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自由学園中等科

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デジタルパンフレット

スクール特集(自由学園中等科の特色のある教育 #1)

共学化は「学び」のチャンス! 生徒たちが対話をしながら新たな学校づくり

2024年度の共学化に向けて、生徒たちが新しい学校の仕組みを模索している自由学園中等科・高等科。女子部と男子部の統合がどのように進められているか取材した。

2024年度から、共学校としてスタートする自由学園中等科・高等科。女子部・男子部、それぞれの学校生活は生徒たちの自治によって運営されている。伝統や文化の違う2つの部を統合することの難しさや、共学化に向けた生徒たちによる対話について、副学園長・女子部校長の更科幸一先生に話を聞いた。

「自治」の中心となる委員会組織

同学園は1921年に、共にクリスチャンでありジャーナリストであった羽仁もと子・吉一夫妻によって女学校として設立。日本初の女性新聞記者であった羽仁もと子氏は、1930年代に世界旅行して開眼し、「男女共学・国際共学」の構想を描いて帰国した。しかし、当時有識者から日本で行うのはまだ早いと止められ、男女共学を断念。1935年には男子部を創設し、一人ひとりを尊重してよい社会を作りたいという思いを形にすることに注力してきた。そして、100周年を機に創立者の思いに立ち返り、2024年度からの共学化を決断。性別、年齢、国籍、障がいの有無や能力も関係なく、一人ひとりを大切にし、それぞれの自分らしさを活かして真に平和な社会を作るべく、共生共学化を進めている。



「共学化に向けて校舎の改修も進んでおり、女子部校舎が高等科に、男子部校舎が中等科になります。今年3月には、男子部体育館を教室兼ラーニングコモンズに造り変える工事も完了しました。内部の改修には、生徒たちのアイデアが反映されています。本学園は、生徒による自治が大きな特徴です。入学式の日に『あなたたちは、自由学園をよくするために入学を許されたのです』と生徒たちに伝えます。『学校が生徒をよくする』というのが一般的だと思いますが、本学園はそうではありません。このように伝えた瞬間から『自分たちの学校を自分たちでつくる』という意識が生徒たちの中に芽生え始め、実際に学校を自治していく中で、その大切さを認識していくのです」(更科先生)



同学園では、日々の学校生活、寮生活や行事の企画運営まで、すべて生徒たちの自治に委ねられている。女子部・男子部それぞれに委員会があり、自治の具体的な計画を立て、生徒全員が運営に参加。しかし現在の女子部・男子部の委員会制度は、任期や選挙方法などの詳細部分で異なる点が多い。例えば、女子部では、毎日自分たちで昼食を作るため、調理に関する委員の役割が細かく決まっているが、男子部にはそのような委員はない。一方、男子部は原則として入学年次は全員入寮していた(2023年度まで)ので、寮に関しては詳細に委員の仕事が決まっている。

「共学化に向けてどのように学校を運営していくかについても、生徒たちが考えています。生徒たちは性差をなくした自治を担う委員会組織が一番重要であると考えているので、そこを決めることからスタートしました」(更科先生)

▶︎副学園長・女子部校長の更科幸一先生

▶︎ラーニングコモンズ

市民性が育まれる「対話」

「議論をしていくと声が大きい人や力の強い人が前に立ち、最終的には多数決をして決めることになり、小さき声や声なき声は消されてしまいます。これからの社会を生きていく人たちは、対話ができる人に育ってほしいという思いもあって、プロのファシリテーターにレクチャーを受けて、*OST(オープン・スペース・テクノロジー)と**ワールド・カフェという手法を使って、対話を重ねています」(更科先生)



*OST(オープン・スペース・テクノロジー)とは、参加者の主体性を尊重しながら、オープンな話し合いによってアクションプランを創造するための手法。



**ワールド・カフェでは、カフェのようなリラックスした雰囲気の中で、 少人数に分かれて自由な対話を行う。メンバーをシャッフルして対話を続けることにより、参加者全員の意見や知識を集めることができる手法。

共学化に向けて生徒たちが対話を重ねる中で、教員の役割は黒子や伴走者のようなものだと更科先生は説明する。



「教員たちは、生徒たちの動きを見守り、じっと耐えて、動き出すのを待ちます。待った末に生徒たちから『大人には任せておけない!』と言われることもありますが、それでいいのです。この言葉は、本学園が大切にしていることをよく表していると思います。もちろん教員も一緒に考えますが、実際に活動するのは生徒なので、子どもたちに考えてほしいことや決めてほしいことに、大人は伴走することになります。教員は俯瞰して見ながら、生徒たちの学びで何が大事なのか、生徒たちがこれから生きていく上で必要なものは何なのかというヒントをそっと置いておくというイメージです」(更科先生)



