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大妻嵐山中学校

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スクール特集(大妻嵐山中学校の特色のある教育 #5)

後輩たちに受け継がれる科学研究への憧れと「私たちにもできる」という思い

国内最高峰に位置付けられる科学コンクール「日本学生科学賞」で2年連続の受賞に輝いた大妻嵐山。入選1等に選ばれた3人の生徒と、同校の理科教育を推進する鈴木崇広先生にお話を伺った。

「第66回 日本学生科学賞」において、当時高校2年生だった山下麻梨さん、関根ひかりさん、荻原蒼さんの3名による研究が入選1等に選ばれた。論文のタイトルは「セイヨウミツバチの花粉荷の観察―花粉の同定とシロツメクサの蛍光の観察―」。研究のきっかけは学校の養蜂プロジェクトにボランティアとして参加したのがはじまりだったそうだ。

はじめて知るミツバチの生態と花粉の不思議

荻原さん:
花粉荷(かふんか)というのは団子状になった花粉のことで、ミツバチは自分の体に付いた花粉を少しずつ足で集めて、団子のように丸めたものを巣に持ち帰ります。

山下さん:
はじめは花粉団子がどういうものかも知らなくて、「ミツバチの足に黄色いのが付いているけどなんだろう?」って言っていました。

荻原さん:
ミツバチの生態について知るなかで、ミツバチが運んでくる花粉にも興味を持つようになりました。

関根さん;
電子顕微鏡で花粉を調べたらシロツメクサの花粉だっていうことはわかったのですが、先行研究にはシロツメクサの蛍光に関する記載がありませんでした。ミツバチは私たち人間と色の見え方が違って、植物が発する蛍光を頼りに蜜を探しに行く習性があります。ミツバチがシロツメクサに向かうということは、シロツメクサにも蛍光があるのではないかと思うようになりました。

山下さん:
花粉を観察するなかで、黄色いものと白いものがあることにも気づきました。先行研究を調べてみると、花粉荷の色が違うのは植物の違いによるものということになっていたのですが、色は違うけど形はとても似ているので、もしかしたら同じ花のものなんじゃないかって思ったのがすべてのはじまりです。

▶︎花粉荷の電子顕微鏡写真(1800倍) 左:花粉荷 A(白色) 右:花粉荷 B(黄色)

「なんだこれ?」という気づきから始まった研究

指導教員の鈴木先生によると、本研究の注目すべき点は一般的な研究の流れとは異なり、地道な観察をもとに生徒が疑問に感じたことから事実をひとつずつ積み上げて、最終的にこれまでの常識を覆してしまったことだと言う。

鈴木先生:
この研究のすごいところは、推論を立ててから研究を組み立てていく一般的な流れとは逆で、顕微鏡で花粉を見ていた3人が花粉の色は違うのに同じ花の花粉なんじゃないかって気づいたところにあると思っています。

「なんだこれ?」っていう疑問が先にあって、とにかく見てみよう、とにかく数えてみようという流れの研究です。そして気づいたことを理論的にひとつひとつ積み上げ、最後にその証拠を作ったのです。

▶︎鈴木崇広先生

3人の出会い、そして入選1等に選ばれるまでの軌跡

国内最高峰の科学コンクールで入選1等に輝いた3人だが、理科や生物が好きという共通点があるわけでもなく、コンクールでの入選を目指して取り組んだ研究でも無いという点が興味深い。

荻原さん:
私は生物が好きで、家でも飼っています。ザリガニ、カエル、イモリ、ヤモリ…。カエルはオタマジャクシから育てました。あと今はインコも飼っています。部屋中に水槽があったこともあります。

山下さん:
私はもともと動物とか苦手だったんですけど、中学3年生のときに荻原さんと一緒の班でセキセイインコの言葉の学習について論文をまとめたことがありました。それがきっかけで興味を持つようになって、今回も学校で養蜂のプロジェクトがあるって聞いて面白そうだから参加してみようかなと思いました。

関根さん:
私は2人に誘ってもらって研究に参加しました。同じクラスなんですけど、実はそれまであんまり話したこともなくて、研究をしていくなかで仲良くなりました。今ではとても仲良しです。

受賞後の感想についても伺うと入選1等へのこだわりのようなものは一切感じられず、3人で過ごした学生時代の楽しい思い出を語っているかのようだ。

荻原さん:
ここまでいくと思っていなかったです。びっくりしました。

関根さん:
とりあえずやってみようから始まって、せっかくやったからコンクールに出してみようかって話になって。どこまで行けるかなぁ、良いところまで行けると良いなぁと思っていたら、「あれーっ!」って。自分たちが一番びっくりしました(笑)

