スクール特集(報徳学園中学校の特色のある教育 #6)
キャリア甲子園準決勝進出に見る キャリア教育の充実と男子校ならではの気風
高校生対象のビジネスコンテスト「キャリア甲子園」(株式会社マイナビ主催)。2018年度、報徳学園のチームが、見事準決勝進出という結果を残した。チームの4人にその経験について語ってもらった。
「キャリア甲子園」は、高校生向けのビジネスアイデアコンテスト。高校生が4人で1つのチームを組み、企業・団体からの課題に対して、調査し、議論を重ね、まとめあげた自分たちのアイデアをプレゼンする。5回目となる2018年度は4,318名がプレエントリ-し、全国903チームが本エントリーに進んだ。
この一大イベントで、地方創生をテーマに書類審査・プレゼン動画審査を経て、見事準決勝に駒を進めた報徳学園「The Orange boars」。他に準決勝に進出したチームは、開成高等学校や灘高等学校など名だたる学校が名を連ねる。大健闘を見せた「The Orange boars」の4人に、報徳学園生だからこそできたプレゼンについて語ってもらった。
生徒インタビュー
右から
S・Oさん
R・Sさん
Y・Iさん
H・Mさん
キャリア甲子園では、どのようなプレゼンをされたのでしょうか?
Y・Iさん
僕たちが選んだテーマは、地方創生です。以前、僕の実家である愛媛の親戚から、みかんを食べたイノシシの肉はみかんの香りがして美味しいと聞いたことがありました。そこで、特産品であるみかんを害獣であるイノシシに食べさせ、その肉を新たな特産品として売るという所から、地方創生につなげていく案を作り上げていきました。
S・Oさん
肉を売るだけでは、地方創生にはならない。イノシシをはじめとする害獣に効率的にみかんを食べさせる方法などのノウハウを他の地方自治体に提供することで、お金を得て、そのお金を雇用の創出など地方創生につなげる為の資金にしてもらえたら、一定の成功と言えるのではないかと考えました。
R・Sさん
最後は、報徳学園の由来となった“以徳報徳”という言葉で締めました。以徳報徳”とは、二宮尊徳先生の教えで、自分が生まれた時に授かった徳、つまり美点を磨いて社会へ恩返しをしていこうという意味です。これを地方創生に置き換えると、みかんという元々あった特産品が、ここで言う“徳”で、それを害獣に食べさせてお金に変えて、地方創生に使うことで、地域への恩返しするという意味でぴったりなんじゃないかと。
報徳学園での学びが、今回のプレゼンにも生かされたのですね。
Y・Iさん
本番前日にみんなで打ち合わせをしていた時にS・Oくんが「この地方創生案って“以徳報徳”じゃないか」と気づいて、直前に修正しました。本番の1時間前までパワーポイントを作り直したりしていましたね。
S・Oさん
二宮尊徳先生ご自身が、今で言う地方創生をされた方なので、何かぴったりな言葉がないかと考えた時に、“以後報徳”が思い浮かびました。
報徳は行事が盛んで、どの行事にも真剣に取り組みます。適当にやるということがないんです。今回もせっかく通ったんだから、やるだけのことはやろう! 当たって砕けろという気持ちでのぞみました。そういう報徳魂が最後まで諦めないという姿勢に繋がったんだと思います。
R・Sさん
今までのキャリアデザイン教育(CDE)の経験も生かされていると思います。CDEでは、中学1年生時の3Sプロジェクトで整理・整頓・清掃(3S)にチームで取り組んで、皆で話し合って3Sの方法について発表したり、大学や企業についての研究を自分なりにまとめてパワーポイントを使って発表したりするなど、考えをまとめて発表する機会がたくさんありました。
キャリア甲子園での経験を通して、得たものについて教えてください。
H・Mさん
僕は放送部に所属していて、今回はナレーションなどを担当しました。元々、人前での発表が苦手だったんですが、このようなたくさんの人が集まる大会に出ることで、人前で話すことに少し慣れたかなと思います。
R・Sさん