対話の手法を取り入れているが、ほとんどの生徒は対話の経験がなく、議論によって決定することに慣れてしまっている。対話は時間がかかるのでどうしても答えを早く出したいという思いとの葛藤が生まれてくるという。



「例えばAとBについて議論した場合、Aに決まればBがいいと思っていた人は納得できない思いが残ります。対話だと、AとBだけでなく、AとBを合わせたら何がでてくるか、それぞれのよさを入れてCを作ろうなど、みんなが納得できる答えを見つけようとするのでとても時間がかかります。先日のワールド・カフェは、5~6人1組で席を入れ替えて3時間ぐらいかけて行いました。議論の場合は、発言しない人は参加していないことになり、仲間として存在していないという感覚になってしまいます。その感覚は『社会というものは一部の人が物事を決定してつくっているのだから、自分はいてもいなくても同じだ』というイメージを与えることにもつながってしまうのです。一方、対話の場合は、黙っていることも自分で選んでいるのだという違いがあります。まだ対話を始めて間もないので、うまく進まないことも多いですが、今は対話の種まきをしている時期なのです。経験を重ねていけば『みんなで決める』というスキルを身につけることができるでしょう」(更科先生)

▶︎ワールド・カフェの様子

共学化は答えのない本来的な「学び」の機会

2024年度から共学校としてスタートするが、すべてが整った状態でスタートするわけではないという。この過程にこそ本質的な学びがあり、その機会を逃す手はないと、更科先生は語る。



「共学校として整っていない状態でスタートして大丈夫かと不安に思う保護者もいるでしょう。しかし本学園では、この過程を大切な学びとして位置づけているのです。本学園では、大人が決めた型に合わせることは、学びではないと考えています。型ができて安心するのは大人の方で、子どもたちは型ができた瞬間にそれに合わせなければいけないという思考停止状態に陥ってしまいます。今、挑んでいるのは、女子部と男子部という文化の違う2つを統合させるということです。例えるなら、EUの様にヨーロッパの国々が、それぞれ文化や社会の違う中で統合し新しいものを作るようなものです。大人が決めてしまう方が簡単ですが、このような機会を学びとして活かすことが、生活に即した実践的な学びだと考えています」(更科先生)

▶︎共学化に向けて話し合う生徒たち

自分たちで気づき、考えること

「本学園の1日は、芝生に集まって朝の挨拶をすることから始まります。共学化を機に生徒たちは、そもそもなぜ集まるのか、集まる必要はあるのかなど、答えのない本来的な学びをしているのです。課題は何かと頭で考えるのではなく、生活の中から課題を感じとり、それを頭で言語化していきます。生活の中には様々な課題が転がっているので、それを学びに変えていくためにも、共学化は大きなチャンスだと考えています」(更科先生)

2024年度がスタートしてから、生活する中で「これはどうすればいいんだろう?」と生徒たちが気づくことへの期待もあるという。同学園の男子部には制服があるが、女子部は入学式などに式服を着用することが決められているだけで、普段の服装は決められていない。共学化に向けて、制服についても生徒たちが対話を重ねて考えているという。

「今年1月に実施したワールド・カフェでは、制服についても、そもそも必要なのか、というところから話し合いを始めました。普段着るか着ないかは別として、制服があった方がいいだろうということになりました。しかし、いわゆる学生服メーカーに依頼するつもりはありません。そもそも制服やリクルートスーツなどには、日本人の悪い部分が象徴されていると私は思っています。就職活動が始まると、ほとんどの学生はリクルートスーツと呼ばれるものを、何の疑いもなく着ますし、入社式もみんな同じような服装です。『周りに合わせることが大切』と考えるのは日本人の文化でもありますが、自分の頭で考えずに『空気を読む』的な行動は、異様に見えることもあります。制服にも様々な色があってもよいと思うのです。アフリカ支援を行っているアパレルブランドを候補に模索していますが、最終的には生徒が決めるので、大人の思いとは違う方向に行く可能性もあります」(更科先生)