▶︎荻原蒼さん

▶︎山下麻梨さん

▶︎関根ひかりさん

科学の研究としてデータを示すことの重要性を伝授した先生の存在

研究を進める途中で肝心の女王蜂がいなくなってしまったり、冷蔵庫に保管しておいた花粉が日を増すごとに匂いが強くなったり、テスト期間中にも関わらず花粉団子の数を数える作業に追われたりと、思わず笑ってしまうようなエピソードもあるが、鈴木先生の指導のもと科学研究として発表するその厳しさもしっかりと乗り越えてきたようだ。

鈴木先生:
私たちがやっているのは科学ですので、発見したことを他の人にも納得してもらうにはデータを示さなければなりません。電子顕微鏡で花粉を見て、同じ花粉ですよねと言ってもそれだけでは研究にはならない。そこで、どれだけ説得力を持って裏付けられるか、データを示してみんなに納得してもらうにはどうすれば良いのかを伝授するのが今回の私の役割でした。

具体的な手法としては、1個の花粉荷に対して9箇所ずつ電子顕微鏡で写真をとるという作業を繰り返しました。1箇所だけだと「たまたまじゃないの」って言われる可能性があるので、説得力を高めるために任意の9箇所を見ることにしたのです。さらに写真1枚あたり100個以上の花粉が映るのですが、白っぽく見えた花粉荷、黄色っぽく見えた花粉荷に含まれる花粉の数を画面を見ながら数えて数値化しました。

関根さん:
私たちはまず花粉荷の採取器を設置して、どれくらいの花粉荷が集まるのかを調べました。3日間で7,290粒の花粉荷が集まったんですけど、その数を数えるだけでも大変で途中からなんだか目も痒くなっちゃって。それからシロツメクサの花粉荷で黄色いのと白いのを5個ずつ計10個取り出して、それぞれの花粉荷について9箇所ずつ写真を撮って花粉の数を数えました。

鈴木先生:
花粉の数を実際に数えたのも、説得力を増すためです。さらに、科学の世界にはエラーバーと言って、測定値に対して誤差がどれくらいあるかというところまで説明することが重要ですので測定回数を重ねました。3人は、伝授したことをしっかりやり遂げててくれました。本当によく頑張ったと思います。

▶︎花粉荷の数を数える様子

▶︎7,290 粒の花粉荷

目の前の物事に対して疑問に思う気持ちと、一歩足を踏み入れて解決しようとする力

続けて今回の研究を通して3人の生徒がどういった力を身につけたかについてもお話を伺った。

鈴木先生:
今回の研究はミツバチの花粉がテーマでしたが、「ハチ怖い、無理」で止まってしまう生徒が多いのです。しかも、花粉なんて多くの生徒にとっては別に面白くないものだと思うんですけど、彼女たちは目の前にあることに対して「なんでだろう」と疑問に思う気持ちがありました。なんで花粉荷に色の違いがあるんだろうという疑問が持てたのは、そもそも興味をもつことができたから。そして、疑問に思ったことに対して一歩足を踏み入れる力があったことが、今回の成果につながったのだと思います。

世の中には、科学研究だけではなく、いろいろな現象や社会的な問題がありますが、なんでそういうことが起きてしまうのだろうとか、その背景には一体どんなことがあるのだろうと疑問に思う気持ち、さらに自分で一歩足を踏み入れられる力が大事なんだと思います。

これからの世の中に必要とされる探究する力とか解決する力を身につけてくれたと思います。またそれを誰かにわかりやすく伝えることもすごく大事なことで、科学研究を通して学んだデータを示して表現する力、誰かに伝える力を身につけてくれたかなと思います。

多くの学びや感謝、成長とともに将来へとつながる生徒一人ひとりの思い

さらに3人の生徒さんにもそれぞれ研究に取り組んだ感想や貴重な経験を通してどのように自分が成長したと感じられるかについてお話を伺った。

山下さん:
「日本学生科学賞」のようなしっかりとしたコンクールに論文を出すのははじめてでしたので、文章の書き方とかパワーポイントの作り方を学べた半年だったなと思います。

荻原さん:
思い出に残っているのは、最終審査の発表で使う映像を修学旅行中に撮ったことです。多くの人に支えられて、いろいろと手伝ってもらったなという思いもあって、鈴木先生をはじめみなさんに感謝しています。

