとは、500年以上前に流行った古典技法のひとつです。貝殻などを粉砕機に入れて細かくした顔料と、卵を混ぜて絵の具を作ります。伊藤先生は、藝大の大学院(油絵専攻)で色の研究をしていたので、先生自身もワクワクしながら授業をしていました」(山本先生)

▶︎『色の感覚ストレッチ』をもとに作った色単語帳

予想以上の成長を見せている高1

高1の生徒たちは、STEAMの授業などを通して、この数か月で表現する力や自分事化する力がかなり伸びてきたという。ニュースで気になったことなどを、哲学対話的なことをやりながらディスカッションするリベラルアーツの授業でも、深い議論が行われるようになった。感性を開いていく場数があることが、生徒たちの成長につながっている。

「高1の生徒を見ていると、マインドが変わってきていると感じます。活動する中で、『これってなんの意味があるんですか?』と言うようになりました。与えられたものをただこなすのではなく、少しずつ自分事化されてきたということです。中1の段階では、そのベースとなる体験を積み重ねることが大切なので、興味があることに突き進んでほしいと思っています。たとえば、360度カメラの構造に『なんで後ろも見えるんだろう?』と疑問を持ったり、歴史の人物について『この人は、なぜこんなことをしたのだろう?』と考えたり、答えを自分で得ようとする姿勢がある子にぜひ入学してきてほしいです」(山本先生)

高1の成長は、中学時代の経験があるからこそだと、佐藤先生は語る。

「経験や体験学習を大事にしている中学時代があるからこそ、イマージョンやリベラルアーツでも、大きな成長につながってきたのだと思います。内進生の方がより強くその傾向がでている気がしますが、高入生も内進生に刺激されて、一緒に変わってきています。自分には何かいいところがあると信じられる子は、たくさん伸びると思います。自分のいいところはまだわからなくてもよいので、人と比較するのではなく、自分に目を向けることが大切です。人と助け合うことも必要です。他者がいなければ、知識や知恵は生まれないと思います。ですから、人と比較するのではなく、他者との関わりも楽しんで、失敗もプラスの財産にしていこうという気持ちのある子に、本校の教育で成長していってほしいです」(佐藤先生)

<取材を終えて>
生徒たちが書いた「想像植物ハンティング」や「色の感覚ストレッチ」のレポートを見せていただいたが、とても興味深い内容だった。色については、「切り取るデザインによって印象が変わることがわかった」という感想もあり、ものづくりによる気づきも見られる。今後、美術・理科・数学がどのように融合し、どのような授業が展開されるか注目したい。

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