制服はそもそも必要なのか、からスタートする生徒たち。そうなるのも、共学化した後の生活を想像し、そこに課題を見出し話し合いを進めているからなのだろう。しかし、その進み具合を見ていると、2024年度のスタート時点で制服は決まっていないかもしれないと更科先生は推測する。



「それでも、構わないのです。例えば、保護者の皆さんがある会社で働くとして『このユニフォームを着てください』と言われるのと『これから会社のユニフォームを作るので、どのようなものにするかみんなで考えましょう』と言われるのでは、どちらがワクワクするでしょうか。学校説明会で子どもたちに『入学してから一緒に考えよう』と言うと、みんな目をキラキラさせます。子どもたちにとって、制服は大切なものです。制服のデザインで受験校を決める子もいるぐらいですし、自分も一緒に考えられるなんて、こんな嬉しいことはないでしょう。服飾系に興味のある生徒は制服を考えるグループで活動していますし、当然そこでも様々な学びが発生しています」(更科先生)

先進的な学びの実践校として

同学園の生徒たちは、入学式の日に告げられる『あなたたちは、自由学園をよくするために入学を許された』という言葉と上級生たちの姿を見ることで、自然に課題を見つけるようになっていくという。



「本学園では、教員が『課題を見つけなさい』と言うことはありません。下級生たちは、上級生たちが常日頃から考えている姿、発信している姿、実践している姿を見て学んでいくのです。また、委員長になるなど責任を持つ役割に就くと、今まで見えていなかった世界が見えてきます」(更科先生)



生徒たちが共学化について対話を進める一方で、教員たちはクラス編成などについて模索している。



「生徒主導で進めていますが、教員も生徒たちと一緒に学び続ける必要があります。例えば、クラス作りについて問い直しているところです。当たり前のようにクラスがある世界で育ってきましたが『そもそもクラスって何だろう?』という問い直しから始めています。同じ年齢でまとまっているのは、学校だけです。効率を重視していた時代はそれでよかったかもしれませんが、今はどうでしょうか。異年齢が混ざったクラスの方が、いろいろな人と触れあえ、感性の扉が開かれて、世界が広がります。これからの社会に出て行くためにはその方がよいかもしれません」(更科先生)



これまで当たり前とされてきた教育に疑問を感じていたら、ぜひ学校見学に来て生徒を見てほしいと、更科先生は語る。



「これまでの教育は、学校ごとに『○○力を身につけて社会に出す』といった目標を掲げてきましたが、今の社会を見るとそれが成功したとは思えません。一人ひとりが全く違う人格なのに、『○○力を身につけて社会に出す』と決めた瞬間に、その型にはめた評価が始まってしまうのです。もし『リーダーシップを育む』などと決めてしまうと、その基準で評価して、優劣を決めることになってしまうでしょう。それは規格を決めた工場生産で、規格に当てはまるように育てていくようなイメージです。本学園では、個々のよさを活かして、そこに向かっていく力を育んでいます。すべて手作りで、形も違う、素材も違う個々がより活かされるように育てるイメージなのです。あえていうならば『平和な新社会を創造する人』を育てたいと思っています。どんな力で平和な新社会を創造するかは、一人ひとり違うでしょう。生徒を見ていただければ、それが体現されていることが伝わると自信を持っています。本学園の価値観に共感していただけたら、ぜひ学校見学に来て生徒たちを見てください」(更科先生)

<取材を終えて>
インタビュー後に、ラーニングコモンズを見学させていただいた。生徒が設計に参加しただけでなく、壁の塗装やロッカー制作なども教員と生徒たちが協力して行ったという。同学園は埼玉県に植林地があり、ロッカーにはその木が使われている。学習スペース、本棚のほか、キッチンやカフェスペースもあり、様々な使い方ができる空間になっていた。女子部と男子部の統合に向けて、ハードとソフトの両面で生徒たちが関わっていけるのは、貴重な経験となるだろう。

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