スクール特集(昭和学院中学校の特色のある教育 #1)
授業・入試・教員の意識を改革!「チーム昭和」で21世紀に必要な力を育成
アクティブラーニングやオールイングリッシュの授業、独自入試の導入など、学校改革を進めている昭和学院中学校。その取り組みを紹介します。
2016年4月に都立両国高等学校・附属中学校から着任した大井俊博先生。名門の中高一貫校で校長を務めた経験を活かし、3か年計画を策定して、アクティブラーニングの導入や英語教育の強化、マイプレゼンテーション入試を実施するなど、学校改革を推進しています。同校の目指す教育活動について話を聞きました。
校長 大井俊博先生に聞く
生徒の自主的な学びを促し、使いこなせる英語力を育成
「英語力や自ら考える力、表現力など、これからの時代に求められる力を養成するプログラムを導入し、これを昭和学院の教育の目玉にしよう」。大井俊博校長は学校改革をする際、3か年計画を掲げ、教育活動を明確化しました。
「まずは、授業の見直しを図り、新たにアクティブラーニングの学習法を取り入れました。教員が一方的に教える従来の授業とは異なり、生徒自らが問題について考え、グループで話し合いをしながら、答えを導き、発表をする。まさに能動的な学びなので、寝ている暇はありません(笑)。このような授業を通して、生徒たちの自主性や積極性を引き出し、協働する力や判断力、表現力なども養っていきます」。大井校長は、アクティブラーニングの効果は、前任校である両国高等学校・附属中学校で実証済みだと話します。現在、同校では、全生徒にiPadを支給し、ICTを活用したアクティブラーニングに取り組んでいます。
「また、現代のグローバル社会で活躍するには、英語力をつけることが不可欠です。中1からティームティーチングでオールイングリッシュの授業を行い、中2は2泊3日のイングリッシュキャンプ、中3では1週間のオーストラリア語学研修を実施します。生の英語に触れたり、実践する機会を増やして、使いこなせる英語力を磨いていきます」
新たな授業に取り組むとともに「生徒の教科嫌いをつくらない」ことにも配慮をしています。「大学進学を含め、将来を切り拓くための力をつけるには、中学校で基礎・基本を徹底することが大切です。学年が上がるにつれて学習も高度になり、一度取りこぼした学力を、高校で取り戻すのは難しいからです。補習なども行いながら、丁寧にきめ細かく学習指導をしています」
表現力や思考力を問う独自入試。2018年度は適性検査型入試を導入
また学校改革の一環として、2017年度の入試では、「マイプレゼンテーション入試」を新設しました。これは与えられたテーマに基づいて、自分の考えを記述する「自己表現文テスト」と自己アピールと質疑応答を行う「プレゼンテーション」からなる独自の入試です。
「塾に通っていなくても、潜在的な学力や能力をもった小学生はいます。そうした子どもたちを発掘したいという思いで導入したのが、マイプレゼンテーション入試です。小学校の学習をしっかりやりながら、同時に習い事や好きなことに打ち込んできた子どもは、表現力や柔軟な発想力が自然に身についています。これらの力は2020年にスタートする新しい大学入試をはじめ、将来的に必要とされる力であり、本校の6年間の教育で伸ばしていきたいと考えています」と大井校長。
さらに2018年度の入試では、マイプレゼンテーション入試に加え、「適性検査型入試」も導入します。「答えが1つではない問題を提起し、教科横断型の総合的な学力をみます。現代は多様性の時代であり、本校もタイプの違う入試を実施して、入学の門戸を広げ、生徒のバリエーションを増やしていきたい。そのことが相乗効果となり、学校全体が伸びていくと確信しています」
この春入学した1年生たちへインタビュー
学校改革が進む昭和学院中学校に、今年度は127名の生徒が入学しました。そのなかの4人の生徒に、同校を志望した理由や学校生活についてインタビューしました。
Qこの学校を受験した理由は?