僕は日本史に興味があって、漠然と文学部に進学したいと思っていました。その一方で、政治的なことにも興味を持っています。今回、キャリア甲子園に出て、地方創生について、こうして行ったら良いんちゃうかということを皆で考えていく中で、政治って面白いなと改めて感じました。そんなこともあって、志望学部を法学部に変更しました。キャリアデザインという点において、自分の中では大きな意味があったと思います。
S・Oさん
今回のキャリア甲子園で得た経験を生かして、志望校のAO入試にチャレンジしたいと思っています。全国大会に出て、たくさんのよい経験を得られ、またそれが自分の将来にも本当につながっていくなと感じています。
最後に、報徳学園の良い所を教えてください。
H・Mさん
中学1年生からCDEがあって、職業研究や大学研究、先生方の教えを通して、大学や働くことについて学ぶことができます。色んなことを知ることで夢も広がりますし、将来を考える場がたくさんあることは、とても自分のためになっていると感じています。
Y・Iさん
入試や模試の対策について、先生に相談したら何でも教えてくれますし、過去問をくださいと言ったら喜んで渡してくれるんです。とても先生と生徒の距離が近いです。先生と親密で信頼関係をしっかり築けている所がいいと思います。
R・Sさん
僕ら4人は中学から入学しましたが、高校からもたくさん生徒が入ってきて、中入生と高入生が同じクラスにもなります。様々な価値観を持つ子と触れ合うことで世界が広がり、視野も広がるというのはとても良い所だと思います。
S・Oさん
本当に学校生活が楽しい! 中学の時から、いじめの存在も聞いたことが全くないです。“リーダーを育てる”という教育理念にひかれて報徳に入学したんですが、リーダーを育てる教育はすごいし、楽しいです。本当に報徳に来て良かったなと、入学して6年目ですけど今でもそう思います。
入試広報部長の堀谷先生のお話
男の子は目標を持ったら強い。目標に向かって、がむしゃらに努力できるというのが男の子の特徴です。それだけに、自分の“将来こうなりたい”を早く見つけて欲しいとスタートしたのが、当校のCDEです。今回の「キャリア甲子園」もCDEの一環として、Ⅰ進コース全員が参加しました。
CDEでの取り組みとともに、中学校の弁論大会で、自分の意見を理論立てて人前で話せるスキルを得てきたことが今回の結果につながったと思います。
CDEでは、大学進学がゴールではなく、大学卒業後に自分がどんな職業に就き、どう生きていきたいかという明確なヴィジョンを描けるようなカリキュラムを組んでいます。学年のカラーに合わせて、カリキュラムも変えています。
もちろん、勉強も大切です。昨年からスタートした自習室「金次郎STUDEO」は大変好評で、毎日最後まで残って勉強を頑張っていた子は、ほとんどが現役で志望大学に進学することができました。クラブ活動が終わってから、最終の20時30分(高校)まで残って勉強していく子も少なくありません。
今年は、Ⅰ進コースから東北大学に現役で合格した生徒もいます。東北大学をはじめとする難関大学に現役で合格できるほど成績が伸びるのは、教員による厚いサポートと、女の子の目を気にすることなく、目標を持ったら泥臭く努力できるという男子校ならではの環境があるからだと思います。
大学を卒業して、就職をしてからも長い人生が続きます。勉学に励んでもらうことはもちろん、立派な社会人として成長できる男の子を、これからも育てていきたいと思います。
▶︎金次郎STUDEO
<取材を終えて>
キャリア甲子園に出場した4人は元々クラスメイトであるものの、特に親しいという間柄ではなかったそうだ。それが、地方創生というテーマを元に一致団結し、連日、20時30分まで学校に残って、議論を交わし、ひとつのプレゼンを作り上げた。他の生徒や先生方にも、何度もプレゼンをチェックしてもらったという。自由に意見を言い合い、面白いと思ったことにトコトン熱くなれる報徳学園ならではの校風が、全国大会進出という素晴らしい結果につながったのではないだろうか。こちらの質問に自分の考えをしっかりと述べてくれる4人の姿に、少し気が早いが、社会人として活躍している姿が目に浮かぶようだった。
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