関根さん:
自分はもともと人前で何かをすることが得意なタイプではなかったので、家族には大妻嵐山に入って、こんな経験をさせてもらえて良かったねって。この学校に入らなかったらこんな貴重な経験できなかったねって言われました。

今後の進路についても伺うと、三者三様それぞれ別の進路を目指していることも分かり、3人が同じ研究テーマで協力し合って取り組んだことがあらためて貴重な出来事に感じられる。

山下さん:
小学生の頃から法律の仕組みに興味があって、大学は法学部に行って法律を学びたいと思っています。なかでも民法を深く学びたいと思っています。

関根さん:
理系に進みたいと思っています。生物とはまた違う方向で食物の研究や食品開発などをしてみたいと考ええています。

荻原さん:
教育系に行きたいなとか、習い事でダンスをやっているので舞台もやりたいなとか、留学したいななどいろいろ思うところがあり、まだ考え中です。

生徒一人ひとりの声に耳を傾けて、学べる環境を整えてくれる大妻嵐山

高校3年生になり卒業を控える3人に大妻嵐山中学校・高等学校の魅力について教えていただいた。

荻原さん:
生徒の自由な意思を尊重して、学びの機会をたくさん与えてくれるのが良いところかなと思います。例えば、中学生の時にインコのことを調べたいって先生に言ったら、学校で飼っても良いよと環境を整えてくださいました。

山下さん:
いろいろとあって難しいんですけど、先生との距離が近くて生徒一人ひとりの声を聞いてアドバイスしてくださったり、何か挑戦したいって言った時に環境を整えてくださるところが良いところだと思っています。

関根さん:
二人が言ってくれたように、こんなことしたいなって言ったことに対して「じゃあ、やれば良いじゃん」って先生が背中を押してくれるんです。前にこんなことを話してたよねと気にかけてくれたり、面談期間でもないのに相談にのってくれたりと、親身になってくださる先生たちが多く、安心して通えます。

後輩たちにも受け継がれる科学の魅力と「私たちにもできる」という自信

「第66回 日本学生科学賞」において入選1等に選出された生徒とともに、全国で唯一、指導教諭賞を受賞した鈴木崇広先生。長年にわたり科学教育に貢献してきた教員に授与される賞で、生徒へ向けられる一つひとつの言葉にも熱い思いが込められている。

鈴木先生:
前回の「日本学生科学賞」で岸優夏さんが文部科学大臣賞を受賞したのがきっかけとなり、「私たちにもできるんだ」と気づいた生徒が多くいたように思います。「私もやりたい」とか「そんな世界があるって知らなかった」とか、ひとつの起爆剤になったと思います。

そもそも、科学のコンクールがあって、全国大会や世界大会があることを知っている生徒はほぼ皆無です。でも、一歩そこに足を踏み入れると、キラキラした世界が広がっているんです。

コンクールの会場で質問をしてくれる大学教授は、高校生だからといって手加減はしません。「なんで?」「どう考えているの?」という質問をぶつけてきます。これが科学研究の面白さであり、他ではなかなか体験できない部分だと思います。

その点においてこの3人は、知らない世界に一歩足を踏み入れてさらに受賞することもできました。表彰式に行くだけで私もゾクゾクしますし、こんな世界が広がっているんだなというのを体験できただけでも価値があると思います。

また、自分の身近な誰かが体験して来ることによって、周りの子もすごく刺激を受けるんですね。「私たちもやりたい」「私たちにもできるかもしれない」って。純粋に良いなって憧れるだけでも刺激になるし、すでにこの3人の研究は、高2、高1の子たちにも受け継がれています。

もちろん、研究は楽しいことばかりじゃないですよ。100のうち99は辛いこと。最後に1つ嬉しいことがあるくらい。でも、みんながみんな研究を通して頑張れたということが価値あることだと思います。

〈取材を終えて〉
国内最高峰の科学コンクールで2年連続の受賞という響きとは対照的に、研究に取り組んだ3人の生徒さんたちの楽しそうなやりとりが印象的だった。電子顕微鏡で花粉を観察する際も、花粉を見て「コーヒー豆みたい」「幼虫、蛹っぽい、八ツ橋みたい」と自由な会話が飛び交い、おたがいを十分信頼している様子も伺えた。研究の苦労を微塵も感じさせないその姿は人を惹きつける魅力もあり、まさに後輩にとっての憧れの存在だろう。

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