Sさん:母も昭和学院の出身で、私も附属小学校から進学しました。慣れ親しんでいる学校であり、ダンス部に入りたかったのも理由の1つです。
Iくん:部活動が強く、勉強にも力を入れている学校なので、自分も両方をがんばりたいと思って受験を決めました。今はテニスソフト部に入っています。
Tさん:姉2人が昭和学院に通っていて、小学生の頃から文化祭などを見学していました。設備が整い、学校の雰囲気の良さが魅力でした。
Nくん:校舎がきれいで、英語に力を入れてところが気に入りました。将来はロボットエンジニアになるのが夢で、それにはしっかり勉強のできる学校がいいと考え、昭和学院を選びました。
<マイプレゼンテーション入試について>
Nくんは、マイプレゼンテーション入試で入学した1人です。受験までの経緯を聞いてみました。
Sさん
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Nくん:6年生の夏から中学受験を考え始めました。ちょうどその頃、昭和学院のマイプレゼンテーション入試のことを知り、すぐにこの入試を受けよう!と決心。ぼくは小さい頃からロボットが好きで、小5からロボットを制作する塾に通い、プログラミングをやっていました。試験当日もロボットを持ち込み、実際に動かしてプレゼンテーションにのぞみました。受験前は、自己表現文の練習で決まった字数で文章を書く練習をしたり、発表する時にどうやったら相手に伝わるかを研究しました。また、親に自分で作った資料や文章を見せて、アドバイスもしてもらいました。特別な受験勉強はいらないけれど、作文の練習をするなどの準備は必要だと思います。
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Nくん
Q 学校生活はどうですか?また、これからやってみたいことは?
Sさん:iPadを使ったり、手を挙げて発言している生徒が多く、想像していた以上に授業が楽しいです。クラスの仲が良いので、これからはみんなで協力し合って、文化祭などの行事を盛り上げたいです。家具が好きなので、将来はインテリアデザイナーになりたいです。
Iくん:最初は勉強についていけるか心配だったけれど、授業がわかりやすく安心しました。小学生の時は、受け身で勉強をしていましたが、それでは本当の力にならないので、中学校では自分からやっていきたいです。学校行事では、フレッシュマンキャンプとスポーツ大会が楽しみです。
Tさん:以前、学校見学をした時は、先生が一方的に話す授業のイメージがあったけれど、今は意見を言い合ったり、話し合う授業なので、みんなで考えを共有できて楽しいです。今後の目標は、勉強とバスケットボールの部活を両立すること。あと幼稚園から習っている書道も続けていきたいです。
Nくん:クラスの団結力があり、学校全体が明るい雰囲気で過ごしやすいです。部活は、自然科学部に入りました。これからの時代は英語も必要なので、学校の学習を頑張って話せるようになって、将来は世界に役立つロボットを作りたいです。
Iくん
Tさん
「チーム昭和」の精神が定着。教員の意識改革が学校改革へ
昭和学院中学校は今年度、生徒数が増加し、昨年度は3クラスに減少した1年生のクラスも、元の4クラスに復活しました。「英語教育を強化したり、アクティブラーニングやマイプレゼンテーション入試の導入など、新しい取り組みに賛同を得た結果だと思います。そして、教員たちもアクティブラーニングの授業を実践するにあたり、研修会を重ねてきました。教科担当でチームをつくって教材を研究したり、月に1回は研究授業を行い、教科の垣根を超えて教え合い、学び合いをしています。教員自身もアクティブラーニングの協働的な学びをすることで、その良さを実感しているようです。まずは教員が実際に体験して、それを生徒に還元することが重要ですね。また教職員の会議でも、自由に発言をし合う形式をとり、コミュニケーションの機会を増やしています。このように教員全員が当事者意識をもち、連携して教育にあたることを、私は『チーム昭和』と言っているのですが、その精神が根付いてきたと感じます」。大井校長は、教員の意識改革があって初めて、学校改革ができるのだと言います。
「昭和学院の生徒は、素直で一生懸命な子が多いのが特長です。そして、伝統的に生徒のもつ個性や感性を大事にする校風があります。本校には、勉強でも部活動でも、その他の活動でも活躍できる場所がいっぱいあります。私たちは、『チーム昭和』でもって、一人ひとりの可能性を伸ばす教育を行い、21世紀を生き抜く力を養っていきたいと考えています」。